労働基本権についての「野中幹事長発言」にかかわって(見解)
 自民党の野中幹事長が、剥奪されている公務員の労働基本権について、「警察、消防、自衛隊、海上保安庁を除くすべての公務員に労働三権を与えてもいい」とし、与党3党の行財政改革推進協議会で同様の検討をおこなっていることを述べたとの報道がなされている。一方で、中川内閣官房長官が、与党3党の検討に消極的な姿勢を示したことも報道されており、「野中発言」の内容は、政府全体の検討ではないことも明白になっている。

 国公労連は、1948年の国家公務員法改悪で、近代的な労使関係において欠くことのできない労働者の権利が不当にも剥奪され、そのまま今日に至っていることを認めるものではない。争議権をふくむ国公労働者の労働基本権回復は、国公労連運動の悲願であり、中心的な課題である。
 1970年台の司法反動化のもとで、公務員の争議行為禁止を「合憲」とする判例が「定着」してきたこともあって、近年の政府は、「代償措置」としての勧告制度が存在すれば国家公務員労働者の労働基本権は尊重されているとする姿勢を強めている。そのことが、昨年、今年と、2年連続で年収ベースの賃金引き下げ勧告がおこなわれたにもかかわらず、使用者たる政府としてのまともな検討もおこなわないままに「完全実施」を決定し、国公労働者はもとより、人事院勧告の影響を直接的に受ける750万労働者の激しい怒りを呼び起こしている。
 この点では、労働基本権を制約している人事院勧告制度の是非が、国民的に論議されることが必要な時期に至っていることは、国公労連としても強く認識しているところである。

 しかし、今回の「野中発言」は、「公務員に労働三権を認めることと引き換えに、人事院勧告の改廃を含め、公務員のリストラや人件費削減を大胆に進めたい狙いがある」(10/15・朝日新聞)と報じられるている。
 時の政治的影響をできる限りうけずに、「国民全体の奉仕者」として民主・公正な行政サービス提供をおこないつづけることが求められる公務労働の特質に起因する身分保障と、労働基本権の問題は全く別次元のものである。それを意図的に混同した論議に、国公労連としては与することはできない。

 今日、「構造改革」の名で進められる様々な改革は、国民生活を支えてきた諸制度の破壊によって「成果」をあげているといわざるを得ない。そのような事態が進行する一因に、労働組合の主体的な運動の立ち遅れがあることも率直に反省しなければならない。今回の「野中発言」にかかわっても、1府12省庁再編や独立行政法人制度などの行革に対する国公労働者の反撃の不十分さが、背景の一つにあることも考えられる。その点では、公務員削減を行革の最大評価指標とする流れを変えるために、今こそ、すべての公務員労働者が結束して、たたかいを主体的に強めなければならない。
 国公労連は、自らのたたかいで労働基本権回復の展望を切り開くためにも、公務リストラのための行革や公務員制度「改革」に反対するたたかいの重要性をあらためて確認し、職場、地域からの取り組みを強める決意である。

  2000年10月24日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  小 田 川 義 和
   

トップページへ  前のページへ