2.14 許すな!独法化による労働条件改悪
/要求実現を!
国公労働者総決起集会「基調報告」
国公労連書記長・小田川義和
1 移行時の労働条件確定が重要な段階に
 (1) 4月1日の独立行政法人化を目前に、移行時の労働条件確定の取り組みが最終盤の段階を迎えています。
 通常国会に提出されている2001年度予算案では、独立行政法人への移行により17,713名の定員(57法人)が、非現業国家公務員の定員総数から「削減」されることとなっいます。
 各独立行政法人の「長となるべき者」の指名も順次おこなわれており(経済産業省関係・3法人、文部科学省関係・1法人など)、総務省に設置される「評価委員会」も動きはじめています(1月26日・第1回会議を開催)。
 その動きと連動して、各法人の就業規則(案)の提示と「事前交渉」も終盤を迎えており、労働協約の論議に移ってきている法人も少なくありません。全体としては、各単組、法人対象組織の奮闘で、移行時の労働条件維持にかかわっては、多くの法人で一定の到達状況にあります。
 (2) そのような中で、特異な状況にあるのが経済産業省・産業技術総合研究所における賃金制度改悪問題と、国土交通省・土木研究所、建設研究所の「職員の振り分け」問題です。
 産業技術総合研究所にかかわっては、昨年10月、地域給等を廃止して職責手当に「再編」し、勤勉手当の成績率を「拡大」して0〜250%の格差をつける業績手当の提案などがおこなわれています。俸給表の一本化とあわせ、すべての職種に職責手当、業績手当を持ち込むことや、生活関連手当の廃止による職責手当の創設に対しては、職場・組合員からの激しい反発があり、「年内決着」を意図した当局の強行を現段階でも許していません。しかし、12月1日に政府が決定した「行革大綱」をうけ、橋本行革担当大臣のもとで急浮上してきた公務員制度「改革」とかかわって、同大臣が、「(給与を)年功給、職責給、成果給の三つに分け、信賞必罰の具体的展開などをおこなっていくアイデア」があり、「独立行政法人となる、ある機関において実際に採用が進められつつある」と、講演で述べたことに見られるように、公務員制度「改革」の「実験場」とする位置づけが、産業技術総合研究所の賃金制度改悪に持ち込まれてきています。公務員制度改悪は、「この国のかたち」改革でのもっとも鋭い対決点の一つであり、その中心の課題が成果主義賃金とのたたかいにあることの確認が全体で必要です。
 独立行政法人の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない」(独立行政法人通則法第3条)とされていますが、労働条件決定における「労使自治」をないがしろにする介入を、行革担当大臣が公然とおこなうことは許されるものではありません。
 土木研究所、建設研究所にかかわっては、独立行政法人に移行する業務と「定員総数」は明らかにされているものの、具体的な「職員(業務)の振り分け」が、この時期に至っても明確にされていません。独立行政法人個別法では、「(国土交通省の)部局または機関で制令で定めるものの職員である者」は、「別に辞令を発せられない」限り(独法)研究所の職員になるとしています。独立行政法人と、国家機関である研究所に2分される土木研究所などでは、4月1日の辞令がなければ「独立行政法人職員」となるという不安定な状況に現段階でもあるのです。労働条件にかかわる就業規則(案)についても、だれを対象に論議をするのか、仮に4月1日時点で「提示」すれば足りるとの姿勢であるとすれば、移行時における労使の紛争を未然に防ぐ目的ももって規定された「雇用の承継」や「労働組合の承継」を無視する姿勢といわざるを得ません。
 (3) 昨年12月、人事院は、独立行政法人通則法第54条にもとづき、特別職である特定独立行政法人の役員の再就職規制にかかわる人事院規則を制定しました。そのことにも示されているように、独立行政法人は各省の行政の範囲内の存在です。独立行政法人の業務運営に基礎となる政策は各省が決定し、その運営(執行)にのみ独立行政法人が責任を負うことが制度の基本におかれています。その業務運営の自主性は、独立行政法人にはたらく職員の自主性が尊重されることで具体化されることになります。いうまでもなく、職員の自主性は、自らの労働条件決定に関与することで担保されることになります。そのような制度の基本的ルールをないがしろにする各省当局の関与や政治的介入が顕在化しているのが、4月1日の移行を目前にした現状です。効率化目的の独立行政法人制度が、国立試験研究機関をはじめとする公務になじむものではないことは、制度の運用が明らかになるにつれ、さらに明白になっています。そのような独法制度の「傷」をふさぐ意味でも、労働条件のあり方が極めて重要であり、国民にニーズに応える業務運営をめざすうえでも、労働条件の詳細にかかわるとり組みが重要です。
 雇用不安や移行にあたっての差別選別を許さない立場から、国公労連は「雇用の承継」「労働組合の承継」を政府に認めさせてきました。それも独立行政法人制度の基本的なルールです。
 効率化の「目玉」とされる独立行政法人制度を、民間におけるリストラ「合理化」と同様のものとさせないための歯止めのルールさえふみにじることを許すことはできません。 各独立行政法人での移行時における労働条件の維持・改善のとり組みと同時に、産業技術総合研究所や土木研究所などでの一方的な労働条件の不利益変更を許さないとり組みを、国公労連全体で強めることが重要になっています。

2 統一したとり組みが求められるいくつかの課題
 (1) 就業規則の段階で、労働基準法と国家公務員法の違いもあって、拘束時間延長問題が共通する課題となっています。この間、拘束時間8時間30分と休憩・休息時間1時間の確保を前提に、1日の勤務時間7時間30分の実現を統一して迫ってきました。しかし、就業規則案の労働組合への提示段階では、勤務時間8時間を前提に拘束時間9時間もしくは8時間45分の内容となっています。
 労働時間短縮ともかかわる7時間30分の基本要求は堅持しつつも、4月1日までという限られた交渉期間の中での対応を検討する時期が近づいています。休息時間の「活用」なども念頭に、労働協約締結のとり組みをつうじた実質的な要求前進をめざすことも含め、統一的な対応をはかることが求められています。
 独立行政法人対策委員会での論議もふくめ、移行時の労働条件を確定させることを重視してとり組みを進めることとします。
 (2) (常勤的)非常勤職員の雇用の問題も重要な課題になっています。いくつかの独立行政法人では、人件費抑制の考えから、雇い止めの動きが顕在化しているところもあります。 独立行政法人には総定員法が適用されないことから、常勤的な雇用形態の非常勤職員が存在する余地があるのか、制度上の大きな争点です。この間の政府交渉等では、「常時勤務を要する職」であるか否かが、常勤か非常勤かの「区分」とする回答もありますが、なお不明確です。その点を追及し、(常勤的)非常勤職員の常勤化の要求を対峙しつつ、移行時の雇用継続を最大限重視し、協約化をふくめて統一的なとり組みを進めることとします。なお、そのようなとり組みをすすめるためにも、非常勤職員も含めた組織化をめざします。
 (3) 「36協定」など法的に労使協定が求められる事項にかかわって、過半数組合での協定のとり組みと、過半数に達しない場合でも「労働者代表」の民主的選出(投票など)をめざすとり組みが必要です。それらのとり組みを進める上で、統一要求をもとにした「統一基準」を全体で確認し、実現をめざすこととします。
 また、労働組合の地位や、交渉、専従休職などにかかわる労働協約や、勤務時間等、統一対応をはかる事項での「モデル」をもとに、過半数組合であるか否かをとわず、3月中の予備的交渉での決着をめざすこととします。各単組、法人でのとり組みを支援するため、全労働の協力もえて国公労連内の体制を強めます。
 (4) 以上のようなとり組みを統一的に進める上でも、情報の交流が欠かせません。独立行政法人対策委員会での論議をより充実させます。4月1日には、国公労連・独立行政法人部会の発足を規約上は確認しています。関係単組での規約・組織整備や、人事院登録とかかわる必要な対応準備(独法機関のみを対象とする職員団体登録の整理を含む)を進めることも重要です。独法移行時の労働条件決定にかかわって、当局との交渉が不調に終わった場合の対応も考慮し、3月中には規約改正手続き等は終了しておくことも必要です。
 あわせて、郵産労を含む24団体が推薦した熊谷全労連副議長の中央労働委員会・労働側委員の選任をせまるとり組みも重要な段階に至っており、万全の対応をはかることとします。

3 おわりに
 (1) 独立行政法人における労働条件は、移行時にすべての要求が実現するとは限りません。また、産業技術総合研究所における賃金制度改悪などが、公務員制度「改革」の動きとも一体で、各独立行政法人に影響しないとはいえません。また、行革大綱で掲げられているように、特殊法人の独立行政法人化、国立病院療養所の独法個別法案の2002年通常国会提出などの動きをふまえても、先行する57法人でのたたかいの意義は小さくありません。 労使自治による労働条件決定は、一面では、民間企業での成果主義賃金導入など、労働条件の個別化、弾力化の影響が受けやすくなっていることも率直に見ておく必要があります。労働法制改悪などの影響も同様です。
 それだけに、労働組合の組織強化や、「働くルール」の確立をもとめる職場内外のたたかいが重要です。また、産別の共闘や地域共同の前進も、労働条件の確保ではかかせないポイントです。
 (2) また、労働法制にかかわる職場での学習も重要です。一人一人の組合員が、自らの労働条件と、その決定過程に、直接関与できる条件を活かしきることが、労働条件の維持改善を可能にする第1歩です。
 2月、3月、移行期の労働条件決定のとり組みを組合員段階から組織し、要求実現を全組合員でめざすとり組みに発展させることが、組織の強化・拡大のとり組みでもあります。 知恵と力を結集し、集中したとり組みで、労働条件の不利益変更をはね返す決意を本集会で確認しあいましょう。 

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