“人勧尊重”の立場で早期に検討
 --衆議院内閣委員会で官房長官
(「国公FAX速報」2000年8月24日付)
 本日、衆議院内閣委員会において、人事院が8月15日に行った2000年勧告と「任期付採用制度」導入の意見申し出について、野党4党による質疑が行われました。公務労組連絡会・国公労連は、委員会の傍聴行動を行い、各党の質疑、政府・人事院側の答弁を厳しく見守りました。
 衆議院内閣委員会は、午後1時から3時40分まで開かれ、冒頭、人事院・中島総裁から、(1)国家公務員法23条の規定に基づく意見の参考送付の報告(任期付採用制度導入の意見申し出)、(2)公務員の制度及び給与に関する件(人事院勧告)について、説明が行われたあと、審議に入りました。質問には、山元勉(民主)、塩田晋(自由)、松本善明(共産)、植田至紀(社民)の各議員が質問しました。以下、審議の概要です。

《山元勉議員(民主党)の質問》
山元「厳しい勧告だが、民間給与・経済状況が反映されたものと言える。公務員の労働基本権の代償措置としての勧告制度であり、財政事情によって値切られた時もあったが、引き下げであっても早期に完全実施の決定をしてもらいたい。」
官房長官「厳しいとの指摘は理解するが、人事院の調査に基づく勧告であり、8月15日に給与関係閣僚会議を開き、今後の取扱いを決めた。人事院勧告を尊重し、国政全般との関係をはかりながら誠意をもって検討していく。」
山元「国公は民間準拠、地方は国公との均衡が原則だが、地方自治体では、国よりさらに切り下げが行われており、勧告制度の趣旨が守られていない。」
官房長官「地方分権の立場からコメントしづらいが、人勧制度の趣旨にしたがって行われるべきだと考える。」
山元「今勧告の特徴は、何か。」
人事院総裁「俸給表の改定見送ったのが最大の特徴。一時金の引き下げが2年連続であったこと、給与体系を見直さなければならない時期にきていることだ。」
山元「休暇制度は検討しているのか。」
人事院総裁「看護休暇・介護・育児休業など制度を整備してきた。介護は上限3カ月となっており、それを超える職員は、退職に追い込まれたり、年休で対処せざるを得ない。社会的要望が強いことは承知しているが、公務が先行するためには、もう少し民間での普及状況がすすむ必要がある。海外ボランティアや留学など、将来、総合的休暇制度を考える際には検討する必要があろう。」
 その他、男女共同参画に基づく女性の採用拡大、セクハラ対策、人事評価制度・給与システムなどにわたって、人事院・総務庁に対して質問・見解を求めました。


《塩田晋議員(自由党)の質問》
塩田「(1)人勧は、労働基本権の代償措置として重く受け止め、真剣に検討されるべきもの、最大限に尊重されてきたと理解するがどうか。(2)政府は今後どのように対処していくのか。(3)一時金は、常に民間の後追いだが、景気回復のための個人消費拡大を考え、政策的に考えてもいいのではないか。」 総務庁長官「(3)同様の認識をもっている。(2)現時点では、人勧尊重の立場で検討することとなっている。早期に勧告どおりの結論を出したいと考えている。(3)民間との比較の中で十分検討されたものだ。」
塩田「扶養手当の改善を行ったが、少子化高齢化社会のもとで、日本の人口が減少すると言われている。公務は民間に先行して子3人目にもっと増額すべきではないのか。」
人事院総裁「政策的には難しいが、勉強させていただく。」
 その他、ラスパイレス方式以外の比較方法の点、民間ボーナスと公務の一時金との性格の違い、能力・実績の評価問題などについて、人事院の見解をただしました。

《松本善明議員(共産党)の質問》
松本「労働組合は『到底容認できない』『勧告制度の役割果たしていない』などの見解を明らかにしている。人事院は、労働者に厳しい勧告を承知の上で行ったのか。労働基本権の代償措置がマイナス勧告を出すのは、労働組合が春闘要求で賃下げ要求を出すのに等しい行為だ。」
人事院総裁「民間企業の労働組合は労働三権をもっており、その上でどういう賃金改定が行われたかを頭において勧告した。」
松本「失望する回答だ。元々、労働基本権は憲法で保障されたものであり、“代償措置”は本来あり得ないものだ。同様の質問を官房長官にも聞く。」
官房長官「人勧は、労働基本権の代償措置だと認識しているし、専門機関の人事院が民間調査に基づいて行ったものだと認識している。民間は、依然厳しい状況であり、様々な経済状況、労使合意で賃金が決定されたと思う。」
松本「労使交渉をつうじて切り下げはあり得るが、組合がマイナス要求を経営者に出すことはあり得ない。2年連続のダウンは、750万労働者に生活の切り下げを迫るものであり、生活保護、年金、介護保障にも影響与える。さらに、個人消費を落ち込ませ、景気回復とならない。不況を長引かせるもの。労働基本権代償措置の自己否定ではないのか。」
官房長官「労働基本権の否定につながるとは必ずしも思っていない。」
 その他、「国政全般を考慮し、政府が賃金改善の決定を行ってもいいのではないか。労働基本権回復にむけて一歩踏み出すべきだ。官僚の天下りを禁止しろ。」などと追及し、超勤問題についても、霞国公・東京国公の実態調査を具体的に示しながら、政府に改善を迫りました。

《植田至紀議員(社民党)の質問》
植田「極めて不満と言わざるを得ないが、春闘相場をふまえた勧告という点では重く受け止める。労働基本権代償措置ということから、早期に完全実施されるべきだ。」
官房長官「人勧尊重の立場で、誠意をもって検討していく。」
総務庁長官「国民の理解得られるよう鋭意努力する。」
植田「任期付採用の法案提出はいつになるのか。」
総務庁長官「次の臨時国会に提出し、来年の省庁再編に間に合うようにしたい。」
植田「今勧告では、給与改善費を使い残すことになるが、来年も予算に計上すべきだ。」
総務庁政務次官「財政当局で検討されるべきものだが、給与改善費の経常と、賃金改善とは必ずしも連動していない。」
 その他、人事評価・給与システムの検討にあたって、労使の十分な協議を求めたの対し、「検討の過程で説明し、十分意見を聞いていく」(人事院)、「導入に際して、労使で十分な意志疎通を図っていく」(総務庁)などと回答しました。また、『行革イコール公務員減らし』という声があるが、行政と政治家の癒着、天下り問題にメスを入れることを求めました。    
以 上 

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