行革特別委で国公労連藤田委員長が意見陳述
【国公労連「行革闘争ニュース」98年5月6日付より】

 5月6日午前10時より、衆院行革特別委員会で参考人質疑がおこなわれ、国公労連藤田委員長が参考人として出席し、以下の通りの意見陳述をした後、委員の質問に答えました。この模様は、昼のNHKニュースで報じられました。また、午後6時10分過ぎからは、NTV(NNNニュース系列・読売新聞系)で、参考人質疑と合わせ、国公労連の取り組みが紹介されました。

 ○衆院行革特別委員会参考人質疑における発言

 国公労連・藤田忠弘委員長

 (1)国公労連の藤田でございます。私どもの組織は、1府12省庁のほか、裁判所、人事院などの組織を含み、21の単位組合、17万人で構成されております。
 私どもの組織は、これまで一貫して、組合員の労働条件の維持・改善はもとよりですが、これと同じ比重で、自分たちの従事する行政を、いかにして国民の皆さんの期待にそうものとして充実させるか、という立場からの運動に微力をつくしてきたところです。
 したがって、今回、私どもにこのような発言の場が与えられたことに、率直に感謝申し上げるものでございます。とくに、行政改革会議が、この間私どもに何らの意見も求められなかったことに鑑みても、大変貴重な機会をたまわったものと思っています。
 (2)そこで、まず私は、行政改革というものに対する私どもの基本的な立場を申し上げます。  端的に申しますと、私どもは、国民の皆さんが本当に求めている行政改革は当然おこなうべきであると考えております。
 しからば、国民が求めている行政改革とは何か、ということになりますが、私は、主権者たる国民が、自分の納めた税金が自分たちのために有効に使われていると実感できるような行政と施策の実現、という点にあると考えます。いいかえますと、憲法が定めている国民の基本的人権を最大限に実現することだと思います。
 したがって、そのような観点で、行政の役割・機能というものを、社会状況の変化・発展に応じて見直すことは当然であると考えます。そのような意味で、いまもっとも大切なことは、「政・財・官」がゆ着して利権をあさる行財政のありかたを抜本的に是正することであるし、軍事費や公共事業にかたよった行財政構造の抜本改革と財政赤字解消であるし、さらには、情報公開法の制定によるガラスばりの行政の実現、などであると考えます。
 このような立場からしますと、今回の「中央省庁等改革基本法案」について、反対の立場であることを明確に申し上げておきたいと思います。
 (3)つぎに、今回の法案に対して、私どもがいだいている疑問や問題意識につきまして、5つの点に絞って申し上げたいと思います。
 第1点は、今回の「行政改革」の「基本理念」にかかわってであります。
 法案や行革会議「最終報告」の中で、総合性・戦略性、機動性、透明性、効率性・簡素性などの観点が強調されておりますが、その反面で、民主性とか公平性という、本来重視されるべき国民サイドに立った視点がかすんでいるように思われます。この点では、国民の基本的人権の実現という立場がないがしろにされる危惧を禁じえません。
 たとえば、労働福祉省の場合、その編成方針をみますと、厚生省や労働省がそれぞれの設置法で中心的任務に位置づけてきた「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」とか、「労働者の福祉と職業の確保」などがどう位置づけられるのか、明らかではありません。これは、国土交通省の場合も同様で、運輸行政の任務が社会資本整備の方向に矮小化されていくのではないか、との危惧を禁じえないのです。
 (4)第2に、行政組織のありかたについて、はたして、行政分野の多様性をふまえて、個別の論議がつくされたのであろうか、という問題であります。
 たとえば、行革会議「最終報告」では、国立試験研究機関について、「政策研究機関」以外を独立行政法人の検討対象にしています。しかし、いったいどのような検討を経て、これらを「国が自ら主体となって直接に実施する必要はない」ものとして結論づけられたのか、いっこうに明らかではありません。
 また、10年間で1割の定員削減目標をかかげるとか、局の数を1省で10以下、全体で90程度にするとか、課の数を約900にするとか、いわゆる「数値目標」が法案にもり込まれていますが、これらについても「数値目標」さきにありきで、局や課について、その行政目的、役割、機能などの面から具体的に検討された形跡をうかがうことはできません。このような本末転倒は、到底許されるものではないと思います。  (5)第3は、行政改革を行政のスリム化、公務員削減に一面化した議論に関してであります。
 私どもは、現場の実態をリアルに認識していただきたいと切望しているところです。
 わが国の公務員の数が、先進諸国と比べても、人口当たりで2分の1から3分の1という泣Iにあることは、いまではよく知られているところですが、そのことが、どのような現場実態となってあらわれているか、その一端だけを申し上げておきたいと思います。
 本省庁の場合、夜8時以前の退庁者は45%に過ぎず、夜11時以降の退庁者は18%にものぼっています。
 第1線の場合、気象庁では、測候所の廃止や無人化の進行で、阪神大震災の際、もしも淡路島の測候所に人がいたならば、と無念の涙をのんでおります。労働基準監督署では、労働基準監督官が全事業所を一巡するのに20年を要する状況にあります。法務局や特許庁では、ケタはずれの膨大な事件処理に、まったく追いつかない状況が常態化しています。
 これらは、多かれ少なかれ、ほぼ全体に共通する状況であることをご理解いただきたいと思います。そのうえ、さらに定員削減、それも第1線の公務員を削減することになれば、もはや、行政責任の遂行はおぼつかない状況にたちいたると思います。
 (6)第4は、独立行政法人に関してであります。
 1つは、イギリスを参考にするというこの制度が、将来の民営化につながっていることは明らかであり、ここでも、国民に負うべき国の行政責任放棄という問題を強く指摘しなければなりません。
 もう1つは、対象と目される約7万3千人の雇用と生活、労働条件が重大な不安にさらされることから、到底容認できるものではないことを表明しておきたいと思います。
 (7)第5は、公務員制度に関してであります。
 法案の内容は、全体として抽象的でありますから、具体的にめざすものが何であるかをつかみづらいのですが、その関連で申しますと、官僚の天下りが世論の批判の的になっている時、天下りの廃止を含めた「政・財・官」のゆ着構造をなくすことが重要課題にすわるべきであります。しかし、その点にふみ込んでいるのは、わずかに「退職管理の適正化」の文言にとどまっており、大変不十分といわざるをえません。
 私どもは、このような機会にこそ、特権的な人事慣行を変えるべきであるし、行政内部で不正腐敗をチェックする機能として、労働組合の役割にもっと目をむけること、同時に、職員個々の諸権利の問題についても検討されるべきだと考えます。
 (8)以上で意見の表明を終わりますが、最後に私は、この法案の帰すうが、それこそ21世紀の「この国のかたち」を規定する関係にあるだけに、性急に結論づけられてはならないと考えます。どうか、私どもの疑問の解明も含めて、慎重な審議をつくされるようお願い申し上げ、発言を終わります。

 連合・笹森事務局長の意見陳述

 行革基本法の最大の問題点は、官主導への不透明な行政への反省がない。少子・高齢化、グローバル化などに対応するためにもこれまでの官僚主導型だけではだめで、官僚不祥事が続発している。今こそ国民生活安定のため民主的、透明性、効率的な行政がもとめられている。
 行政のあり方、国民中心に改めるべきであり、現在はあまりにも官僚の裁量にまかされすぎている。官僚裁量型でなく、監視・監督型に改める。行政を外から監視するシステムに改める。また、中央省庁の権限を地方に移譲すべき。現在、補助金等で介入しすぎている
 国民生活の改訂・安定に責任をもと行政に、社会的公正さの確保重要。
 働く人の雇用と意欲を高めるものでなければならない。日本の公務員は低い比率にある。G7の国の中で労働三権が公務員にないのは日本だけであり、改善とあわせ行革は実施されるべき。

 ○参考人質疑

平野博文(民主) 裁量行政を笹森氏はどう思う
笹森(連合) いま組織権限をあまりにも官僚に与えすぎている。これをルール監視型に改める必要がある。すべて国会で定める法律で規定する。
平野 基本法に公務員の業績評価制度を導入するとあるが、これを具体化するときどのような基準、考えが必要か。
笹森 働き方への評価どうするか。今の型のまま導入するのでは時期尚早。官民の役割分担が明確になったときに。行政職に就く人たちは一義的に公務の使命感を選択して今の仕事についている。これを突然民間に変わりますよという押しつけ型であってはならない。
藤田(国公労連) 業績の評価自体否定するものではないが、制度を導入する場合相当慎重であるべき。それぞれ行政目的が異なっている。これを行政件数で評価するのか、それとも質で評価するのか、それぞれの物差しをどうするかはたいへん難しい。どうするかについては、われわれの意見を聞くべき。
平野 現在の市町村3,300は地方分権の受け皿になりうるか
笹森 連合は基本的に道州制を求めている。3,300は多い、ある程度大繰りにすべき。
平野 独立行政法人化に対する要望あるか。
笹森 身分は国家公務員は当然と考える。民間にゆだねる場合は非公務員。41条にあるこれまでの良好な労使関係を尊重すべき。
平野 公務員制度見直しの一括管理の問題点はあるか。
藤田 公務員制度は公正・中立、安定的人事管理が必要との立場から、一括管理は、恣意的人事あるいは政治的コントロール招くのではと懸念するので、にわかに賛同できない。
福島豊(平和・改革) 内閣機能強化をどう考える。
笹森 これだけは評価できる。強大な権限という意味でなく、迅速な処理という意味で。前提は内閣の合意。独裁でなく監視を。
藤田 現在の機能でも強大と思っている。問題は、首相自身のリーダーシップにある。災害対応では、十分な態勢の整備こそが大事。
福島 大括りの省庁再編についてどう考える。
笹森 必ずしも大括りすること賛成できないが、今のままでいいかは疑問。2つの省をくっつけてあるが、一つの思想になっているか。政策を軸に考えるべき。
藤田 現行がベストかどうかは別として、それぞれの省庁にはそれぞれの役割があり、大括り賛成できない。
福島 設置法の段階が重要と思うが。
笹森 一つは働く人の意欲。政策中心にして、中央予算をどうするのか。
福島 今の行政の仕事量どうするのか。事務量減らすためどうしたらいい。
藤田 少し角度違うが、今の公務の仕事は国民にとって必要だと考えている。効率だけで論じられない部分があり、例えば、一人の看護婦が多数の患者をみることがいいのか、45人学級より35人学級のほうがいい。そういう意味で公務のあり方考えるべき。
石垣一夫(自由) 法案修正のためにどういうものを盛り込めばいいと思うか。
笹森 公務員労働基本権与えることが入ってないなど、すべてに渡って中途半端。要因は財政問題につきる。
石垣 独立行政法人化は認められないと言うことか。
藤田 独立行政法人の特徴は、効率重視、営利中心を前面にたてている。公務が担っている仕事は、公共性が高い。たとえば、国立病院は、高度、難病、離島・僻地など国が責任を担っている。これが、独立行政法人で効率重視になるとどうなるのか。また、国立試験研究機関が、長期型の基礎研究を軽視するようになっていいのか、不安である。
石垣 大蔵不祥事で国民の信頼失墜したが、公務員倫理法の制定をどう思う。
笹森 関係業界との接触のルールの作り方に注意払うべき。
藤田 腐敗防止は公務員倫理法だけではないが、倫理法は必要と思う。構造的な問題として、天下りはきっぱりなくしていく。特権官僚優遇を根本から改めなければならない。また、大蔵省は長い間、そこにある労組を敵視して、批判勢力の存在を許さないという体質と結びついている。
平賀高成(共産) 法案は10年間で1割削減となっているが、一律削減の問題はどうあらわれるのか。
藤田 一律削減方式は、職場に弊害をもたらす。新規事業が生じないところは増員させないので、当然純減していく。新規事業も、一律削減による定員を財源にしているので、必要な数の増員がされない。
平賀 企画立案と実施部門分けることはどうか。
藤田 分離反対である。最大価値基準が効率化・重点化となっているが、公務が果たさなければならない責任は現に存在しているので、十分な検討が必要。また、行政は、企画立案と実施部門を一体にしてこそ行政目的は達成される。独立行政法人化を前提にした議論ではなく、是非についての議論をしてほしい。
平賀 郵政民営化についての考えを
笹森 連合のスタンスは、貯金・簡保・郵便事業の三位一体でいき、公務員の資格を与えるべきと考える。
平賀 基本法は、内閣機能強化、企画立案と実施部門との切り離し、大括り省庁再編となっているが、なぜこのような行革がでてきたと考えるか。
藤田 行政改革の声が強まっているが、大蔵の不祥事、財政執行の問題点など税金が有効に使われているかの国民の不信が渦巻いていた。今だされている法案はそもそもその立場に立っているのか。
深田肇(社民) 先ほど藤田氏は大蔵省が組合を敵視しているとのべたが、そうなのか。
藤田 大蔵省にはいくつもの組合あるが、私どもに関係する全国税、全税関は、昭和38年当時から昇任・昇格の差別政策をテコに、少数の組合にされた。それらの組合は、大蔵省の汚職・腐敗なくすための提言もし、努力をしている。
深田 今年の連合メーデーは久しぶりにデモをやりよかった。芦田前連合会長を行革会議に送った成果を聞かせてほしい。
笹森 労働者代表は芦田会長だけでよく奮闘した。最終局面で若干働くものの立場によらないものがなかったわけではない。
深田 今後の労使関係どうしたらよいか。
笹森 10年間1割削減はそう難しくはないが、雇用の問題があり、新たに生じる業務をどうやらせるかがある。
深田 今でも労使で話し合って労働条件について決めるという慣行はあるのか
藤田 そういう事実はあるが、労働条件決定システムを定めたILO185号条約を日本政府は、批准していない。批准して国内法が整備されれば、一歩前進していく。

 ○民主党2名の衆院議員が新たに紹介議員に

海江田万里議員(比例東京)、辻一彦議員(福井3区)

5獅ノ入って、新たに民主党の2名の衆議院議員が、行革署名の紹介議員になっていただきました。5月1日付の衆議院公報で確認できたもので、これで請願手続きをした議員は66名となり、うち衆議院議員は43名、参議院議員は23名となります。


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