2004年「年金改革」法案閣議決定にあたっての談話

 政府は、厚生年金保険料と国民年金保険料を毎年引き上げ、給付水準を引き下げる2004年「年金改革」法案を閣議決定し、国会に提出しました。
 これまで、政府は5年毎の保険料と給付の見直しで当面の引き上げ額を決定してきましたが、今回の法案は、国会審議、法改定なしで毎年自動的に保険料を引き上げ、給付水準についても自動的に引き下げられる仕組み(「マクロ経済スライド」)を導入するという前例のない年金制度の改悪となっています。政府は、この「マクロ経済スライド」の導入によって、今後20年にも及ぶ年金の大改悪を決めてしまおうとしているのです。
 その内容は、毎月支払う保険料について、厚生年金は04年10月から、国民年金は05年4月から2017年まで毎年引き上げていくというものです。
 「保険料固定方式」を導入し、厚生年金の保険料については2017年度以降18.30%に固定するとしていますが、その場合平均年収(約570万円)の場合でボーナスを含めて年間52万1550円となり、13万4千円余の負担増となります。
 国民年金保険料は、現行の1万3300円から毎年月額280円引き上げ、17年度から1万6900円とすることを明記しています。
 給付水準については、賃金や物価が上昇しても、少子化による「公的年金全体の被保険者の減少と年金受給者の平均的な受給期間の伸び」を差し引いて自動的に引き下げます。
 モデル世帯(夫40年厚生年金加入、妻専業主婦)の場合、現行の59.3%から23年度に50.2%にまで引き下げられます。
 共済年金も厚生年金の給付水準に準じて給付額が引き下げられ、保険料引き上げも行われることになります。
 その一方、04年4月から実施が明記されている基礎年金への国庫負担の3分の1から2分の1への引き上げを先送りし、年金制度の土台をますます不安定なものにしようとしています。そればかりか、年金財源を年金課税の強化、定率減税の縮小・廃止、消費税に求めめ、国民に大きな負担増をもたらそうとしています。

 今、国民年金の保険料未納者が激増し、03年度の納付率は対前年比で8.1%も低下し、62.8%となっています。企業の倒産リストラで毎年300万人から400万人が厚生年金から国民年金に移行し、そのうち少なくない人が未納者となっています。未納の理由は「保険料が高く経済的に支払うのが困難」で、とりわけ20代の青年の未納者が増えています。また、読売新聞の世論調査では、国の年金制度を「信頼していない」「どちらかと言えば信頼していない」という人が合わせて64%にものぼっています。このように深刻な雇用情勢とともに、年金制度に対する「不安・不信」が増大しています。今回の法案は、より一層の年金制度の空洞化を加速し、国民の信頼をますます失わせるものです。
 今政府に求められていることは、基礎年金への国庫負担2分の1への即時引き上げと巨額の積立金の取り崩しなどで保険料の引き上げをやめ、給付を改善するとともに、雇用・失業と少子化対策の拡充で年金制度の空洞化をくい止めることです。
 国公労連は、かつてない大改悪となる「年金改革」法案の撤回を求め、「2・25地域総行動」「4・15休暇行動」をはじめとする広範な国民との共同行動を発展させ、将来に希望が持てる安心な公的年金制度の確立をめざして全力をあげてたたかう決意です。

  2004年2月10日

日本国家公務員労働組合連合会
書記長 小田川義和


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