行政改革推進事務局へ申し入れ
(「国公FAX速報」2001年2月23日付)
 国公労連は、本日2月23日午前、「あらたな行政大綱にもとづく行政改革・公務員制度改革にかかわる申し入れ」(別添)を提出しました。昨年12月1日に決定した行革大綱にもとづき、1月6日に内閣官房に行政改革推進事務局が設置されて初めての申し入れとなります。
 申し入れには、堀口委員長、小田川書記長、黒田書記次長、飯塚独法対策部長、津田中執が参加、行革推進事務局側は公務員制度等改革推進室春田室長、堀江企画官外が対応しました。

○ 申し入れでは、堀口委員長は「政治家がいろいろなところで公務員制度改革について発言しているが、職場では相当な不安を持っている。政治家やマスコミの公務員制度改革に対する論議は、乱暴すぎる。公務員制度は労働条件に直結する働くルールの問題でもあり、行政マンとしての働きがいの話でもある。国民生活に関わる国の行政の在り方にしても軽視できない。この国の将来に対して大変な問題であり、秩序ある正しい議論が必要だ。
 現に国民生活を支え現場で頑張っている公務員労働者が果たしている役割は守られるべきだ。まず見直すべきは、KSD事件に代表される、国民からの批判が強い、政治家と官僚そして財界との癒着構造だ。
 公務員労働者が安んじて働けるためには、行政の中立性や身分保障の確立が大切であり、充実してしかるべきだ。
 現行の公務員制度にも、労働基本権の問題や市民的政治的規制や管理運営事項の制限などいろいろな問題点が放置されている。先進国の例に習って労働基本権はきちんと回復されるべきであり、現実に解決しないといけない課題として議論されるべきだ。
 今回の公務員制度改革は、労働条件と同時にこの国の将来に関わる重要な問題であり、情報公開と併せて、当該の職場で働く労働組合との協議は不可欠だ」と指摘しました。
● これに対し春田室長は「1月6日から行革推進事務局が発足した。発足前から橋本大臣が担当すると決まっていたが、行革大綱もあるが、どう取り組むか橋本大臣の考えが重要である。橋本大臣は、公務員が国民の厳しい批判に対して萎縮していることに問題がある。この国を引っ張っていく若い人が中心にイキイキと働けるようにしないといけない、これからの日本を担ってもらわないといけない、そのために、制度の在り方に立ち帰って考えないといけないと、事務局発足に当たっての職員への訓辞でも話された。
 公務員制度改革に当たっては、公務員がやりがいを持って働けるように考えている。行革大綱は、前提にはなるがそれだけではなく広がりを持って検討したい。3月中に大枠、6月に基本計画という話もあるが、何が大枠、何が基本計画というイメージを持っているわけではないが、それで進んでほしいと言われている。
 今までも、臨調や行革会議をはじめ、公務員制度改革はいろいろ検討されてきたが目に見える改善がなされていない。スケジュールやタイミングを見ながら検討を進めたい。公務員制度等改革推進室は14名だが、内閣官房ということから、大きな方向付けをして、具体化は所管に任せることになる。
 民間の取り組みや公務との仕事の違い、地方での参考となる取り組みなどいろいろあると思う。橋本大臣は、若手の意見・気持ちをベースにしないといけない言われているので、各府省の若手職員等に対するヒアリング((注)結果の概要はホームページに掲載されています。)を終えたところだ。行革大綱がベースになる訳だが、大綱は項目が上がっているだけなので、一つ一つ実現しないといけないものについては、掘り下げて検討しないといけないこともあるだろう」と述べました。
○ これに対して小田川書記長から、「行革大綱が網羅的に書いていることは承知している。我々はそれを意識して申し入れている。現行の制度は改革すべき面もある。その際に確認しておくべき公務員制度の基本は、長期勤続型だということであり、それは維持すべきだし、また、50万国公労働者全体をどう視野に入れるのかも問題だが、実施部門で働く公務員労働者の視点が希薄ではないのか。企画と実施の分離を前提に、企画部門に焦点をおいた制度論議のようにも見えるが、だとすれば、一般職と特別職の区分けも課題とすべきではないか」と指摘しました。
● これに対して春田室長は、「正に働いているみんなの問題として、どういう職場でどういう充実感で働いていけるかだ。今の制度を見直していかないといけない訳で、何のための仕事かも含め、みんなで主体的に考えないといけない。一般的な国民の視線も意識して変えていかないといけないところは変え、国民の理解を得ていく。その中で、政治との関わりもあるが、余り限定せずに考えていきたい。それがないと、何のためにやっているのかが見えなくなる。期間の限りもあり、立場、立場でいろいな話ある。
 私どももいろいろな制約があるが、ご意見はおっしゃっていただきたい。問題を限定するわけでもない、私どもとしても、ご意見も踏まえて検討していきたい」と述べました。

 最後に、堀口委員長から「本日は、当面の申し入れということで5項目を出さしていただいたが、それぞれの項目についても政策なり意見を持っている。引き続き意見交換をしていきたい」と述べ締めくくりました。

(別添) 2001年2月23日
  行政改革担当大臣
      橋 本 龍 太 郎  殿

日本国家公務員労働組合連合会
      中央執行委員長  堀 口 士 郎 

あらたな行革大綱にもとづく行政改革
・公務員制度改革にかかわる申し入れ


 現在、貴本部において、政府が、昨年12月1日に決定した行革大綱にもとづき、公務員制度改革などの論議が進められていると承知しています。
 橋本行革担当大臣が各方面の講演等で述べているところでは、公務員制度改革について、本年3月までにも「抜本改革」の大枠を固め、6月までには基本方針を固めるスケジュールが想定されていると考えます。
 公務員制度「抜本改革」の具体的な検討課題については、現時点で明らかにされていませんが、行革担当大臣の講演等から、1)信賞必罰の人事管理システムへの転換、2)企画部門と実施部門の分離とそれぞれに見合った制度検討、3)事後規制型の「天下り規制」、4)公務員制度の運用にかかわる中央人事行政機関の関与・規制の見直し、などが検討されていると推測しています。また、政権与党である自民党における検討状況もあって、公務員の身分保障規定や労働基本権の問題も検討課題となる可能性もあると考えています。
 公務員制度は、任用や服務などの規定により、憲法が規定する「全体の奉仕者」としての公務員の基本的性格を担保するものであると同時に、公務員労働者にとっては労働条件の基本を定めるものです。それゆえに、具体的な検討課題と推測される事項は、「民主的かつ能率的な公務運営」(国家公務員法第1条)と密接に関連する「公務員の政治的中立性」にかかわるものと同時に、労働条件決定に当たっての現行「ルール」である勤務条件法定原則に直接関連する課題だと考えます。
 そのことからして、公務員制度改革では、広範な国民的な論議と同時に、当該の労働者である国家公務員労働者との間での十分な協議が求められるものと考えます。また、公務員制度にかかわっては、1996年以来の行政改革でも論議になり、専門的な検討機関が設けられるとともに、任用、再就職規制、服務(倫理)などでの新たな仕組みや独立行政法人制度も導入されています。そのような経緯にそった検証も必要だと考えます。
 以上のような立場から、下記事項を申し入れ、貴職の誠意ある対応を強く求めます。

1 公務員制度改革の検討に当たっては、国民的な批判が集中している「政財官ゆ着構造」を是正することを最優先にすべきです。
  その点では、省庁権限を背景とする営利企業への再就職斡旋の禁止、国家公務員の政治的中立性の確保、公務員労働者の市民的自由の確立などの検討が求められていると思います。

2 一般職国家公務員にかかわる身分保障は、全体の奉仕者である国家公務員の政治的中立性の担保であることを確認した上での検討が求められます。
  その点からして、企画立案部門での人材登用や大臣スタッフの充実といった施策の検討では、特別職公務員と一般職公務員の差異についても検討すべきです。

3 身分保障にかかわりなく、国家公務員労働者の労働基本権を回復することでの検討が必要です。
  公務員労働者の労働基本権を一律に制限することは、国際労働基準に照らしても問題です。加えて、人事管理や定数(給与)にかかわる人事院の関与を事後的チェックに改めるとする検討が行われるならば、労働条件決定での労使自治を保障する観点で、労働基本権の回復を前提とするあらたな労働条件決定システムが検討されなければならないことは当然です。

4 行政に対する多様な国民ニーズを行政施策に反映するためにも、企画立案と執行を分離することには反対です。
  その立場からしても、現在以上に、独立行政法人の対象事務・事業を拡大すべきではありません。そもそも公務員制度の面から独立行政法人の拡大などが検討されることがあってはならないと考えます。

5 貴本部での検討に当たっては、国公労連の意見を反映するための場の設定など、具体的な対応を行うことが必要だと考えます。

(以 上)


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