◆◆◆  行革問題 Q&A  ◆◆◆
(「国公労新聞」第985号98年4月11日付より)

【Q1】 行革基本法案の国会審議が始まりますが、これはどういった内容の法案ですか?

[A1] 行革基本法案(中央省庁等改革基本法案)の内容は、大きく分けて3つあります。
 第1に、内閣機能の強化を行い、首相とその周辺に権限を集中しようとしています 。内閣官房は、首相を直接に補佐する機能を担い、国政に関する基本方針の企画立案 を行い、総理府に代わって新設される「内閣府」は、内閣官房を補佐して国政上の重 要な具体的事項に関する企画立案や総合調整を行う、とされています。さらに「総務 省(仮称)」は、人事行政で内閣総理大臣を補佐する、とされています。
 第2に、省庁再編では、大括り再編で権限を強化します。また、各省の内部部局を 政策の企画・立案機能に「純化」するとしています。内閣機能の強化と相まって、強 権的な政治体制づくりをねらったものであるといえます。
 第3に、行政組織の減量(スリム)化として、行政機関を「国の子会社」化する独 立行政法人制度があらたな方策としてうち出されています。具体的には国立病院や国 立試験研究機関など「施設等機関」の独立行政法人化や、各省地方支分部局の整理統 合などが掲げられています。


【Q2】 政府は、なぜ行革基本法案の成立を急ぐのでしょうか?

[A2] 橋本内閣は、2001年1月1日に、新体制を発足させることをめざしており、今後の予定として、国家行政組織法や各省設置法の改正、独立行政法人関係の基本法と個別法人の設置法の制定、それに付随する政省令の改正など、膨大な作業が日程にあがっています。
 そのため、今国会で行革基本法案を成立させないことには無理が生じてきます。しかも、この法案は、橋本「行革」の象徴といえるものであり、なんとしても今国会で 成立させなければ内閣存続に赤信号が点ることになります。もっとも、この法案をま ともに審議すればきっとその欠陥が浮き彫りになり、紛糾は必至です。急ぐ理由はそ の辺にもあるのです。


【Q3】 公務の減量化は、公務員にはどう影響するのでしょうか?CM

[A3] 「橋本行革」では、独立行政法人化と実施庁という新たな手法を導入するなど、実施部門を一律に減量化しようとしています。
 国の「子会社」化ともいえる独立行政法人には、主務省庁の目標提示のもと徹底した効率化が求められ、総務省(仮称)の評価により「成績が悪い」独立行政法人は業 務廃止も行える仕組みになっています。
 独立行政法人制度の円滑な導入のため、公務員型が基本とされていますが、身分保障のない非公務員型の可能性も残され、再浮上してくるおそれがあります。もちろん 、実施庁についても各大臣が目標を提示し、独立行政法人と同様の徹底した効率化が 求められます。
 これら効率化のため、業務の民間委託・委譲がこれまでとは比較にならないほど進められることが予想され、公務の職場が次々と奪われるおそれもあります。
 出先機関等でも、複数系統の「統合」や府県単位より小さい出先機関の「整理」がうち出されており、国民サービスを提供する部門の整理「合理化」によるしわ寄せが 懸念されます。


【Q4】 国民生活にはどんな影響があるのでしょうか?

[A4] もともと、橋本「6大改革」とも一体の行政改革(=省庁再編)は、財政構造改革などの悪政を強力に推進するためのものです。
 「行政の減量化」では、まず国立病院や国立試験研究機関に組織の統廃合を求め、その上で独立行政法人化を行います。独立行政法人においては、国民にたいする行き 届いた行政サービスの提供よりも、「効率」が優先されます。しかも、総務省(仮称 )の評価委員会で、業務の改廃を含めた定期的な「見直し」が行える仕組みをつくろ うとしています。これにより、行政サービスは次々と切り捨てられ、国民はその生活 上、多大な不便を被ることになるでしょう。


【Q5】 自治体要請など、「行革は国の問題」と回答されますが、行革基本法案は地方に影響を及ぼさないのでしょうか?

[A5] 行革基本法では、その改革の基本方針として「地方分権の推進」により、 「国の行政組織並びに事務及び事業を減量化」することを明記しています。また、「 地方公共団体の自主性」を口実に、地方公共団体間の財政調整は「行政の標準的な水 準」確保フために「必要な範囲に限定」するとしています。さらに、補助金の「削減 、合理化」を推進することも明記しています。さらに、公共事業について、国の事業 は「基礎的、広域的事業の実施に限定」するとし、その他は「地方自治体にゆだねる 」としています。
 財源の手当もなしに、本来は国がやるべき仕事まで地方に押しつけることは、これまで国保や介護保険などでもおこなわれてきました。また、補助金などの削減は、結 果として福祉事業などのリストラを強制しています。
 それらをさらに推進するだけでなく、国の仕事減らしのために、財政もふくめ地方自治体に負担を迫ることが「橋本行革」の前提になっています。
 「橋本行革」は、地方財政をさらに圧迫するだけでなく、福祉などでの自治体間格差を拡大するものだといえます。


【Q6】 内閣機能の強化が行革基本法のメインだと言われますが、その中味と問題 点は何でしょうか?

[A6] 行革基本法は、その目的の第一に「内閣機能の強化」を掲げています。行政改革会議の議論では、「官僚政治打破」「縦割り行政是正」「危機管理」などが内閣機能強化のおもな理由となっています。
 その内容は、[1]発議権など首相の権限をさらに強化、[2]内閣官房の役割強化と政治的採用者の拡大、[3]内閣府、総務省(仮称)の機能強化と権限拡大、な どとなっています。また、「政策の企画・立案と実施の分離」も無関係ではありませ ん。
 議院内閣制のもとで、内閣に巨大な権限を集中する目的は、「政権党のために行政組織と官僚を使う」ことにあることは明らかです。それは、今回の行革が「経営者の 強い要求」から出発していることをみるまでもなく、税収がのびない中で国民への行 政サービスを切り捨てつつ、大企業本位に税金を使うための仕組みを作るためである ことは明らかです。


【Q7】 1府12省への省庁再編の問題点はなんでしょうか?

[A7] 一つは、別項で触れた内閣府、総務省(仮称)など、権限と機能が集中す る巨大省が構想されていることです。政府が重要とする施策のみが優先され、国民生 活関連の政策が軽視されかねない危惧を持っています。
 二つは、防衛庁、国家公安委員会が「準省」と位置づけられ、固有の権限が強化されたことです。
 三つは、労働福祉省や、教育科学技術省に見られるように、国民生活の基盤を支える行政を軽視した「省庁合併」となっている点です。
 四つは、新しい省の「主要な任務」が、社会保障改革など橋本「6大改革」推進におかれ、労働者、中小企業、農林漁業などの保護政策からの撤退や社会保障改悪など 、まさに悪政推進のための行政組織とすることがすべての省に求められていることで す。


【Q8】 独立行政法人制度とはどのような制度ですか。そのどこが問題なのですか?

[A8] 独立行政法人制度は、行政組織の減量化のために、実施部門のうち「公共性」はあるが「国が実施しなくても良い事務」を対象に、国の行政組織外にある「法人」にその事務をおこなわせようとするものです。「3年以上5年以内」の中期目標を設定し、その到達状況をふまえて組織の「改廃」を検討すること、等が規定されています。また、職員の身分は、争議がおこなわれた場合の影響のみを基準に、公務員型と非公務員型に分ける、とされています。
 対象となる事務・事業は、行革基本法案成立後に個別に検討、とされています。ただし、「国として必要なもの以外」は民営化等を検討するとしている「施設等機関」 のうち、国立病院・療養所、試験研究機関、検査検定機関、文教研修施設などは、よ り先行して独立行政法人化を「検討」することが明記されています。この制度は、実 施部門を行政の「子会社化」するもので、「民間化」そのものといえます。


【Q9】 「民間も、厳しいリストラで、大変な時期だから、公務の行革は当然だ」との声も聞かれますが、どう考えれば良いのでしょうか?

[A9] 行政が肥大化している、だから公務員の削減を。などと言われますが、そこには大きなごまかしがあります。国内総生産(GDP)に占める中央政府の支出は、日本(4・1%)、アメリカ( ・1%)、イギリス( ・1%)などとなっており、日本が最も低くなっています(1994年)。このことは、国民1千人に対する公務員数(国、地方、政府系全体)でも、日本( 人)、アメリカ( 人)、イギリス( 人)となっていることと一致しています(1995年)。
 財政的にも公務員数からも「スリムな政府」が日本の現状なのです。行政の実施部門である出先機関は、これまで行わ黷ス「行革」で、まともなサービス提供にさえ支 障がでている状況です。
 むしろ最大の問題は、大蔵官僚に代表される汚職腐敗事件等でも明らかな、特権官僚の巨大な権限にあります。「政・官・財」ゆ着の撤廃をはじめ「ガラス張りの行政 」を求めるたたかいは、こうしたごまかしをただすうえでも極めて重要です。


【Q10】 国公労連は、どんなたたかいをすすめていますか。また、組合員はいま何をすればよいのでしょうか?

[A10] 規制緩和と社会保障への国の負担削減を中心に進められる橋本「6大改革」は、全体として「この国のかたち」を大きく変えようとするものです。行革基本法案は、橋本「6大改革」を行政組織の面から推し進める、いわば「ハード」の問題です。国公労連は、この流れを変えることこそが、行革基本法案の成立をくいとめるたたかいであることを確認し、そのために国民との「総対話と共同」を全国で展開してきました。運動は前進していますが、情勢からすればまだ不十分です。
 行革基本法案は、国会でまともに論議されないまま、拙速に成立させようとする動きが強まっています。こうした状況だからこそ、国民世論の動向がカギを握ります。
 職場と生活を守るためにも、一人一人の仲間が大規模署名の取り組みや宣伝・行動に積極的に結集し、私たちが国民世論の先頭に立って奮闘しましょう。

トップページへ   「行政改革」問題資料へ 国公労新聞へ