国公労新聞 第1093号

●労働基本権にふれず先送り −−行革推進事務局交渉で回答−−
 
「大綱」強行許さない、職場からの追及を!

  ▼労働基本権の確立を! 一方的な「大綱」決定を許すな!
  ▼国民向け対外宣伝行動もみんなでがんばろう!

〇各府省が「自由」に労働条件を決定
 国公労連が、11月16日、行革推進事務局とおこなった交渉で、「公務員制度改革」のねらいが、いっそう鮮明になってきました。
 交渉では、(1)能力等級制では、本省、管区機関等の「組織段階ごと」に、係員、係長などの「基本職位」を設けることになるが、その振り分けは各府省が「自由」におこなう、(2)「基本職位」が複数の級にわたる場合(例えば係員は、能力等級1級と2級)の振り分けも、各級毎の人員枠の中で各府省が決定、(3)人員枠の決定方法は未定、(4)免職など不利益処分の救済制度は労働基本権とのかかわりで検討中、などの回答を事務局がおこないました。
 また、「たとえば、本省勤務手当の新設を『大綱』で決定することは、労働基本権の侵害」とする追及にたいして、「政府として法案を提出し、国会で決定されるのが勤務条件法定主義。決定となれば国会での法の成立時点」、「推進事務局は、国公法にそって交渉・協議に対応。現行は、労働協約締結は認めていない」などと強弁しました。
 労働基本権にかかわる人事院の「代償機能」は、スト権制約だけではなく団体交渉権の制約ともかかわっています。国公労連の、これまでの追及で、「等級毎の人員枠設定や能力等級での職務分類」、「給与水準や給与費目ごとの額の決定」などが労働条件であることは、推進事務局も認めています。しかし、その労働条件を、各府省が「自由」に決定できる制度を検討しながら、労働基本権については先送りし続けているのです。

〇たたかわなければ無権利状態に!
 これらのことからして、推進事務局がいう「信賞必罰の人事管理」は、「がんばった人に報いる」ことが目的ではありません。「人事管理を各府省(人事管理権者)が勝手気ままにおこなう」ため、その障害となっている労働者・労働組合の権利を骨抜きにすることにおかれています。
 このままの内容、進め方で、「公務員制度改革の大綱」が決定されれば、公務員労働者は無権利状態に追い込まれます。たたかいは、重大な局面を迎えています。

●人事院、若手職員・男女格差に問題意識を表明 
  −−昇格課題で最終交渉−−

 国公労連は、9月26日の「2002年度昇格改善要求書」提出以降、昇格改善要求の実現をめざして、10月24日の中央行動などを背景に、これまで機関・階層・職種別の各課題で交渉を積み上げてきました。
 国公労連は、(1)職務評価の引き上げ、(2)人員構成の問題や世代間の公平に向けた定数改定、(3)行(二)をはじめとする少数職種の昇格改善、(4)省庁間、機関間、男女間の格差是正の4点を重点要求に人事院を追及してきました。
 11月13日の人事院勤務条件局長交渉において、国公労連が最終段階の回答を求めたところ、大村勤務条件局長は「省庁再編後はじめての査定でもあり、職責変化などに注意して作業していく。20代後半から30代前半の若いところにはできるだけ努力していきたい。少数職種の問題は、実態を把握してできるだけ対応したい。男女間の格差問題については各省を指導していく」との問題意識を表明しました。

〇枠外問題は先送り
 しかし、7級の4人に1人が枠外という実態にもかかわらず、その解消については、「7・8級は職務評価が基本となる。なくそうと思って努力してきたが、今すぐは難しい。公務員制度改革の方向がどうなるか見極めながらやっていきたい」と切実な要求に応えず、問題を先送りする姿勢に終始しています。

〇行(二)労働者の要求に背をむける
 また、行政職(二)の昇格問題についても「実態調査を行って、分析しているところだ。行政職(二)の部下数制限の撤廃は単純な話でない。一挙に解決することは難しい」と回答し、抜本的改善策を求める行政職(二)労働者の要求に背を向けました。
 こうした中で今後引き続き、級別定数と標準職務表の抜本的な改善を基本要求として、最後まで人事院に強く迫っていくことが重要です。

●沖縄県国公 −−公務員制度学習会で運動のエネルギーを充電−−
 

【沖縄県国公発】11月13日、沖縄県国公は、国公労連より山瀬副委員長を迎え「公務員制度改革学習会」を那覇市内で開催しました。急なとりくみにもかかわらず、外部からの参加者を含め70名余が参加し、大きく成功させました。学習会に先立ち、県庁前・合庁前など4カ所で早朝街頭宣伝行動も実施しています。
 学習会では、12月の「大綱」決定に向けた政府の画策に対抗するため、「三つの基本要求」である「労働基本権の回復」「競争原理に基づく制度改革反対」「天下り禁止などの民主的改革の実現」の実現に向けて、組合員一人ひとりがしっかりと現状認識を深めるとともに、県国公への一層の結集で対外宣伝を中心にしたとりくみの強化を図り、国民に訴え、ともにたたかう輪を広げていくことの重要性を確認しあいました。
 沖縄県国公では、この学習会を受けて17日に那覇市内で行政相談行動を実施し、広く国民へ行政の必要性と、政府の狙う「改革」の問題点を訴えることとしています。

●国民の医療をまもれ! −−国立医療闘争委員会、厚生労働省前で要請行動を展開−−
 

 11月15日、国立医療闘争委員会は、昼休みに厚生労働省前行動を実施しました。
 冒頭、薬害ヤコブ病訴訟原告団と共同集会を開催し、薬害ヤコブ病被害者救済を求めて連帯のエールを交わしました。
 行動では、国立病院・療養所の統廃合攻撃の現状と、当局の労働組合敵視の労務管理により、労働者に対する人権侵害が強行されている実態が、全医労などから報告されました。今後も、国立医療を守り社会保障切り下げ反対のたたかいをすすめることを確認しあいました。

●市場原理では科学技術は発展しない
 −−6団体共同で科学技術政策シンポジウム−−
 

 11月17日に東京都内において、「科学技術政策シンポジウム」が、大学や試験研究機関で働く研究者など、全国から96名の参加で開催されました。
 主催したのは、科学技術産業労働組合協議会(科労協)、全国大学高専教職員組合(全大教)、筑波研究学園都市研究機関労働組合協議会(学研労協)、日本科学者会議、国公労連、日本私立大学教職員組合連合(日本私大教連)の6団体。
 政府は、第2次科学技術基本計画に基づき、情報通信や環境など4つの「重点分野」、エネルギーなど4つの「重点領域」以外の研究を切りすてようとしており、地道な科学研究や基礎研究が軽視されているという批判が、広範な国民に広がっています。
 元茨城大学教授の岩田進午さんは記念講演で、「市場原理で科学技術が発展するというものではない。国は、研究者の能力を開花させるための政策を考えるべき」と、目先の利益を優先させている政府の「科学技術政策」の問題点を指摘しました。
 つづいて、シンポジストの各団体代表5人からの発言では、科労協の山崎孝議長は、特殊法人等にかけられている行政改革攻撃についての現状を報告。学研労協の加藤英幸副議長からは、独法化による国立試験研究機関の現状について、「競争が強いられる環境のなかで、重点化された速効型の応用研究に予算、要員が偏り、基礎的研究が軽視されている」などの問題点が出されました。
 また、全大教の齋藤安史さんは、独法化や国立大学の統合の動きに関わって、「大学の自主性や自律性を無視した、上からの強権的な改革であり、大学、高等教育機関のあり方を一変させるもの」とその危険性を指摘し、日本私大教連の高橋哲也委員長が私立大学の視点から、日本科学者会議の稲生勝常任理事が、科学者の立場で発言を行いました。
 シンポジウムは最後に、地道な研究の重要性を訴える「アピール」を確認し、終了しました。

●労働基本権回復は不可欠 
−−公務労組、権利討論集会を開催−−

 公務労組連絡会の第10回権利討論集会が、11月16日に全労連会館で、51名が参加して開催されました。
 集会では、当面の課題である公務員制度「改革」に対するたたかいに全力をあげるとともに、基本要求である労働基本権の回復を求め、運動を強めていくことが確認されました。
 神戸商船大学の根本到(いたる)助教授が講演を行い、現在すすめられている公務員制度「改革」について、「労働基本権の問題を先送りしているが、労働者の権利として十分に検討すべき。また、国民・住民の立場で公務職場の民主化をはかる上でも、労働基本権の回復は不可欠だ」と「改革」の問題点を明らかにしました。
 討論では、各単産でのとりくみなどについて報告が行われ、国公労連からは、山瀬副委員長が、「公務員制度「改革」問題では当面、労働条件決定システムへの労働組合の関与が重要であり、「大綱」決定に向け、11月30日の中央行動には最大限の結集をはかる」と決意表明しました。

●国民総ぐるみのたたかいを  −−全労連第3回全国討論集会開かれる−−

 全労連第3回全国討論集会は、「激動の情勢、変化の時代に対応する活力ある労働運動と組織を、全国の職場・地域からどうつくりあげるか」をテーマに、11月8日から3日間、石川県山中温泉で開かれ、国公労連の約100名を含め、全体で1086名の参加がありました。
 小林洋二議長は開催あいさつで「当面の焦点は、賃金底上げ、雇用の確保、医療改悪阻止のたたかいとなる。職場・地域からの運動で、日本労働運動を活性化させ、組織の前進へ力を合わせよう」と訴えました。
 坂内三夫事務局長は基調報告で、「全労連の結成、存在、運動は、日本の労働運動に確かな歴史の1ページを刻んできた。史上空前の企業倒産、解雇、失業、生活破壊など、労働者・国民に激痛を強いる小泉「改革」を打ち破るため、2002年春闘を前進させよう」と提起しました。
 2日目は、26班に分かれての分散会が行われ、のべ1326人が発言し、多くの活動の経験が報告されるとともに、21世紀初頭の要求と運動の方向性や、活力ある組織づくりに向けた活動などについて、真剣な討論がなされました。
 最終日の全体集会で、まとめを行った坂内事務局長は、「全国の労働組合が企業内での活動を重視する体制を克服し、職場・地域が一体となって、国民総ぐるみの運動をつくりあげよう」と訴えました。

●行政相談、石川県で30件の相談受ける
   −−「これで、すっきりしました。ありがとう」と感謝の言葉−−

【石川県国公】「ラジオで聞いて、これやと思って来たんですわ。これですっきりしました。ありがとう」と、行政相談に来られた女性の方。相談を受けた社会保険事務所のお兄さんもニッコリ。
 「国民に喜ばれる仕事がしたい」。この気持ちで、石川県国公では11月18日、金沢市郊外のショッピングセンターで、恒例となっている秋の行政相談にとりくみました。
 相談件数は過去最高の30件。今回は年金や税金の相談が多く、「すみません。年金は混んでおりまして、もうひとまわりしてきてください」とつらいお断りをするときもあったほどの盛況ぶりでした。

●<連載> 憲法を考える  No.1

 2000年1月に、衆・参両院に「憲法調査会」が設置され、5年間を目途に検討がすすめられています。
 テロ事件を口実にした自衛隊の海外派遣の問題など、いま、憲法をめぐって重要な岐路にたっています。
 そこで、数回にわたり「憲法を考える」を連載します。

〇憲法・教育基本法が生きる学校をめざして −−全日本教職員組合委員長 松村 忠臣−−

 小泉政権の「聖域なき構造改革」路線は、学校教育にも急速に具体化がすすめられています。この基本になっているのは、小渕政権によってつくられた「教育改革国民会議」の最終報告にもとづく文部科学省(森政権)の『21世紀教育新生プラン』です。
 さらに、このプランは小泉政権によって「戦略性ある『未来への先行投資』による人材・教育大国と科学技術創造立国の実現」―「米百俵」の精神を新世紀に生かして―のなかに組み込まれ、小泉「構造改革」の色合いを濃くしています。
 もともと、この原型となった「教育改革国民会議」は、99年の第145通常国会における新ガイドライン関連法、憲法調査会の設置、省庁再編・地方分権一括法、国旗・国歌法など、「この国のかたちを変える」諸法律の制定後に、教育基本法を改悪するという政治的ねらいをもってつくられたものでした。


▼国家主義と市場原理を二つの柱に
 教育改革国民会議は最終報告(昨年12月)の中で、教育基本法の見直しの3つの観点を明らかにしています。(1)新しい時代を生きる日本人の育成、(2)伝統、文化などの尊重・発展、(3)教育振興基本計画の策定です。
 教育改革国民会議は、教育基本法見直しで、委員の中に合意のないまま、この観点をしめし、文部科学省は11月中にも、中央教育審議会に諮問するという事態にいたっています。
 いま一つは、「規制緩和」「選択の自由」の名で学校教育への市場原理システムを導入することです。すでにいくつかの地域で実施されている小中学校の通学区域の弾力化、高校通学区の撤廃、大学への飛び入学などが法令化されました。
 これらは、国連の子どもの権利委員会が指摘した「極度に競争的な教育制度の抜本的な是正」の勧告に逆行し、子どもと教育の危機と困難をさらに深めるものです。
 いずれにせよ、「平和で民主的な社会の形成者を育てる」ことを目的とした教育基本法の根本を覆し、憲法「改正」に着手する小泉自民党政治の意図は明白です。
 現下の子どもと教育の危機と困難も、憲法がしめす権利としての教育と、平和で民主的な社会の主権者の形成を目的にした学校教育によってこそ打開できるものです。
 「教え子を再び戦場におくるな」のスローガン制定50年を迎える今年、全教はこの危険なねらいを許さず、憲法・教育基本法が生きる学校づくり運動に全力をつくしています。

●{鶏口} −−5・3%」の下の労働運動−−

 10月30日、総務省は、9月の完全失業率(季節調整値)が「5・3%」と、過去最悪を更新したことを明らかにした。完全失業者は357万人、8月からの1カ月間で37万人も増えている。家族も含めれば、その影響ははかりしれず、国公労連の諸会議でも、家族や友人の失業が「話題」になる。
 9月の完全失業率には、同時多発テロや狂牛病の影響、あるいは、NTT、電機、自動車などの大企業の「30万人規模」リストラ計画は反映していない。10月以降、雇用状況の一層の悪化は必至である。
 「希望退職に応じなかったら、遠隔地に配置転換された」、「希望退職に応じるまで上司の『説得』が続いた」等々、リストラのためなら法律無視も「当たり前」の状況がいたる所で聞かれる。
 国会では、雇用対策を中心にした補正予算審議がすすんでいる。いまおきている現実に目を向ければ「これ以上、失業者を増やさず、雇用の『場』を拡大し、失業者の生活保障を充実する」ことが論議されて当然ではないか。特に、巨額の内部留保をため込みながら真っ先にリストラに走る大企業の社会的責任と、国の役割が問われる必要がある。日々倒産の危機に怯えながら、必死で雇用を支える中小企業が多数存在することを考えればなおさらである。
 しかし、「企業はリストラしないと生き残れない」、「政府が企業にリストラをやめろなんてことは、とても言える状況にはない」などと言い放つ小泉首相には、労働者や中小企業の「悲痛な叫び」は届かない。「強いものだけが生き残る社会」で、自ら命を絶つまでに人間の尊厳を傷つけられている人々に、目を向けようともしない。
 11月8日から3日間、全労連全国討論集会が石川県で開かれた。集会では、「人間らしく生き、はたらく」ための社会的基盤が、小泉構造改革で崩壊の危機にある今、「痛み」を共有し、連帯してたたかいに決起する「国民一揆的な春闘」の必要性が論議された。傷つき、悲痛な叫びをあげている労働者・国民の「痛み」を、組織された労働者が共有し、「構造改革ノー」のたたかいの先頭に立つことが、2002年春闘の最大の課題だと認識された。「小泉首相と同じ」とのそしりを受けないためにも。

●国公労連 役員の横顔 No.4


 
 ○山瀬 徳行 副委員長(全労働出身)
  「武闘派」から「舞踏派」に
 高校時代まで大阪府泉南市ですごす。72年に労働基準監督官となり、横浜南労基署に勤務。横浜での3年間の青年部活動が、人生を大きく変えることに。奥さんとの出会いもこの時期である。
 その後、本省に転勤し、青年部を結成。4年間、本省支部の組織強化にも尽力。青年部活動には今でも思い入れがある。
 大阪に転勤してからの10年間は、大阪国公委員長・国公近ブロ議長をつとめるなど「近畿の山瀬」を強く印象づけた。
 89年に、国公労連中執となり、書記次長を経て公務労組連絡会事務局長として8年間、そして今年度から国公労連に戻り副委員長に。
 本人は、活動のスタイルを「武闘派」から「舞踏派」に変えたと言うが、変わっていないとする人も多い。
 趣味は意外にも「茶の湯」など伝統文化の道。単身赴任は13年目の今も続いている。

 ○近藤 敏 中執(全建労出身)
  寒冷地手当のたたかいで奮闘
 出身の新潟市で高校卒業まで生活。建設省長岡国道工事事務所に採用となり、長岡市へ。
 新潟県内での勤務が長く、無線設備や電気設備の設計、維持・管理など、電気通信関係の仕事に携わってきた。
 全建労では、採用の年から青年部役員、以降、地本の副委員長など、常に職場の先頭に立って奮闘。
 94年からの寒冷地手当改悪阻止のたたかいでは、寒冷地特有の気象データや家計支出を細かく調査。その結果は最大の「武器」として、当局や人事院との交渉を有利にすすめたという経験もある。
 国公労連の中執は1年目。現在、家族4人とともに埼玉県で生活している。雪の少ない太平洋側の冬は初めて。
 趣味のアマチュア無線は中学の頃からで、その知識は、建設省の仕事にも活かされた。スキー歴は約30年。今年はどこのスキー場へ行くのか…

●<シリーズ> 職場はいま…11  大阪地家裁堺支部、堺簡裁

 事件数増大で、職員と国民にしわ寄せ
 大切なのは司法サービスの充実、ナイナイづくしの職場を変えるんや

 大阪府堺市は庶民的な下町です。南海電鉄・堺東駅から歩くこと5分。サラ金会社の看板が目に入ります。不況で消費が落ち込み、駅前の大手スーパーが撤退、中小企業の倒産など、地域経済と生活に暗い影を落としています。
 大阪地方裁判所・家庭裁判所堺支部、堺簡易裁判所には152名の職員が働いています。国民のための裁判所をめざして地道に努力している、全司法大阪支部堺分会(組合員99名)を訪問しました。

 「『一体私はどうしたらよいのでしょうか?』とすがるように窓口に来られます」と語るのは、地方裁判所(地裁)で働く三村拓麻さん。パニック状態で駆け込む人もいる中で、一人ひとりの悩みに耳を傾け、裁判手続きの方法を説明していきます。青年部の役員を経て堺分会の委員長になったばかりの三村さんは語ります。「不況の影響を肌で痛感します。個人で賃金不払いを訴える労働者も増えています」。


〇急増する破産事件
 日本列島全体の経済の落ち込みを反映し、中小企業を中心とした倒産は、84年と比べると近畿地域は45%も増加(帝国データバンク調査、2001年10月)。「破産」も過去最多を記録しました。
 堺支部管内の破産事件は10月現在で2000件を突破。97年から4年間で2倍になっています。このままだと2001年度は2500件を越えると予想されています。
 全国的に破産事件の新受件数は2000年で14万5千件を越え、90年(約1万2千件)と比較すると約12倍にも増加しています(全司法調べ)。
 しかも、今年の4月から個人債務者再生事件業務が増え、破産宣告をうけた個人が多数押し寄せる状況です。
 しかし、破産係の職員の増員は昨年来1名のみ。10名の職員が、月にして約200件の事案をこなしています。期日を指定しようとしても、当事者の要望に応えられないこともあり、迅速処理に支障をきたしています。破産担当裁判官の増員を含めた緊急の対応が求められています。

〇深刻な人員不足と恒常的な残業
 一方、家庭裁判所(家裁)少年係は、昨年事務官1名が削減されました。今年4月からの少年法「改正」に伴う事務量増加とともに、堺支部は少年身柄事件数で全国4位前後にあり、繁忙状況が問題になっています。 
 「ほとんどの事件がこの4、5年で2〜5割増加しています。また、支部にもかかわらず全国15番目前後の新受件数があり、人員不足は深刻です。それなのに当局は、司法制度改革審議会の動向もあって、従来以上に迅速・丁寧な事件対応を求めています。各部署では懸命に職務を遂行していますが、恒常的な残業で、肉体的にも精神的にも限界です。十分な司法サービスを行いたいという思いに焦燥感さえ覚えています」と書記次長の真鍋逸彦さんは訴えます。

〇エレベーターなく、部屋も不足
 また、堺支部の庁舎にはエレベーターがなく、お年寄りや身体の不自由な方にとっては大変な負担になっています。「車椅子の方が来庁すると、職員4〜6名が業務を中断して駆けつけ、車椅子を人力で上げています。移動するにしても段差が多く、バリアフリーの視点がありません。冷暖房も一部しかなく、長く待っている利用者が大変気の毒です」と語る三村さん。数年前には天井が落下するほど庁舎は老朽化し、いまだに雨漏りがあるといいます。
 堺簡易裁判所(簡裁)や家庭裁判所(家裁)の調停件数も急増していますが、調停室等が不足しており、申し立てをしてから調停開始(第1回期日)が2か月近くも入らない係もあります。これは憲法が保障する「裁判を受ける権利」からいっても問題です。
 「部屋が不足しているため、廊下の一部をパーテーションで仕切ったり、部屋の兼用等が行われています。国民の人権を保障し、国民サービスを充実させるため、人的・物的充実を求める全司法大運動署名にとりくんでおり、私たちは新庁舎建設を強く求めています」と真鍋書記次長。

〇司法への国民参加の視点を大切に
 堺分会では、国民のための裁判所をめざすため、司法制度研究運動(司研)にとりくんでいます。
 毎年、全司法大阪支部は「司研集会」を開催しており、一般市民や弁護士の参加も含めて活発な議論を展開しています。堺分会として報告した組織部長の田中精一さんは、「『司法への国民参加』の視点とともに、国民に対する司法サービスの充実にとりくむことが、労働条件改善にもつながります」と話します。

〇地区国公の輪を広げたい
 また、田中さんは泉州地区国公の事務局長で奮闘しています。昨年の調整手当改悪攻撃では、堺市職員組合などとも共同して、ビラ配布、議員への陳情をはじめとした地域一帯となった活動を展開し、改悪を押しとどめました。「単組間の交流をもっと深めたいですね。行革や公務員制度改革問題で、国民にもっと訴え、地区国公の輪を広げていきたいです」と田中さんは抱負をのべました。

〇みんなで助け合って!
 堺分会は、地裁・家裁・簡裁等多くの職種に分かれている複雑性と、4人に1人が女性職員という現状から、職場の民主化を重視しています。「自らの要求と、国民への司法サービスを結びつける活動が大切です。職場は忙しいですが、みんなで助け合い、励ましあえる職場づくりをめざしていきます」と三村さんは明るく語っていました。
  

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