参院本会議で行革基本法の趣旨説明と代表質問

【国公労連「行革闘争ニュース」98年5月22日付より】


 本日、午後1時30分から開会された参議院本会議で、行革基本法案の趣旨説明が行われました(なお、趣旨説明の概要は衆議院での説明と同様です)。  小里総務庁長官が趣旨説明を行った後、自民党・陣内議員、民主党・吉田議員、公明・但馬議員、社会民主党・日下部議員、共産党・橋本議員、自由党・平野議員が代表質問に立ちました。

 ◆代表質問で出された主な質問と答弁◆

 <自民党・陣内議員>

 自民党・陣内議員は、「システム改革は、世界のすう勢であり、複合的な改革が求められている。中間報告、最終報告、基本法案と後退したとの声もあるが、行政改革に対する政府としての姿勢を確認する。行政の肥大化があるなかで、今後、減量、効率化をどのように図っていくのか。また、局・課の削減、独立行政法人の対象選定などは、今後、推進本部において具体的選定に入ることになるが、総理の決意を聞きたい」と質問。
 また、「定員については、純減ベースを明確にすべきだ。また、進捗状況を監視する第三者機関を設置すべき。地方分権について、受け皿としての市町村合併などについても聞きたい」。
 「公務員のあり方を見直すことも肝要となる。公務員倫理法、メリットシステムの導入、民間を含めた人事交流の促進、「天下り」など人事管理など、公務員制度改革に対する考えを聞きたい」。

 (政府答弁)
 政府は、「改革は、肥大化、硬直した行政機構を見直し、簡素で効率的(機動的)な21世紀にふさわしい行政機構をつくること。その前提として徹底した規制緩和、地方分権が重要となっている」。「行政改革の進捗状況を監視する機関については、第三者的な機関を設けることを検討中である」。「公務員制度改革については、公務員制度調査会で検討を進めている。今年度内に基本答申を得て改革を進めることになる」。「国家公務員の定員については、現に厳しく抑制されている。その上で新たに策定する計画では、10年間で10%(以上)の削減をめざす。新規増員についても厳しく抑制を行う」。

 <民主党吉田議員>

 民主党・吉田議員は、基本法案は、日本の情勢の変化に対応していない。行政改革の基本は、行政手続き法改正、情報公開法の設置であり、規制緩和、地方分権にある」。
 「定員削減10年間で1割の削減は問題だ。民間でこんなゆとりをもった削減はない。もっと大胆な削減が必要ではないか。徹底した規制緩和と地方分権のあとで残った事務について行政目的別に再編を行うべき。何故、政府は1府12省にこだわるのか」。
 以上の他、同議員は、「第三者機関を設置すべき、大蔵省改革から始まった改革で財務省として再編される問題、行き場のなくなった省庁を寄せ集めた総務省は問題」などと発言しました。

 (政府答弁)
 来年度(以降)の定員管理のなかで、削減をまず行う。そのうえで新たな(削減)計画を策定し10%以上の定員削減を行っていく。

 <公明・但馬議員>

 公明・但馬議員は、「最初に省庁再編ありきは順序が逆ではないか。巨大官庁が出現は、国民の望む行革と反するのではないか。
 内閣機能の強化とあるが、この程度の改革で国家の危機管理が十分といえるのか。
 行政経費の削減効果が全く明らかにされていないことは問題だ。第三者機関を設置すべき」などと質問を行いました。

 (政府答弁)
 これに対し政府は、「地方分権推進員会の4時にわたる勧告、まもなく推進計画も出される。また、規制緩和では、推進三カ年計画も出ている。これらを着実に実施して行政改革を行っていく。巨大官庁化について心配されているが、事前チェック型の行政から事後チェック型の行政へ転換や行政のスリム化とあわせたおおくくり再編ということである。危機管理については、様々な観点から議論をうけた結果として、こうなった」などと答弁しました。

 <社民党・日下部議員>

 社民党・日下部議員は、「改革の手順に問題があるのではないか。地方分権、市民のための行政を実現することが重要、また、国の果たすべき役割についても明確にすべき。
 省庁設置法の問題として、官庁の広大な裁量権限がそのままにされていることは問題。これを削除しなければ、癒着を脱却することはできない。環境問題は、21世紀の日本の主要課題であり、環境省創設は大きな意義を持つ。
 独立行政法人については、良好な労使関係の維持のうえで十分な納得が必要だ。また、定員削減(第47条)は、雇用問題の配慮が必要だ。
 補助金、通達行政、政治家も厳しく問われている。改革を進める上では、政治家もえりをたださなければ改革は進まない。透明、公平で国民に開かれた行政でなければならない」などと質問しました。

(政府答弁)
 これに対し、政府は、「設置法から権限規定の削除、各省庁設置法のあり方を検討したい。地球環境問題は21世紀の重要な政策課題だ。政。腐敗防止・政治倫理については、与党三党間で議論を行っている。独立行政法人については、いたずらに雇用不安を招くことのないように考えている。定員削減については、行政の減量、効率化を図ることは重要だ。しかし、雇用不安につながらないよう考えている。

 <共産党・橋本議員>

 日本共産党・橋本議員は、冒頭、不況問題の責任追及を行った後、「憲法66条では、総理大臣と他の閣僚と同格においていない。総理に権限が一定認められているのに、この上、なぜ、内閣機能の強化なのか。1昨年、カンボジア問題問題が起こったとき、自衛隊機を派遣したが、あのとき、首相の暴走だと問題になったではないか。省庁再編問題では、国土交通省ということで、公共事業の巨大官庁を作ろうとしているが、ゼネコンの大型プロジェクトを進めるもので、21世紀まで国民に逆立ちした行政をすすめるものだ。また、労働福祉省についても、労働と厚生の行政をスリム化するものだ。度栗行政邦人の問題でも、すべての国立試験研究機関が対象に上っているが、これは我が国の科学技術の発展、基礎研究に重大な支障を与えるものだ。なぜ、そこに働く労働者の声を聞かないのか。。国民が行政改革に求めたのは、政財官の癒着を断ち切ることだったはずだ。なぜ、行政改革基本法案には、この問題が一言も ふれられていないのか」と質問しました。

 (政府答弁)
 これに対して橋本首相は、「現在の不況問題の責任問題が話されたが、今国会に16兆円の財政出動を含む財政構造改革法の修正案及び、大型補正予算を提出している。内閣の責任は果たしている。また、政財官の癒着問題については、情報公開法の制定や公務員制度の見直しを行う中で、進めていきたい。憲法66条にもとづいて内閣機能の権限強化問題について聞かれたが、危機管理態勢等の整備を目的にしたもので、国会の審議に影響を与えるものではない。省庁再編問題で、国土交通省や労働福祉省の問題が出されたが、公共事業は全国的、かつ広域的な事業を国ですすめ、その他は地方自治体で進めることになるし、労働福祉省も財革法をふまえて社会保障の構造改革、雇用の確保を図っていくもので、議員の批判は当たらない。独立行政法人の対象業務については、行政改革会議でいろいろな議論があった。国立試験研究機関の基礎研究を軽視するものではない、研究における効率性の向上、国民の求める科学技術の質の向上を図ることが目的だ。政治改革については、各党各会派で議論してもらいたい」と答弁しました。

 <自由党・平野議員>

 最後に質問に立った自由党・平野議員は、「法案は理念、哲学がない。手順に大きな誤りがある。数合わせの再編は問題。今後の省庁再編で行政の停滞が生じる危険性もある」などと質問しました。

 (政府答弁)
 これに対し政府は、「行政の停滞につながるものではない、指摘されたようなことはない」と答弁しました。

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