市場原理主義の「構造改革」から
公共サービスを守る決議

 いま、公務と公共サービスにあらたな危機が迫っている。
 政府の規制改革会議は、この7月の「中間まとめ」で、「民間でできるものは官は行わない」という「官民分担の再構築」として、行政処分の分野も含め、民営化の対象として検討していくことを明らかにした。その第1に、道路事業や港湾事業を始めとしたインフラ(公共財)の整備・維持管理のうち、対価性のあるものは事業譲渡または株式会社化又は経営委託し、それ以外は業務委託、第2に、学校、病院、保育所、職業紹介を始めとした財・サービスの提供の多くは、原則完全な形での民への移管、第3に、出入国管理や登記、税徴収や通関手続き及び関税徴収、国民健康保険・政管健保の徴収・支払いや失業手当等の給付、特許権付与、自動車登録などを始めとする行政処分は、「次善の策」として民間的手法の持ち込み、を打ち出している。
 そして、「中間まとめ」では、労働者派遣事業および有期労働契約の拡大や解雇の自由拡大のルールづくり、裁量労働制の拡大など、労働分野をはじめ具体的規制分野でも重大な内容が打ち出されている。また、規制緩和を先行的に行う「構造改革特区」をもうけ、それを日本全体に波及させようとする手法は、法の支配、法の下の平等という法治国家の根本原則をゆるがしかねない乱暴なやり方である。
 さらに、「中間まとめ」に先立ち、5月には、経済産業省が「日本型PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)研究会報告」で、公共サービスを基本的に民間企業に任せることを打ち出し、総務省は「新たな行政マネージメント研究会」報告書で企画と実施の分離を前提とした行政効率化を提言し、経済財政諮問会議の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(骨太方針第2弾)でも、「民間委託(アウトソーシング)やPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)等の活用」を打ち出している。国立大学の法人化や特殊法人改革による独立行政法人化の新たな動きと合わせ、いま、公務と公共サービスの民営化・民間化が加速されようとしている。
 こうした一連の動きは、行政運営に当たって、市場原理主義に基づき、公共性よりも効率性を優先し、公共サービスから政府を撤退させようとするものである。医療や福祉、教育など国が責任を持たなければならない公共サービスを金儲けの対象としてよいのか、公共財の整備や維持管理に国・自治体は責任を負わなくてよいのか、国民の権利付与や規制に関わる行政処分を民間化してよいのか、国民の雇用、いのち、くらしを守る行政を解体してよいのかが問われている。さらに、司法制度改革も、「骨太方針第2弾」にそって、企業本位の規制緩和を補完するものでよいのかが問われている。
 特殊法人改革法案は秋に臨時国会に提出され、また、国立大学法人化は来年の通常国会に法案が提出される。規制改革会議の答申は12月に予定されているが、すでに具体化が始まり、来年度予算編成でも行政の減量化が進められようとしている。市場原理主義の「構造改革」に反対し、国民本位の行政とそれを支える体制を築くための取り組みの強化がいま求められている。国公労連は、広範な国民と連携し、国民の雇用、いのち、くらしを守る行財政・司法の確立を目指し、行政研究など行政民主化の取り組みを抜本的に強めていく。当面、有事法制など「この国のかたち」を歪める悪法阻止のたたかいとも結合し、秋のブロック連鎖キャラバンをステップに、国民各層との対話と共同の取り組みを通じて、公務の公共性確保の合意を形成し、日本を憲法が生きる国へと改革する運動を旺盛に進めるものである。
以上、決議する。

2002年8月30日 日本国家公務員労働組合連合会第48回定期大会

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