国公FAX速報 2004年5月14日《No.1515》

共済年金で国会審議
給付水準は3、4割台に
連続する掛金引き上げ

 衆議院財務金融委員会は、本日、共済組合長期掛金の引き上げと給付削減を伴う、国家公務員共済組合法の一部を改正する法律を与党の賛成多数により可決しました。
 本日の審議は、自民党(1人)、民主党(3人)、共産党(1人)の各議員が質問に立ちました。法案の審議概要と結果は以下のとおりとなっています。


【負担と給付について】

 佐々木憲昭議員(共)は、今回の法改正により年金の負担と給付がどう変化するかなどについて「国共済の給付水準は厚生年金に準拠するとされているが、今回の法改正で具体的にどうなるか」と迫りました。答弁した山本財務副大臣は、「夫40年間国家公務員(妻専業主婦で49.8%、共働きで39.1%)、男性単身で38.0%、女性単身で40.4%になる」と答弁しました。40年間国家公務員で妻が専業主婦というモデル世帯でさえ50%を割り込み、モデル以外の世帯では3割、4割となるなど、すべての世帯で5割を割り込むことが明らかになりました。
 さらに佐々木議員は、「その水準はその後保障されるのか」と追及すると、山本副大臣は「保障はございません」と答弁、具体的には次の数字を示しました。

(モデル世帯でみた給付例) 70歳(2025年) 47.2%
75歳(2030年) 44.7%
80歳(2040年) 42.3%
85歳(2045年) 40.1%
(単身者世帯) 85歳:男性 30.6%
85歳:女性 32.5%


 この数字を示された佐々木議員は「これでは100年安心どころか、惨憺たるものだ」と批判しました。
 一方、保険料については、「一元化も踏まえ一定の前提で再計算すると、(1)毎年0.3%ずつ引き上げて、2030年には20.3%で固定、(2)毎年0.354%ずつ引き上げると19.9%、(3)毎年0.4%ずつ引き上げると19.7% まで引き上げられる」と答弁、負担は20%前後、給付水準は3割、4割に下がるという内容で、大幅な負担増、給付減になることが明らかになりました。


【職域加算について】
民主党:職域加算を厳しく批判


 職域加算部分について、政府側は「民間企業年金を考慮し、国家公務員は職務専念義務、兼業禁止、守秘義務など身分上の制約があるという公務員の特殊性を勘案したもの。公務の能率的な運営維持から制度の目的意義がある」「基礎年金に上乗せする公務員制度の一環としての共済制度」と答弁。
 それを受けて佐々木議員は「公務員の年金が安心できる水準を確保するためにも、職域加算部分は維持すべき」と主張しました。
 一方、民主党の中塚一宏と鈴木克昌議員は、「公務員優遇の年金制度、上乗せ制度」「何故維持しているのか、公務員の特殊性を考慮というが、公務員の身分は安定している。国が事業主として半分を税で負担している」と職域加算を厳しく批判しました。


【国と地方の一元化について】

 鈴木克昌議員(民)が国と地方の共済の一元化について質問したのに対して、政府側は、国家公務員と地方公務員の一元化について、「財政調整を行うなら、財政単位が400万人に拡大し、安定感が高まる」「公的年金一元化へのワンステップ」と答弁しました。


【再任用等について】

 佐々木議員は、「年金の支給開始年齢と定年退職の空白についてどうするか」と質したところ、答弁に立った小澤人事官は、「民間の状況は、定年が60歳が9割で、大部分が再雇用であり、(公務においても)再任用制度を活用していくのが現実的と思う。定年の延長については、民間の動向を注視していく」と述べるにとどまりました。しかし、実際に再任用された人数については、「2001年度の定年退職者は6,027人で、再任用された者はは616人(10.2%)」と答弁、これについて佐々木議員は「実際に機能していないに等しいといっても過言ではない」と指摘、定員管理が硬直的であることを踏まえ、定員管理の柔軟な運用を求めました。


【議員年金について】

 自民党の西田猛議員は、議員年金について、長妻議員は積立金の運用について質しました。

 最後に採決に先立ち、佐々木議員(共)が反対討論(別添)を行いました。法案には民主党、共産党は反対しましたが、自民党、公明党の賛成多数により採択されました。  


《別添》佐々木憲昭議員の国公共済法案反対討論

 私は、日本共産党を代表して、国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。
 本法案反対の最大の理由は、「マクロ経済スライド」の導入により、国家公務員共済年金の給付水準を、今後毎年、国会審議抜きで自動的に引き下げようとしていることであります。
 政府は、「給付水準の調整は厚生年金と同一の比率で行う」としていますが、政府の示す「モデル世帯」でさえ、その給付率は現役世代の平均収入の50%を割るものとなっております。加えて、本委員会の審議でも、給付水準が今後いっそう低下することが浮き彫りになりました。
 このような「マクロ経済スライド」の導入による「年金給付の実質価値」の引き下げは、公的年金制度の重要な機能の放棄であり、歴史的な大改悪であります。
 第2の理由は、具体的な保険料率は、従来どおり5年ごとの財政再計算で決定することとしているものの、今後毎年、厚生年金と同水準での保険料引き上げを予定し、2025年には約20%もの高い水準の保険料率を押し付けようとしていることであります。
 小泉内閣による7兆円の負担増計画が推し進められているもと、こうした連続的な負担増は、現役の国家公務員と年金生活者である国家公務員OBをはじめとする国民の生活と暮らしを圧迫し、消費の減退を長期にわたってもたらすものであります。
 最後に、再任用制度の問題について、であります。本来、この制度は、職員が定年退職後に不安を覚えることなく生活でき、また長年培った能力と経験を有効に発揮できるように設けられたものであるはずです。しかしながら、現状は、退職者の約10%しか再任用されていないことが、本日の審議でも明らかになりました。今後、この制度を実効あるものとして機能させること――年金制度の大改悪の前に、このことがいっそう求められていることを強調して、私の反対討論とするものです。
以上


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