行革基本法を強行採決--参議院選挙で橋本行革NO!の審判を

(国公労新聞第991号98年6月21日付より)


 ●「自・社・さ」の賛成で行革基本法を強行成立

 審議されていた「中央省庁等改革基本法案(行革基本法案)」は、6月9日・午後4時過ぎ、参議院本会議に緊急上程され、賛成116(自民、社会、さきがけなど)反対83(民主、公明、共産、自由など)で強行成立 させられました。

 ●尽くされたとは言えない国会審議、たたかいはこれからが本番

 行革基本法の審議時間は、衆参あわせて22日間・100時間余りでしかありません。21世紀「この国のかたち」の大枠を決めることに等しい法律の審議としては全く不十分です。
 国会審議でも、「行革=公務員べらし」とする狂気の論議が繰り返しおこなわれる一方で、行政の第1線の公務員を削減し続けることの国民生活への影響はほとんど解明されていません。橋本首相自身が、「基本法で行革のベースキャンプができた」と述べているように、橋本「行革」の具体化は設置される中央省庁等改革推進本部で検討される1600余りの法改正に委ねられています。

 ●大きく前進した行革闘争をさらに発展させて

 国公労連が取り組んできた「行革大規模署名」は全体で64万をこえ、この請願署名の紹介議員は89名(別掲)にのぼっています。そのことが、参議院での採決で、3名の社民党議員が党議に反して行革基本法に反対票を投じる結果にもつながっています。
 署名を軸に、繰り返しの宣伝行動やキャラバン行動などを通じた国民世論への訴えが、「理念なき行革」、「組織いじり」などとする批判の声を高めてきました。橋本「行革」に反対し、国民生活を重視する行財政への改革をもとめて、全国の国公労働者が一丸となってたたかう基盤を作り出し、国民的な運動を展開できる条件を生み出してきています。
 行革基本法の成立は強行されましたが、橋本内閣の悪政に反対する国民的な運動と結んで、これまでのたたかいの到達点を発展させ、橋本「行革」の具体化を許さないたたかいを強めることが必要です。

 ●さあ参議院選挙! 橋本「行革」に審判を

 行革基本法成立直後におこなわれる参議院選挙は、橋本「行革」に審判を下す絶好の機会です。橋本「6大改革」による国家改造をくい止めるため、引き続くたたかいに奮闘しましょう。

 ●行革基本法案の問題点

 引き続き行革闘争を発展させていくために、今回の国会審議などで、明らかになった行革基本法案の問題点を見てみましょう。
 行革基本法には、(1)内閣機能の強化、(2)省庁再編、(3)減量化、という3つの柱があります。

 ■内閣機能の強化■

 行革基本法は、(1)内閣総理大臣の発議権を法制上明確化、(2)内閣官房は基本方針の企画立案、重要事項の総合調整、(3)内閣府は、内閣官房を助け、重要な具体的事項の企画立案と総合調整、(4)総務省は内閣と総理大臣を補佐し、支援する体制を強化する、としています。人員面でも国家公務員の4割が首相周辺に集中させられます。首相のリーダシップの強化を理由にしていますが、リーダーシップは制度の問題と言うよりも政治上の問題です。あえて制度的に強化しようする裏には、首相に権限を集中し、仮に閣僚の抵抗があっても、日米ガイドラインに基づく戦争協力や「6大改革」などの悪政をより強力に推進できる体制を作ろうとするねらいがあります。

 ■省庁再編■

 省庁を大括り化し、1府12省庁に再編とするとしています(ただし、府省等の総数は1府10省18庁6行政委員会)。同時に、政策の企画立案機能と実施機能の分離を行い、各省は政策の企画立案に純化させ、外局(庁・委員会)は、例外をのぞき実施機関とされ、減量化・効率化の対象です。さらに、省の編成方針は、基本的に各省を橋本「6大改革」の実行機関とするものです。

 ■行政の減量、効率化■

 減量化の目玉である実施部門の独立行政法人化は、国が自ら行う必要がないものが対象です。独立行政法人は、国から切り離され、主要な事務・事業の改廃の勧告を含め、一方的な評価をされます。独立行政法人化は、行政組織の「子会社化」、「別会社化」というべきものです。
 また、基本法では、国家公務員の定員を10年間で10%以上削減するとしていまが、政府は「純減10%以上という決意」(小里総務庁長官)と答弁しており、厳しい定員純減の攻撃が強まることが予想されます。
 橋本首相は、基本法成立を受け、「行政改革というのは、自分がその職場で一生働けるという人生設計を変えることだ」と述べています。今後、行革闘争は、行政のあり方とともに、職員の雇用・身分をどう守っていくかが大きな争点になってきます。

 ●国会審議では「減量化」が強く迫られる

 基本法の国会審議の特徴点は、@共産党をのぞく各主要政党が行政の減量化を強く要求、A内閣機能の強化についても共産党をのぞく各党が賛同、B官僚主導を排除するとして、中央省庁等革推進本部への民間人登用、第3者機関設置を要求(民主党など)、C官僚の裁量行政を排除するとして、設置法に権限規定を盛り込まないよう要求(民主党など)、D規制緩和、地方分権により国の仕事を減らすよう要求(民主党など)、E与野党問わず国土交通省など権限が集中する巨大官庁を批判、F独立行政法人など減量化の方向は共産党をのぞく各党とも評価したが、独立行政法人制度は「具体論がよく分からない」という議論、でした。  国会審議は、厳しい減量化が要求される一方、私たちの運動の反映もあり、与党議員も含め、国民犠牲の行政に疑問も出されています。今後は、各省庁設置法の制定など行政の中身での対決が焦点となってくることから、国民本位の行政をめざす具体論での闘いが重要となります。

 ●行革闘争はこれからが本番

 行革基本法の成立で、新しい省がどのような範囲で行政責任を負うのか、行政の執行は国か、地方かそれとも独立行政法人なのかなどは、行政組織法や各省設置法で決めていくことになります。また、独立行政法人の具体的な仕組みは、「共通法」の策定で論議されることになります。政府は、そのような作業を、早ければ来年3月か4月頃までに終え、来年の通常国会に関連法案を提出することを明らかにしています。
 また、国の仕事べらしを目的とする「地方分権」関連法案も来年の通常国会に向けて準備されようとしています。
 新しい省では、どのような行政サービスが切り捨ての対象となるのかの作業は、今からはじまろうとしています。国民生活に直接影響する行政の切り捨てや、出先機関等の整理「合理化」を許さないたたかいは、これからが本番です。

 ●「行政サービス提供は国の責任」の世論形成を

 国がやっている事務・事業は、官から民、国から地方に移し、残ったところも独立行政法人化を検討、これが行革基本法の言う「減量化」の中味です。国は、治安や外交、防衛と必要最小限のルール作り(政策の企画・立案)だけに責任を負い、政策の実施は出来るだけ民間に任せようと言うのです。今、行政が、公正かつ安定的に提供している様々な行政サービスを、営利と効率性を至上とする民間におこなわせれば、経済的な弱者がサービスから排除されることになります。
 6月16日に、日本銀行が発表した6月の経済月報では、「最近は雇用・所得環境の悪化が顕著」とする見解を明らかにしました。このような経済状態が悪化するもとでも、国民生活の安定を保つことが政府の責任とされてきましたが、そのことが橋本「改革」では否定されようとしているのです。
 公務員を減らすことは、国の事務・事業を切り捨てることは、国民生活の基盤を崩すことになります。そのことを具体的な事実で明かにし、「事務・事業の実施こそ国の責任」とする世論を大きくしていくことが、橋本「行革」の具体化をくい止める道です。

 ●打って出るたたかいが展望を切り開く

 橋本「行革」で、どのような行政サービスが切り捨てられ、形骸化されようとしているのかを具体的に明らかにすることが緊急の課題になっています。同時に、それぞれの事務・事業が国民生活の基盤を支えていることを明らかにすることも大切です。そのような「作業」は、職場の第1線で働く組合員の英知を寄せ合い、国民にもわかりやすいものに取りまとめる必要があります。そして、まとめた結果をもとに、国民世論に訴え、共同のたたかいを広げ、橋本「行革」反対のうねりを一日も早く作り出していくことが必要です。
 その点では、これまで以上に職場、地域からの運動を強め、外に打って出る運動の強化が必要です。
 このような立場から、国公労連は、6月、7月の間に、職場、地域での「行革学習会」の開催を呼びかけています。

 ●参院選挙で橋本「行革」に審判をくだそう

 橋本「6大改革」は、橋本内閣が掲げる基本政策です。そして、その具体化が進めば進むほど、国民の支持率が低下しているのが今の状況です。基本政策の転換が、政権の「命取り」になりかねないことは、財政構造改革法の「修正」論議からも明らかです。橋本「6大改革」のつまづきは、即座に内閣退陣の可能性を拡大します。行革基本法の成立で追いつめられているのは、政府自身でもあるのです。
 それだけに、橋本「6大改革ノー」の運動を広げることと同時に、7月12日投票日でおこなわれる参議院選挙の結果を重視しなければなりません。
 国民いじめの橋本「6大改革」の悪政に、明確な審判を下すことが、「行革」の流れをかえるためのまず最初の取り組みだと言えます。

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