【国公労連第110回拡大中央委員会】      2001年2月1日
中央執行委員長あいさつ
国公労連中央執行委員長  堀 口 士 郎

 拡大中央委員会にご出席いただいた皆さん方のご奮闘に心より敬意を表します。
 また、大変ご多忙の中、激励のためにご出席いただきましたご来賓のみなさま方に、日頃のご指導・ご協力に対する感謝とあわせて、厚くお礼を申し上げます。
 国公労連は今春闘において、困難と変化の時代だからこそ、労働組合運動の原点と春闘の意義を確認しあい、要求の一致に基づく「対話と共同」を発展させたいと考えています。
 それは、職場の仲間と日本の労働者の状態悪化が共通していっそう深刻になっていること、省庁再編や独立行政法人の発足など、行政改革が具体化の段階に入り情勢が歴史的に変化するもとで、仲間の労働条件を守り、国民のための行財政・司法の確立を求める国公労働運動が新たな試練に直面している、という問題意識からであります。
 全労連は、「重大な岐路に立つ春闘」と位置づけていますが、その思いは政府・財界の攻撃をはねかえし、21世紀初頭の展望をきりひらこうという決意だと思います。
 私は、今春闘において、職場の仲間の切実な要求と国民の要求を一体的に追求していくこと、そして、賃金闘争と行革闘争・行政民主化のとりくみを結合して国民共同のうねりをつくり出し、「岐路に立つ春闘」を「流れを変え、転換を勝ちとる春闘」にすべく、力を合わせていきたいと決意しています。中央委員会の討論をつうじてその意思固めをおこなっていただきますようお願いする次第です。
 
 さて、まず強調したいことは労働者の状態悪化を改善し、人間らしく働くルールを確立するたたかいについてです。
 いま、日本の労働者とこれをとりまく社会状況はきわめていびつな、不合理きわまりない状況にあると思います。大企業が膨大な内部留保を蓄積する一方で、不当な人減らし・合理化が強行され、完全失業者は300万人を越える状態が恒常的となっています。また、2年連続での賃金切り下げや、成果主義賃金の導入による賃金制度の破壊、長時間・過密労働やタダ働き残業など、非人間的といっても過言ではない状況が常態化しており、パート、アルバイトなど不安定雇用労働者は1,100万人に達し、日経連の「新時代の『日本的経営』」にもとづく雇用破壊がすすんでいます。くわえて、医療・年金など社会保障制度の改悪とあいまって、労働者は日々の生活・雇用・健康・子育てなど、労働や生活環境のすべての分野で大きな不安を抱えており、そのことが個人消費の低迷・日本経済の混迷に拍車をかけていると思います。これらの原因と責任が、国民生活に負担を強いる「構造改革」を進める政府と、国際競争力強化を最優先に、リストラ・人減らし「合理化」を推進する大企業にあることは明らかです。
 私は、社会・経済のゆがみを正し、日本経済を民主的に再建するためには、この国の進歩・発展の原動力である5,400万労働者の状態悪化を改善し、人間らしく働く公正なルールを確立することが緊急・不可欠の課題だと思います。
 ビクトリーマップで明らかなように大企業427社の内部留保は102兆円に達し、その一方でこの1年間に32万6千人もの従業員が削減されています。違法なタダ働き残業の是正などは直ちに改善できるのが経済大国日本の実勢であり、国際労働基準に即した労働環境の改善、ドイツ、フランスなみの労働時間短縮などは、ささやかで当然すぎる要求です。 全労連はこのような問題意識をふまえて、大幅賃上げによる消費不況の打開やパート労働者などの賃金底上げ、一方的解雇や違法・タダ働き残業の根絶など、全労働者を視野においた経済的要求と、働く権利の保障を最重点の課題としています。連合も同様の要求課題を掲げています。国公労連はこの提起を積極的にうけとめ、行革闘争とも結合しながら当面50万を対象とする人勧関連の750万労働者との対話行動、労働者の過半数を目標とする全労連提起の署名活動にとりくみたいと思います。
 とりわけ、本省庁を中心とする過酷な長時間残業の改善、公務職場の非常勤職員との目的意識的な連携の追求など、その実践にむけて努力を重ねていきたいと思います。
 賃金闘争をたたかう上で職場からの諸行動の積み上げはきわめて重要です。賃金アンケートに示された昨年より高めの要求傾向は、2年連続の賃金切り下げに対する怒りの表明だと思います。公務員労働者の生活の安定は、よりよい行政をすすめる基本であり、その点での政府・当局の責任は重大です。すべての職場で当局に対し要求の切実性と正当性を認めさせるとともに、統一行動への結集を大きく成功させたいと思います。

 次に行革闘争について申し上げます。
 中央省庁の再編・独立行政法人発足のもとで、私たちの運動も新たな段階に入ります。今日の状況を見るとき、この間の4年にわたる私たちのたたかいと主張の正しさがいよいよ鮮明になってきたと思います。私たちは、政府のすすめる行政改革は国民のいのちとくらし・安全を守るべき国の責任を縮小・後退させるものであること、国民の望む改革方向は、政・官・財の癒着構造の是正、ゼネコンの利益優先型の公共事業の見直しや社会福祉の充実などであり、そのためにも税金の使い道を国民生活本位に切り変えるべき、との立場で運動をすすめてきました。
 今日の状況はどうでしょうか。KSD事件にみられるように癒着・金権腐敗の構造はむしろいっそう悪質化し、医療・年金制度の連続改悪の一方で、累積債務は666兆円、国民一人あたり525万円にも膨れ上がっています。また、医療事故の多発や輸入食品の検査体制の不十分さなどにみられるように、国の行政責任が大きく後退する状況が各分野で表れています。
 政府のすすめる行政改革の破綻と矛盾の拡大は明らかであり、国民の危機意識も広がっています。その点では、行政の点検・公開のとりくみなど行政民主化のたたかいをすすめる上での国民要求の接点と、支持を拡大する条件はいっそう大きくなっています。
 省庁再編と独立行政法人の発足という情勢のもとで、今後行政がどのように展開され変化していくのか、という点についてみずからの専門性をとおして検証し、点検・公開の運動に結びつけていくとりくみを重視したいと思います。
  
 政府は、昨年の12月1日に行革大綱を決定しましたが、その点について簡潔に述べさせていただきます。
 政府・自民党の狙いの1つは、公務部内のさらなるリストラ、総額人件費の抑制であり、公務員の「意識改革」という美名のもとに、反動行政推進の「物言わぬ公務員」づくりの方向があると思います。これは橋本前首相が1月17日の講演で「中央省庁改革という器にどのような魂をいれていくかがこれからの問題」と述べ、民間企業と同様の競争原理の導入、信賞必罰の強化を強調していることからも明らかです。その問題意識の根底には、人事院勧告制度を中心とする現行制度が、公務員の賃金や権利の抑制機構として役割を果たしてきた反面、猟官制度や政治権力の不当介入の排除・公務の民主的運営を目的とした「身分保障」や、不十分とはいえ労働条件の一定の底支えとなっている現行制度さえも、「改革」の障害になってきたということがあると思います。
 2つめは、森内閣や連立政権の悪政推進に対する国民の批判を、行政や公務員に振り向けながら、新たな国民負担の増大をはかろうとすることです。政府や自民党の税制調査会の報告にみられるように、膨大な累積債務と財政再建を口実に消費税率の引き上げ、社会保障の切り下げをすすめるための世論づくりに利用する狙いがあると思います。
 また、公務労働の特性に起因する「身分保障」と、労働基本権はまったく次元の異なる問題であることはご承知のとおりです。労働基本権のありようは、その国の民主主義のバロメーターであり、「全体の奉仕者」として「民主・公正・効率」的な行政を推進するための、民主的公務員制度確立の基本です。その意味では、労働基本権の即時・完全回復は公務員労働者の悲願であると同時に、基本的には国民的要求であり、国民的運動の高揚がなによりも大切です。しかし、自民党幹部の発想は、「構造改革」路線の一環として、反動行政推進のための新たな枠組みづくりであり、その狙いを見きわめた議論が必要です。国公労連はこれらの問題意識をふまえながら、労働基本権に関する政策をまとめるべく作業を始めたいと考えています。
 
 最後に強調したいのは政治革新のたたかいです。
 昨日から通常国会がはじまりましたが、いま、追いつめられているのは国民生活を犠牲にしながら、財界や大企業本位の「構造改革」をすすめる自民党政治そのものだと思います。選挙制度をいくら変えてみても自民党単独では過半数を確保できないほど、国民の怒りと危機意識は高まっています。今年の7月は参議院選挙がたたかわれます。憲法がくらしや職場、行政・司法のすみずみに生きる社会を展望して、政治の民主的転換をめざしたいと思います。
 新世紀春闘は、困難と変化に立ち向かう新たなたたかいのスタートです。お互いの奮闘によって21世紀初頭の展望を確かなものにしたいと思います。皆さん方のご尽力をお願いしてあいさつを終わらせていただきます。

以  上


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