2001年人事院勧告に対する声明

 

1.人事院は、本日、国会と内閣に対して、一般職国家公務員の給与改定に関する勧告等を行った。
 それは、・「0.08%、313円」という僅少の官民較差にもとづく暫定的な一時金への配分、3年連続となる一時金の0.05月削減などを内容とする給与勧告、・職業生活と家庭生活の両立のための条件整備として、育児休業・部分休業の対象年齢の民間並みへの引き上げ、介護休暇の期間延長などを内容とする意見の申出及び勧告、・「公務員給与水準の在り方の検討」と称する地域間の給与配分「見直し」、家族的責任を有する職員の超勤規制の民間並みへの引き上げ、子どもの看護休暇の早期導入にむけた検討などを内容とする報告、である。

2.ところで、今年の夏季闘争は、政府の内閣官房行政改革推進事務局が3月27日に「公務員制度改革の大枠」を決定するなど、「政策調整システム」による強権的な「改革」検討とのたたかいが大きな争点となった。
 そして、6月29日に政府の行政改革推進本部が「公務員制度の基本設計」を決定し、この中で「能力等級制度の導入」と称して任用・給与・評価制度の抜本的「改革」を表明し、12月目途の「公務員制改革の大綱(仮称)」策定にむけて検討作業を急ピッチで進めることなどを明らかにした。
 とりわけ重大なのは、公務員労働者の労働基本権を制限したままで、政府自らがその「代償措置」と強弁してきた人事院勧告制度を形骸化させようとしていることであった。

3.そのため、公務労組連絡会は、全労連規模による「公務員制度改革」闘争や小泉流「改革」反対の国民的共同闘争と連携し、7月の参議院選挙闘争とも結合して、国民のための公務員制度確立をめざすたたかいに全力をあげてきた。
 そして、人事院に対しては、6月21日に「2001年夏季重点要求書」を提出して以来、公務員賃金が「約750万人に影響」(人事院)を与えていることの重大性をふまえ、公務と民間の間における「賃下げ・リストラの悪循環」を断ち切るためにも、現行法制の下で中央人事行政機関としての機能と役割を発揮し、職員の利益擁護に徹するよう強く求めてきた。

4.まず、要求面では、生活改善できる賃金引き上げ、3年連続の一時金削減反対、「能力・業績主義」強化の賃金体系改悪反対、労働時間短縮と介護休暇・育児休業の拡充、家族看護休暇の新設、公務員制度の民主化など、公務労働者の切実な諸要求の実現に全力をあげてきた。
 また、行動面では、公務員制度課題での大量宣伝行動(612万枚のビラ配布)、大規模署名行動(75万枚の「国会請願署名」作成)を軸とした学習と「総対話と共同」の徹底追求のほか、2次の「中央行動」(6/8、8/1)への延べ3,900名の参加、人事院あて賃金改善等「団体署名」(4,305団体)や春闘段階から取り組んできた休暇・休業制度改善「要求ハガキ」(18,362通)などの提出・要請、最終局面での「緊急打電行動」を含めて、中央・地方一体で最後の最後まで奮闘してきた。

5.こうした中で、今次勧告等の主な特徴として、次のことが指摘できる。
 まず、給与勧告では、官民較差が極めて小さく、これまで史上最低であった昨年をさらに下回るものとなった。また、2年連続でその原資を俸給表改定に配分せず、暫定的一時金の一律支給という極めて異例の措置となり、配分政策上の問題点を残した。
 しかも、一時金が3年連続となる延べ0.55月もの削減によって1970年の支給月数に逆戻りし、年収ベースでも3年連続のマイナスとなったことは、公務労働者の生活悪化だけでなく、日本経済の深刻な消費不況に追い討ちをかけるものとして、到底容認できるものではない。

6.一方、育児休業・介護休暇制度に関する意見の申出及び勧告では、育児休業・部分休業ともに対象年齢を1歳から3歳に引き上げ、介護休暇の取得期間も3月から6月に延長したことは、不利益是正などの課題を残しつつも、切実な要求の反映として評価するものである。
 なお、人事院が公正・中立な人事行政の専門機関として、政府・行革推進事務局による「公務員制度改革」の進め方や内容上の問題点を十分検証し、適切かつ必要な対応を図るよう強く求めてきたが、今次報告で公務員給与の地域間の配分「見直し」に言及するなど、政府の動きと軌を一にしようとしていることは極めて重大である。

7.いま、日本の社会全体が深刻な行き詰まりに直面し、小泉内閣が「聖域なき構造改革の断行」と称して労働者・国民に「倒産・失業の増大」「社会保障の改悪」「消費税の大増税」の“三重苦”を押しつけようとしているもとで、社会的規範としての公務員賃金や公務労働のあり方も問われている。
 公務労組連絡会は、今後、今次勧告等の取り扱いをめぐって対政府・国会闘争と地方確定闘争に移るもとで、「年収ベースで3年連続のマイナスとなる給与法の改定反対」などの要求を掲げ、12月目途の「大綱(仮称)」策定を前に重要局面を迎える「公務員制度改革」闘争をはじめ、公務・民間の共同闘争や小泉流「改革」反対の国民的共同闘争とも結合させ、組織の総力をあげて断固たたかいぬくものである。

 

  2001年8月8日

公務労組連絡会幹事会

 


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