国公労新聞 第1212号

●〈国公労連結成30周年記念行事〉
  公務の公共性を考える集会ひらく

  −−格差社会でなく公正な社会を−−

 国公労連は6月4日、結成30周年記念行事の一環にも位置づけた「公務の公共性を考える集会」を都内で開き、単組、県国公、他団体などから178人が参加しました。

 ◇企業栄え国民滅ぶ

 「『構造改革』と日本経済」と題して記念講演を行った山家悠紀夫氏(暮らしと経済研究室主宰)は、構造改革により、景気後退、財政赤字拡大、賃金・雇用の減少、所得格差拡大等が顕著になっていることを、データを示しながら解明。この流れを変えるためにも、「目先の利益を追求する企業まかせでなく、国民共同の利益を実現する運動」への期待を語りました。

 ◇公務の範囲等積極提言を

 第2部のパネルディスカッション「21世紀初頭の公務の公共性を考える」は、法政大学の浜川清教授をコーディネーターに、大阪市立大学の宮本憲一名誉教授、専修大学の晴山一穂教授、神戸大学の二宮厚美教授がパネラーとして発言しました。
 宮本氏は、公共性を考える条件として、国民に平等に安易に利用され、住民の同意をうる民主主義的手続き保障など、を提起。さらに税金を払ってでも公共部門拡大を求めていく必要性を強調しました。
 晴山氏は、公務の範囲縮小、市場化テスト論議にみる「公務破壊」の乱暴さを指摘。公務の範囲は最終的には国民の選択によることを確認し、公積極的な提言運動の必要性を強調しました。
 二宮氏は、公務の公共性を拡大するポイントとして、(1)公共性、(2)効率性(政策目標に対してどれだけ効果を生みだしたか)、(3)専門性(公務員の知的熟練)を強調しました。

 ◇現在の歪み告発を

 この提起も受けて、会場の参加者から発言。これに対し、各パネラーから、「公務の現状や歪みの告発は民主的統制の視点から大切」、「個別の業務ごとの公共性をわかりやすく主張すること」、「現在を是とするのでなく、問題点を改善する立場での論議が必要」などまとめの発言が行われました。
 最後に、国公労連の小田川書記長が、「この集会を起点に、来年秋に開催する第2回行政研究集会に向け、『行政第一線を国民の視点から検証する』行政研究活動をスタートさせよう」と提起しました。


●〈総務省〉退職手当見直しを表明
  −−給与構造「見直し」とも関わって−−

 総務省は6月8日、「給与構造見直し」とも関わって、「退職手当制度の見直し」に着手せざるを得ないことを明らかにしました。

 ◇貢献度反映を上乗せ

 退職手当制度については、公務員制度改革の過程で、(1)人材流動化により対応できる制度へ、(2)在職期間長期化にも対応できる制度へ、(3)貢献度をより的確に反映する制度へ、とするよう指摘されているとし、退職手当制度の「構造見直し」が求められているとの認識を、総務省が明らかにしました。
 具体的には、「人材流動化により対応できる制度へ」は、中途採用者や任期付きが増加している中で、現行の「最終月額×勤続別支給率」では累進的に高くなる仕組みとなっており、人材流動化に支障があるとして支給率カーブのフラット化を検討。
 また、「在職期間長期化にも対応できる制度へ」は、定年までの勤務が要請されているが、ポストには限りがあることから、ポストを下げた形で勤め続ければ、給与の引き下げとともに退職手当も下がることとなり、人事管理の阻害要因となっているので、今の最終俸給月額のみを算定根拠とすることの見直しを検討。
 さらに「貢献度をより的確に反映する制度へ」は、現行の算定方式では勤続年数による性格が強く、最終月額がいくら高くても、勤続年数が少なければ結果として退職手当は低くなる、民間では職務・職責に着目してポイントをつける制度が導入されつつあり、勤続に中立的な貢献度反映の仕組みも検討したい、との考えを明らかにしました。
 その上で、人事院の「給与構造の基本的見直し」の具体的な検討状況や、民間企業における退職金制度見直しの動向も踏まえた検討を進めるとしました。なお、総務省は05年勧告の取り扱い決定とあわせた退職手当法「改定」の考えを示しています。

 ◇現行水準を維持せよ

 国公労連は、「貢献度反映は、そもそも俸給表それ自体に職責と貢献度が反映されているのに、二重に貢献度を上乗せすることになる」と指摘し、退職手当の現行水準を維持確認した検討を主張し、労使協議の徹底を求めました。


●人勧期要求を提出

 国公労連は6月14日、「2005年人事院勧告にむけての要求書」を人事院に提出し、交渉を行いました。
 国公労連側は、「政府が今月決定する骨太方針で公務員の純減目標を設定しようとしており、第一線で職務に励む職員は、充実した仕事ができるのか不安を抱いている。こうした中での賃下げを伴う給与構造改悪は認められない」と迫りました。
 これに対して、人事院の大村事務総長は、「公務員への厳しい批判がある現在、給与構造の見直しをしなければ国民の理解・納得を得られない。民間の給与実態の変化を含めて議論していきたい」などと応じました。


●混迷する郵政民営化法案
  世論で、廃案に追い込もう


 「骨太方針05」では、総人件費削減や市場化テストを構造改革の次の目玉として提起。国会では、「構造改革の本丸」郵政民営化法案が重要局面に。法案の行方は、私たちのたたかいにとっても重大です。

 特別委員会での審議では、「なぜ民営化するのか」の基本問題がますます浮き彫りになり、政府答弁も混迷しています。政府の「試算」でも、公社で維持すれば黒字ですが、民営化では赤字に。過疎地には現在の設置基準が義務づけられても、都市部では統廃合が進むなど、国民の利便性が損なわれることが明白になっています。
 6月16日、法案成立を目的に55日も会期延長。6月19日までの会期内に成立させなかったのは、全労連や私たちのたたかいもあったからです。

 ◇7月1日の全国統一行動成功を

 各職場・地域からの奮闘で、郵政民営化反対の署名も20万に達し、衆議院での紹介議員は49人にのぼっています。
 国会は、東京都議選を挟んでヤマ場を迎えますが、自民党内での矛盾の激化や、全野党の反対、国民世論の高まりなど、廃案に追い込む条件は広がっています。
 そのためにも、地域でのさらなる奮闘が求められます。全労連は7月1日を全国統一行動日として、主要駅頭での宣伝行動、地元国会議員をはじめ自治体首長や議会議長への要請、などを提起。 国公労連は、郵政民営化問題を「公共サービス商品化」に反対するとりくみと結合して、小泉構造改革の「本丸」である郵政民営化法案の廃案をめざして、奮闘します。



●つたえよう、ひろげよう 憲法のある しあわせ
  第35回国公女性交流集会ひらく

 6月10、11日、第35回国公女性交流集会が広島市内でひらかれ、382人(12単組41県国公)が参加しました。
 ドイツ文学翻訳家の池田香代子さんが「100人の村から憲法が見えた」と題し、記念講演。憲法制定時の歴史的背景や、憲法13条の重要性を語り、「憲法の中心は一人ひとりが大切にされる社会をつくること。みなさんが身近な人々に憲法の素晴らしさを話してほしい」と呼びかけました。
 阿部女性協議長の基調報告の後、「過労死のない、命を大切にする社会を」と過労死裁判のたたかいを「働くもののいのちと健康を守る広島県センター」副会長の木谷照子さんから、青年が戦争を語り、歌で楽しく平和運動をすすめる「沖縄・ヒロシマ・ながさき青年平和交流会」実行委員長の斎尾亜利さんから報告がありました。
 その後、男性合唱「国鉄広島ナッパーズ」の力強い歌声で会場が一つになりました。
 2日目は8つの分科会を開催。被爆の体験を聞く分科会をはじめ、憲法、メンタルヘルスや食の安全、男女平等や働き方について語り合いました。
 分科会後の全体会では、「教育基本法改悪反対、国民投票法の制定阻止、世界に誇れる平和憲法を守る決議」と、「少しの勇気を出して、自分のできることから始めましょう」とのアピールを、参加者全員で確認しました。
 集会後、全国から集まった折り鶴を平和公園に献納し、平和への想いを誓いあいました。


●連載 検証・憲法調査会報告(1)
  「はじめに改憲ありき」


 05年4月、国会の憲法調査会は、5年間の活動を「取りまとめた」報告書を議決し、議長に提出しました。「5年間憲法論議をした憲法調査会を知らない」国民は、71%にものぼっています(朝日・05年5月3日付)。5年前に比較して、改憲論議は格段に強まっています。憲法調査会とは何だったのでしょう?
 何が論議されたのでしょう?
 今号から7回にわたって検証します。

 ◇設置「目的」を越えた調査会

 憲法調査会は99年の第145通常国会で、国会法を改正して設置され、2000年1月にスタートしました。同じ通常国会では、「周辺事態法」、国旗・国歌法、通信傍受法など、有事関連法制の成立が相次ぎました。
 改憲か護憲かではなく、論憲の時代に入った、調査会がスタート時点のマスコミ論調の大勢はそんな雰囲気でした(2000年1月20日・朝日、「『論憲』ムード、実体は?」など)。
 実際、憲法調査会は「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」(国会法第102条の6)とされていました。
 しかし、出された報告書に対しては、「求められた憲法調査をせず、逆に、権限を付与されてもいない改憲論議を行った」「手続上、根拠規範を逸脱」(小林武愛知大学教授・『憲法運動340号』)との厳しい批判が出されています。
 「論憲」にとどまらず、たとえば9条について、「憲法と現実とのかい離」を強調し、改憲志向を明瞭にしているからです。

 ◇改憲の「条件づくり」が調査会

 約200回に及ぶ衆参両院の調査会審議などを傍聴した国際経済研究所代表の高田健氏は、「居眠り、私語など委員の審議姿勢が『学級崩壊状況』」の中で、「改憲派委員からの9条批判集中」したと述べています(雑誌『世界』6月号)。
 そのような状況で「まとめられた」報告書の内容を「知っている」とする国民はわずか3%です(前記、朝日世論調査)。
 いま、「(報告書にもとづく)憲法論議のための常設機関」を国会に設置する動きが強まっています。国民の関心が高まらない内に改憲の条件づくりを行う、それが憲法調査会の目的でした。




●男女共同参画を特集〜国公労調査時報7月号

 「国公労調査時報」7月号は、「男女共同参画社会の実現を」を特集しています。
 ILO駐日代表の堀内光子さんの論文「世界から見た日本のジェンダー平等」では、日本における女性の社会的参加は先進国で最も低いグループに属し、男女間格差が大きいと指摘。出産・育児期が谷となるM字型カーブ、非正規雇用の増大への対応を求めています。 茨城大学教授の清山玲さんの「男女共同参画と労働組合運動」は、雇用環境の変化に対応するためにも、女性の組合役員登用は求められており、参加方法への配慮・工夫を提案しています。国公労連中執の阿部春枝さんは、公務における次世代育成支援の各省庁行動計画について論じています。
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