<国公労新聞・第970号97年11月1日付より>

【連載】海外調査団「行革」見聞録I

空の安全おびやかす管制業務の民営化<イギリス>

全運輸編



 全運輸は、イギリスのIPMS(管制官も参加している管理者・技術者・専門家等で組織する組合)の本部を訪問し調査をおこないました。
 海外調査団での全運輸独自調査の目的は、エージェンシーなど行政改革で先行するイギリスの航空管制業務等の現状を把握するところにありました。

管制業務は民営化

 イギリスの航空に関する政府機関は、英国運輸省・英国航空局があり、民間機関としてはNATS(航空管制業務サービス)があります。
 NATSは、1992年、英国航空局に軍民の統合機関として発足。96年に英国航空局の100%株所有の航空管制業務サービス機関として英国航空局から分離しました。
 NATSは、現在3カ所のセンターにおいて、一定高度(高高度についてはヨーロッパ広域管制で実施)以下の航空路管制業務を提供しています。
 また、10カ所の大空港において、飛行場および出発進入管制業務を提供しています。
 各空港は、NATSと契約する義務はなく、他の提供会社と契約する自由もあります。

民営化の悪影響

 イギリスの管制官は、民営化による効率性の追求により、要員の削減、労働強化、雇用の不安定化が際限なく持ち込まれるとの危惧を持っています。

「安全」が形骸化

 IPMSは、航空の安全への影響についても、民営化によるコスト意識の追求により「安全」の形骸化を持ち込まれると危惧し現在も民営化に反対しています。
 また、航空路管制所の統合や空港ターミナル管制所の航空路管制所への集約等が計画されており、業務の過密化・長時間労働による安全への悪影響なども指摘しています。
 安全を支える職員の訓練の形骸化も予想され、現在の質の高い新人職員等の訓練が維持できなくなるとの指摘もしています。(全運輸・林昌朗記)

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