衆院行革特別委員会参考人質疑における国公労連・藤田忠弘委員長の発言

(1)国公労連の藤田でございます。私どもの組織は、1府12省庁のほか、裁判所、人事院などの組織を含み、21の単位組合、17万人で構成されております。
 私どもの組織は、これまで一貫して、組合員の労働条件の維持・改善はもとよりですが、これと同じ比重で、自分たちの従事する行政を、いかにして国民の皆さんの期待にそうものとして充実させるか、という立場からの運動に微力をつくしてきたところです。
 したがって、今回、私どもにこのような発言の場が与えられたことに、率直に感謝申し上げるものでございます。とくに、行政改革会議が、この間私どもに何らの意見も求められなかったことに鑑みても、大変貴重な機会をたまわったものと思っています。

(2)そこで、まず私は、行政改革というものに対する私どもの基本的な立場を申し上げます。
 端的に申しますと、私どもは、国民の皆さんが本当に求めている行政改革は当然おこなうべきであると考えております。
 しからば、国民が求めている行政改革とは何か、ということになりますが、私は、主権者たる国民が、自分の納めた税金が自分たちのために有効に使われていると実感できるような行政と施策の実現、という点にあると考えます。いいかえますと、憲法が定めている国民の基本的人権を最大限に実現することだと思います。
 したがって、そのような観点で、行政の役割・機能というものを、社会状況の変化・発展に応じて見直すことは当然であると考えます。そのような意味で、いまもっとも大切なことは、「政・財・官」がゆ着して利権をあさる行財政のありかたを抜本的に是正することであるし、軍事費や公共事業にかたよった行財政構造の抜本改革と財政赤字解消であるし、さらには、情報公開法の制定によるガラスばりの行政の実現、などであると考えます。  このような立場からしますと、今回の「中央省庁等改革基本法案」について、反対の立場であることを明確に申し上げておきたいと思います。

(3)つぎに、今回の法案に対して、私どもがいだいている疑問や問題意識につきまして、5つの点に絞って申し上げたいと思います。
 第1点は、今回の「行政改革」の「基本理念」にかかわってであります。
 法案や行革会議「最終報告」の中で、総合性・戦略性、機動性、透明性、効率性・簡素性などの観点が強調されておりますが、その反面で、民主性とか公平性という、本来重視されるべき国民サイドに立った視点がかすんでいるように思われます。この点では、国民の基本的人権の実現という立場がないがしろにされる危惧を禁じえません。
 たとえば、労働福祉省の場合、その編成方針をみますと、厚生省や労働省がそれぞれの設置法で中心的任務に位置づけてきた「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」とか、「労働者の福祉と職業の確保」などがどう位置づけられるのか、明らかではありません。これは、国土交通省の場合も同様で、運輸行政の任務が社会資本整備の方向に矮小化されていくのではないか、との危惧を禁じえないのです。

(4)第2に、行政組織のありかたについて、はたして、行政分野の多様性をふまえて、個別の論議がつくされたのであろうか、という問題であります。
 たとえば、行革会議「最終報告」では、国立試験研究機関について、「政策研究機関」以外を独立行政法人の検討対象にしています。しかし、いったいどのような検討を経て、これらを「国が自ら主体となって直接に実施する必要はない」ものとして結論づけられたのか、いっこうに明らかではありません。
 また、10年間で1割の定員削減目標をかかげるとか、局の数を1省で10以下、全体で90程度にするとか、課の数を約900にするとか、いわゆる「数値目標」が法案にもり込まれていますが、これらについても「数値目標」さきにありきで、局や課について、その行政目的、役割、機能などの面から具体的に検討された形跡をうかがうことはできません。このような本末転倒は、到底許されるものではないと思います。

(5)第3は、行政改革を行政のスリム化、公務員削減に一面化した議論に関してであります。
 私どもは、現場の実態をリアルに認識していただきたいと切望しているところです。
 わが国の公務員の数が、先進諸国と比べても、人口当たりで2分の1から3分の1という状況にあることは、いまではよく知られているところですが、そのことが、どのような現場実態となってあらわれているか、その一端だけを申し上げておきたいと思います。
 本省庁の場合、夜8時以前の退庁者は45%に過ぎず、夜11時以降の退庁者は18%にものぼっています。
 第1線の場合、気象庁では、測候所の廃止や無人化の進行で、阪神大震災の際、もしも淡路島の測候所に人がいたならば、と無念の涙をのんでおります。労働基準監督署では、労働基準監督官が全事業鰍一巡cLるのに20年を要する状況にあります。法務局や特許庁では、ケタはずれの膨大な事件処理に、まったく追いつかない状況が常態化しています。
 これらは、多かれ少なかれ、ほぼ全体に共通する状況であることをご理解いただきたいと思います。そのうえ、さらに定員削減、それも第1線の公務員を削減することになれば、もはや、行政責任の遂行はおぼつかない状況にたちいたると思います。

(6)第4は、独立行政法人に関してであります。
 1つは、イギリスを参考にするというこの制度が、将来の民営化につながっていることは明らかであり、ここでも、国民に負うべき国の行政責任放棄という問題を強く指摘しなければなりません。
 もう1つは、対象と目される約7万3千人の雇用と生活、労働条件が重大な不安にさらされることから、到底容認できるものではないことを表明しておきたいと思います。

(7)第5は、公務員制度に関してであります。
 法案の内容は、全体として抽象的でありますから、具体的にめざすものが何であるかをつかみづらいのですが、その関連で申しますと、官僚の天下りが世論の批判の的になっている時、天下りの廃止を含めた「政・財・官」のゆ着構造をなくすことが重要課題にすわるべきであります。しかし、その点にふみ込んでいるのは、わずかに「退職管理の適正化」の文言にとどまっており、大変不十分といわざるをえません。
 私どもは、このような機会にこそ、特権的な人事慣行を変えるべきであるし、行政内部で不正腐敗をチェックする機能として、労働組合の役割にもっと目をむけること、同時に、職員個々の諸権利の問題についても検討されるべきだと考えます。

(8)以上で意見の表明を終わりますが、最後に私は、この法案の帰すうが、それこそ21世紀の「この国のかたち」を規定する関係にあるだけに、性急に結論づけられてはならないと考えます。どうか、私どもの疑問の解明も含めて、慎重な審議をつくされるようお願い申し上げ、発言を終わります。


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