行政サービス切り捨て、公務員べらしすすめる独立行政法人化

【国公労新聞第1001号98年11月1日付より】


 ■独立行政法人とは
 独立行政法人は、何か耳新しい制度のようですが、行政の一部を国とはちがう法人格におこなわせる制度で、現在でも特殊法人(96年時点で87法人)があります。

 ■今もある独立行政法人
 特殊法人は、「国の事業」の内、「企業的経営になじみ、かつ、そのことで効率化がはかれる事業」について、法により設立されることになっています。
 「公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務・事業」で、「国が主体となって実施する必要がない(事務・事業)」(行革基本法第36条)を実施するための独立行政法人と、特殊法人のちがいはそんなに大きくありません。

 ■独立行政法人創設はなんのため
 「国が行政執行に責任をもつ」とはどういうことなのでしょうか。
 1つには、憲法が規定する基本的人権を、すべての国民に公正に実現することを目的に据えることが必要です。
 2つには、そのことから、利潤追求や効率性のみではなく、いつでもどこでも、だれにでも同質な行政サービスを提供する態勢を維持することが必要です。
 3つには、事務・事業実施の費用を基本的には税金で賄うしくみが必要です。
 4つには、公正かつ安定的に実施する必要のある事務・事業では、それに携わる労働者の雇用の安定が不可欠であり、そのための制度=公務員制度の確立が必要です。
 このような視点で、独立行政法人をみると、(1)業務運営の目標として「効率化」、「財務内容の改善」などを掲げ、公正な業務運営の保障がないこと、(2)3年から5年毎の「中期計画見直し」時に、業務の「改廃」も検討対象になっていること、(3)独立行政法人の運営費について、「(国の)交付その他の措置」とし、受益者負担や民間からの出資も想定されていること、(4)職員について国との雇用関係を否定していること、など「国が業務執行に責任をもつ」ことを想定していません。
 結局、行政経費削減や、人減らしなどの減量・効率化のみを目的にした法人を創設しようとしているのです。

 ■独立行政法人に自主性があるか
 先にもふれた特殊法人では、予算や事業計画、役員の任免などで所管官庁が広範な関与を行っており、職員の賃金決定でも「自主決定」することができません。
 独立行政法人でも、「運営目標(効率化の目標数値など)」を所管大臣が設定し、長の任免や財務、人員、給与などの「中期計画」についての大臣の確認、評価委員会の審査などが広範に関与できることが検討されています。また、業務運営についても、緊急時には大臣が直接指揮監督することも想定されています。
 その一方で、業務運営の結果、国民に損害を与えた場合の補償を、国が全面的に責任を負うことなどは考えられていません。
 独立行政法人の運営に、大臣や評価委員会がことこまかく口出ししながら、結果責任は独立行政法人に押しつけるしくみが考えられているのです。


トップページへ   国公労新聞へ