国公労新聞 第1151号

●「国民の中へ、国民とともに」 −−運動のさらなる発展を−−

   ◆◆2003年度運動方針案のポイント◆◆

〇厳しい情勢のなか「一矢報いる」到達点も
 7月28日に閉会した通常国会。有事法制やイラク特措法などが相次いで成立しました。
 「戦争をする国」への急旋回が進む一方で、健保本人3割負担の強行など、国民いじめの悪政がさらに強まりました。
 労働組合も手をこまねいているわけではありません。労働法制改悪法案にかかわって、「解雇できる」との規定を国会段階で削除させ、公務員制度改革関連法案の国会提出を見送らせ、あるいは、参考数値が初のマイナスになるなかでも地域最低賃金の目安を「ゼロ円」にとどめさせたことなど、運動で「一矢を報いる」到達点も築いています。
 運動面でも、労働組合だけではなく、市民団体や業界団体などとの共同が前進した課題も少なからずあります。
 人事院による2年連続の賃下げ勧告にもみられるように、情勢の厳しさは覆い隠しようもありません。しかし、「愚直」にとりくんだ運動の成果に目を向ければ、情勢の厳しさをはね返す運動の教訓は少なくありません。

▽全労連運動の一翼を担い、「国民総決起の運動」構築を
 方針案では、国公労働者のくらしや労働にかかわって、(1)アメリカの「一国・覇権主義」が世界と日本の平和をゆるがしていること、(2)小泉「構造改革」の強行が、雇用・くらし・いのち・平和の危機の元凶であること、(3)大企業の横暴が労働者のくらしと地域社会を直撃していること、(4)公務の公共性破壊攻撃がいっそう激しくなっていること、(5)悪政や道理のない「改革」への国民の反撃がおき始めていること、の5点を特徴的な情勢と捉えています。(失業者数などは図1参照)

図1


 状況の厳しさをはね返すためには、この5点に目を向けて、全労連運動の一翼を担い、労働組合のみならず幅広い団体との「対話と共同」をもとにした「国民総決起の運動」構築に向けた役割を積極的に果たすことを、運動の基軸におくことを提案しています。
 8月27日から開催する国公労連第49回定期大会は、全国各地の運動の教訓を持ちよって、向こう1年間のたたかいの意思統一を深め合う場です。
 本稿では、国公労連中央執行委員会が提案している「方針案」でのたたかいの4つの柱を中心にその概要を掲載します。大会に向けて、組合員の率直なご意見をお寄せください。

○小泉「構造改革」に反対、雇用・くらし・いのち・平和の危機を打破しよう
 この1年の間に、衆議院選挙と参議院選挙が行われることから、国政の転換をめざす公務員労働組合としてのとりくみも含め、小泉「構造改革」による悪政反対運動を重視するとしています。
 具体的な課題や運動として提起しているのは、次の4点です。

▽有事法制発動反対
 第1に、憲法改悪に直結する有事法制の発動反対に重点をおいた地方段階からの「国民共同」への結集と、政府と国会に向けたとりくみを強化し、また、職場段階での学習と意思統一を重視していきます。

▽年金大改悪反対
 第2に、国民生活を破壊の淵に追い込む年金大改悪、消費税率引き上げなどの増税反対の運動を重視します。特に、年金大改悪に反対するとりくみを最重要課題と位置づけ、秋闘段階から積極的に運動を展開していきます。

▽地方「切り捨て」反対
 第3に、押しつけの市町村合併や「三位一体改革」(図2)など、地方自治を破壊し地方の切り捨てとなる「分権」策動に反対する全労連規模の運動への結集を強めます。

図2


 特に、地方財政難のもとでの義務教育国庫補助金削減などは、教育公務員をはじめとする地方公務員の賃下げ攻撃などに直結する危険性を持っていることから、「地域に勤務する公務員の給与のあり方問題」とも関連させて、地域間格差の固定化・拡大に反対する運動での「750万労働者」(表1)との共同拡大の追求を強調しています。

表1


▽全組合員参加の運動で「構造改革」跳ね返そう
 第4に、具体的なとりくみでは、(1)署名を活用した地域での共同追求、(2)キャラバン行動などと結んだ大量宣伝活動や自治体要請行動、(3)地元からの国会議員要請行動も背景とした国会闘争、(4)中央・地域での集会等のアピール行動などを重視していきます。
 また、全組合員参加の運動展開をめざすことを強調しています。

○公務員制度改悪など「公務リストラ」反対
 公務の公共性破壊、公務員制度改悪などの「公務リストラ」に反対するたたかいの強化を、産別闘争の重点課題としています。「国民本位の行政サービスの確立・拡充」を求める行政民主化のとりくみと、「公務職場での働くルール破壊に反対」する職場段階からの闘争を一体で展開することを提起しています。
 具体的な運動課題は、次の5点です。

▽公務員制度改革
 第1に、「公務員制度改革大綱」にもとづく公務員制度改悪に反対し、(1)労働基本権回復、(2)「天下り」撤廃などの民主的公務員制度確立、(3)差別・選別強化の人事管理導入反対の「3つの要求」を対峙した運動を引き続き強化します。
 そのなかでは、機動的な運動を展開するため、「1万人講師団」の確立を引き続き追求、「国公権利裁判」のとりくみとも連携させたILO勧告の履行、労働基本権確立を求める地域からの共同拡大を追求することを強調しています。

▽賃金職員の雇用継承
 第2に、独立行政法人国立病院機構への移行に際して、7500名の賃金職員(表2)の雇用継承を求める運動を、公務リストラ反対の産別運動として重視していきます。

表2


▽国立大学法人化
 第3に、国立大学法人化に伴う雇用・労働条件破壊の攻撃を許さず、学問・教育の自治を守り発展させる共同のとりくみを進めることとし、県国公加盟の大学職組に呼びかけた「交流決起集会」を春闘前段の時期に開催することなどを提起しています。

▽行政の「減量化」反対
 第4に、独立行政法人化や業務の民間委託など、公務の民間化が国民生活に及ぼす影響を検証し、定員削減を含む行政「減量化」の問題点を社会的に告発するとりくみを強化していきます。
 また、長時間過密労働の是正、ただ働き残業の撤廃や非常勤職員の「均等待遇」など、働くルールの遵守・確立を求める職場の日常的な取り組みを、行政「減量化」に反対するとりくみと一体で展開していきます。

▽連合会「合理化」反対
 第5に、特殊法人改革や医療制度改革とも一体で強まっている国家公務員共済組合連合会・宿泊事業、医療事業での「合理化」攻撃に反対するとりくみを強化していきます。


○「賃下げのサイクル」阻止し、「国民総決起春闘」の前進を
 働くものすべての労働条件改善をめざし「春闘解体」攻撃などの賃金破壊に反対し、格差是正、均等待遇実現、最低生活保障を求めるとりくみを地域から強化することを提起しています。
 運動の目標としては、(1)「国民総決起春闘」の着実な前進、(2)不利益遡及や使用者による賃下げなどルール無視の賃下げ攻撃への抵抗闘争の強化、(3)賃金体系改悪や賃金制度改悪を許さない政府・人事院追及の強化の3点を強調しています。
 具体的な運動課題は、次の4点です。

 第1に、全国民的規模での「生活改善闘争」としての「国民総決起」春闘の前進をねばり強く追求。04年春闘期の最重点課題は、年金改悪反対闘争と賃金底上げのとりくみを軸とする「最低生活改善闘争」とします。

 第2に、男女間、地域間、産業間、企業規模間、雇用形態の違いなどによる格差是正のとりくみを制度的にも労使関係においても重視することとし、最低賃金の改善(表3)や、非正規労働者の「均等待遇」を求める制度闘争と一体で公務員賃金闘争を展開していきます。

表3


 第3に、公務員賃金の社会的影響力をふまえたとりくみを重視する立場から、「賃下げのサイクル」に反対するたたかいや、不利益遡及などのルール破りを許さず、賃金体系や地域間配分の改悪に反対するたたかいを強化していきます。

 第4に、生活改善のたたかいを職場から強めるため、要求組織段階からの職場討議をより重視していきます。

○「チャレンジ30」を着実に実践、頼りになる産別センターへ
 全国津々浦々にたたかいの基盤を持つ国公労連の優位性を高めるためにも、国公労連の組織強化・拡大方針である「チャレンジ30」の着実な実践を呼びかけ、頼りになる産別センターへの脱皮に挑戦することを呼びかけています。具体的には、次の点です。

 第1に、2年目となる「チャレンジ30」を前進させるため、各級機関で目標設定や重点地域を決めたとりくみを進めることなどを呼びかけています。
 具体的な重点課題としては、(1)非常勤職員の組織化、(2)本省庁での組織強化、拡大、(3)独立行政法人労組での安定的多数組織の確立、(4)ブロック国公の機能強化、県国公未加入組織の解消、などを提起しています。

 第2に、全労連が提起する「組織拡大推進基金」の成功に向けたとりくみです。年間一口1000円のカンパ者を「10人に1人」の割合で組織することを先行させるとともに、特別会費の徴収方法について論議を進めていきます。
 第3に、日常的な職場活動強化をめざしたとりくみを強めるため、労働学校の8ブロック開催を引き続き追求するとともに、メール通信員の登録拡大などを提起しています。

●とんでもない!マイナス勧告 −−7・31中央行動に3500人−−

 国公労連は7月31日、全労連・公務労組連絡会に結集して第3次中央行動にとりくみ、全国から3500人(国公2300人)が参加しました。
 中央行動では、29日から連続の人事院前座り込み行動と連結させ、大規模な人事院への要求行動、各省へのいっせい要求行動など「霞が関総行動」を展開。28万4000筆の賃金改善署名も人事院に提出しました(30万2000筆=8月6日現在)。総決起集会では、マイナス勧告阻止への決意を固めあい、銀座パレードで道行く人々に「賃下げの悪循環をくい止めよう!」とアピールしました。

●全国の仲間が怒っているぞ! −−各地で早朝地域合同拠点集会−−

 国公労連は7月30日、「早朝時間外職場集会」を全国の職場・地域で展開。管区機関の集中する県都では「合同拠点」集会も開催し、「マイナス勧告」を断じて許さない決意を示しました。

【北海道国公発】
 札幌第一合同庁舎前で集会を実施。雨の中でしたが、約200名が参加。佐藤議長は「この雨は必ずあがる、賃下げの悪循環も必ず終わる」と、仲間に訴えかけました。
【埼玉県国公発】
 さいたま新都心地区で、移転後初めての合同集会が開かれ、48名が参加。全労連・全国一般埼玉地本から「民間と公務一体でたたかおう」と激励を受けました。
【神奈川県国公発】
 小雨模様のなか、横浜第2合庁で集会を開催し、100名を超える仲間が結集。神奈川労連の水谷事務局長も激励に駆けつけました。
【愛知県国公発】
 名古屋の官庁街・三の丸地区の集会に300名が参加。交渉制限をかけ、私たちの声をまともに聞かない人事院中部事務局に怒りの声をあげました。
【大阪国公発】
 前日に駅頭での宣伝行動にとりくみ、集会成功に向け各単組が奮闘。大阪第4合庁に150名の組合員の怒りが結集!
【兵庫県国公発】
 神戸第2合庁では、霧雨が降るなか50名が参加。松浦議長が「怒りを結集し、たたかおう」と訴え、全日検神戸支部労組が「私たちも一方的な攻撃を受けている。ともにがんばろう」と激励しました。
【広島県国公発】
 広島合同庁舎前では早朝から360名が結集。11時からは、人事院への一言を綴ったブロック国公独自の「賃金改善を求める要請書」2231名分を人事院中国事務局に提出しました。

●改革作業の「出直し」を! −−推進事務局、協議の不十分さ認める−−
  「公務員制度改革関連法案」の見送りで

 国公労連は8月1日、行革推進事務局に対する申し入れを行いました。
 7月28日に閉会した通常国会への「公務員制度改革関連法案」提出が見送られた経緯を踏まえて、01年12月の「公務員制度改革大綱」を撤回し、民主的公務員制度の確立に向けて、ILO勧告に沿って改革作業の「一からの出直し」を決断すべきである、と強く主張しました。

○行革推進事務局のずさんさを追及
 申し入れのなかで国公労連は、法案提出見送りの最大の原因が「労働組合を含む関係者との交渉・協議の不十分性にある」と指摘しました。
 そのことともかかわって、手続面だけでなく、労働基本権問題をはじめとして法案の中身が極めてずさんであることもふまえ、「出直し」を推進事務局は決断すべきと追及しました。

○反省しながらも「大綱」に固執
 これに対し推進事務局は、「関係者との協議が不十分だったことは、与党からも指摘を受けた。それを踏まえ、真摯な気持ちで改めて作業を準備していかなければならないし、労働組合とも十分に協議していきたい」と、自らの非を認め反省する見解を明らかにしました。
 しかし、今後の検討方向に関しては「非公式に法律案のかたちで(各省に)示したものは、全く白紙になるとは思っていない」「大綱をベースにした法案をつくっていくという基本線は変わらない」と回答し、あくまでも「大綱」に固執する姿勢を崩しませんでした。

○国公労連が談話発表
 国公労連は同日、書記長談話を発表。「対症療法的な論議と『修正』で早期の法案提出をはかろうとしている」推進事務局の姿勢を厳しく批判するとともに、政府自身も「『大綱』に固執する限り、公務員労働組合はもとより国民的な支持も広がらず、改革作業が密室化せざるを得ないという矛盾に気づくべき」と、強く主張しています。

●年金改悪・大増税反対の運動を −−全労連第33回評議員会を開催−−

 全労連は、7月24・25日、東京・全労連会館ホールで第33回評議員会を開催しました。
 今回の評議員会は、2年に1回の大会の中間点において、(1)03国民春闘を含むこれまで1年間の到達点と教訓をふまえ、今後1年間の運動方針を補強する、(2)「組織拡大推進基金」の具体的なとりくみを意思統一する、ことが目的でした。
 会議では活発な討論が展開され、国公労連から小田川書記長が公務員制度改悪反対闘争の到達点と今後のたたかい方、年金改悪反対闘争の構えと早急な具体化、国立病院・賃金職員の雇用継承闘争の重要性など、岸田書記次長が03人勧の情勢と夏期闘争の具体的展開、阿部中央執行委員が全労連女性部のとりくみについて発言しました。

○賃金職員の雇用継承めざし運動を展開
 「方針補強」関係では、年金改悪・大増税反対のたたかいを最重点課題に設定し、03秋闘から「個人(500万)・団体(5万)署名」を軸に、「全国キャラバン行動」や「国政転換・要求実現!全国47都道府県100万人集会」などを展開します。
 また、国立病院・賃金職員雇用継承のたたかいをリストラ反対の拠点闘争に位置づけ、国鉄闘争やNTT闘争とともに全国的なたたかいを展開します。
 当面の賃金闘争として、最低賃金とマイナス人勧反対のたたかいを結合させ、「国公権利裁判」を支援するとともに、21世紀の新しい国民春闘の方向として、「企業主義」の克服や「国民総決起春闘」「地域春闘」のさらなる追求などの課題を提起しています。

○組織拡大・強化へ「推進基金」を論議
 「組織拡大推進基金」関係では、(1)一般会計からの繰入(3000万)、(2)特別会費の徴収(単産は月額一人10円、但し04年大会で追認)に加え、(3)「1億円カンパ」(地方主体で年額一口1000円以上を10万人以上登録)の開始、を通じて組織拡大・強化に本格的にとりくみます。


●機構と定員に「厳しい抑制」 −−政府、来年度概算要求基準を決定−−

 政府は8月1日、2004年度予算の概算要求基準を閣議了解し、また、総務大臣の「機構・定員要求基準に関する発言」などを了承しました。
 概算要求基準の内容は、「骨太の方針2003」の考え方を踏まえ、一般歳出について2003年度の水準以下に抑制することを目標としています。
 公共投資関係費は3%削減し8兆6000億円、裁量的経費は2%削減し5兆4000億円、義務的経費は人件費予算を除き前年度当初予算の範囲内の34兆1000億円で、一般歳出の総額は48兆1000億円となっています。
 そのうち、社会保障関係費は自然増分9100億円を、年金の物価スライド適用(1.7%削減)や介護の「改革」などで2200億円圧縮して6900億円に抑制するとしています。
 一方、軍事費は「前年並み」とすることで聖域扱いし、社会保障や教育など暮らしのための経費を抑制するなど、私たちの要求とは「かけ離れた」概算要求基準となっています。

○減量・効率化でさらに定員削減
 総務大臣発言では、機構及び定員要求について「厳しい抑制」を求め、機構では、今年度で中期目標期間が終了する独立行政法人について「極力整理縮小する方向で見直す」など、合理化計画を強行しようとしています。
 定員については、国立大学の法人化等により定員が大幅に縮減されるなかで、さらに「スリムで効率的な政府を目指すことが必要」とし、増員要求については、「更なる減量・効率化努力により、定員削減計画(年1%)を上回る定員削減」などを求めています。

○国民本位の行財政実現の予算編成を
 今年度の定員は1879人の純減でした。方針通りなら、3400名以上の削減が強行されることになります。
 いま、私たちの職場では長時間過密労働が横行し、過労自殺や「精神及び行動の障害」による長期病休者が大幅に増えるなど、職員の心身の健康が蝕まれており、その対策が緊急の課題となっています。
 国民生活関連の予算抑制や連年の定員削減は、公務の公共性、職員の健康を破壊する攻撃に外なりません。国公労連は、国民のための民主的行財政を実現する予算編成をめざし、秋のたたかいを強化していきます。


トップページへ 国公労新聞へ