国公労新聞  号 外

 要求アンケート特集号

 あふれる失業者、相次ぐ社会保障の改悪、史上初のマイナス勧告…。労働者・国民のくらしは年々悪化しています。「痛みに耐えれば…」だけで良いのでしょうか。
 国公労連は、「どうたたかえば要求は前進するのか」、職場からの論議を呼びかけています。2003年国民春闘に向けたアンケートを通じ、要求をだしあい、その要求前進のためにどうしたらいいのか、率直に話し合ってみませんか。

〇国民いじめの「構造改革」がくらし悪化の元凶に
 政府は、2003年度の予算編成に向け、社会保障費の自然増分を2200億円カットするため、年金、介護、雇用保険などで1兆数千億円の給付減・負担増を計画しています。
 また先の通常国会で、与党三党が強行採決した医療制度改悪による1兆5000億円を含めると、その国民負担の総額は3兆2400億円にものぼります。

◆表1 2003年度の社会保障の負担増・給付源

 
 「払うべきは削る」「二重・三重に負担を押しつける」政治(=「構造改革」)が、国民のくらしを直撃しています。
 国民負担増の一方で、大企業へは1兆円を超える法人税減税の先行実施を表明し、銀行への税金再投入も狙われています。
 完全失業率が5%を超える高い数字で推移し、企業倒産も毎月千数百件を超え、民間労働者の平均給与は、4年連続の減収です。「賃下げとリストラの悪循環」を断ち切るとりくみを、どうやって前進させるのか、本格的な論議が求められています。

〇人勧制度は「賃下げ機構」
 9月以降、「国準拠」の勧告が、地方人事委員会で相次いでいます。10月3日、東京都人事委員会は、先行実施している4%の「給与カット」に上乗せするマイナス1・64%(7393円)の賃下げ勧告をおこないました。
 また、現業国家公務員に対しても、「2%程度の賃下げ」を当局が回答し、特殊法人などでも同様の動きが強まっています。マイナス勧告を口実にした年金の物価スライド凍結解除の動きも急です。人事院勧告が「賃下げの悪循環」の「先導役」となっているのです。「民間準拠だから」、「勧告尊重」では済まされません。

〇公務変質の攻撃も激化
 「戦争をする国」への転換をめざす有事3法案の成立が、引き続き狙われています。「官から民、国から地方」をスローガンに進められる「行政減量化」の攻撃も熾烈です。「この国のかたち」改革の具体化が、国公労働者の働き方を変質させかねません。

●ともに力をあわせましょう


〇年金給付切り下げは許さない
  全日本年金者組合 書記次長  岡田 勲さん

 「物価下落に応じて年金給付も切り下げ!」−−月額23万円の年金生活者から5480円もむしり取られるのです。私たちは怒りに燃えています。
 公務員賃金と年金の切り下げは、低賃金・低給付の流れをつくろうとする政府・与党の策謀に他なりません。国公労連のみなさんが賃金要求と社会保障要求を結合してたたかっている姿を、私たちはうれしくも頼もしくも思いながら注目しています。全国民的な課題として、ともにたたかいましょう。
 年金者組合は、この秋から来春にかけての社会保障運動の重点として、(1)年金の切り下げと課税強化阻止、(2)2004年改定期でのさらなる年金改悪の阻止、(3)最低保障年金制度の創設、の3点で運動を展開していきます。
 11月20日には、2000人規模の総決起集会と銀座デモを展開します。年金者組合結成以来、初の大行動です。国公のOBにも、ぜひ参加してほしいですね。歓迎します!

〇共同の力でリストラに反撃を
  通信産業労働組合 書記長  野形 葵さん

 私たち通信労組は「NTT11万人リストラ」に反対し、「実質50歳定年制」の違法・不当性を裁判に訴えています。
 NTTは、「50歳退職、賃金切り下げ・再雇用」制度を選択しなかった労働者や「育児・介護」を抱えた組合員に対して、東京・名古屋・大阪などへの不当な広域配転、異職種配転を強行し、多くの組合員が単身赴任を強いられ悩み・苦しんでいます。また、北海道などでは、従来の半分の賃金に引き下げられ「生活保護基準」以下となるなど、NTTの不当なリストラに対する怒りと批判の声が広がっています。
 2003年春闘では、財界による「働くルールを無視」したリストラをやめさせなければなりません。そのためにも、官民を超えた国民的共同のたたかいが求められています。
 全国の国公のみなさんの支援が、通信労組だけではなく、連合組合員の激励になっています。大企業の横暴を許さず、国民的課題の前進のために、ともに力をあわせ奮闘しましょう。

●雇用・いのち・くらし破壊の「構造改革」に反撃を

〇「国民総決起春闘」構築は地域の運動から −−地域に矛盾が集積−−

 政府・財界がいう「経済活性化」の中心は、大企業の国際競争力強化のために「富と人」を集中的に使おうというものです。
 2002年春闘で、1兆円といわれる空前の収益をあげながら、「ベアゼロ」回答しか行わなかったトヨタ自動車の姿勢は、そのことを端的に示しています。地域の工場を閉鎖して、生産拠点を中国など東南アジアに移転させる企業が増えているのも同様です。
 その矛盾は、地域に集中しています。高失業率のもとで高校卒業者の5人に一人しか求人がない地域、「シャッター通り」など地域経済の疲弊、地方自治体財政の急速な悪化、などなどです。

◆図1 急増する完全失業者数と完全失業率


 政府、人事院が進めようとしている「地域に勤務する公務員賃金水準の見直し」も、地域に集中する「矛盾」と無関係とは言えません。

▼「無法」がまかり通る社会では・・・

 「50歳」という年齢だけを基準に、11万人もの労働者を子会社に追い出し、賃金を30%もカットしたNTTに代表されるように、「リストラ・賃下げの無法の嵐」がこの国に吹きあれています。
 2002年勧告が、30歳の係員クラスでも年間10万円もの賃下げと同時に、「賃下げ効果」を4月に遡らせる「不利益遡及」を求め、政府がまともな検討も行わないままに、これを完全実施したことも「無法」行為です。

◆表2 2002年人勧によるモデル給与例


 また、民間企業の退職金の実態調査結果だけを口実に、一度の交渉協議もおこなわないまま、「退職手当の引き下げ」を決定したことも同様です。
 「民間労働者も痛みに耐えている」とする宣伝は、政府の言いなりで労働条件の切り下げを甘んじて受け入れる公務員になれ、と言っていることと変わりません。

▼公務員賃金も「働くルール」の一環
 人事院勧告は、750万人の労働者などに直接影響します。

◆表3 人事院勧告の影響を受ける「750万人」の内訳


 それだけではなく、年金給付額や、最低賃金の「目安」、生活保護世帯の給付水準、さらには中小・零細企業の労働者にも影響があることも、この間の運動で明らかになっています。
 また、勧告の取り扱いは、直接、政府が決定する唯一の賃金です。それだけに、この国の「標準的な賃金」の性格を否応なしに持っています。
 本年5月、竹中経済財政担当大臣は、「人事院勧告制度は、右肩上がりの時代の遺物」だと攻撃しましたが、その発言は、公務員賃金の社会的影響力を十分に認識したものとも考えられます。「底の見えない賃下げ競争」の障害の一つが、公務員賃金だと考えているのでしょう。
 それだけに、最低賃金改善のたたかいとも共同した、賃金底上げ(底支え)の運動と一体で、公務員賃金闘争を展開するなど、「働くルール確立」の運動を強化することが求められています。

〇公務員制度「改革」も重要な段階に

▼通常国会に国公法等の「改正」案を提出

 政府・行革推進事務局は、通常国会に国家公務員法などの「改正法案」提出をめざした作業を進めています。
 9月24日には、行政職(一)以外の俸給表適用職種にも、(1)能力等級制度を導入する、(2)能力評価と業績評価のあらたな評価制度を導入する、ことなどを提案してきています。

▽労働基本権制約を事実上強化
 9月中旬、日本政府は、公務員制度改革にかかわる「答弁書」を提出しました。その内容は、労働基本権回復を求める国公労連の「提訴」はもとより、団体交渉権の確立など条約の完全履行を迫るILO総会などの「要請」にも背を向けたものです。
 そればかりか、人事管理での各省大臣の権限を拡大するばかりでなく、「労働条件の基準」も使用者(内閣)が決定しようとさえしています。「労働基本権制約の現状維持」どころか、「制約の強化(=公務員労働者の無権利化)」です。


▼受け入れがたい新人事制度
 「新人事制度案」では、評価制度が要です。
 業績評価の結果は、(1)基本給の「加算部分」と、(2)ボーナス=業績手当の「業績反映部分」の決定に活用されます。

◆図2 能力給のイメージ


 業績評価は、いわゆる「目標管理」手法により、評価者と被評価者が個別の面談によって、当期の個人単位の業績達成目標を決定し(可能な限り数値目標化される)、その達成度が評価されます。
 能力評価の結果は、上位の能力等級への格付けの参考とされ、いわば昇格の資格要件とされます。評価は、抽象的「能力基準」だけで行われ、経験要素は完全に無視されます。

▽評価による賃金決定はノーと
 国公労連は、評価結果を賃金決定に反映させず、専門能力育成や業務改善等に活用することを前提に、公平で納得性の高い評価制度の確立を求めています。
 そのことに照らしても、推進事務局が構想している能力基準などの恣意性、曖昧性は明らかです。

◆図3 あいまいな能力評価制度基準


 こんなもので私たちの賃金が決定される仕組みに対しては、明確な『NO』を突きつけなければなりません。

▼民主的な制度確立の要求を高く掲げて
 国公労連は、これまでも、「公務員制度改革の三つの柱」を基本に、民主的公務員制度確立を求めてきました。

◆図4 国公労連が考える公務員制度改革の「三つの柱」


 今とりくんでいる「100万署名」も、その一環です。
 国会段階のたたかいもみすえつつ、国公労連の要求への国民的理解を広げる運動が、重要な段階を迎えています。

●人間らしく働き、いい仕事がしたい−−そんなみんなの声を広げましょう!

〇独立行政法人労組の春闘−−賃金抑制攻撃に反対し、賃上げを実現しよう−−

▼法人当局は人勧準拠に固執
 特定独立行政法人は、労使交渉により賃金が決定されるとはいえ、独立行政法人通則法で、賃金水準について、民間企業の水準や法人の業績、人件費の見積もりに優先して給与法適用職員の水準を考慮することが求められています。
 また、財務省は、独法が、国から支出される運営費交付金にほぼ完全に依拠していることを理由に、賃金水準は、給与法適用職員以上にはさせない方針です。こうした状況のなかで、法人当局は、人勧準拠方針に固執しています。

▼労働協約締結闘争を強化
 独法と異なり自己収入を持つ国営企業に対してさえも、政府は賃金抑制を押しつけ、今年の夏の中労委調停が、使用者側の反対により不調となり、いったん労使交渉に差し戻されるという状況です。
 さらに、人事院は、2002年人勧の報告で独法の賃金水準把握を表明し、賃金抑制の一翼を担おうとしています。
 法が保障する労使の自主的な賃金決定を妨げるこれらの動きは極めて不当です。
 こうした動きをうち破るためには、来春闘において、法人当局が当事者能力を発揮し、労使交渉により賃金決定を行うよう強く迫るとりくみとともに、春闘に結集し、「賃下げ・リストラの悪循環」を断ち切る春闘の一翼を担うことが重要です。

▼強まる労使自治への介入
 当面、秋季年末闘争で、賃金確定闘争を強め、法人当局の対応を組合員に知らせるとともに、要求アンケートを通じて、組合員の要求を国公労連規模の統一賃金要求へ反映させます。
 同時に、賃金改定のとりくみと結合し、労働条件を就業規則から労働協約に移し替えるとりくみ、労働時間短縮をめざす36協定改定のとりくみなどを旺盛に進めることが重要です。


〇行政民主化のとりくみで、国民的なたたかいに結集を
 「社会保障費を削るために昼も夜もなく働くのか」、「制度が改悪されて国民サービスが年々低下している」など、働き方と仕事に対する不満や疑問の声が職場で高まっています。「国の役所は、国民の声を聞かない」など、批判も後をたちません。
 「不夜城」と言われる霞が関をはじめとして、国公労働者の働き方は異常です。

◆図5 霞が関の残業実態アンケート


 行政改革、「構造改革」と続く悪政のもとでの行政批判が、「公務員減らし」の大合唱の一因になっています。まさに「悪循環」です。

▼労働者・国民と連帯して
 国公労連は、公務の働くルール確立の課題として、「長時間過密労働の解消、サービス残業の根絶」、「女性の採用・登用の拡大」、「非常勤職員の均等待遇実現」を重視しています。いずれも、官民共通の働くルール確立の制度課題であり、公務員制度改革の課題です。
 また、失業、不安定雇用拡大などで、賃金格差が拡大しています。政府は、さらに、教育、医療、年金、介護、税金などの低位平準化(=国民負担増)を矢継ぎ早に進め、人間らしくいきる権利も侵されています。

▼働くルール確立を国民的な運動で
 まともな働き方がしたい、人間らしく暮らしたい、その要求を拒んでいるのが「構造改革」です。なぜ、「あらたな貧困」が生じているのか、なぜ格差が拡大しているのか、どうしたら是正できるのか、国民・労働者の疑問です。行政実態の「点検・公開」のとりくみで、それらの要求、疑問にこたえる運動(=行政民主化のとりくみ)は、公務員労働者の責務です。
 国公労連は、全労連が提起する「国民総決起春闘」に、行政民主化のとりくみと公務部内の格差是正(民主的公務員制度、働くルールの確立)のとりくみで結集します。

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