国公労新聞 第1114号

●団体交渉を促進する公務員制度改革を
  −−ILO総会で日本政府に批判が集中−−

 6月3日からスイス・ジュネーブで開催された第90回ILO総会が20日に閉幕しました。日本の労働者代表団の一員として、全労連坂内事務局長等も参加しました。
 この総会では、昨年に引き続き「基準適用総会委員会」の場で、日本の個別案件として、「公務員制度改革」問題がとりあげられ、公務労働者の労働基本権をふみにじる「公務員制度改革」をすすめる日本政府に対して、各国から批判の声が集中しました。
 そして、これらの論議を受けた議長集約では、「(日本の公務員が)賃金決定への参加をいちじるしく制限されていることに懸念」を表明し、「雇用条件を、団体交渉によって決定する目的で、公務員制度改革を行う」よう日本政府に求めました。
 ILOは、第98号条約にてらし「労働基本権の制約は現状維持」とする「大綱」が、制約する公務員の範囲と労働条件決定にかかわる労働組合の関与のあり方(団体交渉)の2点で、十分な内容ではないとする認識を示したものといえます。
(詳細は、次号で全労連・坂内事務局長のインタビューを掲載)。
 このことは、全労連・連合ともに、ILO結社の自由委員会に、「公務員制度改革大綱」が条約違反であるとする提訴を行っていることも反映しています。

〇労働基本権について推進事務局を追及
 6月14日、国公労連は、政府・行革推進事務局と交渉を行い、4月26日の申し入れに対する回答交渉を迫りました。
 大綱では「労働基本権は現状維持」としながらも、労働条件決定の基準を誰がきめるのかという点を明確にしていません。交渉はその点を中心に行われました。 推進事務局は、「労働組合と十分協議できる時間的余裕をもって提示する努力はしたい」(春田室長)と回答しましたが、「新人事制度の2次案」の交渉・協議前に明確にすることを求める国公労連の要求には応えませんでした。
 推進事務局は、2003年中の国公法等「改正」法案の国会提出を目標に作業をすすめています。6月のILO総会の到達点もふまえ、労働基本権問題をあいまいにしたまま、人事制度の「かたち」づくりを先行する政府・推進事務局の不当性の追及強化が必要です。

●医療改悪・有事法案を火種残さず廃案に!

 小泉内閣は、国会会期を7月31日まで42日間も延長することを強行したうえに、国民に1兆5000億円もの負担増をおしつける「医療改悪法案」の採択を、6月21日の衆院本会議で強行しました。
 そして、「有事三法案」についても、「有事(法案)の扱いについて、マスコミ的には死んだ法案になっているが、そんな思いはまったくない。ぜひ成立させたいという決意がある」(自民党・町村幹事長代理)と、与党幹部はマスコミの「成立断念」報道を否定し、あくまで成立を狙っています。
 一方、国民の「いのちとくらし・平和」を脅かす法案に反対する国民的な共同行動が広がっています。
 「30数年ぶりの共同、思想・信条を越えて1300人が結集した有事法制反対!6・14県民集会」(愛媛)、「ヒロシマから『平和の尊さ』学び、有事法制反対の思い強めた6・21ヒロシマ平和行動」(広島県国公)、「ストップ!有事法制大集会・街頭宣伝に1000人」(北海道)、「厚生労働行政の原点である憲法を擁護し、有事法制を阻止するために力をあわせることを確認した三単組学習交流集会」(全労働・全厚生・全医労)、霞が関周辺で毎週、宣伝行動を実施している全労働や東京国公など、全国各地でとりくみが展開されています。 医療改悪・有事法案を、「火種残さず」今国会で廃案にするために、さらに運動を強めましょう。

●「マイナス勧告」は断じて許さない−−人事院勧告にむけ要求書提出−−

 国公労連は6月19日、「2002年人事院勧告にむけての要求書」を人事院に提出しました。
 今回の要求提出は、デフレ状況、ベアゼロなどの厳しい春闘結果や、国営企業労働者の賃金交渉の調停申請など、かつてない厳しい情勢のもと行われました。
 賃金改善では1000円の要求を掲げ、「3年連続の年収切り下げによって生活が悪化している。750万労働者に直接影響する勧告の社会的影響力からしても、『マイナス勧告』や4年連続の年収切り下げは断じて認められない」と国公労連は強く主張。公務員制度改革ともかかわって、「働くルール」確立(超勤縮減や非常勤職員の均等待遇、男女共同参画実現)を求めました。
 日本経団連は6月27日、「夏季賞与・一時金妥結状況」をまとめ(186社)、昨夏よりマイナス0.49%と発表。民間では、「賃下げ」春闘以降も総人件費削減攻撃が強まっています。
 政府も、財政難を口実に、勧告への「圧力」ともいえる人件費抑制攻撃を強めています。職場・地域から「マイナス勧告」を許さないたたかいを夏期闘争で展開しましょう。

●「政官財ゆ着」をなくし、国民本位の行政に

 署名を武器に「50万労働者」との対話と共同をすすめよう


 国公労連は、6月8日に開催した第114回拡大中央委員会で「民主的な公務員制度改革を求める国会請願署名」を100万筆目標にとりくむことを決定し、現在、各級機関において準備が進められています。

 各単組では、積極的な目標設定と学習・意思統一など、推進態勢が確立されてきており、ブロック・県国公では、「50万労働者との対話と共同」対象のリストアップや県労連、県公務労組連と協議が具体化、決定されつつあります。
 近畿ブロック国公では、すでに対象をリストアップした「トライリスト」を作成するなど、7月からの訪問、懇談に向けて準備が進んでいます。
 公務労組連絡会は、7月上旬までに労働組合や民主団体など中央組織に対する署名への協力要請を終え、また、各単産のとりくみについて「FAXニュース」で伝えるなど、運動の推進を図っていくこととしています。

〇国公退職連も署名にとりくむ
 国公退職連(日本国家公務員退職者の会連合会)が、「現行の公務員制度は、OBのわれわれが戦後の歴史のなかで、少なからず関与し、築き上げてきたもので、今回の改悪は、その歩んできた歴史を否定するものであり、許すことができない」として、1人5筆を目標に請願署名にとりくむことを決めています。
 6月のILO総会において国際的にも批判がされ、「政官財ゆ着」の根絶を求める国民の声に反する「改革」反対の世論を大きく広げるため、請願署名のとりくみを強めましょう。

●「交流」と「学習」充実した3日間 −−青年協「平和のつどいinナガサキ」

 青年協は、6月14〜16日に、長崎市で、原爆をテーマに「平和のつどいinナガサキ」を開催し、20県国公1ブロック、9単組105名の青年が参加しました。(女性は24名、22%)
 初日は、ビデオと被爆体験講話による原爆学習、2日目は、市内の遺跡をめぐりました。参加者からは、「原爆の構造、威力などがくわしく解説されていてわかりやすかった」「遺跡は、原爆の被害を生々しく伝えていた」などの感想が出されました。
 2日目の午後からは、長崎の路面電車を利用した、名所めぐりと歴史探訪をかねた「電車でゴー」が行われ、女性参加者を班長に17班に分かれたチームは、指令(クイズ)にしたがって、名所や指令の回答を探しながら市内をめぐりました。
 最終日は、長崎の伝統工芸の1つである「ハタ」(凧のこと)作りに挑戦、ハタの上げ方や回転のさせ方なども教わりました。
 閉会式で、現地実行委員会・江崎事務局長(全労働)は、「準備に4カ月かかって苦労したけど、みんなの楽しそうな笑顔がその苦労をうち消してくれた」と語りました。
 参加者からは、「3日間満足だった」「他単組の人とたくさん交流できてよかった」「また参加させて欲しい」などの感想が出されており、楽しみながら平和問題を考える「つどい」となりました。

●昇格改善、欠員補充を勝ち取ろう −−第36回行(二)労働者全国集会ひらく−−

 国公労連は、6月18〜19日、第36回行(二)労働者全国集会を東京都内で開き、10単組、105名が参加しました。
 集会は、堀口委員長あいさつ、岸田書記次長の基調報告のあと、各単組から「不合理な部下数制限に対してねばり強いたたかいで昇格を勝ち取った」などの報告がされました。
 落語作家の小林康二さんによる「笑いといじめと労働組合」と題した講演では、労働組合の大切さについて分かりやすく話され、「労働組合の必要性を再確認することができてよかった」「もう一度小林さんの講演を聞きたいと思った」など大変好評でした。
 2日目は、職種ごとに5つの分散会を行い、仕事の実態や問題点、昇格の状況などについて意見交流を深めました。

〇人事院交渉を実施、昇格に一定の改善が
 集会後、人事院交渉を実施し、11名の交渉団は、部下数制限の撤廃による昇格改善や欠員後の職員の補充などを強く求めました。
 交渉では昇格に関し、「部下数要件による処遇の遅れが明らかな部分については、個別承認緩和を今年度の昇格者から実施したい」と人事院が回答。具体的には、50代前半、4・5級昇格の基準が緩和されることとなり、一定の前進を勝ち取っています。

●《シリーズ》医療・宿泊事業を問う No.2
  赤字の原因は過剰な設備投資、国家公務員共済組合連合会は採算性を検討せず

〇宿泊事業の現状は
 国家公務員共済組合連合会の宿泊事業は、2001年度末で699億円の長期借入金を抱え、「破綻寸前の状況」といわれています。93年以前はおおむね健全だったのですが、94年に単年度収支が赤字に転落し、98年度には累積損益が赤字になりました。その大きな原因は、99年までの300億円を超える過剰な設備投資で、利払いは年間30億円にのぼります。
 バブル崩壊後に過大な投資を続けてきた連合会の経営感覚は不可解です。採算性についてまともに検討された形跡もありません。
 現在、連合会は宿泊事業からの撤退も含む再建議論と同時に、増収策も進め、2001年度には、9年ぶりに10億円の単年度黒字になりました。しかし、長期借入金の負担はあまりに重く、現在の利払いのままでは再建の見通しが立っていません。
 そのために、連合会は今年度の時限的な金利減免を財務省に要請しましたが、「赤字施設の処理の目処がたっていない」ことを理由に認められませんでした。

〇共済病院の経営は
 病院事業は、全体としては健全な状態といえますが、一部の施設が恒常的な赤字状態に陥っています。共済病院は、戦後の結核対策などの影響で立地に偏りがある上、現在の医療ニーズにマッチした改善が立ち遅れています。
 赤字施設の解消には、長期的な視野に立った経営改善が必要だとされながら、連合会は人件費など目先の経費削減だけにとらわれて、抜本的な対策を怠ってきました。
 昨年12月に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画に、現在の施設整備のために投入されている補助金を5年で全廃することが盛り込まれたことや、医療制度改悪の流れによる収入減の見込みもあり、健全だった経営は大きな曲がり角にきています。
 (以下、次号)

●評価制度の問題点に発言が集中
 
−−第20回国立試験研究機関交流集会−−

 国公労連・学研労協(筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会)は、6月12日、つくば市において第20回国立試験研究機関交流集会を開催し、117名が参加しました。
 集会では、文部科学省の大学共同利用機関である高エネルギー加速器研究機構の菅原寛孝機構長が記念講演を行い、その後、4つの分科会で意見交換が行われました。
 分科会では、独立行政法人の業績・能力評価について「透明性、公平性が確保されていない」「評価の結果を本俸に反映させてはならない」など移行後の問題点が多く出され、討論が白熱するあまり、予定時間を超えるところもありました。
 最後に、研究環境や労働条件改善のたたかいを前進させるとともに、来年も交流集会を開催していくことを全体で確認しました。

●藤田さんと今井さんを中労委へ
 −−労働委員会民主化対策会議が総会・シンポ−−
  

 労働委員会民主化対策会議(全労連、純中立労組懇、MICで構成)の2002年総会が6月13日に全労連会館で開催され、国公労連各単組からの20名を含め全体で94名が参加しました。
 議案提案後の討論では、国公労連から堀口委員長が「公平な判断がされれば、国営企業・特定独立行政法人担当委員には、国公労連顧問の藤田忠弘さんが選任されるのは当然である」と発言し、飯塚中執は「連合独占を許さず、今年こそ公平な任命を勝ちとるために奮闘する」と決意表明し、各団体からたたかいの報告や今後のとりくみについての発言がつづきました。
 総会後、第27期中労委労働者委員候補の藤田忠弘、今井一雄(民間担当委員候補・出版労連委員長)両氏の決意表明を受けました。シンポジウムでは、地方労働委員会労働者委員の児玉捷之(埼玉)、徳山重次(大阪)、井川昌之(東京)の各氏と水口洋介弁護士により、労働者委員を獲得することの意義などについて討論が行われました。

●[鶏口] −−モラル? モラール?−−

 6月3日付けで、全運輸から書記長談話「関東運輸局管内における不正な自動車検査について」が出されている。ことの発端には、マスコミでも報道されたように、「業者の威圧」に屈して、自動車検査の不正があり、これに多数の職員が関与していた事件がある。談話では、事件の最大原因が、業者に対して当局が「組織的な毅然とした対応」をとらず、対応を「職員個人にゆだね」たことにあると指摘しつつ、職員及び管理・監督者への「厳しい措置」を求めている。当然の指摘、主張であろう。行政執行の第一線の厳しさをあらためて痛感した。
 「モラル(moral)」とは「道徳、倫理」の意味で、個人の資質に関して使用される。「モラール(morale)」とは、「やる気や士気、勤労意欲」を意味し、集団の中で示される個人の態度とかかわる。
 先のような事件は、どちらの問題として受けとめればよいのだろうか。行政の中立・公正性にかかわる「職業モラル」が問題なのか、組織的に蔓延していることから「職員のモラール低下」をより問題視するのか、意見が分かれるところだと思う。現実は、前者の立場から、個人の問題として処理されることが少なくないとも思う。
 近年の行政改革で、行政サービスを利用する国民を「顧客」と位置づけ、その「顧客」の評価で行政の存廃まで左右する行政管理手法への表面的な迎合が、特に窓口業務を中心に急がれている。服装、言葉遣い、名札着用などなどが改善、改革課題とされる。そのような中で、窓口のトラブルについて、内容や原因にかかわらず、対応した職員に「始末書」が強要される例もあると聞く。職員の「モラル」だけを問題にする人事管理が、職員の「モラール」を低下させ、「ことなかれ主義」が蔓延し、より重大な問題につながることはないのか。上からの人事管理の危険性を感じる。

●楽しく学び元気が出たよ! −−第16回労働学校(東海・関東会場)を開催−−

 国公労連は、第16回労働学校(東海・関東会場)を、6月21日〜22日、愛知県蒲郡・三谷温泉と、東京都内でそれぞれ開催しました。
 東海会場では107人、関東会場は67人が参加し、「構造改革と雇用・いのち・くらし」「能力実績主義人事管理の実態」(以上共通)、「男女共同参画を職場でどうすすめるか」(東海)「社会保障の後退が意味するもの」(関東)の3つの講義とゼミナールを通して、情勢認識を深め、楽しく学ぶことができました。

〇参加者の声
★全運輸(34歳)
 民間企業の実情なども聞くことができ、あらためて危機感をもちました。職場において、もっと議論を深めないといけないと思います。
★全労働(31歳)
 ソフトの操作方法をわかりやすく説明してもらい、よく理解できました。また、新聞の作成方法など、個別指導で行ってくれたので大変参考になりました。(DTP講座)
★全気象(25歳)
 私のゼミは若い人が中心だったので、あまり緊張することなく発言できて大変楽しかったです。他の単組の中で若い人が組合をどのように感じているのかということを知ることができて勉強になりました。(分散会)
★全港建(26歳)
 こんなに国民に対する社会保障の不十分さがあることを知らないでいたので、これからの自分のためにも、もっと社会保障制度を勉強したいと思いました。
★全建労(40歳)
 男女共同参画といっても、職場だけにとどまらず、家庭生活など日本人全体のライフスタイル・意識を変えていく必要があると考えます。 

●地域レポート6  鳥取県−−雇用対策理由に賃金5%カット−−

  公務員賃金が「就労調整の道具」に
【鳥取県国公発】
 鳥取県では、昨年1年間で7113人が解雇され、失業者が2000年度から一気に2000人余り増加しています。
 主力産業の繊維の倒産が相次ぎ、電機では賃金カットや「リストラ」が横行。特に世界的規模の液晶工場を誇る山陰地方最大の電機メーカー鳥取三洋電機が、IT不況による経営悪化のため580人もの「リストラ」を強行したことは県内に激震となって伝わりました。
 また、大手スーパーの経営破綻の余波に商業界は揺らぎ、農産物でも特産20世紀梨の販売不振など「危機」が表面化しています。

〇民間のきびしさ理由に県職員給与を抑制
 厳しさを増す民間の雇用情勢のなか、鳥取県知事は1月15日、「県職員給与の抑制措置」を発表しました。
 その内容は、県が本年度から3年間、雇用創出・財政再建を名目に職員給与を5%カットし、約33億円の人件費を削減するもので、「県民の痛みを共有しながら、雇用対策の要求と財政状況の健全化に応える」としています。
 昨年11月、鳥取県人事委員会の「据え置き勧告」から端を発し、県議会で公務員と民間の給与格差の是正を焦点に、年功序列の給与制度にも踏み込んだ議論がされている動きは無視できません。
 その影響が各市町村にも波及し始めています。倉吉市では、市長の一方的な寒冷地手当廃止発言が市職員団体との確執を生み、本年度から条例に「当分の間」支給しない附則が設けられるなど、賃金切り下げが就労調整の道具に使われようとしています。
 鳥取県国公は、このようなきびしい情勢を打破するため、今後も県民との対話と共同をすすめ、夏期闘争をたたかう決意です。

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