国公労新聞 第1043号

〈書記長インタビュー 政府・人事院の春闘期回答を斬る〉
 人勧期にむけて運動強化を
  ―生活・賃金水準の低下許さず春闘の低額回答はねかえそう

 2000年春闘は、3月23日の政府・人事院の回答により、大きなヤマ場をこえました。いっぽう、3月15日の金属大手の回答は、500円ないしベア(ベースアップ)ゼロという、史上最低の賃上げとなりました。
 国公労連はこれまで、大幅賃上げ・調整手当「見直し」改悪阻止・25%定員削減反対などの要求課題をかかげて、中央・地方・地域から運動を積み上げてきました。
 春闘要求に対する政府・人事院の回答や、今後の課題について、国公労連・福田昭生書記長に聞きました。

 ●日経連の戦略が貫徹した回答

 ―春闘もヤマ場をこえましたが、なかなかきびしい賃上げ回答ですね。
 福田書記長 15日の連合・JCの集中回答は、造船重機のベアゼロをはじめ、のきなみ超低額ですね。「総額人件費削減」という日経連の「春闘戦略」が貫徹された回答というほかありません。
 昨年の労働省発表の平均賃上げ率2.21%をさらに下回って、2%の定昇程度では、3年連続で過去最低を更新することは必至といわれています。
 連合・JCは、不満は表明したものの、この回答を受け入れたようですが、出口のない不況のもとで、これでは個人消費はいっそう冷え込み、景気回復の重い足かせになるでしょう。

 ●リストラ強行し、もうける大企業

 ―全労連のビクトリーマップでは、大企業430社で98兆円もの内部留保を蓄えているし、業績が回復しつつある業種もあったはずですが。
 福田 そこが大問題です。リストラを強行しているのは、内部留保を蓄えた「超優良企業」が中心です。
 リストラ効果でもうけを増やしながら、「人件費削減」ということですから、これほど身勝手な理屈はありません。やはり、こういう財界・大企業の横暴をきびしく追及する国民的な運動が弱いということでしょう。国民春闘共闘・全労連は、「誰でも、どこでも15、000円、時間額100円の賃金底上げ要求」をかかげてがんばっていますが、この方向で、すべての労働者・労働組合の大同団結をどうつくりだすかが課題ですね。

 ●政府・人事院は民間準拠一辺倒

 ―3月23日の政府・人事院の回答はどうだったのですか。
 福田 残念ながら、例年の回答を一歩もでない、とても納得できる回答ではありませんでした。
 国公労連が、今年とくに強調したのは、マイナス勧告ともいわれる事態の中で、「人勧尊重」だけで使用者・政府の責任が果たせるのか、ということでしたが、まともに答えませんでした。
 人事院も民間準拠一辺倒です。調整手当では「成案をうるよう努める」など、改悪強行の姿勢を崩しませんでした。人事院は、あくまで3指標・データに固執して、4月中旬にも切り下げ対象地域を提示する構えです。事実上の「賃下げ回答」というべき提案を黙って受け取るわけにはいきません。職場・地域から人事院包囲のうねりをつくりだしたいと思います。

 ●人勧期にむけ、ねばり強いたたかいを

 ―人事院勧告にむけたたたかいの課題ということではどうでしょう。
 福田 これから、議論をしなければなりませんが、昨年、一時金の切り下げが強行され、年収ベースでは賃金が切り下げられました。こうした事態を再び許さず、調整手当改悪阻止、生活水準の低下を許さない賃金水準をどう確保するかが現実的な争点だと思います。
 それに、解雇規制・労働者保護法の制定、大企業本位の規制緩和反対など、悪法・悪政とたたかわなければなりません。国公労働者にとっては、総定員法反対・定員削減阻止のたたかいが、いよいよこれから重要となります。低額回答にひるまず、国会解散・総選挙で、国政の民主的な転換も展望しながら、政府・財界を追いつめる国民的共同をねばり強く発展させなければなりません。


〈シリーズ・職場はいま(4)〉
 資源環境技術総合研究所
 ―独立行政法人に移行しても公共性の高い研究の継続を

 ●環境問題への対応など国民生活守る研究担う

 【全通産筑波支部資源環境技術総合研究所分会発】
 工業技術院に属する資源環境技術総合研究所は、(1)環境保全、(2)エネルギー利用、(3)資源開発、(4)安全研究の4つの分野で、国民の生命・財産・生活環境を守るための重要な研究をおこなってきました。
 しかし、昨年の国会での独立行政法人個別法など行政改革関連法の成立により、工業技術院の15の研究機関は、単一の独立行政法人へ、2001年4月に移行させられることになりました。
 資源環境技術総合研究所分会(以下、資環研分会と略)では、独立行政法人への移行による職場の変化に対応し、職場から学習と討議を徹底しておこない、組合員一人ひとりのさまざまな声を把握して要求をまとめる取り組みを現在すすめているところです。

 ●定員削減による研究環境の悪化

 「海外の研究所における技術支援スタッフの優秀さには、しばしば驚かされる。日本では、装置の作成、メンテナンス、データベースの作成などを研究者一人で全部おこなっている場合も多々あり、効率の低下を招いていると思う」「支援部門の人員配置は、現在、新法人組織の上の方から決めていっているにすぎないものと思える。『必要な部署に必要な人数を』が基本だ」―これは、いま、資環研分会で取り組んでいる「法人化に向けた要求作り」アンケートに寄せられた組合員の声の一部です。
 行(二)職をはじめ、これまでにも激しい定員削減〈1976年の行(二)職員40名が、96年には3名。76年の研究者数264名が、96年には228名にまで、削減されている〉がおこなわれ、研究・労働環境が悪化してきました。
 そして、職員は減らされるのに、逆に、資環研の役割は年々大きくなっています。(それは、全体の研究テーマ数が増加〈76年の研究テーマ数76が、96年には244に増えている〉していることにも示されています)
 とくに、環境・安全分野は、国の果たす役割が明瞭です。温暖化をはじめとする地球環境問題、ダイオキシンやいわゆる環境ホルモンで深刻になった身近な環境・安全問題など、いずれも民間のみにまかせられないことは明らかです。

 ●組合員の力あわせて
  ―執行部と専門委員会が活発なとりくみ進める

 資環研分会では、ひとりでも多くの組合員の力をあわせて運動を進めるために執行部以外に、各専門委員会を設置しています。とくに、研究体制問題委員会(各職場の委員10名で構成)は、定員削減問題や行革の問題などに対応して研究環境の改善に向け奮闘してきました。

 ●意見書発表し独法化反対にとりくむ

 とくに独法化とのたたかいでは、「研究開発における国の責任はいかにして果たせるか」と題した「国研の改革に関する意見書」をパンフレット(98年9月に作成)にまとめました。そして、このパンフレットを、行革推進会議やマスコミ各社などに送付し、独法化反対の運動を進めました。また、ときどきのマスコミに独法化を推進する内容が掲載されたときも、資環研分会として、抗議の文書を送付しました。

 ●ダイオキシン、地球環境問題など、公共性高い研究の維持・発展めざす

 資環研の研究課題は、公共性は高いが、経済的効率性があまりない研究分野です。たとえば、地球環境のメカニズム解明などには10年単位の研究が必要です。資環研の研究者は、20年も前から炭素循環の研究が環境問題にとって重要だと説いていたのに、政府は地球環境問題など存在しないという姿勢で、特別な予算はつきませんでした。ところが、国際的な問題として火がつくや、その専門家をかつぎ出そうとして探し回りました。探せばみつかるのは、研究者が自らの使命感でコツコツと研究を続けているからです。最近のダイオキシン問題も同様です。
 独法化の看板は、研究の「効率化」といわれています。この「効率化」の流れの中で、資環研の研究課題の4つの柱の重要な一つである「安全研究」の分野が、組合の反対にもかかわらず、なくされようとしています。資環研分会は、独立行政法人に移行しても、公共性の高い研究の継続・発展を求めていくとともに、組合員の研究・労働条件の維持・向上をめざして、奮闘していきます。


トップページへ   国公労新聞へ