行革基本法案の衆院本会議採決を強行--与党の賛成267、野党の反対200で可決
【国公労連「行革闘争ニュース」98年5月12日付】

  中央省庁改革基本法案の採決は、午後2時過ぎから行われ、高鳥修・行政改革特別委員会委員長から審議経過について、民主党案、平和改革から出された修正案が昨日(5月11日)賛成少数で否決、政府案は賛成多数で原案通り採決されたことが報告されました。また、採決に当たって自民、民主、平和・改革、社民共同の提案の付帯決議が採択されたことも併せて報告されました。

 その後、古川元久(民主党)、二田孝治(自民党)、若松謙維(平和・改革)、佐々木洋平(自由党)、平賀高成(日本共産党)の5名の討論がありました。要旨以下のとおり。
 ●古川元久(政府案反対、民主答案賛成の立場から)行政改革には、中央省庁のスリム化が大前提だが、この法案には具体的な方向が示されていない。地方分権、規制緩和が車の両輪となるが、政府提案には具体的な中身が示されていない。行政の形だけの転換ではなく思想を含めて21世紀型の行政への転換が求められている。官から民へ(徹底した規制緩和)、中央省庁の再編はその後になされるべきだ。行政改革の権限を官僚にゆだねていることも問題。このままでは、官僚のための行政改革になる。
 ●二田孝治(政府案賛成、民主党案反対の立場から)−省略−
 ●若松謙維(政府案に反対の立場)次の点から政府案には反対。1)法案は、中央省庁の再編にエネルギーを費やした結果、地方分権がおろそかになっている。具体策が示されない行革では、「この国の形」ではなく、役所の形を示すものになってしまう。2)各省の設置規定から権限規定を削除すべきである。3)今回の行革でどれだけのスリム化が図れるのか明らかにされなかった点。政府は目標値さえ明らかにしていないが、国民に対するアカウントビリテーからも問題4)法案には、戦略的な視点がない。削るところは削り、重点化するところは強化する。また、金融と財政が分離されていない点・大蔵省の改革に禍根を残すことは問題。など
 ●佐々木洋平(政府案に反対の立場)わずか半年先も見通せない橋本内閣に21世紀の日本をつくる行政改革をまかすことはできない。1)法案は、規制緩和、地方分権の視点が欠落しており、中身の見直しが伴っていない。2)政治腐敗の元凶となっている行政システムの見直しについて、公明正大、透明性の高いシステムが求められているが、その方策となっていない。3)最大の問題は、機構改革にいっさいメスが入っていないこと。(地方分権での)自治体のあり方についても欠落している。橋本「6つの改革」は、日本の課題を触れているだけでリンクしていない。改革は、一つのパッケージとして行う必要がある。
 ●平賀高成(政府案に反対の立場から)国民の求める行革は、政官財の癒着をなくし国民本位の行政にもどすこと。破綻した「財政構造改革の推進」を内容とした法案は成り立たない。1)首相権限・内閣機能の強化は、トップダウン的な政策を行うものであり、新ガイドラインに沿った強権的国家をつくるもの。トップダウン政治がもたらすものは、民意の無視である。2)国土交通省は、ゼネコン重視型の国家プロジェクトを進めるもの、21世紀まで利権と腐敗を温存させることになる。3)政策立案と実施部門を分離することで政策立案が国民生活からいっそう離れることになる。また、独立行政法人の対象として試験・研究機関、国立病院・療養所など国家公務員の75%が対象とされているが、十分な審議がされた経過がない。しかも行政の公共性を否定するものであり問題だ。

 以上の討論を終え、投票に入りました。投票は、記名投票で行われ、自民党、社民党、さきがけの与党の賛成で採択されました。投票結果は、次の通り。   投票総数 467票  政府案に賛成 267票  政府案に反対 200票

   □政府、総合経済対策具体化へ財政構造改革法修正法案、補正予算案などを提案

 行革基本法の採決に続いて、本会議で、4月24日に決定された総合経済対策の具体化として、財政構造改革推進法の一部修正法案、所得税の一部減税法案、地方税法改正案などの関連法案と補正予算案が提案され、中野寛成議員(民主)、前田正(平和・改革)、上田清司(民主)、谷口隆義(自由)、矢島恒夫(共産)の各議員が反対の立場から質疑に立ちました。

財政演説(大蔵大臣)

関連法案趣旨説明

財政構造改革推進法(大蔵大臣)

所得税の特別減税法案(大蔵大臣)

地方税法の一部修正法案(自治大臣)

地方税交付法の一部修正法案(自治大臣)

中小企業信用保険法の一部修正法案(通産大臣)

以上略

中野寛成(民主党):
朝令暮改だ。いまの不況は複合政策不況だ。老後、病気、雇用の3つの不安を解消することこそ大事だ。失業に関しては、新規産業による雇用創出、職業訓練、雇用情報の提供が必要。エコロジーなどの視点を経済に入れなければならない。減税が消費に回るための方策を。財革法修正案は、特例公債の発行の弾力化と、財政再建年限の繰り延べ、社会保障費のキャップの1年棚上げだが、財革法は真の改革の妨げ。恒久減税はためらいことなく実施し、財革法を2年間停止し、抜本改正すべき。総合経済対策は、従来型公共事業に依存している。地方公共団体も押しつけはやめてくれといっている。追加分の公共事業は、交付税ないし包括的補助金として、地方公共団体がニーズにあった事業ができるようにすべき。
橋本首相:
政治責任は、国政を停滞させず、景気回復を図ることで果たす。新規産業による雇用創出、職業訓練、雇用情報の提供は対策に入っている。老後、病気の不安は、セイフティネットとしての社会保障の役割を発揮するため、効率化しつつ、必要な給付は確保する。財政の現状は、福祉の制度維持、経済活力の維持に対応するのは喫緊の課題。縮減と健全化の骨格は堅持しなければならない。2年停止は適切でない。所得税は先進諸国に比し、低い率だという指摘もあり幅広い論議をし、制度改正する必要がある。総合経済対策は、内需拡大のため、不良債権処理や構造改革を進めるものだ。社会資本整備は、国内需要を見て、真に必要なものを行う。地方公共団体の事業消化は、財政面で適切な対応を行う。
前田正(平和・改革):
完全失業は、3.9%、実質賃金は低下している。原因は、橋本内閣の見通しの甘さ、政策転換の遅さにある。しかし、予算が成立するといとも簡単に転換している。責任は感じないのか。16兆円は大きく見えるが小出し減税と、従来型公共事業のばらまき型だ。サミットでも日本の景気問題が主要議題だ。おみやげとしては歓迎されず、宿題ばかり持たされるだろう。特別減税は増税が後に控えているから、貯蓄に回る。少子高齢化対策ビジョンと構造改革のため思い切った減税が必要。恒久減税を本年中に決めることはないか。地方は公共事業を借金までしてやりたくないといっている。実行されるのか。新社会資本整備というが従来型の域を出ていない。社会保障だけキャップ政をはずすというが、キャップ制のあり方を議論すべき。社会保障といっても効率化すべきことはある。
橋本首相:
中小企業や雇用は常に留意してきた。一刻も早く景気回復させ、生活が安定するよう努力。サミットでも、総合経済対策は説明する。特別減税は効果的に作用すると考えている。恒久減税の問題については、所得税、住民税の負担割合が低いことを含め様々議論し、公正透明な制度を作る。地方単独事業は1兆4000億円を要請している。状況把握して、協力してもらえるようにする。公共事業については、評価システムも導入し効率化する。財政構造改革の枠組みは維持しつつ、社会保障だけ、平成11年度に限りキャップをはずす。
上田清司(民主):
少額減税の繰り返しは、愚の骨頂と総理も言っていたはずだ。租税を吸い上げるのでなく、恒久減税すべき。減税は所得税のみで住民税は別だ。地方は赤字で、自治体からは住民税減税反対の声が出ている。児童手当は貧困だ。制度発足時は必要額の2分の1を補助する目標だった。英独仏は一人当たり1万から2.5万円だ。貸し渋り対策として出された金融対策は、貸し渋り対策になっていない。
橋本首相:
所得税減税は、すでに実施されており、様々な対策と相まって、効果的に作用している。追加の減税もそうなると考える。所得税については様々な議論があり、論点を整理し、公正、透明なものとしたい。国と地方は車の両輪であり、国の必要があるときは一体で財政支出を要請する。児童手当については慎重に検討する必要。金融対策はシステム安定化が主眼で、貸し渋りも対策した。
谷口隆義(自由):
本予算の際には最善のもの、補正は検討していないと言いながら、政策転換したのは国会を欺いていたのか。反省も謝罪もない。財革法を徹底論議すべき。本予算では公共事業は7%減だったのに、補正で6兆円ついた。予算査定は何の意味があるのか。地方事業は自主性の妨げ。公共事業を景気対策としてしか考えていない。構造問題を先送りにしている。特別減税は期間限定で、内外の批判をかわすもの。民力の強化こそ必要で、官が民から金を集めて使い道を決めるのでなく、民間が自分で金をもち、その使い道を決めるべき。
橋本首相:
本予算は、作成時には最善。現下の極めて深刻な状況を打開するために必要な補正を組んだ。予算とその枠組みの法律案を審議していただきたい。財政改革法は、財政赤字をGDPの3%に押さえるため、官と民、国と地方の役割をも見直すもので、単なる歳出削減ではない。日本の財政赤字は先進国中最悪。必要性がある。
矢島恒夫(共産):
完全失業率は3.9%。アメリカとの逆転も言われている。全世帯の消費支出も2.5%減で史上最悪の悪化だ。1年前、共産党は9兆円の負担増が経済不況を招くと警告した。総理は数の力で財革法などをごり押しした。財政構造改革は破綻しス。経済失政の責任は首相にある。補正予算は、新社会資本整備など新味を出そうとしたが、大手ゼネコンだけが潤う従来型の公共事業となった。ゼネコン奉仕の転換が必要。公共事業の積み足しが地方自治体をさらに苦しめている。自治体の借金はこの6年で2倍になった。原因の多くは地方単独事業の押しつけ。低所得者のために、消費税減税が必要だ。社旗保障は削られる一方であり、財確法は廃止すべき。いまやるべきことは、公共事業と軍事費のムダを削り、社会保障20兆円と公共事業50兆円の支出の歪みを正すことだ。
橋本首相:
責任については、経済対策と補正予算の一刻も早い成立で果たしたい。社会資本整備は、内需拡大を図ったもので、ダイオキシンなど環境、新エネルギー、情報通信、福祉に重点を置いた。公共事業のあり方は、21世紀を見すえ、豊かで活力ある社会をめざし、コストの縮減、再評価システムなどで効率化を図る。消費税は、少子高齢化の対策のための財源であり、引き下げは考えていない。

以上


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