国公労新聞 第1056号

 2年連続の賃下げNO! 行政減量化STOP!
要求実現へ秋のたたかいGO!
 

 政府は、2年連続の年収切り下げを強行する姿勢をつよめています。また、1府12省庁体制への再編に向け、「25%削減」を目標にした定員抑制攻撃もつよめています。その上、森内閣は、財政破綻の道をひた走るバラマキ財政をやめようとはせず、消費税の大増税をねらっています。
 それらのことから、賃下げや定員削減などの労働条件切り下げに反対する使用者・政府追及を強め、全労連に結集して悪政の強行に反対する共同の一翼を担うことが、国公労連の2000年秋闘の中心課題です。
 ●連続の賃下げに断固反対
 勧告にもとづく給与法の取り扱いでは、2年連続の年収・賃下げという許し難い内容とともに、「ベアゼロ春闘↓『ベアゼロ』勧告↓賃下げ春闘」とする「賃下げのサイクル」の固定化も問題視した取り組みをおこないます。
 国公労連は、給与法「改正」反対の要求をもとに、職場連判状などを背景にした使用者責任追及の取り組みを提起し、展開しています。それらの取り組みを職場段階から強めます。
 加えて、国会議員要請行動なども含め、「賃下げまで勧告にゆだねていない」とする国公労連の主張を広く訴える取り組みを展開します。人勧の影響を直接うける750万労働者への働きかけを重視し、国公労働組合への申し入れや、公務労組連絡会規模の「地方確定闘争」支援などを県段階から取り組みます。

 ●「減量化」を許さないたたかいを継続
--職場から行政点検を--
 省庁再編や独立行政法人化に対応した取り組みも重要です。組織改編にともなう労働条件の切り下げを許さないため、職場段階での学習と意思統一を重視し、産別闘争と職場からの具体的課題での当局追及を一体で強化します。
 また、医療事故や食品事故など、見過ごせない事故が多発している背景に、行政の人的態勢の不足があることは明らかです。そのような行政第一線の実態をもとにして、行政改革の問題点を「点検」する取り組みを秋闘段階から強めます。
 そのため、各単組職場段階からの「行政レポート」の取り組みを展開し、それらを集約するシンポジウムを12月2日に開催します。 行政減量化の問題点を広く訴えるため、11月に「行革アピール行動強化期間」を設け、行政相談や懇談会、宣伝行動を取り組みます。

 ●全労連の「網の目キャラバン」の成功を
 国公産別の課題での取り組みを、全労連が展開する全国網の目キャラバン行動に結合して展開することをめざします。
 そのキャラバン行動は、「労働時間短縮、雇用の拡大」「医療改悪反対、介護制度の改善」「大増税反対、不況打開」の「3大要求」を掲げて取り組まれ、集約の中央行動として11月18日に数万人規模の「国民大集会」が計画されています。
 県労連を中心に具体化されるキャラバン行動に、「行政・司法体制の拡充」などの国公労働者の課題を積極的に持ち込み、行動成功のために奮闘します。

 ●ねばり強いたたかいを
 秋闘では、昇格改善や長時間過密労働の解消など切実な職場要求の実現に取り組むことも大切です。
 また、2001年春闘の準備でもある「私の要求アンケート」を、公務員賃金への攻撃が強まっている今だからこそ、重視します。
 要求前進の展望を私たち自身の取り組みで切り開くため、ねばり強くたたかいを積み重ねましょう。

依然深刻!続発する過労自殺・健康破壊
--〈座談会〉職場をまもってがんばる本省の仲間たちは語る

 「不夜城」と呼ばれる東京・霞が関。ここでは、この3年間だけでも相当件数の過労死、過労自殺が発生しているといわれています。
 昨年、人事院は年間360時間を上限目安とする、超勤指針を発出しました。しかし、多くの省庁では、本省庁(霞が関)をその対象から除外するなど、きわめて不十分な対応となっています。
 また、政府においても、公務員制度調査会答申の要請もあり、今年5月、約8年ぶりに労働時間短縮の運営方針を改定しました。これは各省庁が「これならできる」と、互いに申し合わせた事項という性格のものであり、各省庁において即時に実行できるものと思われます。
 今号は、霞が関に働く5省庁の仲間(労働省・厚生省・運輸省・通産省・環境庁)にあつまっていただき、それぞれ職場実態を語ってもらいました。

 ◆出席者(順不同) ◇原 和義さん(全労働本省支部書記長)◇市川 茂さん(全厚生本省支部書記長)◇久米洋司さん(全運輸本省支部委員長)◇則久雅司さん(全環境庁労組委員長)◇西尾明美さん(全通産本省支部前分会副委員長)司会・野村昌充中執(国公労連調査部)

 ●定員不足と膨大な業務でいのちと健康が蝕まれる
 司会 みなさんは霞が関の本省庁に働いておられますが、職場の残業実態はどうですか。
 東京国公・霞国公の残業実態調査では、月平均残業時間は48時間で、人事院の指針が発出された後にもかかわらず、昨年を7時間も上回っていますが。
 原(全労働)労働省では、それより10時間長い平均58時間です。人員不足と、事務簡素化が徹底されていないことなどが原因としてあげられます。
 残念ながら本省で、98年11月以来5人がみずから命を絶ちました。連日深夜におよぶ長時間過密労働による心身の疲労に起因する過労自殺であると考えざるをえません。
 背景には、職場の安全と健康という基本的な労働条件がおろそかにされていることにあります。組合として公務災害認定を強く求めているのですが、当局の対応は遅いし、甘いです。
 市川(全厚生)それは厚生省も同じです。月平均78時間という残業を続けている本省で、97年に過労自殺がでました。当局は今年4月になってやっと、公務上の災害にあたると認定しました。
 過労自殺が労災や公務上の災害と認定される例はきわめて少ないですが、新聞報道によれば、昨年までの10年間に自殺した国家公務員が「公務上の災害」と認定された例は17件にものぼります。まさに慢性的な長時間労働や深夜勤務による過労、ストレスで自殺に至ったといえるでしょう。
 久米(全運輸)本当に怒りを感じます。運輸省も他人ごとではありません。職場が人の命を奪ったということを決して容認してはいけないと思いますし、当局責任を明確にして対策を講じることが必要です。
 司会 環境庁はどうでしょうか。
 則久(全環境)実は霞国公の残業実態調査で残業時間が最も長く、ずっとワースト1なんですよ。100時間以上残業している職員が半分もいます。
 環境行政の広がりで業務は増える一方、定員削減で職員は減り、一人ひとりが膨大な仕事を抱え込んでいます。昨年3月に過労死された職員が出たこともあり、この深刻な職場実態に、当局さえも無視できない状況にきています。
 西尾(全通産)そうですね。会議や法律など期限が決まっている仕事が実に多く、一人に複数の分担が割り振られることから、恒常的な残業に追いまくられ、みんな疲れているのが現状です。 特に感じるのは、昨年4月から女子保護規定が撤廃されたことや、女性の活用という名のもとに、女性の残業が深刻になっていることです。責任感が先にたち、他の人に負担がかかってはいけないと生理休暇を取りたくてもがまんしている女性が増えているんです。

 ●実効ある定時退庁の実現こそ緊急の課題
  司会 超勤縮減のために、政府は週1回の全省庁定時退庁日を策定しましたね。みなさんの定時退庁行動の取り組みについて聞かせてください。
 久米(全運輸)運輸省は水曜日の他に、金曜日を定時退庁日として設定しています。しかし、当局が自ら設定したのに、組合が申し入れないとなかなか動かないというおかしな状況になっています。
 人員を増やすとか、ムダな業務量を削るなど、具体的な取り組みを展開するために、私たちも一歩足を出す必要があると思いますし、当局をいかにその気にさせるか工夫がいりますね。
 市川(全厚生)6月21日の「落とせ不夜城」霞が関いっせい定時退庁行動の取り組みでは、事前の申し入れのかいもあって、人事課がいっせい定時退庁を呼びかけるメールを当日の朝、全職員宛に送信しました。
 また、夕方6時から、分会の協力を得てハンドベルを鳴らし、ハンドマイクを使って、厚生省全階をまわりました。まずは帰りやすい雰囲気をつくらなければね。
 西尾(全通産)「通常残業省」といわれている通産省は、早い時期から組合としても当局に要望をだして定時退庁に力をいれてきました。
 管理職に「超過勤務の必要性を厳重にチェックし、定時退庁を指導しなさい」という庁内放送をいれて、水・金曜日は早くかえろうという雰囲気が今は定着してきました。ただ、当局のかけ声どまりで、実効がなかなかともなわないことも事実ですが。
 原(全労働)残念ながら、労働省の庁内放送では「管理職の皆さんはじめ職員は定時に退庁できるよう努めましょう」にとどまり、まったく姿勢が違いますね。
 水曜日以外にやっと労働省独自定退日として金曜日を設定できたのはごく最近で、で、今年の7月ですからね。 則久(全環境)当局の取り組みが遅いという点では同感です。私の職場では、昨年10月に幹部を含む全管理職員に組合から申し入れをおこなった結果、12月から当局による取り組みが開始されました。 
 たとえば、各局の担当補佐が水・金曜日に交代で局内を巡回するようになりましたし、各職員が退庁簿をそれぞれつけるとともに、超勤時間の多い職員は健康状態が報告できるように改善されました。職員によっては声はだせなくても、紙に書いて訴えることができる場合もあるので、一定の前進だと考えています。
 また、政府の「労働時間短縮対策」をきちんと守らせるだけでも、ある程度改善できるのではないでしょうか。まず一人ひとりの組合員に、その内容を知らせることが重要だと思います。

 ●残業なくして、今こそ健康で文化的な生活を
  司会 最後に、超勤問題で、みなさんの望まれる施策や、感想などをお願いします。 久米(全運輸)私たちの帰宅は深夜で、国民生活をよくするために働いているはずなのに、家族の会話も確保できず、憲法でいう文化的で健康な生活などとは無縁の実態です。キーポイントは「人間を大事に」することではないでしょうか。 仕事のやり方も問題です。いまは省庁再編や規制緩和の作業などの行政の転換期ですから日常的に忙しく、相当数の残業をこなしている現状です。しかも、予算と国会、法律の改正などがはいると、夜仕事をやらざるを得ない業務システムになっています。
 また、残業が勲章のような感覚の管理者が多いことも事実です。人員不足と、本省のシステムそのものが慢性的な残業の原因ではないでしょうか。
 原(全労働)仕事が忙しく体調を崩しても、医者にもいかずに出勤している職員が存在していることが現実ですよね。命と健康を考えることが、いまこそ重要です。
 市川(全厚生)人員を増やして、国会待機を交代制にするとか、発想の転換が必要ですよね。小手先では解決できませんね。

 ●男女ともに家族的責任を
 西尾(全通産)さきほどお話しましたが、現場での女性の残業問題が深刻です。もっと職場の仲間が理解しあって、母性保護を大切にしていってほしいと痛感します。
 そのためにも男性も女性もいまの働き方を考えることが大事ではないでしょうか。人生は仕事だけではないのですから。
 則久(全環境)同感です。超勤縮減の課題は、男性も女性も家族的責任を果たすということにつながります。 昨年には、男女共同参画社会基本法が施行されています。国家公務員の残業問題のめざす先は、みんなが早く帰って子どもの世話や夫婦の会話をすると同時に、地域社会に貢献できるような視点で男社会を変えていかなければいけないと思います。過労死から職員の生命を守ることも重要ですが、それだけではなく、この法律の理念にふさわしい人間らしい生活と労働をめざしていくことが必要ではないでしょうか。
 司会 今日はどうもありがとうございました。

〈シリーズ〉職場はいま(6)相模原社会保険事務所
年金改悪・高齢化・不況の波で業務量激増

--国民の生存権守る社会保険行政へ奮闘する全厚生相模原分会の仲間

 高齢化が進み、年金制度が相次いで改悪され、さらに不況が長引くなかで、国民年金や厚生年金、健康保険をとりあつかう社会保険事務所での業務量が急激に増えています。今回は、神奈川県にある相模原社会保険事務所を訪ねました。

 ●年金改悪のたび殺到する国民の苦情
 「仕事もない、年金もないということになれば、どうやって生活すればいいのか」「40年間かけて、あれだけ払ったのに、なんでこれだけしか年金がもらえないんだ」――相模原社会保険事務所で年金相談の窓口を担当している五味かおるさんのところには、年金制度が改悪されるたびに国民からの苦情が殺到します。
 「とくに今年3月の年金改悪以降、窓口に怒鳴り込んでくる方や苦情の電話が多くなり、少ない職員で対応するのがたいへんになりました。それに、今までは来なかった55歳前の人も、たび重なる制度の改悪で将来自分は年金がもらえるのか、生活設計をどうしていけばいいのか不安になって相談に来るという年金相談というより人生相談のようなケースが増えています」と五味さんは言います。

 ●国民の生存権を否定する社会保障の改悪は許せない
 全厚生神奈川県支部相模原分会(組合員39人)は、年金制度の改悪に反対して、神奈川県国公や全厚生神奈川県支部の仲間といっしょに、宣伝・署名行動や年金相談・行政相談活動などに取り組んできました。今回の改悪は、厚生年金の場合で、生涯に受け取る年金額が、サラリーマンの夫が20歳の夫婦で1200万円、夫が70歳の夫婦でも300万円も減らされるという、長い年金の歴史の中でも例を見ない最悪の制度改悪だったからです。
 分会執行委員の籠尾(かごお)信さんは、「なかでも、支給開始年齢を65歳に引き上げる改悪は、いまの深刻な雇用状況ともあいまって、憲法にうたわれている国民の生存権を事実上否定することにつながります。私たちは国民のためになる社会保険行政をおこないたいと思ってがんばっているのに、現実は逆の方向に進んでいるというジレンマの中で仕事をおこなっているのが現状」と語ります。

 ●ベッドタウンの急速な高齢化で業務量急増
 また、籠尾さんは、「業務量の増加の原因として、高齢化はもちろんのこと地理的な問題もある」と言います。
 「相模原市は、北東側を東京都に接する神奈川県北部に位置します。ベッドタウンとして発展し人口60万人を超えた相模原市にある当事務所は、相模原市自体の高齢化に加え、東京都町田市など東京多摩地区のベッドタウンの急速な高齢化の影響も受けています。というのも町田市の住民が、地理的に近いこともあり、当事務所へ年金相談に訪れるケースが多くなっているからです。業務量はこんな形でも増えていて、残業が恒常的になっています。それでなくても、神奈川県など関東都市周辺部の社会保険事務所は、人口の増加に対応する定員増がおこなわれなかったため劣悪な職場環境にあります。この上の定員削減など論外」と籠尾さんは語ります。

 ●不況で保険料が払えない深刻なケースが増加
 「不況の影響も深刻です」と語るのは、徴収課長の阪本文雄さん。「不況が長引く中で厚生年金と健康保険の保険料が払えなくなる事業所が増えていて社会保険倒産≠ニも呼ばれています。管轄の事業所は6300ありますが、1カ月で滞納が300とか400という数字が出てきます。それに対応する職員はたった2人で、ひとりが持つ滞納事業所の数は限界を超えています」と阪本さんは言います。
 そして、分会女性部の小田桐薫子さんは、「会社倒産やリストラ首切りの影響も深刻です。夫が厚生年金に加入していたときは、扶養になっていた妻は保険料負担がなかったわけですが、夫の失業と同時に両方に保険料負担が発生します。でも毎月収入がなく日々の生活もたいへんな中で、保険料を納めてくれといってもどうにもならないといった深刻なケースが増えています。こうしたことにも対応できるように、私たちは、国民の生存権を確保できる社会保障制度への改善をめざしたい」と力強く語ってくれました。

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