定員削減計画問題で、総務庁行政管理局と交渉  
--現場の状況は度外視しないが、定員削減は法律の所与となっている
(「行革闘争ニュース」2000年7月4日付)
 国公労連は、7月4日午前、定員管理を担当している総務庁行政管理局に対し、5月26日の要求書提出に引き続き、新たな定員削減計画策定に係わって交渉を行いました。
 新たな定員削減計画の策定作業は、各省庁ヒヤリングがほぼ一巡し、閣議決定に向けて最終版の議論に入りつつある段階にあります。
 交渉では、総定員法「改正」法案が成立し、サミット前にも閣議決定を行おうとしている現段階での検討状況をただすとともに、職場実態を顧みない定員削減の押しつけ強行には絶対反対であることを強く主張し、各単組から職場の実態を踏まえた追及を行いました。
 交渉には、国公労連からは、福田書記長他4名、全税関、全医労、全通産、全運輸、全港建、全気象、全通信、全労働、全建労、全司法の代表が出席、総務庁からは、定員総括の永長管理官外1名が出席しました。
 交渉の概要は、以下のとおりです。(○は国公労連の追及、●は総務庁の回答)

 冒頭、福田書記長から、以下のとおり現段階での考え方や検討状況を質しました。
○ 定員削減計画の策定に係わっては、各省庁ヒヤリングが進んでいるが、現段階での検討状況はどうなっているのか。
1)6月下旬の段階で、各省庁に対して、削減率が「内示」したようだが、その基本的な考え方は何か。2)一律・機械的な削減はとんでもない。業務の繁忙、長時間労働の実態や常勤的非常勤職員の在職状況など、削減計画の検討において、どのように反映させるのか。
3)行革基本法の率を超る削減率の上乗せや省庁間配転の強化を求めるような検討を行っているのか。4)増員のシーリングなどの検討は、どの程度進んでいるのか。また、性格は違うが、来年4月から実施される、再任用に係わって、短時間勤務者の定員上の取り扱いはどうなるのか。

 これに対して、永長管理官は、次のような見解を示しました。
● 現段階での状況は、1)いわゆる「内示」とかではなく、各省庁と相談している。予算のような内示をして復活折衝してとかのような、定式化したプロセスではない。行革基本法で、10年間で10%の定員削減をやることが、所与となっている。行政の立場で、それをいかに移行するかにつきる。それを遂行するために、各省庁と相談している。
2)超過勤務の問題だとか常勤化している非常勤職員の実態とか、国会でも議論されている。現場の実態については、各省庁からも色々と聞いてい、できる限り作業に反映させたいと思っている。片や仕事のやり方を各省庁に検討していただいて、一定の定員削減の率を確保しないといけないことが、法律で決められている。
3)機械的、一律の言葉が出たが、我々としては、機械的にスパッと、10年間で10%をやっちゃう方が、作業も楽になる。それでは、仕事や現場の実態を無視したことになる。実態を度外視した無視したことはこれまでもやっていない。今回も、各省庁と相談してやっている。
 率の上乗せについては、行革基本法47条の「少なくとも10年間に10%の定員削減」を目指していく。法律の要請を度外視して上乗せさせることは考えていない。粛々と実行するだけである。
 問題は、法律に「少なくとも」と書いてあるが、長官とも相談し、全体を見ながら10年で10%で良いのか、各省庁とも相談することになる。法律の趣旨を超過してまでは考えていない。
4)シーリングについては、まだその作業には入っていない。手つかずだ。シーリングは、増員の話しであり、今はあくまでも削減だけだ。
 再任用については、総務庁自身が再任用制度を作ったところであり、そのフレームを行革にも矛盾しないよう、人事局とも相談しながら検討している。フルタイムは、定員の枠内でとなる。短時間の方については、その部局の仕事が一定で、その中で短時間を活用すると、通常の職員の仕事が軽減されるとなれば、その定員が減る。
 そのような中で、所与のものとして受け止めて、各省庁がどのようなことを考えてくるのか。各省庁も、この再任用を活用しななくてはいけないので、定員削減計画の相談の中で、皆さんも各省庁当局と良く話し合って欲しい。

 以上の回答を受けて、福田書記長から、改めて以下の追及と指摘を行いました。
○ 各省庁の主体性は尊重されるのか。つまり、内はこんな数字は飲めないと言ったときどうするのか。
● そこは、各省庁とも、行政府なので、法律は守ってもらわないといけない。ある省庁を減らせば、他の省庁が増えるという大変つらいものとなる。
○ それでは、一律にならざるを得ないではないか。各省庁にどのように話しをしているのか。法律でこうなっていると言っているのか。
● まさにそのとおりだ。
○ 従来、定員削減計画は、定員の再配置の財源だった。それが哲学ではなかったのか。今回も同じスタンスか。
● 全体として、定員削減をやらないないといけない中で、仕事の合理化が可能なところで、定員削減の計画を立てていただき、財源を出していただいた上で、我々が新規行政分野に回すことになる。そこは、確かに定員削減を財源としてきた。
○ そうであるならば、結果として純減はあっても、初めから純減はあり得ないはすだ。
● 小里前総務庁長官も国会で、純減と削減は違うものですと答弁している。しかし、また、相当厳しい追及がされて、「純減の気概を持って努力していく」と答弁している。その後与党間の合意があって、計画的定員削減、独立行政法人化、公社化や新規採用の抑制の3つで、10年間で25%の純減を目指し最大限努力するが決められた。国会での議論は、行政として所与のもの。「純減を目指して定員削減を行う」と小渕前首相も答弁している。
 一方で、新規増に対してしかるべき対応をするのも責務であり、総定員法「改正」時にも附帯決議もなされている。それはそれとして、大枠として25%定員削減をやらなくてはいけないことは理解してほしい。

 以上の回答を受けて、各単組代表から以下のような追及がなされました。
(全運輸) 職場は、夏期休暇の予定も組めない、年休も消化できない大変な状況だ。運輸省は安全確保が最大の使命だが、規制緩和で、事後チェックとしての指導監督や苦情の対応などが必要になってきている。職場は定員削減で、四苦八苦しながら何とか安全の確保をしている状態だ。今後現場は、これ以上の定員削減をどう対応したらよいのか。行革基本法の47条に定員削減の目標が書いてあると言ったが、憲法に書いてある生存権や安全について、国の責任や使命はないのか。
(全通産) 1)通産省は、来年4月に、3千名を越える職員が独立行政法人に行く。通産省だけを見ると、これだけで25%の定員削減を達成する。それでも、削減を続けるのか。それとも来年は来年で新たに定員削減が割り振られるのか。2)我々は、これ以上の定員削減はできない。もう限界であると言ってきたが、小里前長官は純減するよう努力すると答えている。我々の声が大臣まで届いているのか。総務庁の担当として、ちゃんと伝えているのか。
(全気象) 気象庁は、防災官庁だから、仕事のやり方を変えると言われても限界がある。人間でしかできないことがある。地震や火山活動を計測するのは機械だが、最終的に判断するのは人である。今回の三宅島にしても、定員に余裕がない中で、全国から応援が来てもらって頑張っているが、頑張りにも限界がある。
(全税関) 我々は海外からの荷物をチェックすることで、国民生活を守っている。定員が厳しい中で、合理化・機械化で人が減らされてどうなったか。偽造たばこや違法な医療産廃など、新聞記事は事欠かない。現場では人が足りなくって、チェックできない状況になっている。大蔵省は、行政改革の中で、政府の一員として定員削減はやらなければならないと言うが、しかし、職場では、行政責任が果たせなくなってきている。
(全法務) 現在の状況では、行政サービスを保てない。社会情勢の変化を受けて対応しないといけない。本人申請が急増している。コンピューター化を進めているが、相談は人でしか対応できない。偽造事件が増えるなど、審査業務は慎重にならざるを得ない。各省庁とのヒヤリングは、現場の状況とかけ離れた議論ではダメだ。国民が求めている行政サービスの充実を行うべきだ。
(全建労) 法律に基づいてと言われたが、我々は、公共物を作ることによって、国民の生命・財産を守っているが、憲法には国の責務として守ることが書かれている。憲法に書いてある責務を果たすことの方が、先ではないか。職場では、年間の超過勤務時間が、1800時間を超える職員もいる。女性職員でも、1000時間を超える人がいる。また、建設現場での事故が急増しているが、人が足りず、現場を監督する暇もない。法律で決まっているではなくって、憲法で守るべきと決まっていることをまず先にすべきだ。
(全労働) 4月に労働局が設置された。設置に伴う超過勤務はやむを得ない部分もあるが、そうではない実態があちこちの職場で行っている。日常業務のさばききれない部分を超過勤務で処理しているのが実態である。統合による合理化減はあり得ない。雇用失業情勢が大変な中、職業安定所の窓口業務をはじめとした、労働の職場の実態はご存じだと思うが、新規行政需要の対応だけではなく、日常業務の業務量増もきちんと見るべきだ。
 本省では、過労と思われる自殺が5人も続いている。キチンと増員すべきだ。労働省の定員削減は、これまでも高かった。大変不満である。最後に、北海道の有珠山の対応など、年度途中であっても、増員の対応をすべきだ。
(全港建) 港湾建設局も建設省と同じように、政府の方針で公共事業をどんどん行っている。9次定員削減では、8.4%という無理な数字を押しつけられ、仕事をどんどん切り捨てている。しかし、今はやれても、5年10年20年と使う公共物が、人がいなくて手抜きを見抜けず作られたのが、トンネルの崩落事故や新幹線の高架橋の劣化として現れている。本当にキチンとした公共物を作るためには一定の人員が必要だ。
 一つ質問だが、各省庁で作られた定員削減計画を、再編された新しい省庁でどう引き継ぐのか。
(全通信) 定式化した作業ではないと言われたが、一方で、定員削減をやりやすい職種、やりにくい職種の分類分けしているようだが。分類に従って、具体の数字を話しているのではないか。具体的には、「お宅の省庁は、第一分類は何名いるので、削減は何名になりますね」というような話しをしてるのではないか。  長時間労働が問題になっているが、そこに定員削減の話しが来ている。どちらも簡単に解決できる問題ではない。長時間労働と定員削減とどちらが優先する問題と考えているのか。
(全司法) 司法制度改革審議会で、スピード化など司法制度の充実が検討されていが、人的な基盤がしっかりしていないとできるものではない。どのように考えているのか。

 以上に対して、永長管理官は、次のような回答を行いました。
● 独立行政法人については、10年間で10%の定員削減をやれ、それに独立行政法人化と公社化で更なる上乗せをすることとなっている。つまり、独法化以外で、10年10%の削減をやるように法律はなっている。独立行政法人化で、25%達成したと言っても、独立行政法人以外で10%の定員削減をやらないといけない。
 独立行政法人で出ていったところは、我々の手を放れるが、そこは、中期目標・中期計画でやっていくことになる。出ていくまでの間は、定員削減の率が掛かっている。出ていった後に、残ったところがかぶるようなことは考えていない。当然、残った分で調整することになる。残存にしわ寄せはしないということだ。
● 皆さんの声が大臣まで届いていないのではとのことだが、各省庁や皆さんから声を聞いて、長官に話す際には、話しをし理解してもらっている。そうであるが故に、大臣の答弁も純減と言った方が政治家として通りがよいが、そうは答えていない。
● 各省庁の現場の様子は、我々の定員総括の各省庁担当が、時間を掛けて聞いている。現場の実態を度外視しているわけではない。
 今やっている、各省庁との相談とは、最後に省庁毎に削減の数字を出す必要がある。全く、数字を度外視した、議論しているわけではないが、例えば、減量化計画(国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画平成11年4月27日閣議決定)で個別に指摘されているところとかは相談している。パソコンでポンと押せばパッと出るような乾いた議論はしているわけではない。
● 今までは、5年間の計画を均等に1年ずつやっていただくと指導してきた。しかし、今回の10年で10%の削減は、今まで一番長い計画であり、また、独立行政法人化なども控え、この5年間で相当変わる。実務的には、10年間を見通すことは相当難しい。法律的には、10年間で10%の定員削減計画を策定すると書いているので、10年先のところの相談は、まだ確定していない。法律の優先度、政治の優先度など考えながら、大臣と相談しないといけない。
● 憲法が優先はそのとおりである。行革基本法47条も、憲法を無視して良いとは書いていない。47条は違憲であるとはならない。そのために、どう工夫するか。行革基本法と憲法と両方を満たすことを考えないといけない。そこが、各省庁との相談となる。
● 超過勤務と定員削減、どちらも重要と言わざるを得ない。超過勤務削減については、人事局の方で、色々な施策を講じているが、総務庁として最大限の努力をしている。
● 各省庁から色々と職場の実態は聞いているが、今日は、直接職場の実態を聞けた。定員削減が求められていることの現実的な情勢を理解していただきたい。各省庁とも大変悩みながら努力している。

 以上の再度の回答を受けて、最後に以下のような追及を行いました。
○ 職場で何人倒れる人を見ればよいのか。行政管理局の立場も分からないではないが、最近の職場は、9次定削の時とは違う。これ以上の定員削減は無理である。
 今回の定員削減計画は、独立行政法人化で分母が変わることもあり、率を追及するのか、員数なのか。出てきた数字(人数)なのか、率なのかどちらを重視するのか。
● 計画で決めるのは、人数が基本だ。ただし、枠外に定員で割れば何パーセントになるとは書く。しかし、閣議決定上は率を決める。問題は、計画終了時にどう説明できるかであり、その際人数が意味を持ってくる。計画期間が終わって、定員削減の実績を示すときに、分母が変わっているので、国民にどのように示すかは、率直な悩みだし、私も疑問を持っている。
 独立行政法人や郵政公社で出ていくものは、2000年1月5日時点に引き戻して割り出す。だた、各年度で1年1%何人とするのか。5年後、10年後どういう形で実績を示すかが問題だ。
○ 分母が変わるので、見直しの期間が長ければごまかされる。なるべく短いスパンで検討すべきだ。
● 承知した。

 最後に、福田書記長から以下の指摘をして交渉を終えました。
○ 過労死自殺が多発している現実を直視すべきだ。上の者は、誰も責任を取らない。無責任な計画は止めるべきだ。10%の行政サービスを低下させます宣言すべきだ。職場に総務庁の責任で、行政サービスを低下のポスターでも張り出すべきだ。
 本来、総定員法は、国家公務員の上限を決めた法律だ。上限まで定員を使って良いはずだ。上限の範囲で、行政を運営すればよいはずだ。
(以 上)


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