国公労新聞 第1244号

◆政府圧力の「ベアゼロ勧告」実施許さない

    労働基本権問題、国公労連と協議せよ

 臨時国会が開会し、安倍新内閣が誕生しました。国公労連は9月29日、公務労組連絡会に結集し、第一次中央行動を展開(写真左)。全国から1000人(国公労連は500人)が参加しました。中央行動では、「ベアゼロ勧告」の実施反対を求めた総務省要求行動、教育基本法改悪法案などの廃案求め、デモや議員要請を実施。反撃のために、職場・地域から「9条改憲反対」「公共サービス商品化」反対のとりくみ強化が求められています。

 ◇06人勧取り扱いで総務省局長交渉

 国公労連は10月5日、06人勧の取扱いについて、総務省交渉を実施しました。国公労連は福田委員長以下四役、総務省は戸谷人事恩給局長が対応しました。
 総務省は従来と変わらず「人勧尊重」の回答に終始。また、労働基本権問題では、「行革推進本部に設置された専門調査会での検討に必要な協力を行う」と不十分な回答にとどまっています。
 国公労連は、政府が再三、人事院に企業規模の変更を迫り、人事院がそれに屈して、何の根拠も示さず、公務労働の価値を切り下げる勧告を一方的に行ったこと、また、基本権の代償措置としての人勧制度を無視した「政府の態度は重大だ」とただしました。また、労働基本権問題で、行革推進本部での議論が始まっていることに触れ、「調査会まかせでなく、政府として国公労連と協議を」と迫りました。
 10月中旬にも人勧の取扱い決定も予想されます。国公労連は最後まで「人勧尊重」を乗り越える回答を迫ります。

 ◇退職年金、退職手当に関する要求書提出

 国公労連は9月11日、「公務員の退職年金及び退職手当に関する要求書」を人事院に提出しました。民間企業の退職給付の水準調査結果のとりまとめ作業をすすめている人事院は、9月11日の交渉で、「職域部分に相当する年金水準と退職手当の支給水準の現状維持というご要望に応えることは難しい」と非常に厳しい認識を示しました。
 官民の退職給付の水準較差が直接退職手当等に反映されれば、大幅な手当額の切り下げにつながります。10月中には人事院の意見表明が予定されています。国公労連は、退職手当と職域年金の切り下げを許さない人事院あて署名のとりくみ完遂をめざします。


◆「公共サービス改革基本方針」閣議決定

  ハローワーク関連など対象、さらなる拡大も

 政府は9月5日、「公共サービス改革基本方針」(基本方針)を閣議決定しました。これは、公共サービス改革法にもとづき、民間事業者からの提案を受けながら、毎年改定されるものです。
 これまで「市場化テスト」と称されてきた民間参加による入札が、これにより具体化されました。

 ◇大きな権限持つ内閣府「監理委員会」

 基本方針の策定にあたり、内閣府に官民競争入札等監理委員会(監理委員会)が設置されました。これは、「入札等の透明性、中立性、公正性を確保すること」等を目的とするとし、基本方針の策定や改定にあたって「議を経る」ことが規定されるなど、大きな権限が付与されています。
 しかしながら委員13人のうち、労働組合から連合役員一名が含まれているものの、消費者や中小企業など、公共サービスの受益者代表は含まれていません。そればかりか、新自由主義的発言の多い学者等が含まれ、目的にふさわしい人選とは言い難いものです。

 ◇対象事業が毎年拡大する危険性

 基本方針では、入札対象となる事務事業(社会保険庁関連、ハローワーク関連、統計調査関連、登記関連の各業務他)が掲げられています。今後、毎年民間事業者等からの意見を募集し、各府省と協議や監理委員会の議論を経て、対象事業も書き替えられます。まさに、公共サービス商品化をめぐる「終わりなきたたかい」の始まりと言えます。
 基本方針の内容を見ると、一年契約の事業があるにもかかわらず、次年度の入札に事業の実施状況の評価を反映させることなど、疑問点が多数あります。9月25日に国公労連が実施した事務局からの説明会でも、なお解明されませんでした。
 国公労連は、国民の権利保障の立場から、秋から宣伝活動などのとりくみを強めることとしています。


宮城・気仙沼労基署廃止問題で現地窓口設置

   労働行政の縮小・後退許さない

 【宮城国公発】宮城労働局内の気仙沼労働基準監督署を来年3月末で廃止することが、昨年末に突然明らかになりました。「小さな政府」を謳う構造改革路線が、労働者の権利を守る機関まで奪おうとするものでした。
 宮城県国公は、地域住民や民間労働者と共同で、労基署廃止反対のとりくみをすすめてきました。
 気仙沼市長をはじめ議員や地元業者団体、市民との懇談・意見交換など、常に地元を舞台に行動し、街頭宣伝行動やシンポジウム開催を並行して実施しました。
 さらには、県労連と共同で厚生労働省への要請行動実施など中央でのたたかいも、地元と一体で展開しました。

  ◇たたかえば要求は前進する

 その結果、当面する具体的要求を勝ち取ることができました。
 宮城労働局より9月12日、文書で示されたもので、具体的には、気仙沼での「総合労働相談コーナー」常設や、労働基準監督官の定期的な現地対応、電話対応の充実などが内容です。
 「もうひとつの日本」県内キャラバンでの訴えや、目標を見失うことなく、常に地域市民との意見交換や共同のたたかいを実践したことが、要求前進に結びついたと確信しています。あわせて、労働行政の拡充・強化の必要性が、あらためて明らかになりました。
 近年、たたかいの結果が見えにくい中で、このたたかいの成果は、県国公運動に大きな自信と確信を得ることができました。


安倍新内閣で何が変わる!?

  極端な公共サービス破壊

 5年半にわたる小泉政権の「構造改革」路線の推進で、格差と貧困がいっそう広がりました。こうしたなか、小泉「改革」を受け継ぎ、憲法と教育基本法の「改正」を明言する安倍晋三内閣が発足しました。この内閣に私たちの暮らし、日本の将来を託すことができるのでしょうか。

 ◇教育の国家統制狙い、教育の格差拡大も

 安倍首相は、自民党新総裁時の記者会見(9月20日)で、教育目標に「愛国心」をとり込んだ教育基本法改正案を「最重要法案」と位置づけることを明言しました。
 教育基本法は、戦前、教育を国家権力による完全な支配・統制のもとにおき、天皇のためにたたかう軍国主義一色に攻められていったことの反省にたって、教育への国家権力による「不当な支配」を拝しています。しかし、政府の教育基本法改悪案は、「愛国心」を国民に強制し、憲法が保障した内心の自由を侵害しています。
 安倍首相の教育改革の考え方は、著書「美しい国へ」で具体的に書かれています。それによると、「ぜひ実施したいのが、サッチャーがやった学校評価制度の導入」と書いています。「問題校は、大臣が教職員の入れ替え、民営への移管を命じることができる」「ダメ教師は辞めていただく」ということです。しかし、その改革のいくつく先は、教育の国家統制と教育の荒廃と格差拡大です。

 ◇米軍と一体の武力行使へ

 安倍首相は9月30日の所信表明演説で、政府見解で違憲とされている集団的自衛権行使について「研究する」と容認に向けた作業に着手する方針を明らかにしました。
 集団的自衛権とは、政府見解では「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力を持って阻止する権利」と説明しています。憲法9条は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、永久にこれを放棄する」と規定しています。そのため、政府も「集団的自衛権を行使することは…憲法上許されない」としています。
 しかし、安倍首相は、自書の『美しい国へ』のなかで、「たとえば、日本の周辺国有事に出動した米軍の兵士が、…敵から攻撃を受けたら、自衛隊はその場から立ちさらなければならない」ことを問題視し、米軍との双務性を強調しています。
 安倍首相の狙う集団的自衛権の行使とは、米軍と一体になって海外で武力行使をすることです。
 安倍首相は、5年以内に改憲を行うことを明言しています。その狙いは、「集団的自衛権を行使」するための9条改憲であることはあきらかです。

 ◇「侵略」の過ちなかなか認めず

 安倍首相は「戦後生まれの初めての首相」ですが、その歴史認識はきわめて古いものです。
 朝日新聞論説主幹の若宮啓文氏は、9月25日付同紙朝刊「風考計」に「安倍氏のすっきりしない歴史観が、祖父(注・東条内閣の商工相でA級戦犯の容疑者だった岸信介元首相)への思いと重なっていないかと気になる」と書いています。
 若宮氏は、「今度の自民党総裁選では…安倍氏だけが『侵略』と言わず、『歴史認識は歴史家に任せるべきだ』の繰り返しだった。『侵略』や『植民地支配』をわびた村山首相談話について、あるいはA級戦犯を裁いた東京裁判についても言葉が煮え切らないのは、本音ではそれを認めたくないからに見える」と書きています。
 安倍首相は、国会で再三その歴史認識を追及される中で、しぶしぶ村山談話の侵略戦争の反省を政府の認識として認め、個人として受け止めることを答弁。
 こうした、「歴史認識」を持つ、安倍首相は、アジア諸国との本当の友情を築くことはできません。

 ◇行政機構の抜本的な改革・再編打ち出す

 安倍首相は、所信表明演説で、簡素で効率的な「筋肉質の政府」の実現めざし、「国家公務員を5年間に1万9000人純減を公言しました。あわせて、「公務員の労働基本権など公務員制度全般」の見直しを表明。また、市場化テスト法の積極実施による民間開放の推進、行政機構の抜本的な改革・再編、道州制の本格的な導入も打ち出しています。さらに、社会保険庁改革でも「解体的出直し」の実現を表明しています。
 こんな乱暴な公共サービスの切捨て、公務員減らしによって最終的に被害を受けるのが国民生活です。

 ◇社会保障切り捨てと大増税をセットで断行

小泉改革で7月に閣議決定された「骨太方針2006」は、2011年までに歳入・歳出一体改革を行うために、今後5年間で社会保障費1兆6000億円、人件費2兆6000億円を削減するとしています。社会保障費削減の第一にあげているのは、生活保護の母子加算廃止や失業給付の国庫負担廃止、介護・医療の負担増など弱者を狙い打ちにしています。
 さらに、歳出削減をしても残る不足額の2兆2000億円から5兆1000億円については「税制改革で対応」として、消費税大増税、所得税大増税をねらっています。
 格差と貧困を広げる逆立ち改革が次の内閣でも引き継がれようとしています。


職場環境改善で「働くルール」を

  国公労連女性協第32回総会を開催

 国公労連女性協は9月23・24日、第32回総会を開催し、15単組、3ブロック、16県国公75名が参加しました。厳しい職場実態だからこそ、力を合わせてたたかう06年度運動方針を決定しました。
 討論では延べ25名が発言。行革が進められている職場報告や、休憩・休息時間見直しによる拘束時間延長、長時間・過密労働の深刻な職場環境の実態が報告されました。
 「組合加入や行動に声をかけたら確実に響く」など仲間との連帯と組織強化の重要性、所定内労働時間の短縮と、短時間勤務制度を実効あるものにするとりくみなど「働くルール」確立をめざすことが確認されました。また、「新聞意見広告カンパ」を呼びかけ、約3万円が集まりました。
 最後に、総会宣言と改憲・教育基本法改悪反対決議を採択しました。


◆交流集会成功で組織強化を

  国公労連青年協第32回総会を開催

 国公労連青年協は9月9日から2日間、都内で第32回定期総会を開催し、8単組4県国公から38名が参加。06年運動方針と役員体制を確立しました。
 討論では、各組織の経験交流が行われるなか、「交流集会で組合員の団結力が強まった。青年が少なくなるなか、県単位でのつながりが必要」(全建労)、「職場交流会で未加入者も参加し、組合に加入してくれた。多くの参加者が集まらなくても、みんなで行動することが大切」(全厚生)、「ホームページ、国公労新聞を活用し、来年6月に開催する国公青年交流集会の宣伝強化を」(全運輸)などの発言が出されました。今年度方針は(1)憲法改悪阻止、(2)働き方に関わる要求実現、(3)組織拡大・強化、の3点を基本に運動を進めることを確認しました。


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