少年法の理念を守り改悪に反対する決議
【国公労連第44回臨時大会決議】

 法制審議会は、1月21日に、「少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図るための少年法の整備等に関する要綱骨子」を一部委員の反対をおしきって採決し、法務大臣に答申をおこなった。「少年非行の問題は、子どもにかかわる多くの専門家や広範な国民の議論をおこない、慎重に審議すべき」とする、日弁連など法曹関係者をはじめ、教育学者や福祉学者などの専門家、多くの国民の声を無視したものであり、容認することはできない。

 その答申は、1)家庭裁判所少年事件のほとんどすべてに検察官関与が及ぶだけではなく、起訴状一本主義や伝聞証拠の排除といった成人手続ではあたりまえの刑事訴訟法上の手続が無視され、少年の一方的な不利益になる危険性があること、2)身柄拘束期間が延長され、少年の就学や就労への悪影響が考えられること、3)裁定合議制の導入によって少年審判の特質を損なうおそれがあること、4)少年の更正より処罰重視の審判となる恐れがあること、5)実効のある被害者への援助がほとんど論議されていないこと、など多くの問題が含まれている。
 少年法は、日本国憲法の下で、教育基本法や児童福祉法と前後して制定されたものであり、少年の健全育成を目的としたものである。今回の答申は、その理念を反故にし、厳罰化に転換させることになりかねない。

 現在、わが国の少年をとりまく環境は悪化の一途をたどっており、国連からも受験戦争の厳しさなどを人権上の問題とする指摘がおこなわれている。また、財界のおしすすめる弱肉強食のリストラ合理化の嵐が、少年の生活の場である家庭を破壊し、教育機関の劣悪な環境の放置など子どもをはぐくむための予算措置も後退している。加えて、社会には多くの有害な情報がたれながされ、子どもたちの社会認識を大きくゆがめている。少年非行の問題を考える場合こうした現状をふまえ、少年をとりまく社会環境の改善とあわせた論議と対応が必要であり、非行という結果のみを取り出して厳罰化することは、本末転倒といわざるをえない。

 また、一部の特異な事件を論拠に、刑事罰の適用年齢を16歳から14歳に引き下げようとする検討を自民党がおこなっている。これは少年の発達段階を無視する暴論であると同時に、政治のいきすぎた介入であり冷静な論議を妨げるものである。厳罰化をおしすすめたアメリカや他の先進諸国では、むしろ少年犯罪が激増をしており、厳罰化に少年犯罪の抑止効果があるとする見解の誤りは明らかである。

 わが国が「子どもの権利条約」を批准していることをふまえても、少年を一人の人格として尊重し、はぐくむ社会が今こそ求められている。私たちは、そのことと真反対の方向にある検察官関与などの法制審答申や刑事罰適用年齢の引き下げに反対する。日弁連など法曹関係者、教育学や社会福祉学などの専門家、子どもの健全な発達を望む多くの国民の間で始まっている取り組みとも連帯し、少年法改悪に反対するたたかいを強めるものである。
 以上、決議する。

1999年2月4日 日本国家公務員労働組合連合会第44回臨時大