政府・与党の2003年度税制「改正」大綱に対する談話

 与党三党は12月13日、03年度の税制「改正」大綱を決定した。11月19日の政府税調答申をベースに決定されたその内容は、「先行減税」2兆円を含む大企業・大資産家への手厚い減税・優遇と、中小企業と中低所得者層への生活全般に及ぶ大幅な増税となっている。とくに所得税については戦後初の本格増税となっている。
 増税項目では、所得税における配偶者特別控除の「上乗せ部分」の廃止、発泡酒・ワイン・たばこへの増税、消費税の免税点3000万円から1000万円への引き下げと簡易課税対象を2億円から5000万円への引き下げなどとなっている。これに対し減税項目は、企業の研究開発費や情報技術(IT)投資に対し1兆2000億円を盛り込んだのをはじめ、生前贈与の非課税枠拡大と相続税最高税率の引き下げ(現行70%から50%へ)、証券・土地に対する課税の軽減等である。
 この大綱の問題点は、竹中金融・経済財政担当相が記者会見において「税制改革の第一歩」と述べているとおり、この税制「改正」が単年度のみのものでなく、消費税率二ケタへの引き上げをはじめとする2006年度までの「増税スケジュール」のはじまりにすぎないことである。すでに政府税調などを通じて、所得税の各種控除の廃止・縮減、給与所得控除・公的年金等控除・退職所得控除の縮減、外形標準課税の中小企業への適用拡大などが俎上に上がっている。そしてどの増税項目も、明らかに中小企業・中低所得者いわゆる庶民層をターゲットとしている。
 大綱から見えてくるものは、「勝者(富めるもの)を優遇し、敗者へ負担を強める」社会作りである。小泉政権の発足以来、医療費、健康保険、年金など国民の社会保障費負担を大幅に引き上げる一方、国・企業の負担軽減を押し進めている流れと同じである。さらに「広く、薄く」、「勤労者の4人に1人は払っていない」など中低所得者どうしの不公平感をあおる宣伝を強め、世論を意図的に誘導しながらの今回の税制「改正」大綱には、その手法に対しても大きな疑念を抱かざるをえない。
 私たちは、税制の基本を、応能負担原則の徹底と不公平税制の是正、最低生活費への非課税とすべきであると考える。大企業や大資産家など「富めるもの」にはより多くの負担を求めるとともに、中低所得者層への課税に配慮すべきである。また、先行減税を景気刺激策というのであれば、減税の対象を消費者・国民に置き、国民が安心して消費に動けるよう雇用の安定や社会費用負担の軽減などに政策の重点を移すべきである。
 私たちは、多くの労働者の生活を守る立場から、与党三党の進める税制「改正」大綱に強く抗議し、税制民主化への抜本的な政策転換を求める。 
2002年12月20日
 日本国家公務員労働組合連合会
                              書記長 小田川 義和


(参考)2003年度税制「改正」大綱の問題点

1 増税項目
1)所得税
 配偶者特別控除(上乗せ部分)の廃止
 配偶者特別控除(上乗せ部分)の適用を受けている人は増税となる。給与所得者では、年収約1200万円以下の層が増税の対象となる。
年収(万円) 年間の税負担増
300 約7000円
500 約4万4000円
700 約5万8000円
1000 約9万3000円
1200 約10万1000円
1500 0円
(注)妻が専業主婦、子の1人が高校生か大学生のケース。日経新聞より。

2)たばこ税
 たばこ税が一本あたり1円の増税。1箱(20本入り)250円のマイルドセブンは270円に。たばこ税だけで2000億円強の増税。
3)酒税
 発泡酒350ml缶が135円から145円に。ワインも増税。
4)消費税
 04年4月以後に開始する課税期間の免税点を3000万円から1000万円へ引き下げ。簡易課税対象2億円から5000万円への引き下げ。
 これにより、納税義務者となる事業者が中小規模にまで拡大するため、
(1)これまで消費税を転嫁していなかった事業者も消費税を転嫁せざるをえなくなる。また、諸事情により転嫁できない事業者のさらなる経営悪化を招く。
(2)個人事業者など一般的に記帳レベルの高くない事業者へ申告・納税義務を課すこととなり、記帳・経理事務へ過大な負担をかける。
 また、申告・納税義務を持つ事業者を広げることで、将来の税率引き上げとあわせてこれまでにない規模での消費税増収=国民負担増が行われる下地作りとなる。

2 減税項目
1)法人税
 研究開発費総額の8〜10%を税額控除。さらに3年間は時限措置で2%上乗せ。
 IT投資促進税制の創設によるIT関連設備取得価額の10%税額控除、または50%の特別償却との選択制の導入。これらで約1兆2000億円の減税。
 企業にとっては大規模減税となるが、その効果が労働者の雇用・賃金や消費の活性化による景気回復として表れるかは不透明。
2)証券税制
 配当への源泉課税を一律20%に。株売却益課税も軽減。
3)土地税制
 登録免許税、不動産取得税の軽減。
4)相続・贈与税
 相続時精算課税制度の創設により、相続時に贈与税を通算し税額確定する方式に。生前贈与の非課税枠拡大により、資産の若い世代への異動を活性化。相続税最高税率70%から50%への引き下げ。
 大資産家への負担軽減策だが、財産課税の担うべき、富の集中を社会に再分配する機能の喪失。また、数十年にわたり生前贈与の累積を管理することとなる行政側の事務負担も問題となる。
 
3 その他
1)法人事業税(外形標準課税)
 資本金1億円超の大企業を対象に導入。
 しかし、巨大企業ほど従来の法人事業税よりも減税となる傾向にある。
 また今回は見送りとなったが、中小企業への課税も検討されており、経営基盤の弱い中小への課税強化は、景気の悪化や雇用破壊を促進するおそれが強い。

以上

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