【国公労連第47回定期大会】

2001年8月28日

中央執行委員長あいさつ

 日本国家公務員労働組合連合会 
中央執行委員長 堀 口 士 郎


 大会にご出席いただきました皆さん方のこの間のご奮闘に心より敬意を表します。
 また、本大会に激励のためにおいでいただきました来賓の皆さま方に、日頃のご指導・ご協力に対する感謝とあわせて、心からお礼を申し上げます。

 さて、本大会はいうまでもなく、21世紀最初の大会であります。それは単に歴史の節目というにとどまらず、私たちに課せられた歴史的・社会的使命を確認し、実践に向けた決意を固め合う大会だと思います。
私は、今日の情勢を見るとき国公労働者の使命と役割の発揮が、今ほど求められている時はないと痛感しています。
 まず強調したいのは、私たちの要求前進をめざす時、小泉内閣の「聖域なき構造改革」路線とのたたかいが決定的に重要であるということです。
 「構造改革」の内容が、倒産や失業の増大、社会保障の改悪、消費税大増税など、国民に耐え難い痛みを押しつけるものであることはいまや明らかであります。
 その行き着く先は、「規制緩和」や民営化による国民のいのちとくらしを守るべき国の責任の縮小・後退であり、市場原理優先の「強きを助け、弱きをくじく」競争社会だと思います。私たちは国民生活を守る行政に携わる者として、このような攻撃を許すわけにはいきません。
 一方、国民の願いは、家計消費の回復と不況の打開、財政の国民生活本位への転換、リストラ・解雇の規制や、ただ働き残業是正など、生活や雇用不安の解消であり、国民的共同を発展させる条件は拡大していると思います。
 私たちは、各分野の専門家として「構造改革」による行政サービス切り捨ての内容や矛盾を、よりくわしく知りうる立場にあります。その特性や有利性を生かした行政民主化闘争の強化は共同発展のカギであり、その役割発揮が求められていると思います。

 この攻撃とあわせて公務員制度「改革」の内容を見るとき、その狙いと本質がはっきりしてきたと思います。
 国公労連は、政府のすすめる「改革」なるものは、憲法にもとづく「全体の奉仕者」としての役割を否定し、政権党などごく一部に奉仕し、悪政推進の担い手となる公務員づくりをすすめるものであると指摘してきました。
政府が国民に犠牲を押しつけながら、自民党政治による政治的・経済的危機を乗り切ろうとしている今日、その具体化として行政の反動化と公務員労働者の労働条件切り下げ、管理の強化が表裏一体ですすめられようとしている、そのことがはっきりしてきたと思います。公務員制度の「改革」によって信賞必罰と成績主義を強化し、労働条件の根本基準を改悪しようとする狙いはそこにあると思います。
 したがって、国公労連は、「行革」、公務員制度「改革」と、国民に犠牲と痛みを強いる「構造改革」攻撃を一体的にとらえ、国民共同のたたかいを展開していく決意であります。

 さて、いよいよ正念場を迎える公務員制度「改革」のたたかいについて、次のことを強調したいと思います。
 1つは、この問題は公務員労働者の基本的人権に関わる課題であるということです。
 政府は労働基本権の検討を先送りしながら、各省庁による信賞必罰の給与制度・人事管理制度を導入しょうとしています。
 さらに人事院は、今年の勧告において「『国民全体の奉仕者』としての公務員の中立・公正性の視点が重要」と指摘しつつ、「公務員制度の基本設計の具体化に向けて的確に協力」するとの立場を明らかにしました。
 これは、中立・第三者機関であるべき人事院が、使用者たる政府の意向に沿って作業に協力する姿勢を示したものであり、いわゆる「代償措置」の形骸化をいっそう明確にしたものだと思います。
このことは、私たちが手をこまねいていれば、労働基本権を制限したままで、人事院の「利益擁護機能」を縮小・形骸化し、差別・選別による競争、能力主義をあおる人事管理を強める、そういう「改革」になっていく危険性をもっています。
 このたたかいは、労働基本権の回復を基本とする近代的労使関係を確立し、公務職場の働くルールを明確にしていくたたかいであることを強調するものです。
 2つは、今後のたたかいの基本スタンスであります。
 私たちの基本要求は、労働基本権の全面回復、公務員制度の民主的改革、信賞必罰の人事管理など公務員制度の基本を崩す「改革」には反対、の3点であります。
 この基本要求にもとづいて政府・推進事務局との交渉に全力をあげるとともに、全国の職場における管理職層も含めた世論形成、広範な国民との連帯・共同のとりくみに全力をあげたいと思います。
 その場合、日本の労働者全体に共通する「働くルール確立」の運動と一体でとりくみをすすめることが重要だと思います。
 政府のすすめる「改革」は、労働基本権を制限した上で公務労働の「民間化」をはかり、日経連の「新時代の日本的経営」に見られる、総額人件費の抑制、能力・実績主義強化の、いわば公務員版ともいえる側面をもっています。
 いま、能力・成果主義賃金を導入した民間の職場では、賃金水準の低下と不払い残業の常態化がすすみ、短期的成果を求める傾向のもとで仕事へのやりがいがなくなっていること、職場のチームワークが崩れ仕事がうまく回らない、などの矛盾が指摘されています。
 これらの矛盾点やリストラ攻撃の実態などを、公務・民間労働者がともに学びあい、共同を発展させることが重要だと思います。
 いま、職場の仲間が望んでいることは、公務員制度の「改革」よりも、現実に悩み、苦しんでいる職場の諸問題の解決こそ急ぐべきということであり、その声を公務職場全体の世論にしていかなければなりません。
 長時間・過密労働と健康破壊の深刻化や不払い残業の常態化、無権利・低賃金の非常勤職員の増大、所属組合や性による差別の強行など、本来あってはならない・解決すべき課題は山積しており、使用者たる政府の責任は重大であります。その責任を公務員制度「改革」の矛盾点とあわせて追及していくことが必要だと思います。
 
 私たちはこの間のたたかいで、今後の足がかりとなる到達点をきずいてきたと思います。
 先の国会では請願紹介議員が133名にのぼったこと、全労連に対策本部が設置され官民共同のとりくみが推進されつつあること、これらの力が相俟って6月のILO総会では政府の強引な進め方が非難され、「職員団体と誠実に協議」することを「公約」させたことなど、貴重な前進面をきずいてきました。このことをお互いの確信にしていきたいと思います。

次に、今年の人事院勧告について申し上げます。
 一時金の削減など年収ベースで3年連続してマイナスとなる勧告は、私たちの生活と労働の実態を無視したものであり到底容認できるものではありません。
 私はこの勧告を見るとき、賃金抑制機構としての人事院勧告制度の本質と問題点がより明確になつたと思います。
 政府や人事院は、勧告制度を労働基本権制約の「代償措置」と位置づけてきました。
 しかし、労働基本権は働かなければ生活の糧を得られない労働者にとって、労使対等原則にもとずく「生きるための権利」であり、その「代償措置」などありえないことは明らかです。ましてや年収切り下げ勧告のように労働条件の一方的改悪をおこなう権限まで「代償措置」として人事院に委ねたわけではありません。
 また、人事院は313円の官民格差による原資配分を、暫定的一時金として一律支給するというきわめて異例の措置を勧告しました。これは従来の配分政策とは矛盾するものであり、労使の合意と納得による配分政策の追求が重要となっています。
年収切り下げ勧告の背景と要因が、雇用情勢・社会情勢の悪化にあったことは明らかであり、今後、パート・未組織労働者の賃金底上げのたたかいや、民間労働者の皆さんとの日常的な連携・共同のとりくみを強めることが重要となっています。

最後に強調したいのは、歴史の教訓ということです。
靖国神社の参拝を強行した小泉首相は、集団的自衛権の行使、憲法改悪を指向する政治姿勢を強めています。しかし、21世紀の日本の進路を考えるとき、歴史の事実から教訓を学びとり、今日に生かすことがなによりも大切だと思います。その原点が戦争の惨禍と反省の上に確立された、平和憲法にあることはいうまでもありません。
 その点で、侵略戦争を肯定・美化した教科書採択を、1%未満に押しとどめたことは国民の良識の勝利だと思います。これは「歴史の事実を正しく伝えたい、戦争肯定の教科書は子供たちに渡せない」との願いをこめた、父母・住民の運動の成果であり、「国民のなかへ、国民とともに」の運動実践をめざす私たちにとって、大きな励ましになるものです。
 
 本大会の議論をつうじて国公労働者の使命と役割を確認しあい、21世紀の展望をきりひらくべく奮闘したいと思います。皆さんのご奮闘を期待してごあいさつといたします。

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