国公労新聞 第1037号

賃下げ・リストラ攻撃はねかえし
 ―春闘勝利、国政の民主的転換を

 ●賃下げ・リストラ春闘狙う
 全労連などでつくる2000年国民春闘共闘委員会は、1月12日、春闘スタートのとりくみとして、財界の春闘方針「労働問題研究委員会報告」(労問研報告)で「賃下げ・リストラ」を打ち出した日経連臨時総会への抗議行動をおこないました。
 「労問研報告」では、過去最悪の失業のもとで、「雇用の維持・創出のためには、もはや、賃上げか雇用かという単純な選択では、対応できない」「総額人件費を抑制するために、労使があらゆるくふうを講じなければならない」とのべ、「ベースアップ」どころか、賃下げを主張しています。
 さらに、「労使のくふう」として「就労時間を減らし、その分賃金を下げて雇用を維持する手法」のワークシェアリング(仕事の分かち合い)を提案しています。これは、労働時間の短縮によって雇用の創出がはかられているヨーロッパのワークシェアリング(たとえば、フランスでは賃下げなしの週35時間労働で12万人の雇用が創出されている)とはまったくちがいます。ワークシェアリングの名のもとに、賃下げを公然と唱え、日本の大企業各社がリストラ「合理化」のなかで、労働者にいっそうの長時間・過密労働を強いている実態には口をつぐんでいます。
 その上、「正規従業員の仕事・価値を洗い直し、仕事の性格・内容によって時間給管理が可能なものは時間給賃金とする発想も必要」とのべ、正規労働者をパートなどの無権利な不安定労働者におきかえることを要求しています。

 ●労働法制全面改悪を要求
 さらに、「労問研報告」は、「雇用関係諸法制の規制緩和の早期実施」として、労働法制の全面改悪をすすめることや、労働者の首を切るリストラを徹底せよとのべています。
 このように、財界側が、2000年春闘を「賃下げ・リストラ春闘」とする姿勢を打ち出すなか、国民春闘共闘の小林洋二代表幹事(全労連議長)は、12日の抗議集会で、「労問研報告は、さらに賃金の切り下げと雇用を悪化させ、消費不況の悪循環をもたらすものだ。これでは日本経済の再建の見通しは立たない。雇用確保と大幅賃上げの要求をかかげ、生活と労働の実態にもとづく春闘諸要求の実現、すべての労働者の共同の発展と労働者・国民本位の政治転換を現実のものとする2000年春闘として、全力をあげよう」と訴えました。


大阪府知事候補・あじさか真さんを推せん
 国公労連中央執行委員会は、大阪国公の要請をうけ、大阪府知事選挙(2月6日投票)に「明るい革新大阪府政をつくる会」が擁立しているあじさか真さん(関西大学名誉教授)の推せんを決定しました。
 大阪府知事選は、同日投票がおこなわれる京都市長選とともに、自民党主導の「オール与党」政治によるゼネコン奉仕の大型開発優先・住民犠牲の政治を許すのか、それとも住民の暮らしと営業を守り、住民が主人公の政治を実現するのか、を最大の争点にたたかわれています。
 しかも、21世紀の政治のゆくえを決める総選挙を目前にして、両選挙の動向は、国政にも重大な影響を与えるだけでなく、2000年春闘における生活と雇用を守る緒戦のたたかいとなるものです。大阪・京都から国民本位の政治の流れをつくりましょう。
 ●府民が主人公の府政へ
 横山ノック前知事は、「無党派知事」候補として、「弱者の視点に立った政治」の選挙公約をかかげて当選したにもかかわらず、当選後は、ゼネコン奉仕の大型開発にばく大な府費を投入し、府債を3兆8千億円にもふくらませ、財政状況は全国でも最悪と指摘されています。
 その一方で、横山前知事がうちだし、共産党以外の「オール与党」が賛成している「財政再建プログラム」では、高齢者・障害者・母子家庭・乳幼児など各医療費への補助金カット、定時制高校の廃止、府立高校の廃校、高校の入学金8倍化など、府民の暮らしにかかわる大事な予算を根こそぎ削ることがねらわれています。
 あじさかさんは、ゼネコン奉仕の開発至上主義の府政を転換し、「府民が主人公」の府政の実現を訴え奮闘しています。



〈シリーズ 職場はいま…〉(3)

◆国立療養所千石荘病院◆
 地域人口3分の1以上の12万人から−病院廃止に反対する署名集める


 このシリーズは毎月1回程度のペースで、各単組の職場の取り組みや、行革の影響がでている職場実態などを1年かけて連載していきます。

◇    ◇

●結核医療の拠点
 【全医労千石荘支部発】
「だんじり祭り」で有名な地域(大阪府岸和田市・貝塚市・熊取町)を地元とする国立療養所千石荘病院(入院定床420床、病院で働く仲間は約250人)は、1940年に開設して以来、大阪府南部における結核医療の拠点として結核患者の治療にあたってきました。
 そして、近年では高齢化などへの対応として、脳卒中リハビリテーション、循環器系疾患、がん、難病対策の治療などをおこなっています。
 また、千石病院の近隣には、関西国際空港(泉佐野市)や核燃料工場(熊取町)などもあり、災害時の対応も求められ、厚生省も「防災基幹病院」として充実するとしていました。

◇    ◇

●住民無視の廃止計画
 ところが、昨年3月18日、厚生省は国立病院・療養所の再編成「拡大見直し」で、千石荘病院を廃止し、大阪病院に統合する計画を一方的に打ち出しました。

◇    ◇

●90%以上の住民が国立で存続を願う
 全医労千石荘支部は、廃止計画が発表されてから、まず全職員のアンケート調査をおこないました(約200人が回答)。こんなときこそ労働組合の出番と、職員の声・意見・不安などをアンケート活動の中でつかみながら、職員の団結を呼びかけ、3カ月間ほどで組合への加入者を25人迎えました。
 そして、支部は、「千石荘病院を守る会」結成にむけて2回にわたる全戸ビラ配布や、自治会長への要請行動などをおこないました。また、住民アンケートには800世帯から回答が寄せられ、90%以上の住民が、「国立での存続」を願っていることがわかり、大きな励ましにもなりました。
 このような取り組みによって、昨年6月27日、「千石荘病院を守る会結成総会」を、8人の町会長さんをはじめ、地域住民の方々170人の参加で成功させました。
 11月21日には、「守る会」主催で、「泉州の医療実態と千石荘病院の役割について考えるシンポジウム」を開催し、地域住民を中心に180人が参加しました。シンポジウムで、地域の開業医の方は、「貝塚、岸和田、泉佐野の各市民病院の病床数や患者数、医師数を比較すると、千石荘病院は少ない医師で地域医療に貢献している。もし廃止されたら呼吸器・肺がんの患者はどこに行けばよいのか。各市民病院に入院できると思ったらまちがいで市民病院等は空床がない」と発言しました。

◇    ◇

●大阪は結核感染率ワースト1
 千石荘病院で働く看護婦は、「千石荘職員は雇用に対して率直に不安な気持ちだったが、この間の運動の中で病院・医療を守ることが雇用確保につながると変わりつつあることに確信を持った。地域から結核病棟をなくしてはならない。大阪は結核感染率が全国平均の2倍でワースト1だ。厚生省の結核緊急事態宣言ポスターを病院に貼ってあるが、千石荘の職員にとっては『なんやこれは』という感じだ。もうけにならなくとも国民にとって、なくてはならない医療がある。地域に密着し、身近にあることが大事で、千石荘は入院費も安く、差額ベッドも少ない」と発言しました。会場の地域住民の方からも「ぜんそくの子どもが増えているなか、千石荘病院の存続は切実だ」「貝塚市では、いまでも救急患者が市外に運ばれている。千石荘は廃止どころか充実が必要だ」という声があがりました。
 このように、千石荘病院の存続・充実を望む地域住民の切実な声が広がるなか、廃止計画に反対する署名が、1月末現在で12万筆集約されています。これは、病院の地域である岸和田市・貝塚市・熊取町の人口30万人の3分の1以上の方に署名していただいたことになります。
 当初、署名を始めたときには、「なぜ労働組合の署名に協力しなければいけないのか」などの声があがり、なかなか進まず悩んだ時期もありましたが、組合員どうし励まし合い、平日はもちろん休日・夜間でも、町会長が会っていただけるとなると即刻出向き、粘り強く地元貝塚市全町会へ、守る会運動への理解と署名の協力を訴え続けました。この行動がみのり、病院周辺を中心に30町会で署名の協力が始まりました。
 その後、それぞれの地域に住む組合員が町会の役員にはたらきかけていき、周辺の岸和田市155町会連合や熊取町37地区長会でも理解が得られ、全市的・全町あげて署名が取り組まれました。

◇    ◇

●住民の中へ、住民とともに
 現在、支援を受けるとか助けていただくという受け身の運動から地域の医療を私たち住民自らの力で守るんだという主体的な運動に変化しつつあります。
 守る会結成時には貝塚市職労・養護学校・保健所・千石荘の各労組から1人づつの4人でスタートした役員体制も、現在は、地元町会長さんや患者さんを含め21人の役員体制となり、守る会会員も250人まで拡大しました。
 このように、地域住民の共同を大きく拡大し、これを元にした厚生省をはじめ各行政との交渉もねばり強く展開してきました。
 今後は、昨年築いた運動のすそのをもっと住民の目に見え、厚生省を大きく包囲していく取り組みとして1万世帯でのポスター掲示行動、協力していただいた全町会への緻密な連絡と懇談、開業医や医療機関関係者との懇談と対話、医療実態調査、健康まつり的な住民のつどいなどを展開し、いっそう住民の中へ、住民とともに奮闘していきます。


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