政府首脳の「非核三原則」見直し発言に抗議する(談話)

 マスコミ報道によれば、我が国が、核兵器を「つくらず、持たず、持ち込ませず」とする「非核三原則」の見直しに、5月31日、政府首脳が言及したことことを報じている。この政府首脳発言と関連して、福田官房長官が記者会見で、「(核兵器は)法理論的には持てる」と述べたことも報道されている。先に、安倍晋三官房副長官も、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の保有について「憲法上問題はない」との見解を示している。
 小泉政権の中枢を担う政治家が、核兵器保有や、これともかかわる武器保有を是認する発言を相次いでおこなう背景には、有事法制の国会提出に見られる小泉政権の「タカ派」的姿勢があり、極めて危険かつ重大な発言である。国公労連は、そのような姿勢と発言に厳しく抗議する。

 唯一の被爆国である我が国の政府首脳が、「非核三原則」見直しに言及したことの問題は重大である。核兵器廃絶は、平和的生存を願う人類共通の要求であり、世界の流れである。「ヒロシマ・ナガサキ」の被爆の苦しみをおう我が国政府の使命は、悲惨な戦争を引き起こしたことへの反省にもとづく憲法遵守の立場にたって、核兵器廃絶の流れを確かなものにしていくことにあると考える。
 その点で、人類の存続にもかかわる核兵器をいかなる形でも保有しないとする国是(「非核三原則」)は、憲法と一体のものである。同時に、他国への武力攻撃や侵略、さらには集団的自衛権の行使を違憲とするこれまでの政府の立場とも表裏の関係にある。
 アメリカが引き起こす戦争に自衛隊のみならず国民を総動員する目的で成立がめざされている有事法制は、法の発動と執行にかかわって内閣総理大臣に強大な権限、裁量を委任しようとする点でも問題となっている。その法案自体が違憲のものだと考えるが、同時に、国民的議論もないままに、政権を担う人物が改憲や、かつての政府見解の変更を軽々しく口にするような政府に、そのような強大な権限、裁量を集中させることは危険である。
強大な権限を内閣に集中させる政治大国化、軍事大国化は、ファシズムの道につながりかねない。その点でも、今回の政府首脳の発言は、軽視できないものと考える。

 緊張が高まっている「インド・パキスタン」情勢にも見られるように、局地的な紛争が、核使用による人類存亡の危機につながりかねない状況がある。そのことを見ても、核兵器と人類との共存は困難であり、廃絶の道を確実に進むことが、21世紀初頭の課題だと考える。そのような国際的、歴史的な大義に逆行し、我が国への国際社会からの不信と危機感を高めかねない発言と行動が相次ぐ小泉政権の存続は、国民生活にとっての障害でしかない。今回の政府首脳の発言は、その点をさらに明確にした。
そのことから国公労連は、国民いじめの「小泉構造改革」に反対し、有事法制など平和と国民の基本的人権をないがしろにする法案に反対してたたかっている広範な労働者・国民とも共同し、これらの悪政・悪法阻止とともに、小泉内閣の退陣をせまる運動を強める決意である。
  2002年6月1日

日本国家公務員労働組合連合会  
書記長 小 田 川 義 和

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