国公労新聞 第1228号

◆「小さな政府」に総反撃を

 第125回中央委員会 春闘期統一要求を決定

 国公労連は1月31日、第125回中央委員会を東京都内で開催しました。06春闘期方針の補強と、公務員総人件費削減反対、平均1万1000円(2.9%)引き上げなどの統一要求を満場一致で採択しました。

 冒頭、堀口士郎委員長はあいさつで、「小泉首相は、施政方針演説で『社会保険庁は解体的出直しを行う』と表明した。社保庁改革を公務破壊のシンボルとし、5%純減達成のための事務・事業削減の突破口と位置づけている。選別採用など著しい人権侵害は断じて許せない。国公産別の力を総結集しよう」と強調しました。

 ◇総人件費削減反対のたたかいを

 つづいて、小田川義和書記長が、統一要求、06春闘をめぐる情勢と行動を補強。(1)9条改憲反対、(2)国民生活破壊の「構造改革」強行反対、(3)「公共サービス商品化」反対、(4)賃金をはじめとする労働条件改善などの重点課題での情勢ととりくみ補強を提案。
 特に、いま急ピッチで進んでいる公務員総人件費削減攻撃の現局面にふれ、「市場化テスト法案」、「行革推進法案」反対と総人件費削減にかかわる「実行計画」具体化反対の両面でのたたかい強化を強調しました。

 ◇社会保険庁改革で「選別採用」許すな

 討論では、「社会保険庁改革の選別採用は、『国鉄問題』の二の舞になりかねない。国公労連全体の運動を」(全厚生、関東ブロック)、「非常勤職員の組織化を重視。勤通大・憲法コース受講も呼びかけた」(全港建)、「登記・市民講座に大反響があった。自らの専門性を活かしたとりくみで、業務の必要性を国民に伝える」(全法務)、「公務員への『誤解』を『理解』に変えるため、リーフを作成」(全経済)、「建設会社に全労連統一要請書を提出し、民間労働者との大同団結を実践する」(全建労)など、積極的な意見が出されました。

 ◇自らの問題として春闘に立ち上がろう

 また、「くらし・安心署名」の追い上げ、春闘を闘いながら組織拡大をめざすことも意思統一しました。
 総括答弁で小田川書記長は、「キーワードは『格差』『平和』『安心・安全』『地方切り捨て』の4点。自らの問題として、一人ひとりが06春闘に立ち上がろう」とのべ、職場・地域からの06年春闘奮闘を強く訴えました。


◆社会保険事務局前宣伝行動を展開

 ◇愛知県国公 医療制度改悪反対を訴え

 【愛知国公発】愛知国公は1月25日、愛知県社会保険事務局前で、医療制度改悪反対を中心課題に、地域労連とともに25人で元気よく宣伝行動を行いました。
 愛知国公磯貝議長の訴えをはじめ、全厚生の仲間も宣伝行動に参加、熱のこもった訴えに一同力が入りました。
 「知らないうちに制度が変わり、負担が重くならないよう、ビラをご覧ください」と、国民の負担増を危惧する訴えは、足早やに歩く通勤者の耳に届き、人々はビラに目を通しながら話をする姿も見られました。1000個のビラ入りティッシュは想定外の速さで配り終えるほど好評でした。
 私たちの訴えや行動が、少しずつでも実を結んでいる…そんな喜びを感じとることができた宣伝行動でした。

 ◇大阪国公 社会保障制度の充実を求めて

 【大阪国公発】大阪国公は1月26日、大阪社会保険事務局近隣駅頭で宣伝行動を実施しました。この宣伝は、全厚生の13名を先頭に全体で20人の仲間が参加。凍える朝の宣伝でしたが、約800枚のチラシを渡しました。
 「今すすめられている『改革』は、各社会保障制度の改悪を伴うものです。『社会保険庁改革』もまた、社会保障の充実を求める国民の願いに逆行するものです」と、全厚生大阪支部の川畑さんは、訴えました。


◆全労働者に賃上げを

経団連など包囲行動を展開

  国民春闘共闘と東京春闘共闘は1月19日、06春闘の闘争宣言行動として「1.19丸の内デモ(写真上)・日本経団連包囲行動」を展開し、のべ1800人が参加しました。
 寒風吹き荒れる午前10時から、NTT・トヨタの大企業コース、総務省・財務省の霞が関コースに分かれて要請行動。霞が関コースでは、人件費削減攻撃の中止、市場化テスト法案反対(総務省)、財務省には定率減税廃止と消費税増税計画中止、国民負担増の06年度予算案を見直し(財務省)などを要請しました。


◆「規制緩和」で安全崩壊・格差拡大

  政府の進める「規制緩和」が、安心・安全の破壊、格差拡大を引き起こしていることがますます明らかになっています。  「耐震強度偽装事件」やJR宝塚線での列車転覆事故などは、経済効率を優先して、安全・安心にかかわる行政機関のチェックを緩和した結果です。今号では、「規制緩和」「官から民へ」の問題点について考えてみました。

 「小さな政府」で格差社会が深刻に

「小さな政府」で規制緩和が加速

 1990年代後半以降、社会的な格差がさらに拡大しています(図表1)。その原因一つが、3割を超えた非正規労働者の増加に見られる雇用の不安定化にあります。雇用の不安定化は労働法制改悪(規制緩和)に後押しされています。



 深刻な問題が表面化しているにもかかわらず、政府は「規制緩和」をさらに進めようとしています。
 政府の規制改革・民間開放推進会議は、昨年12月21日、「規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申」を決定しています。その内容は、(1)横断的制度の整備として市場化テストの本格実施など、(2)横断的制度の整備だとして少子化対策など、(3)個別重点分野として医療、教育などをあげています。
 この内、「規制緩和」にかかわって、たとえば「少子化対策」では、「仕事と育児の両立や保育サービスの利用者選択」などのためとして、「労働時間規制の適用除外制度」や「派遣労働規制の緩和」、「(営利企業参入の促進を目的とする)直接補助方式」や「サービス内容に見合った対価を支払う方式」などを打ち出しています。
 少子化対策を口実に、労働法制をさらに改悪して労働者保護の規制を緩和し、保育内容に所得格差を持ち込もうとしているのです。

 ◇「選択と自己責任」で格差を拡大

 個別重点課題とされる教育や医療も含め、規制緩和のキーワードは「選択と自己責任」です。
 所得の多少で、受けられる教育や医療のレベルが決まる。受けた教育のレベルや健康状態は「自己責任」とされ、それが雇用にも影響する。不安定な雇用関係に置かれる労働者やその子は、最低基準の保育や医療、教育しか受けられない。結果として、格差社会がさらに深刻化する。そんな「構図」が容易に想定される内容です。

 ◇世論に訴えるとりくみ強化を

 内閣府の「規制改革」に関する特別世論調査では、「民間開放を進めるべき」という回答が、医療(58.9%)、教育(50.1%)、福祉(48.6%)に上っています。これらの分野の公共サービス商品化・規制緩和が、社会の格差を深刻すること、そのことの危険性に気付いていない人が少なくないのです。
 「小さな政府」で、「自己責任と選択」が強制され、社会の格差と対立が深まることの問題点を訴えるとりくみの強化が必要です。

 ◆耐震偽装 「官から民」で公正な検査できない

  【国土交通省全建設労働組合(全建労)玖村徳則副委員長】

 全建労は、「国民の生命と財産を守る公共事業の推進」「建設産業界の民主化」を建設産業に働く仲間とともに進めてきました。
 耐震偽装事件がなぜおきたのか、全建労は主たる原因と解決策について次のように考えます。
 (1)1998年の建築基準法改定による建築確認の民間開放で、実務は「官から民」へ移しましたが最終責任は「官」に残したままで、司法判断も示されています。
 実務作業と利益は「民」、一方で責任は実務に関わらない「官」が負う制度が、関係者全体の責任感を麻痺させたのではないかと考えます。
 (2)民間検査機関の「公平・中立・公正な審査」について、法改正時に国会審議の中でも法曹界からも全建労も危惧を示していました。
 民間検査機関の大手企業は、ハウスメーカーや大手ゼネコン、電力・ガス、損保、金融機関の出資で設立され、その上出向社員も迎えています。「親会社の審査・確認を子会社が行う」体制では、とても「公平・中立・公正な審査」を期待できません。
 (3)確認検査業務の体制について、審査の期間が3週間と短いのに対して民間検査機関でも特定行政庁でも体制と人員の不足が指摘をされています。本来は適正な審査には「規模や用途などにより審査期間と必要人員」を決め申請数に応じて人員配置を決定すべきです。
 (4)技術については言葉や文書で伝承できにくい、長きにわたる現場経験や審査経験の中で培われてきた技術や独特の「カン」も軽視をされてきたのではないでしょうか。
 (5)構造計算ソフトは市販のソフトで容易に改造できると報道されています。認定ソフトは複数の会社が販売し、高価で互換性がないため特定行政庁や民間検査機関では予算の制約で全てのソフトを備えず「電子データで申請し再計算」が出来なかったために、偽装を見過ごしたとも指摘されています。
 (6)民間の建築物であっても、高層建築物の場合には倒壊や崩落等より入居者や周辺住民への被害・迷惑、倒壊による避難路閉塞になりかねません。高さや戸数等一定の要件を備えた場合には、民間の建築物であっても官公庁施設の建築物と同程度の中間検査・完成検査を行う必要があります。                    

(全建労・玖村徳則副委員長談)

 ◆タクシー規制緩和 賃金と安全を破壊

  【全国自動車交通労働組合総連合会(自交総連)今村天次書記長】

 ◇年収269万円 41県で生活保護下回る

 「15時間働き8千円/会社で生活」「長時間労働・低賃金 規制緩和で悪化」(『朝日新聞』1月29日付)とマスコミもタクシー労働者の悲惨な労働実態を報道しています。
 2002年2月に、タクシーの「規制緩和(台数・運賃の自由化)」が強行されてから4年がたち、タクシー労働者の平均年収は、269万円(厚労省調べ、04年度)にまで低下しています。
 自交総連が調べたところ、各都道府県の生活保護額を上回るタクシー労働者の年収(02年度)があったのは6都県だけという状況です。

 ◇交通事故と運転中の急性死が2倍以上に

 お客さんを求めて走り回り、長時間労働を重ねるため、交通事故が急増し、ドライバーが運転中に倒れる事故は規制緩和前の2倍以上になっています(図表3参照)。



 客待ちのタクシーが街にあふれ、交通渋滞を引き起こしたり、無用な排気ガスを出し、地域住民にも迷惑をかけています。
 こうした中で、昨年6月、自交総連宮城地連の組合員69人が、極端な収入減は、国が適切な規制を怠ったためだとして、減収分1億700万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。
 仙台市では規制緩和後、タクシーが約30%も増える一方、営業収入は逆に30%も低下。原告の組合員の平均年収は212万円にすぎません。また、昨年12月には、自交総連東京地連の組合員20人も損害賠償訴訟を起こしています。
 自交総連は、こうした裁判も契機に、「規制緩和」の実態を広く社会的にアピールして、タクシーの安心・安全を守るとりくみを進めています。                    

(自交総連・今村天次書記長談)

 ◆米国の圧力 BSE対策が危ない

  【農民運動全国連合会(農民連)笹渡義夫事務局長】

 ◇再開わずか1カ月で米国産牛肉輸入停止

 1月20日、成田空港に到着したアメリカ産牛肉から除去を義務づけられている背骨が見つかり、輸入再開後わずか1カ月で再び輸入停止となりました。
 そして、小泉内閣が、輸入再開前にアメリカの食肉処理施設の現地調査を閣議決定していたにもかかわらず、何もせず輸入を強行したことも明らかになっています。

 ◇「食の安全」よりアメリカの要求を優先

 国民の「食の安全」より、アメリカと国内の大手外食産業の要求を優先させた小泉内閣の責任は重大です。農民連は、担当相である中川昭一農水大臣の辞職を要求しています。

 ◇“民”によるずさんなアメリカのBSE対策

 昨年、農民連は、BSE問題で訪米調査をおこないました。
 アメリカの食肉産業は、四つの大企業が8割のシェアを占め、政治に強い影響力を持ち、BSE安全検査も食肉企業の職員があたっています。
 その上、年間約3500万頭のうち検査するのは37万頭とわずか1%で、どの牛を検査するかも、食肉企業が決めています。本当にあやしい牛はヤミからヤミへ葬られている状況です。そして、ヤコブ病で毎年300人が亡くなっていると言われています。まさに、“民”による検査体制が人の命を危うくさせているのです。

 ◇アメリカの圧力で国内基準を緩和

 2003年12月にアメリカ産牛肉が輸入停止になって以来、アメリカは輸入再開を強く求め、日本国内の全頭検査を「科学的でない」として「規制緩和」を要求。小泉内閣はこれに応え、全頭検査から20カ月齢以下を除外し、国内基準を緩和してしまいました。
 農民連は、こうした「規制緩和」に反対し、(1)全頭検査、(2)危険部位の除去、(3)肉骨粉の飼料からの完全隔離、(4)トレーサビリティ(生産履歴を追跡する仕組み)が確立されない限り、輸入再開は許さないという運動を進めています。

(農民連・笹渡義夫事務局長談)



◆学んで活動の大きな「糧」に

 国公労連が初めて「青年セミナー」開催

 国公労連は1月14日、都内で「国公労連青年セミナー」を開催し、11単組42人が受講しました。
 国公労連が青年組織を担っている役員を対象としてこのようなセミナーを実施するのは初めて。国公労働運動の日常活動を推進するための最低限の基礎を身につけてもらうことを目的として実施したものです。

 ◇青年の現状と運動の展望語る

 第1講義「私たちはどのような時代を生きているか―これからの日本と労働組合運動」では、講師の小林宏康氏(労教協常任理事)は、青年の置かれている厳しい現状とこれからの労働運動の展望などを具体的な例をあげて説明。参加者からは「国公の青年はまだ切迫感がないとの指摘に胸を打たれた」「正規・非正規も一緒になってたたかわないといけない」との声が感想文に寄せられました。

 ◇開建労結成の秘話を熱弁

 第2講義「労働組合の『むかし』と『いま』」では、国公労連副委員長の山瀬徳行氏が講師を務め、戦後誕生したばかりの国公労働運動のたたかいや自らがかかわった沖縄の開建労結成秘話を熱弁。「組合活動の歴史を知ることは重要」「開建労結成時の話は新鮮だった」という声が。

 ◇「公務・仕事・生き方について考えた」

 第3講義「私たちは公務労働者、労働条件とその仕組み」では、講師の国公労連書記長の小田川義和氏は、「公務労働とは何か、労働条件はどうなっているのか」などを受講者に問題を投げかけながら講義を行いました。
 参加者からは、「公務・仕事・賃金そして生き方について改めて考えさせられ今後の活動にも生かしたい」、「自分の単組だけでは見えない部分がたくさんあった」などの感想が寄せられました。
 セミナー終了後、国公労連青年協の運営で交流会を実施。なごやかに懇談し、単組間の枠を超えた仲間意識を深めました。「一日という短い時間の中で今後の活動の大きな糧になる」との声がでていました。


◆「石にかじりついてでも」賃上げを

 全労連 第38回評議員会ひらく

  全労連は1月26日から2日間、第38回評議員会を東京都内で開催し、06年国民春闘方針を決定しました。
 全労連は、安全・安心の破壊、格差拡大、地域切り捨ての流れに歯止めをかける国民的運動を重視。「だれでも月額1万円以上、時間給100円以上の引き上げ」などを掲げ、「石にかじりついてでも賃上げを」(坂内三夫事務局長)と強調しました。
 方針では、(1)全組合が賃上げ要求を提出、(2)働くルールの確立と企業の社会的責任(CSR)追及の強化、(3)庶民大増税、医療改悪反対、(4)憲法・教育基本法の改悪阻止、を提起しました。

 ◇憲法改悪・増税反対 国民課題の前進を

 討論では、「すべての組織がベア獲得をめざす」(医労連)など賃上げの積極的な決意や、「公務員削減ともかかわる労働基準監督署の廃止反対」(宮城)など地域からのとりくみ報告、さらには「憲法改悪反対」や「増税反対」の運動など国民課題での前進の決意も語られました。
 また、耐震強度偽装事件、不公正な株取引など、構造改革の「陰」の部分ともかかわって大企業の社会的責任追及強化が強調されました。
 2月下旬の地域総行動、3月10日の「青年、女性、パート」を中心とする中央行動などの統一行動での奮闘が確認され、5月下旬には「憲法と教育基本法」改悪反対中心課題とする10万人規模の集会開催も含め、方針を満場一致で採択しました。


◆「公共サービス」切り捨て許すな

公務労組連 第30回臨時総会ひらく

  公務労組連絡会第30回臨時総会が1月18日に開催され、単産・地方組織から81名(国公労連15名)が参加し、06年春闘方針と統一要求を決定しました。
 総会では、「小さな政府」論にたった小泉「構造改革」は、公務公共サービスの切り捨てをすすめ、国民のくらしと安心・安全を脅かすものであることが明らかにされました。

 ◇民主的な行財政教育の確立を

 国民犠牲の「構造改革」を阻止し、民主的な行財政・教育の確立めざすとりくみへの総決起が呼びかけられました。討論では5単産3地方組織が発言。
 憲法、教育基本法、市場化テストなどの課題に加え、男女雇用機会均等法、短時間制勤務、給与構造見直しなど公務労組連絡会の要求に関わっても意見が出され、議案を深め合いました。
 そして、官民共同・国民共同を広げて、06春闘勝利に向けた奮闘を意思統一しました。

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