憲法原則に反する森首相の発言は見過ごせない(談話)
 5月16日マスコミは、「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合に出席した森首相が、「日本は天皇を中心とする神の国」とする挨拶をおこなったことを一斉に報道しています。その挨拶では、「(宗教を)学校でも社会でも教えることが大事」、「神社を中心として地域社会は栄えていく」などが発言されたことも報じられています。

 国家公務員労働者で組織する国公労連は、行政の最高責任者である首相が、その職務と関連しておこなった挨拶の中で、憲法の基本原則に反する発言を公然と行ったことに、驚きと怒りを禁じえません。
 それは、国民主権を規定している憲法と相容れない「天皇主権」賛美ともいえる発言であることが第1の点です。憲法第15条を持ち出すまでもなく、国家公務員は「(国民)全体の奉仕者」ですが、それは、憲法が国民が主人公であると繰り返し宣言していることと無関係ではありません。天皇の名による「行政」執行を求められ、無権利状態におかれた「天皇の官吏」に公務員労働者を引き戻すことに道を開きかねないそのような発言は、許されるものではありません。
 第2の点は、首相の発言が「(国およびその機関は)いかなる宗教活動もしてはならない」として、国民に信教の自由を保障している憲法第20条に反する内容だと思われることです。戦前の歴史を振り返れば、「国家神道」との決別が基本的人権保障の柱であることは明らかですが、発言はそのような点への基本的な認識の欠如を物語るものです。
 第3の点は、憲法第99条にさだめる憲法遵守の義務をもっとも強く負う内閣の長が、平然と憲法原則を踏みにじりながら、そのことの重大性に気づいていないと思われることです。一般の国家公務員は、その職務の執行にあたって、憲法原則と法の遵守が強く求められ、それからの逸脱は懲戒の対象にもなりうるとされています。行政の最高責任者である首相が憲法遵守の範を垂れずして、公務員全体の士気は高まりません。

 中央省庁等改革にかかわる法「改正」で、内閣法に「国民主権の理念」が盛り込まれ、行政運営における首相のリーダーシップをこれまで以上に発揮するための「整備」がおこなわれました。その結果、首相には強大な権限の集中が可能になっています。それだけに、国家の基本法である憲法に対する首相の姿勢は、これまで以上に問われています。その点からしても、今回の森首相の発言は極めて重大です。
 森首相が、あらためて憲法遵守の立場を明確にされ、行政の長としての責任を明らかにされるよう強く求めます。

   2000年5月17日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  福 田 昭 生

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