連休あけ衆院強行採決ねらう橋本内閣--国会審議でも明らかになる「行革法案」の反国民性

(国公労新聞第987号98年5月1・11日合併号より)

○5月11日の週の前半に衆院通過ねらう

 4月20日から衆議院の行革特別委員会で、中央省庁等改革基本法案(「行革法案」)の審議がおこなわれています。
 内閣の命運をかける橋本首相は、5月下旬までに法案の成立をめざし、連休明けの衆議院通過をねらっています。
 4月20日から22日の総括質疑、23日から28日までの各省別の集中審議、30日と5月6日の2日間の参考人質疑(行革会議委員、労働組合、専門家など)の日程が決まっており、その後の一般質疑がおこなわれても早ければ5月11日の週の前半にも衆議院の採決が強行される危険性が強まっています。国家改造法ともいえる「行革法案」の成立にかかわる緊迫した状況を迎えています。

○橋本失政を追及する立場は全野党共通

 4月22日までの総括質疑などを通じて、「行革法案」に対する各党の姿勢が明らかになってきています。
 野党は、「行革法案」を政局の動向にかかわる法案としてとらえ、橋本内閣の失政を追及する立場から反対の姿勢を明らかにしている点では共通しています。しかし、その理由は様々です。

○野党の主張点

 民主党 「民主党の行政改革の基本理念は、(1)国の権限を地方に、(2)規制緩和を徹底し、国の権限を限定、(3)財源も大幅に地方に移す、ことにある。その点では法案は不十分。また、行政改革を2003年まで先送りすることも許されない」
(菅直人議員)

 平和改革 「地方分権などと一体で、国の行政をスリム化する計画になっていない」
(石田幸四郎議員)

 自由党 「行政システムを規制緩和や地方分権でそぎ落として、省庁再編を」
(東祥三議員)

 共産党 「法案には、政官財の癒着を断ち切る問題意識がない。内閣機能の強化は、国会軽視につながる。労働福祉省など省庁再編そのものも問題であり撤回を求める」
(松本善明議員)

○理念なき法案

 また、「行革法案」の内容そのものが、明確な理念もなく決められたものであることも明らかになっています。
 たとえば中央省庁編成で、「総務省の中になぜ放送行政と地方行政は一緒なのか」との質問に対して、「各省の任務を精査して大括りに再編」との回答にとどまっています。
 また、「労働行政が巨大な労働福祉省で埋没しないか」との質問に、「埋没しないように努力」との回答しかおこなっていません。
 さらに、「独立行政法人の職員の身分のあてはめは基本法成立後」、「各省の主要な任務、外局についての実施庁と政策庁の区分の根拠は」との質問に対しては、答弁不能の状態に陥る始末です。

○「行革」とはスリム化(国家公務員の削減)

 そのような中で、行政改革は行政スリム化であり国家公務員の削減が具体的中味であるとする「法案の目玉作り」が意図的に強められています。
 「10年で10%削減は、郵政公社化や独立行政法人化で残ったところを対象に」、「10%以上の削減目標は純減目標に近づけるように努力」などの回答が意図的におこなわれ、「10%は、退職不補充で5年間で達成可能」(民主党)などとする質問も繰り返されています。また、自民党の質問でも、「国土交通省のような巨大な利権省が生まれること」に疑問が出される状況です。
 このような中で、民主党は22日、政府提出の「中央省庁等改革基本法案」の対案となる「中央省庁等改革の基本方針」の素案を公表しました。
 その内容は、@国の規制を5年後に半減、A現業部門の原則廃止、B中央政府の定員と省庁の局・課の数を3割以上削減、C国と地方の税財源の割合を現行の2対1から、地方の財源を増やして1対2に近づける――ことを盛り込んでいます。
 政府の「行革法案」よりさらに「行政減量化」に踏み込むことで、違いを際だたせようとする意図を含んだものと考えられます。  しかし、そのことで、内閣機能の強化や政策の企画・立案と実施部門の分離、さらには行政民営化で国民生活とはかけ離れた強権的な行政組織をめざし、橋本「6大改革」の推進体制づくりという「行革法案」の狙いを曖昧にしかねない危険性をもった提案です。

○橋本失政内閣への怒りと結んで

 総括質疑では、「行革法案」の危険性が十分明らかにされたとは言えません。そのような不十分な審議で、21世紀の「この国のかたち」が決められてしまうことは、国民生活にとって極めて危険です。
 そのことから、「行革大規模署名」や宣伝行動を軸に、法案の危険性を徹底して国民に訴え、法案成立反対の国民世論を広げるために全力をあげることが重要です。 1日1日、国会情勢は変化していますが、橋本内閣に対する不支持が7割をこえるまでに批判が強まっている今、その国民の怒りに依拠したとりくみを精力的に展開することが、「行革法案」の成立を阻止する最大の運動であることが、一層鮮明になっています。

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