国公労新聞 号外

ストップ!史上最悪の年金改悪

 政府が、年内にまとめようとしている年金改悪案では、今後、半世紀にわたって、国民負担アップと給付カットが行われるしくみをつくろうとしています。この年金改悪は、すべての国民の生活に影響します。
 国公労連は、この史上最悪の年金大改悪をストップするため、「年金闘争本部」を立ち上げました。職場・地域で今号をもとに学習をすすめながら年金闘争にとりくみましょう。

 ○年金のしくみ

 公的年金には、国民年金、厚生年金保険、各種の共済組合による共済年金という3つの種類があります。
 1つ目の国民年金は、自営業者、農業者、20歳以上の学生などが対象です。原則として20歳以上の人すべてに加入義務があります。
 2つ目の厚生年金は、民間のサラリーマンが対象です。
 3つ目の共済年金は、国家公務員、地方公務員、私学の教職員などが対象の年金制度です。
 下図にあるように、公的年金は1階と2階から構成されています。



 国民年金は、基礎年金という1階部分だけです。厚生年金は1階の基礎年金と2階の報酬比例部分を合わせた2階建てとなっています。その上に、企業が独自に実施する厚生年金基金などの企業年金が3階部分として乗ります。
 公務員などの共済年金も、基礎年金の上に乗っていて、報酬比例部分と職域加算部分で構成されています。
 今回の改悪の対象となっている公的年金は、この図で示されている1階と2階です。ただし国民年金基金は任意加入の制度で、含まれていません。
 公的年金の財源は、労働者と雇用主の保険料、自営業者等の保険料に加えて国民が納めた税金を投入しています。今回の年金改悪は、公的年金の給付(年金額)ダウンと負担(税・保険料)アップを同時に行おうとしています。

 ○保険料1.5倍アップ  年金額24%ダウンねらう

 04年改悪の第1の柱は、給付と負担のあり方をどう変えるか、ということです。
 厚生労働省は、制度の基本は社会保険方式としたうえで、給付の「現行水準」を維持していくと保険料の大幅値上げが避けられないから「保険料固定方式」を検討するとしています。
 具体的には、厚生年金の場合で、現行の13.58%(労使折半)の保険料率を20年かけて値上げしていき、20%(現行料率の1.5倍)に達したら「固定」するというものです。
 保険料を上げる一方で、年金額は大幅に引き下げるとしています。基礎年金の国庫負担の割合により引き下げ率が変わりますが、基礎年金の国庫負担割合が2分の1に改善された場合、現行の標準年金は、夫婦で月23.8万円(男子労働者の平均的賃金の59%)が21万円(男子労働者の平均賃金の52%・ダウン率は12%)、3分の1のままの場合は、18万円(男子労働者の平均賃金の45%・ダウン率は24%)まで切り下げられることになります。共済年金も同様の改悪が検討されています。
 国民年金の場合は、現行1万3300円(15年度)の固定の保険料が、基礎年金の国庫負担割合が2分の1にされた場合は、1.4倍の1万8100円に引き上げ、3分の1のままの場合は、1.8倍の2万3100円まで引き上げられることになります。
 一方で、月6.7万円の標準年金が、2分の1に改善された場合で5.9万円、3分の1のままの場合は、5.1万円になってしまいます。
 いずれも毎年値上げされていく保険料を最高の40年払い続けての金額です。

○負担増・給付減はやめて!

 ○受給者の年金額を自動的に切り下げ

 改悪の第2の柱は、「マクロ経済スライド」という新方式を導入することです。この新方式のねらいは、すでに年金を支給されている年金生活者の年金額を「自動的」に切り下げることができるシステムをつくろうというものです。
 現行は、物価スライドが年金額手直しの方法となっています。新方式では、仮に物価が下落しない場合でも、少子化率の進行や経済成長率など、「社会経済全体(マクロ)の変動に合わせて年金を自動調整する」というものです。国会の法改定抜きで、毎年、年金額の引き下げが自動的にできる仕組みとなります。

 ○パート労働者にも保険料と低年金

 第3の柱は、女性の年金問題ともかかわる「短時間労働者の厚生年金適用拡大策」の提唱です。厚生労働省は、03年4月に「適用拡大」をおこなった場合の「給付と負担」の試算を公表しています。A案は、現行で使われている厚生年金の標準報酬等級表(1級の下限9.8万円から30級の上限62万円)に基づいて保険料を計算するという方式で、B案は、下限1級の9.8万円を実際の賃金に近い金額の7万円に引き下げて計算するという方式です。法案が成立した場合、週20時間以上、年収65万円以上のパート・アルバイトは、厚生年金に強制加入となり、今回の改悪内容を含んだ毎年引き上げられていく保険料を払い続けていかなければならないことになります。
 このような年金改悪ではなく、老後の生活を支える年金制度の実現を求める運動が重要です。

 ○年金制度の改善を

 私たちのめざす年金改革は、高い保険料(負担)と給付のアンバランス、年金空洞化の解消です。緊急の課題として次のことを求めています。
(1)国会の附帯決議にもとづき、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げること。
(2)196兆円の積立金を計画的に取り崩すことで年金財源の安定化を図るなど、財政方式と積立運用の在り方を欧米並みに切りかえること。
(3)男女格差の縮小。
(4)国際的にみても異常に長い25年という受給資格期間の短縮(ただちに10年程度に)。
(5)無年金者、無年金障害者の救済、失業期間中の年金継続対策などの改善。
 こうした制度の改善の運動とあわせて、全額国庫負担(税方式)の最低保障年金制度の創設を求めます。財源は、上記の(1)(2)とあわせて、ムダな大型公共事業費の削減、軍事費の削減、大企業の優遇税制の是正(国公労連の試算で年間18兆円の新財源が生み出せる)などで、消費税の増税なしに十分確保できます。

○署名・宣伝行動にダッシュ!

 ○年金闘争本部始動

 国公労連は10月17日に、第1回年金闘争本部を開催し、史上最悪の年金大改悪を阻止するたたかいへ本格的なスタートを切りました。
 「少子高齢化」を理由とする「消費税引き上げ」による国民負担増に反対して、全労連が提起している憲法25条が保障する生存権にもとづく「最低保障年金制度」の確立のとりくみを軸に、史上最悪の年金改悪を許さないたたかいを強めます。
 とりくみでは、年金改悪をめぐる情勢と内容を学び、「年金改悪・大増税反対」署名を軸に、外に打って出る行動を展開することとします。
 国公労連は、当面する年金闘争のとりくみとして、次の具体的行動提起を行っています。


 ○11月から毎月第1・3水曜日は全国で宣伝

(1)「年金改悪、大増税反対」署名を来年3月末までに1人10名分集約する。
(2)団体署名を活用して、各級機関のみならず、他労組、青年・女性、老人クラブなど各団体に呼びかける。
(3)全職場で「年金学習会」を開催して年金改悪の内容を学び、年金闘争の意思統一を行う。そのため全単組、全ブロック・県国公で「年金オルグ養成講座」を開催し、年金オルグを養成する。
(4)「年金改悪・大増税反対」の国民世論を形成するため、毎月第1と第3水曜日を「全国年金統一宣伝行動日」に設定し、職場周辺や駅頭・ターミナルでの宣伝行動を県国公が中心となり他労組、他団体にも呼びかけて行う。
(5)中央段階では、12月6日に「年金110番」にとりくむ。各県段階では、「行政相談」の具体化と合わせて、「年金相談」を実施する。
(6)地元国会議員への要請行動、自治体要請行動を展開する。




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