25日午前の行革特別委員会質疑・その2
--(国公労連「行革闘争ニュース」1999年5月26日付その1)


 25日午前、伊吹文明(自民)議員に引き続き、小池百合子(自由)議員、鳩山由紀夫(民主)議員が質問にたちました。

<小池百合子議員の質問要旨>
○歴史の転換点にたち、21世紀の国のかたちを民主的な無血革命で変えることは、画期的だ。企業もリストラ・変革の時期、日本の政治、官僚制度がそのまま生き残ることはありえない。改革をおこなう思いはどうか。
○ファンでもある堺屋経企庁長官のご意見を聞かせてほしい。
○地方分権は、中央に人と金が集中しているものを地方に分権、主権を与える。その上で、機能体として活動するためには、どうしても市町村合併が必要だ。市町村合併をさらに進めるために、どう考えるか。また地方自らの財源をどのように手に入れるべきと考えるか。
○国と地方の財源は深刻だ。バランスシート方式など、会計制度の見直しについてどう考えるか。
○来年4月から介護サービスが始まる。町村合併につながるのが望ましいと思うがどうか。介護保険は税方式でやるべきである。
○防衛庁の国防省への格上げを要請する。環境庁を省にすることは、大変結構だ。
○政治主導が目玉であり、総理大臣のリーダーシップをもって、省庁再編と地方分権法案を仕上げてほしい。

<答弁要旨>
●(小渕首相)多様化した価値観のもとで、従来の行政システムが時代にあわなくなった。21世紀に向けて、行政における政治主導を確立する。民主的手続きによって成し遂げる重要な法律案。大きな転換点にあたり、国民的視野でご論議いただきたい。
●(堺屋経企庁長官)組織は、共同体と機能体がある。官僚機構は機能体。時間がたつと硬直する。組織に揺さぶりを与え、やり方を変えることで貢献できる。
●(野田自治大臣)市町村合併の政策誘導を持ちながら進める。法案が成立したら、直ちに合併推進のガイドラインを地方公共団体に示したい。合併のパターンも示す。いずれ300、当面1000を頭において、できるだけ早く実現させたい。
●(野田自治大臣)当然、財政基盤がないと地方分権は現実にならない。地方税が大事だが、充実させるのは難しい。自主財源は地方交付税の充実。地方補助金についても一般財源化を図る方策を考えていく。
●(野田自治大臣)すでにバランスシートをつくっている自治体もある。これは、大変いい方法だ。自治省も検討している。オーソライズできるものをつくっていく。行政評価システムも併せて重要だ。
●(宮下厚生大臣)介護保険は、4月から実施させたい。市町村に実施準備に差異がある。国として、自助努力をサポートしたい。また保険料の格差をうまないために広域化で対応するのが望ましい。
●(小渕首相)今回の省庁再編では、防衛庁は現状どおりで提案している。

<鳩山由紀夫議員の質問要旨>
○どのような理念で日本を引っ張っていくのか。またその思いをどのくらい省庁再編、地方分権に盛り込んでいるかが重大な問題だ。行政改革が官僚による行政改革になっていないか。ぜひ時間をかけて、国民とともに勉強しなくてはならない。総理は、法律案を全文読んでいるか。
○国と地方のあり方は、対等の関係にあるべきだ。これが、地方分権の要旨ではないか。民主党は、一歩進めて地域主権の国づくりを提唱したい。地域でできることは、できるだけ地域でやるべきで、地域の自立性を高めることが大切だ。地域主権国家に変えていくことについて、どう考えるか。
○地域主権国家の方向で、ぜひ協力なリーダーシップを発揮したい。しかし、その中にあって、国の関与が強くなっているところもみうけられるが。
○地方自治体は財政危機にみまわれている。はたして今日の地方分権、省庁再編で、財政危機の解決が見いだされるのか。
○本来、財源を含めた議論を行わないと、地方分権の議論が充分にならない。行革のめざすものは何か。何のための行政改革を行うのか。
○いらない事務は廃止するが、いらなくなった事業・事務は今日どれくらいか。
○機関委任事務561のうち、40の法律を廃止することは、よろしい。世の中、いらなくなったものは、大胆に廃しすべきでないか。
○行政評価を、内閣府の中でやることにしたらどうか。総務省だと、郵政省、自治省が入り、その中で評価することになる。政策の評価は、内閣府で行うべきだ。政策評価をしっかりやって、民間でできるものはどんどんまかせ、規制撤廃をさらにお願いしたい。

<答弁要旨>
●(小渕首相)富国有徳を強く訴えている。世紀の変わり目、日本のあるべき姿を示すために微力だが、全力を尽くす。法案にある問題の諸点は報告を得て経過も承知して、それぞれの要点を把握してきているつもりだ。
●(野田自治大臣)国と地方は主従関係ではなく、対等・協力の関係にもっていく。地域主権国家という考え方は、方向性として大いに結構である。その方向に向かっていかなければならない。
●(野田自治大臣)日常の行政の流れを見ると、すべて地方お任せするべきだが、やっぱり国が助言、監督があった方がいい部分がある。国の機関委任事務は、廃止する。国の関与についても、基準を明確にしたい。
●(野田自治大臣)分権一括法は、地方財政の危機に応えるものになっていない。行政システムの改革に力点をおいたものだ。財政基盤の確立は、別途やっていかなくてはならない。地方税を充実強化していくことが重要。地方交付税を含めて、地方の自主性、自立制の確立のために、自主財源を確立していきたい。
●(小渕首相)財政を含めての議論は、考慮しなければならない諸点だ。基本的な方向を打ち出して、地方分権を裏打ちする財源対策を強化する。できるだけ早く国会に提起していかなければならない。
●(野田自治大臣)いらなくなった事務は、国の処理している事務のうち、法律数9件、機関委任事務のうち、事務の廃止は、法律で数えて40件だ。
●(太田総務庁長官) 事後のチェックは総務省で評価する。民主党の主張とは違う。内閣府は事後のチェックではなく、企画・立案を行う。
●いまの省庁再編は、基本法にしばられていてやっているので、釈明ができない。

25日午後の質疑
<田中慶秋(民主)>
○ 総務省などは31万の職員を抱えることになる。これがスリム化・行政改革と言えるのか。納税者である民間は厳しいリストラ・スリム化を行っている。
○ 大括りの省庁再編というが、環境行政は一元化されていない。林野行政は環境省にすべきだ。
○ 1府12省にしたが、現実には職員が一人も減らないなんてこともあり得るのではないか。政府資料では、国家公務員の定員が81万から85万2千に増えている、スリム化と言えるのか。橋本前総理は10%、小渕総理は20%、自自合意で20%の公務員削減が公約されたが、法案のどこにも書かれていない。
○ 総理は、行政コストを10年間で30%削減すると言っているが、その具体策は。
○ 特殊法人が増えている。役割が終わった特殊法人は整理すべきだ。どうしても必要なものは独立行政法人にすればよい。特殊法人の整理をすべきなのに、先に独立行政法人を作ろうとしている。25%定員削減の受け皿としか考えられない。
○ 特殊法人・公益法人に毎年約3兆円の補助金を出し、天下りOBの数で配分している。民間企業のやり方からすると、本社よりまず支社・子会社だ。行革はまず特殊法人の整理から始めるべきではないか。
○ 許認可の件数が10年間増え続けている。規制も許認可件数も減らすことが行革ではないか。 など質問しました。

<小渕首相、太田総務庁長官答弁>
● 1府12省に編成換えを行う。単に数あわせではない。行革の大きな切り口は、縦割り行政で各局が増殖してきたこれをどうするかだ。競合め重複する業務をどうするかだ。総務省は5年後に郵政公社になる29万人を除けば、残りは7千人だ。
● 一つの対象業務に複数の光を当てて検討した。林野行政については農水省が所管することとなった。
● 定員を減らす目標は持っているが、今回の行政改革は定員削減が目的ではない。改革を進めることで結果として25%の削減になって行くのだろう。毎年、各省が10年間で25%の削減になるよう減量化する努力を行う。その努力ができる改革制度を作った。
● 行政経費の30%削減は、行政の生産性を上げるため掲げた目標である。行革の目標として減量化と効率化の2つがあるが、当面減量化の目標とである。単に人件費や事務費ということではなく、行政コスト全体である。
● 特殊法人については問題意識を持っている。独立行政法人を設計するときも、それらの問題点を頭に入れて作った。独立行政法人にすることは簡単だと思われているようだが、大変ドラスチックなやり方だ。
● リンゴは芯から腐るのか皮から腐るのかだ。本体である中央省庁から先にメスを入れるべきだ。特殊法人は、中央省庁の改革が終わった後に改革する。
● 許認可件数は現実に増えているが、許可制のものが届け出に変わって増えたりしている。減らす努力はしている。

<石田幸四郎(公明)>
○ 予算編成における経済財政諮問会議の答申について、会議の存在意義や権威のためにも、この答申を政府が「尊重する」ことを義務付ける規定を設けるべきである。
○ 厚生事務官は、地方公務員にすべきではないか。国家公務員にすることによってどのようなメリットがあるのか。地方公務員にしても弊害はないし、社会保険行政を国民が理解するためには、国の直轄にすると、国民の意見がなかなかとおりにくい。昭和35年当時の記録を見ると、地方事務官制度は地方の職員にする経過措置としてとられた制度である。
○ 環境庁が省に昇格するが、1000人程度の省では寂しい。環境保護や国土保全の立場から林野庁を環境省に組み入れてはどうか。林野庁も国有林の仕事の80%は国土保全のためとしている。環境省が森林行政をも担うべきである。
○ 行政コストの削減について、具体的な数値目標が示されていないが、問題ではないか。税調会長の加藤さんが国有財産の売却を提案している。売れるものが100兆円位あるという。検討してはどうか。497万株あると云われているJR株の売却の時期を明確にせよ。
○ 地方財政が非常に厳しい。どのように改善しようとしているのか。 などと意見を述べ、質問をした。

<小渕首相、野田自治大臣、大田総務庁長官、中川農水大臣、宮沢大蔵大臣答弁>
● 予算編成権は憲法86条により内閣にある。また経済財政諮問委員会には閣僚が多数参加しており、答申も閣僚が起案する。したがって、経済財政諮問委員会の答申内容は閣議で受け入れられるものとなるであろう。尊重義務の規定は必要ないと考える。
● 昭和35年の第34国会で社会保険の事務は国の仕事であると答弁している。社会保険の業務は全国的視野で行うべきであるし、現在も国家公務員である。身分も採用も、国公法が適用されている点からも国家公務員にするのが筋である。今後、統一的な機械化や合理化を進めるに際して、県毎に異なっては困ることとなる。
● 国土の60%が森林であること。農業と林業との兼業をしている場合が多く、基本法のワク内で処理したい。
● 行政経費30%削減の具体的方針を示すことは難しい。10年間で30%削減をめざしたい。国有地の売却については、今後調査をし検討したい。JR株の売却については、国鉄民有化の精神という点と年金財源として有効に活用したいという点の二つの側面から検討したい。
● 地方財政の充実という点については、我が国の経済成長が2%になった時点で、根本解決をはかりたい。

<若松謙維(公明)>
○ 米政府は予算重視から結果重視に変わっている。行政評価は今回の行革の目玉だ。イギリスのネクストステップのようなことが必要だと考えている。
○ 行政評価は誰が行うのか。各省に外部の人間を付けて評価を行うべきだ。自らのチェックでは限界がある。第三者チェックをいかに行うかが重要だ。
○ 行政評価法なりの法の枠組みを作るべきだ。
○ アメリカは全て連結決算にしている。決算制度・会計基準を作るべきだ。

<小渕首相、大田総務庁長官、宮沢大蔵大臣答弁>
● 国は国民の税金で全てを運営している。これを厳しくチェックすべきだ。
● それぞれの省庁が自ら評価する。それを総務省がダブルでチェックする。本来の外部チェックは立法府になるのではないか。厳正なチェックを行っていく。より効果的な評価が可能になるようにしたい。
● 最終的に行政評価法なりの法律を作るべきかは考えないといけない。
● ディスクロージャーは極めて重要だと思っている。まず、大蔵で調査研究してみる。

<春名直章(共産)>
 地方分権にしぼって伺う。
○ 高知県が非核3原則に基づいて非核港湾条例を制定しようとして、外務省に問い合わせたら、外務省は外交上の問題として条例制定に圧力を加え介入をした。現行法ではこれは、外務省の見解表明にすぎず強制力をもたない。ところが、法案の245条の5の5項によると、担当大臣の是正要求が出されると、是正の事務を講じなければならない、ということで強制力をもつことになる。現行法は内閣総理大臣にのみ是正の勧告権があるが、これを各大臣に与えたうえ強制力をもたせた。地方自治の大変な後退である。245条の5の5項は削除すべきである。
○ 米軍用地特別措置法の問題であるが、今回の法案によると、沖縄の大田知事が代理署名拒否し沖縄県民を激励した代理署名の規定が国の直接執行となっている。県の収容委員会の審理手続きについても、緊急採決の申し立て、代行採決、却下の際の総理の代行採決の規定を盛り込んだ。これは収用法の持つ法構造をないがしろにし、財産権を侵害する憲法違反である。

<野田自治大臣答弁>
● 法案で係争処理機関を設けた、紛争処理を効果的にすすめるために総理大臣にするより大臣のほうがよいと考えた。是正措置の要求にしても制裁条項は規定していない
● 国際問題は国が負う責務である。首長に、住民の立場と国の果たすべき立場と両者の負担を課すのは酷である。国が責任を負わなくてはならないものは、国が関与すべきであり、国の直接の事務とした。

<畠山健治郎(社民)>
○ 地方分権はどう評価しているのか。地方分権推進法にあるもので残ったものはどうするのか。
○ 地方事務官問題については、委員の合意がなければ法案は通過させないように。

<小渕総理大臣、野田自治大臣答弁>
● 地方分権は大いに推進すべきだ。国と地方の役割を示すとともに、国の関与の修正など、国・県・市町村など縦の関係から横の関係に替えていく。21世紀にふさわしいものにしたい。今回の法案は、地方分権推進委員会の第1次から第4次勧告をまとめた地方分権推進計画を法律にした。第5次勧告も法案化しないといけない。また、自主財源の強化なども不十分なので、ここも今後強化しなければならない。今回は一つのステップでこれからも引き続き行っていく。
● 政府としては全てまとめているのでこの法案で通過させてほしい。
(以 上)

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