総定員法「改正」案が共産党以外の賛成多数で可決  
--独立行政法人などの「合理化」を求める附帯決議も採択
(「行革闘争ニュース」2000年5月11日付)
 参議院総務委員会では11日、総定員法「改正」案の審議が行われました。質問に立ったのは、民主党の前川忠夫議員と広中和歌子議員、共産党の阿部幸代議員、それと、参議院クラブの高橋令則議員の4名でした。結局、与党各党と社民党は質問も準備せず、90分という短時間で審議が打ちきられ、その後、直ちに採決が強行されました。
 法案は、共産党を除く賛成多数で可決され、また、独立行政法人の役職員数の抑制に努めることなどを内容とした附帯決議も、共産党以外の賛成多数で採択されています。
 国公労連は、この審議に先立ち、約40名の参加で昼休みに参議院議員面会所集会を開き、日本共産党の阿部幸代議員から国会情勢の報告を受けるとともに、「25%定員削減」を許さないために、今後とも職場・地域からたたかいを強めていく決意を固め合いました。
 また、午後からは、総務委員会の傍聴行動に取り組み、全法務・全通信・全気象・全建労から7名が参加しました。
 総定員法は12日の本会議にかけられ、可決・成立がねらわれます。
 以下、11日の総務委員会における審議の概要について報告します。

根拠なくつじつまあわせにしかすぎない「25%削減」
<前川忠夫議員(民主党)の質問>
前川: 99年1月の「自自」政権合意で国家公務員の25%削減が確認され、後にそれが閣議決定された。現在、自民党と自由党の連立は解消されたが、「25%削減」は有効なのか?また、閣議決定から1年が経過し、定員削減についてこの間、具体的にどんな議論がすすめられてきたのか?特に行革基本法で定められている「10年間10%削減」との関係がわかりにくい。あらためてこられのことを解説してもらいたい。
青木官房長官: 25%削減は政府方針であり、現在でも何ら変わらない。基本法で10%の定員削減が法定化され、それに独法などで上乗せし、与党合意であった25%を達成するのが政府の基本方針だ。
前川: なぜ10%や25%なのか?与党合意も非常にわかりにくい決着だ。数字が先にあって、それに後からつじつまをあわせているだけではないのか。職員の雇用や身分にかかわる重要な問題であり、数字だけが一人歩きするのは良くない。
青木: 行政がどうあるべきか、それをささえる定員がどうあるべきか、今の定員が本当に的確なのか、そうした検討の積み上げで削減数を決定するのも一つの方法だ。しかし、まず数字を明らかにして、それにむけて具体的な努力をしていくのも一つの方法ではないか。
前川: 10年間で25%削減と言うが、この10年間を見ても、公務員全体の0.7%しか削減されていないのが現実だ。本当に25%が可能な数字なのか。つじつまあわせとしか思えない。
青木: 良い結論が出せるように、一生懸命努力していく。
前川: 法律で総定員の枠を決める意義はどこにあるのか?総定員法が制定された当時とは、状況も変わっている。
続総務庁長官: 総定員は定数の上限である。これを基本に、行政サービスは低下させないで、効率化に努めていく。
前川: 発想が逆だ。効率化の積み重ねが、定員になってあらわれてくるはずだ。まず数字が先では、形を整えるだけになる。仕事と定員は不可分だ。
続: 目標をまず決めて、合理化に努める。
前川: スローガンは必要だと思うが、人が減ると、一人あたりの仕事量は増える。職員は、残業や休日出勤で仕事をこなしている。その点からの慎重な配慮をお願いする。削減によって職員の雇用不安などもおこしてはならない。労働組合との十分な協議の上ですすめてもらいたい。
続: 当然のことだと思う。そこの職場で働く人の協力がないと物事とはすすまない。各省庁にはきちんとした対応をとってもらい、初期の目標を達成したい。

国立大学の独立行政法人化だけで25%削減が達成されてしまう
<広中和歌子議員(民主党)の質問>
広中: 25%の数字の根拠は何か?
続: 先ほど答弁したとおり、基本法の10%が政権合意によって25%となり、それが閣議決定された。
広中: 経過を聞いているのではない、根拠を示せ。国立大学が独法化されれば、ほぼ25%削減となる。それを前提とした数字ではないのか。
続: 25%は、独法化を前提にしたものではない。
広中: 削減する一方で、増員もされるのではないか?
続: 新しい行政需要があれば増員する。
広中: この10年間でも、純減はわずか0.7%だ。そのことはこれから10年でもおこりうる。定員削減の具体的な手法をお訊きしたい。
続: 厳しい視点で仕事の徹底的な見直しをすすめ、適正な定員管理をはかる。それが国民への義務だ。 広中: 国立大学をふくめた独法化の対象機関の職員数は18万人となる。それで25%を超えてしまう。それ以外のところから削減する必要がなくなってしまうではないか。
続: 独法は独法として効率化をすすめるが、それとは別に10%削減達成の義務がある。それにもとづいて新たな計画を策定する。
広中: 独法化によって削減対象の「母数」は減っても、10%削減は変わらないという意味であると確認させてもらう。国立大学の独立行政法人化は、大学改革でなく行政改革から議論がはじまったことに大学関係者の強い不信感があると聞くが、そのことについてどう思っているのか。
河村建夫(文部政務次官) もっともな感覚だと思う。そうした意見もふまえつつ、同時に大学の活性化にむけた議論もすすめている。
広中: 独法の職員の身分は、公務員に準ずるというというが、どういうことか?
続: 独法の職員は、公務員型と非公務員型がある。身分は公務員でも、管理は各独立行政法人のもとにおかれる。
広中: 給与など待遇はどうなるのか?
続: それぞれの独立行政法人で決定される。各独法が主体的に決めることが可能となる。それが独法化の一つの目的だ。

仕事の量に対して、適切な人員を配置するのが我々の仕事だ
<阿部幸代議員(共産党)の質問>
阿部: 法案は、独立行政法人制度の導入を含む省庁再編とも一体のものであり、既に、9地に及ぶ定削が実施され、国民生活部門が切り捨てられてきた上に、更に、10年間で25%も定員を削減しようという、新たな定員削減とも深く係わっている、極めて重大な問題を持っている。
 特に、定員削減と国民にとっての公共サービスの関係と公務員の労働条件の関係について質問します。  長官は、昨年12月3日、参議院の行革・税政特別委員会で、「国と地方の借金が600兆円を上回る、行政の大改革イコール公務員の削減・これは避けて通れない」と答弁していますが、「行革」で公務員を減らし続けてきたのに、借金が増え続けてきた事実をどのように考えているのか。
続総務庁長官: 国民の願いは、公務員は少ない方が良い、税金も少ない方がよいである。それに応えるために、行政改革を行っている。借金と行革は関係ない。
阿部: 関係ないと言われるが、借金が行革の動機だと言われているように取れる。
 次に、「読売新聞」の昨年5月28日付けの世論調査結果では、「行革によって、特にどのようなことを実現して欲しいと思うか」の問いに対して、「予算の無駄づかいを無くし、財政赤字を減らす」62.7%と高率を示し、「行政組織を簡素化し、公務員数を削減する」と答えた45.0%を大きく上回っています。
 国民は、「行革」イコール公務員削減と単純にみることなく、予算の無駄づかいをなくすことや、住民サービスの充実が必要だということを見据えているわけです。それなのに、10年間で25%の定員削減というのは、とにかく公務員は減らせばよいということなのか。
続長官: 実際には33年間で、5万8千人の公務員を減らしている。一方、新たな行政ニーズには、相当の増員もした。国民は、行政サービスも頼むが、無駄なところは削れと言われる。そういうこととでやってきている。
阿部: 必要なところには定員を付けるべきだ。政府のやり方は、先に削減目標がありきだ。必要な要員の積み上げをやったわけではない。
 大田前総務庁長官は、昨年の6月1日の衆議院行政改革特別委員会で、「どうやって10年間で25%の公務員を削減するのか」の質問に、「人が、定員が十分足りないところは、仕事そのものを減らしていくわけですから、その結果として、定員も恐らく減らしていくことができるだろう」と答弁しています。まるで、人が足りなかったら、仕事を減らせばよいと言っているようなものだ。続長官も同じ意見か。
続長官: 国が責任を持ってやらなくてはならないものは、人員もちゃんと措置しないといけない。一方、無駄なところは、削減していく。その目標が25%だ。
阿部: やっぱり削減ありきではないか。逆立ちの議論になっていることが問題だ。
 定員問題は、国民サービスと公務員の労働条件に係わる。そこで、具体的に伺う。1月末に、地元の埼玉県草加公共職業安定所を訪れ、大変な業務実態を目の当たりにした。草加職安の管内人口は、おおよそ82万人。雇用保険適用事業所は、8011で、ベットタウンであると同時に、中小の事業所が集中する、県内第3の就労地域です。連休明けの1月11日には、失業保険の手続きだけでも、187人が窓口を訪れそうです。毎週行われる失業給付の説明会も、600人から700人にのぼることもあると伺いました。ところが、定員内の職員は、たったの28人です。人口規模と業務量からみて、この28人というのは、少なすぎではありませんか。どのようにして、この数字は決められたのですか。
労働省職業安定局青木次長: 管内の状況を総合的に勘案して、全体として同じになるように配置している。
阿部: 管内の状況を総合的に勘案してということだが、管内人口も重要な指標だ。草加とほぼ人口が同じ足立の場合、定員内職員が草加の2.75倍、上野の場合、人口は草加の約20%なのに定員内職員が草加の2.79倍もいます。
 有効求人者数を指標に比較しても、草加と足立はほぼ同じですが、定員内職員数は、2.75倍の開きがあるわけです。上野は、草加の半分ですが、定員内職員数は、約3倍もいるわけです。
 草加の定員内職員数28人が少なすぎるのです。そのことは、中だけでも非常勤職員が20名ほどいますし、外に設けられたパートバンクなどに5カ所に12名いて、合わせると32名もいるのに、それでも忙しい。人口規模や業務量にふさわしい定員内職員の確保、つまり定員増ができないのは、労働省全体が定員削減のしわ寄せで、定員を増やすところをつくれないという矛盾があるからではないのか。
続長官: 仕事の量に対して、適切な人員を配置するのが我々の仕事だ。同時に、臨時の仕事がある場合は、各省庁の予算の範囲内で、非常勤職員を各相の裁量で雇うことができる。何れにしても、適正な仕事に対して、適正な人員を配置している。各省で臨機応変な対応をして欲しい。
阿部: 労働省では、この10年間で増員は13名だけだ。これを全部草加に付けても足立や上野には追いつかない、言っていることが矛盾していると思われないのか。
続長官: 恒常的な仕事は、適切な人員を配置している。そうでないものは、各省で臨機応変に対応できる措置があり、草加職安もそう言った措置を取っているだけだと思う。
阿部: 足立や上野がけしからんと言っているのではなくて、足立と同じ定員内職員にすべきだと言っているのだ。また、非常勤職員も同じ仕事をしている。これも矛盾である。
 次に、職安も大変だが、国民の命を預かる、医療現場も深刻な実態だ。一昨日、国立大学病院の看護婦・看護士らでつくる全大教病院協議会が、相次ぐ医療事故をなくすため、職場の実態を発表しまし、看護婦増員の必要性を訴えています。それによると「高度医療を担っている国立大学病院では、重傷患者の割合が、私立大学11.5%、公立大学11.9%に比べ、14.9%と高くなっています。しかし、看護婦一人当たりの入院患者数は、私立大学1.83人、より国立大学は多い2.15人。全医療機関平均の2.05人を上回り、少ない看護婦で多くの患者をみている結果が出ています。1カ月の夜勤回数では、国立大学病院の平均は、8.3日、35年前に人事院が出した月8回以内夜勤が実現していません。3月に医療事故を起こした京都大学と筑波大学が最も多く9.4回となっています。
 しかも、今回の法案では、昭和48年以降に設置された、国立医科大学等の職員の定員も総定員法の枠内に入れており、これまで以上に厳しい定員抑制が行われることになりかねない。これでは、看護婦不足は解消できない。9日の協議会の要望は、総務庁長官に対して、こうした深刻な実態を述べた上で、「国立大学附属病院の看護婦を総定員法の対象から外し、大幅な増員を実現すること」を要望しています。こうした声に答えるべきではありませんか。
続長官: 先ほどの職安も、今の国立大学病院も、私どもが、直接交渉するものではないく、各省が対応するものだ。私どもは、各省からの要求を査定させてもらっている。こういった色々な人員が必要とされるだろうが、喧々諤々に議論してやっているいのが現状であり、理解して欲しい。
阿部: 定員が足りないからと言って、仕事を減らすことができないから、定員外の非常勤職員を増やして 対応しているの実態が明らかではないか。
 次に、非常勤職員の中でも、資格職員の看護婦は、本来定員職員であるべきなのに、雇い止めを繰り返して、任用されている。中には、20年以上も定員外の非常勤職員として働いている方もいて、医労労働者として医療遂行のため、定員職員と全く同じ業務を行っていることに誇りと自信を持って働いているということです。
 問題は、この定員外の非常勤職員の処遇が、定員職員と全く同じ業務を行っているにもかかわらず、定員職員と比べて、極めて悪いということです。具体的には、定職手当の支給率が、雇い止めによって退職を余儀なくされているにもかかわらず、自己都合退職として減額されているとか、育児協業も適用されないというのは人権問題ではないのか。
 こういうのは、定員削減を進める中で生じる矛盾そのものだと思わないか。
厚生省国立病院部川村部長: 非常勤の看護婦は、36年2月28日の「定員外職員の常勤化の防止について」の閣議決定で、他の省庁の非常勤職員と同じように、年度を越えて雇えないので退職してもらい、退職金も払っている。育児休業制度は、長期雇用を前提としているので、1年の雇用の非常勤職員には適用できない。
阿部: 常勤化防止の閣議決定の内容を聞いているのではない。閣議決定に基づいて、雇い止めが行われているが、雇い止めを繰り返して任用されているため、実態は常勤になっている。厚生省自身も、「賃金職員の手引き」の中で、「常勤職員と区別なく勤務制が行われ、各職種の通常業務を遂行している」と認めている。非常勤職員は必要な要員ではないか。にもかかわらず、余儀なくされている雇い止めを自己都合退職として、退職手当を減額するとか、育児休業が適用されないというのは、大問題だ。常勤職員と区別ないと認めておきながら、その権利を劣悪な状態に放置しておくのは、制度差別ではないか。しかも、定員削減で、こうした人達を一層増やそうとしているのは、日本全体の働く人達の地位の悪化を推進することに繋がりかねない。
続長官: 今の事案は、それぞれの省庁で対応してもらう。採用は、人事院の定める勤務条件で働いてもらっている。具体の事例は、上げて厚生省が人員削減で努力された結果だ。人権問題とか言われたが、人権を無視するようなことはされていないと思う。
阿部: 次に、超過勤務問題について質問します。定員削減は、一方で、膨大な非常勤を産み、一方で、超過勤務の恒常化という問題を生じさせている。霞が関国家公務員労働組合協議会が、この3月に残業実態調査を実施し、3416名から回答を得ている。それによると、「通常業務をどの時間帯で処理するか」との問いに「残業」と答えた人が実に76.7%にのぼっている。2月の残業時間は、40時間以上257人、50時間以上350人、75時間以上294人、100時間以上314人、150時間以上103人、200時間以上37人となっている。従って、退庁時間は、20時台以降から午前0時以降までを合計すると1540人45.2%にのぼる。
 重視したいのは、「定時に退庁できない主な原因は何か」の問いに対して、2040人59.7%が「業務量が多い、人員が足りない」をあげていることです。念のために、これは「国会待機」885人25.9%を遙かに上回っている。こういう実態を長官はご存じですか。
続長官: 各省庁に対して、人事院が示した月30時間を超えないようにお願いしている。具体的には、越えているところもあるだろうが、年間360時間に納めるようにお願いしたい。
阿部: 職員は、仕事が目の前にあれば時間だからといって帰れない。人が足りないから、こうした実態にあることを直視すべきだ。定員削減目標が先にあるからだ。「10年間で25%の定員削減」は、こうした実態を無視した、労働時間の短縮対策にも逆行したものでしかない。必要な要員は国の責任でちゃんと確保すべきだ。
 最後に、青木官房長官に伺いたい。
 職安の実態や医療現場の実態から、定員削減が公共サービスをどんなに危険にさらすかを述べた。このことが、公務職場の労働者の人権を危うくしていることも指摘した。必要な公共サービスを提供し、人間らしく働く環境整備を進める上で、定員削減は見直すべきではないのか。
青木官房長官: 25%定員削減ありきで話しをされているが、職安や看護婦さんの話をすると、定員削減はできっこないとなるが、私どもは、行政改革を断行して、25%の定員削減を努力していく。

25%の定員削減は何としてもやり上げないといけない目標だ
<高橋令則議員(参議院クラブ)の質問>
高橋: 法案の趣旨は承知している。改めて考え方を聞かせて欲しい。
続長官: 国民の皆さんの期待に応えるためには、スリムな行政を目指し、徹底的な合理化を行う。それを踏まえて、今回の行革が断行された。25%の定員削減は、国民の強い期待として閣議決定された。何としてもやり上げないといけない目標だ。
高橋: 私もそのとおりにやっていただきたい。定削は数字が色々あって面倒だ。国民に上手く説明をやっていただきたい。また、公務員は黙っているとどんどん増えていくいわれる、総務庁で定数の査定をキチンとやっていただきたい。
 次に、日本の法律は現在いくらあるのか。
内閣法制局津野長官: 昨年末で1670本です。
高橋: 1670本は、必要があったから作られたのだろうが、黙っているとどんどん増える。法律の削減は行わないのか。
津野長官: 社会経済情勢が複雑化している。情勢が変化する中で、法律もそれに対応したものが必要になる。法律が多すぎるという指摘だが、法律を作るときのチェックは2つある。1つは、それが本当に必要な法律かどうか。2つは、既にある不要になっていないかである。既存の法律の廃止は、順次進めてはきいている。もう1つの、真に必要な法律かどうか審査するが、法律に規定しないといけないことが含まれているか、これを法律事項というが、これを厳格に審査して、不要な法律ができないようにしている。
高橋: 法律を簡素化しないと、行革もできない、定員削減もできない。これを実質的にやっているのが、津野長官だから、引き続き努力していただきたい。

<阿部幸代議員(共産党)の反対討論>
 日本共産党を代表して、行政機関の職員の定員に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 そもそも、国家公務員の定数は、国民にとって必要不可欠な公共サービスを提供するのに必要な数が確保されるのが当然であるにもかかわらず、既に、現行総定員法のもとで9次におよぶ定員削減計画が実行され、国民生活部門の切り捨てが強行されてきました。その結果、測候所などの出先機関の統廃合や、「仕事は増えても人が増えない」ことで、行政サービスの切り捨てが当然のこととされ、看護婦、労働基準監督官、職安の職員、登記所の職員など慢性的に足りずに国民生活に大きなマイナスの影響を及ぼしています。
 法案は、こうした状況を前提にして、しかも今まで別枠となっていた新設医科大学等の定員と沖縄の国の行政機関の定員を総定員の管理に一元化して、定員の最高限度を現行の556,687人から21,865人減らした534,822人にしようというものです。独立行政法人化を含む行革・省庁再編とあわせて、今後進められようとしている公務員削減は、自衛隊を引き続き聖域として、10年間に25%も減らそうというもので、国民生活部門の切り捨てと公務で働く労働者の労働条件の悪化に、一層の拍車をかけるものであり、断じて容認できません。
 法案は、国立大学病院が患者の命にかかわる医療事故を防ぐために、看護婦の増員を切実に求め、公共職業安定所の公共サービスの提供に、定員内職員の増員が切実に求められているにもかかわらず、公務員削減を至上目的化して、それに背を向け、国民の期待にこたえようとしていません。
 また、公務の現場で、人間らしく働く権利が脅かされる定員外職員の増大や、超過勤務の恒常化が一層進められ、日本の労働者全体の人間らしく働く権利と地位の向上に逆行することが明らかです。
 もともと高等教育と学術研究の場である国立大学に、行政機関と同じ定員削減を押しつけること自体に無理があるにもかかわらず、法案が、新設医科大学等の定員を新たに総定員法の管理に一元化したことも、大学の荒廃を一層すすめるものであり、問題です。
 以上で、私の反対討論といたします。

<行政機関の職員の定員に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議>
 政府は、本法律を施行するに当たっては、次の事項について十分配慮し、行政に対する国民の期待に応えるべきである。
一 総定員法が、各行政機関の職員の総数の最高限度を法定することにより、行政機関の傍聴を抑制することを目的とするものであることにかんがみ、新たに策定される定員削減計画について、今後の社会経済情勢の変化に対応した行政サービスの在り方や行政改革の趣旨を踏まえ、適宜その見直しを図るとともに適切な実施に努めること。
一 独立行政法人及び郵政公社が行政改革の基本理念を実現するために創設されるものであることにかんがみ、その役職員数の抑制に努めつつ、効率的運営の確保を図ること。
一 国家公務員法に規定する身分保障の趣旨にかんがみ、職員の雇用不安を惹起しないよう、本人の意に反する免職や裁量権の濫用にわたる配置転換を行わないよう努めること。
一 複雑高度化する行政課題に柔軟かつ的確に対応し、職員の労働強化や行政サービスの低下を来さないよう、要員の確保・配置等につき万全を期すること。
 右決議する。
(以 上)

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