国民・地域住民のための運輸省港湾建設局の行政体制の充実を求めます!

【全運輸省港湾建設労働組合(略称・全港建)】


 全港建は、港湾や空港などの建設・整備事業や、海洋環境整備事業(海上浮遊ゴミ・油の回収)にたずさわる運輸省港湾建設局の職員で組織する労働組合です。私たちは、国民生活の向上や耐震・安全・防災に優れ、自然環境と調和した社会資本の整備が必要だと考えます。

 ◆国民生活の向上と自然環境に調和した公共事業の実現をめざして--私たちは国民・地域住民のための行政をすすめています--

 運輸省港湾建設局は、第一から第五までの5つの港湾建設局と51の事務所の組織で、北海道と沖縄を除く都府県を管轄し、全国の主要港を中心に岸壁・防波堤・航路・泊地などの港湾施設の建設・改良、開発保全航路の維持・管理、避難港の建設、津波防波堤や離岸提、防潮堤の建設事業、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海での環境整備事業(海上浮遊ゴミ・油の回収)と、大型油回収兼用船による外洋油流出事故時の緊急油回収作業、また、航空局が計画策定する第1種・第2種(A)空港の土木工事を実施しています。
 私たち全運輸省港湾建設労働組合(略称:全港建)は、運輸省に働く労働者として、公共事業へ国民の要望が反映され、国民の生活向上に寄与し自然環境とも調和した良質な社会資本整備のためには、以下の観点が重要だと考えます。

(請願趣旨)
一、大規模プロジェクト中心の公共事業−港湾・空港建
設計画−を抜本的に見直し、ムダなものは中止し、地域住民の利益と合意のうえにたち、安全で防災に役立つ、必要な港湾づくりなどを行うこと。

(1)四方海に囲まれた日本にとって、港湾や空港は交通・産業・国民生活などを支える基盤として重要な役割を果たしてきました。今後もその重要性は変わるものではありません。
 港湾の整備手法は一般的に、第一線防波堤や大水深岸壁(一般的に-10m以上)など国が建設を行う直轄事業と、港湾管理者が行う補助事業に分かれます。(その他に、企業や埠頭公社などが整備する専用岸壁もあります。上屋、荷役機械、埠頭用地など港湾の運営に必要な施設や、背後の埋立・用地造成は、港湾管理者が起債事業で実施しています)
 また、直轄事業としては、港湾区域外の開発保全航路の整備や、港湾区域外の海洋の汚染防除事業(海洋環境整備事業ともいい、いわゆる浮遊ゴミ・浮遊油の回収作業。港湾区域内の海洋汚染防除は港湾管理者が実施)も行っています。
 私たちは、港湾管理者である地方自治体とともに、長年蓄積してきた施工技術を生かし、国民・地域の生活向上と地域経済の発展につながる基盤の整備を願い、事業を進めてきました。しかし、財政構造改革に関わる国会議論や、マスコミ報道などで、公共事業のあり方が問われています。いま、労働組合として自らの業務について、「国民・地域住民の視点からどうだったのか」を問い直し、国民本位の公共事業のあるべき姿を考えています。
 たとえば、阪神・淡路大震災では、耐震施設は被災をまぬがれたものの、隣接する施設や道路などが壊滅的被害を受け、十分な機能ではないものの、耐震施設など少なからぬ施設が、人々や救援物資の輸送に使用され、重要な役割を果たしました。巨大地震が起こった場合、道路・鉄道などの陸路は、陥没・脱線などの影響を直接うけますが、海上輸送では、耐震岸壁に安全かつ大量に人や救援物資を運ぶことができます。この教訓からも、地震国日本において、地域住民の立場にたって、全国の施設を安全・防災の視点からさらに強化していくことが求められます。
 また、台風や低気圧など、波浪条件が厳しいわが国とって、津波や高潮は避けられない災害ですが、こうした災害から被害を最小限にくい止めるのが防波堤・護岸・閘門の役目です。
 過去に津波で甚大な被害を受けた釜石港・久慈港(岩手県)、須崎港(高知県)では、直轄による津波防波堤等の整備が進められています。
 しかし昨今、政府は中枢・中核港湾の大型岸壁に重点的な予算配分を行う方向に政策転換を図りつつあり、地域住民の生命と財産を守る事業が思うように進まないのが実態です。

 (2)「公共事業のムダ」として「港湾・空港のあり方」が問われています。これまで、港湾や空港を含む公共投資は大規模プロジェクト偏重型で、景気浮揚策とも位置付けられ、各地で進められてきました。多額の建設国債を発行し続けた結果、国と地方自治体の借金が 500兆円にも膨れ上がる主要な原因ともなっています。
 私たちの携わっている港湾・空港の建設でも、たとえば、港湾や港を建設したが、船舶がほとんど利用しない、工業用地を造成したが土地は売れず企業誘致が進まないなど、国民・地域の方からみて何のために作ったのか、疑問が指摘されているところもあります。その結果として地方自治体の財政を圧迫している事例もあります。
 これは、これまでの港湾計画が全国的な投資配分に力が注がれる一方で、1)計画に経営・管理が十分組み入れられなかったり、2)需要予測等に基づき、港湾や空港の長期計画を決めたら、需要の変化など、情勢が変わろうが見直しをせずに進めるというチェックシステムが不十分なままで、3)地域住民の意見の反映なしに、公共事業を進めてきたところにも問題があります。また、政・財・官癒着による利益誘導や選挙めあてなど、政争の材料に公共事業が使われてきたことも、このような財政破綻を招いた原因のひとつです。

 (3)大規模プロジェクト偏重・ゼネコン利益誘導型の公共事業は抜本的に見直し、不要・不急なものは休止・中止すべきと考えます。そのうえで、地域住民の利益と合意の上に立ち、地方の経済や住民の生活に密着した予算を充実するとともに、耐震・安全・防災を重視した予算を充実させることが重要です。

(請願趣旨)
二、相次ぐ油流出事故の教訓を踏まえ、油防除体制の強 化・油回収船の建造など海洋環境保全体制の充実を図ること。
 

 (1)昨年1月に発生した日本海での「ナホトカ号」の沈没・重油流出事故では、「清龍丸」(五建・名古屋港湾空港工事事務所所属)が出動し、荒天が続く日本海での危険な作業にも関わらず、 938`g(ドラム缶で約41,700本、人力による回収に換算すると約19,000人分)を回収し、被害の拡散防止に大きく貢献しました。さらに4月には韓国・対馬沖での重油流出、7月には東京湾での原油流出と相次いで大事故が発生し、昨年は3回の緊急出動を行いました。
 油流出事故が頻発しないよう、タンカーの二重底化や船舶の安全航行に万全の対策をとることは当然としても、資源の乏しい島国日本では、どうしても原油等の輸入に頼らざるを得ず、これまでのタンカー事故や石油コンビナートの油流出事故をみても、事故の危険性は消えていません。

 (2)全港建は、1990年2月、丹後半島の経ケ岬沖で座礁した「マリタイム・ガーデニア号」の事故などを教訓に、大規模油流出事故の危険性をかねてから指摘して、耐用年数を超え老朽化した2隻のしゅんせつ船を、油回収機能を装備した外洋・大型油回収兼用船として代替建造し、日本海側 への体制を増強するよう求めてきました。
 各方面の方々の尽力によって、1998年度の運輸省予算では、長年の要求であった海鵬丸(関門航路工事事務所所属)の代替として、油回収機能を具備した浚渫船の建造が実現しました。
 流出油は沿岸に漂着する前に回収するのが鉄則です。日本海での「ナホトカ号」の沈没重油流出事故で、日本海側にもう一隻の油回収船が配備されていたならば、重油被害を最小限にできたはずです。
 「海鵬丸」代替船に続き、「白山丸」(新潟港湾空港工事事務所所属)の代替建造と日本海側への配備が求められています。

 (3)東京湾での原油流出事故では「清龍丸」とともに、油・ゴミ回収船「第二蒼海」(京浜港湾工事事務所所属)などの直営船がいち早く出動し大活躍をしましたが、船体も老朽化し乗組員の大変な苦労のもとで作業が行われたことは、あまり知られていません。運輸省港湾建設局には、沿岸・内海等を担務する環境整備船が全国に12隻(油・清掃船6隻、油回収船1隻、海面清掃船5隻)配備され、昨年も、大阪湾や関門航路での油流出事故の度に、直営船舶が緊急出動しています。
 今般の「行革」を背景に、国の責任で保有・運航してきた環境整備船の縮小・切り捨て、直営事業からの撤退などが強いられようとしています。また、9次にわたる定員削減計画によって、船舶職員は激減し、老朽化した船舶の代替建造も進まないことも相まって、現在では、必要な運航体制が確保できない状況に陥りつつあります。
 いま、国際的にも国内でも、自然環境保全が強調・注視されています。海洋環境や魚介類など水産資源、地域住民の財産をまもるために、油防除体制の強化・油回収船の建造、乗組員の採用・確保など、海洋環境保全体制の充実が求められています。

(請願趣旨)
三、これらの事業をすすめるにあたって、国民の負託に応え、国自らが責任をもって業務をすすめるためにも運輸省港湾建設局の必要要員を確保すること。

 (1)港湾建設局の業務は、1994年からの一般競争入札をはじめとする新たな契約・入札制度の導入、軟 弱地盤や大水深などの自然条件の厳しさなど、複雑・多様・高度化する事業要請のもとで、業務量はむしろ増大しています。にも関わらず運輸省港湾建設局の定員は、1967年度末の 6,764人が1998年度には 3,318人と、31年にわたる定員削減計画で、 3,446人も削減されています。くわえて第9次定員削減計画では、 278名・8.09%で、省内平均の3.87%の2倍を越える定削率が押しつけられています。
 このような定員削減のしわよせは、現業的業務や行政の第一線である地方出先機関である工事事務所に集中しており、私たち公共事業職場では、依然として慢性的な超過勤務が存在しています。また、一部の職場では、国家公務員法で明確な規定のない恒常的な非常勤職員が増加し、労働者派遣法にも抵触する「業務委託」が職場に入り込む事態になっています。

 (2)現在、国会で審議されている行政改革法案では、運輸省は建設省・国土庁・北海道開発庁と統合され、工事事務所など地方出先の事業実施部門は、大胆な縮小・廃止の方向が示されています。 630兆円の「公共事業基本計画」の見直しなしに「国土交通省」をつくることは、新たな利権官庁の批判に耐えうるものではありません。
 また、出先業務の民間委託化は、いわゆる「丸投げ」CM方式の導入を最終方針とする公共事業の変質とも一致しており、後述する監督・検査の問題とともに、いまでさえ深刻な経営状況である中小建設関連企業を切り捨て、大手ゼネコンの受注を一層有利にするものであり、「誰のため、何のため」の「行革」なのかがあらためて問われています。
 WTO(世界貿易機構)政府調達協定など、建設市場国際化の急速な動きの中で重要なのは、技術の根幹業務である設計・積算・監督・検査業務の民間委託化の拡大ではなく、国際競争に耐えうる発注者側の総合的な質の向上であると私たちは考えます。

 (3)阪神・淡路大震災では、数多くの公共施設の施工不良・手抜き工事が発覚し、発注者側の監督・検査体制の問題点が指摘されました。安全で良質な公共施設の整備は、国の責任です。とりわけ、大部分が海上・水中の作業となる港湾施設は、完成後の出来高検査だけで施工不良や手抜き工事を発見することは困難です。そのため、施工にあわせた監督・検査や立会の徹底が極めて重要といえます。

 (4)私たちの一部の職場で導入されている業務委託職員には、平均的な公務員賃金の 1.6倍〜 3.3倍にあたる、一人当たり年間 1,140〜 2,300万円も支払われています。業務委託で、国民は「ムダ」な費用を支払わされ、「安上がり」な行政とも逆行することになります。しかも、「会計法」や「予算決算及び会計令」の基本は国の職員自ら監督・検査することであり、業務委託職員の業務は「成果品」の問題や直接労働者に命令できないなど「労働者派遣法」に違反しています。さらに、行政民主化・不正チェックの立場からも、国自らが設計・積算・発注・監督・検査など根幹業務を実施することが重要です。

昨年と3年前に2工事事務所で発注された業務委託の実態     (単位:万円)

件  名受注者 契 約 工 期 契約金額業 務 内 容年間1人当たり費用
状況調査(株)A97年10月〜98年3月末約 9,100積算・設計・監督補助 16名 約 1,140
施工調査(財)B95年 7月〜95年9月末約 23,000監督補助、発注図面作成40名 約 2,300
国家公務員の平均賃金は 360,056円/月(97人勧)、共済の事業主負担(短期・長期)47,502円/月、退職金(40年勤続) 360,056円×62.7月/40年= 564,388円/年であり、公務員の1人当たり年間給与は 360,056円× 17.25月+47,502円×12月+564,388円=6,825,378円(約700万円)となり、委託費用は公務員の1.6倍〜3.3倍で税金のむだ遣いになります。

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