中央省庁等改革基本法案審議入り--4月10日、衆議院本会議で法案の趣旨説明
【国公労連「行革闘争ニュース」98年4月10日付より】

 4月10日、13時40分から開催された衆議院本会議で、行革基本法案の趣旨説明がおこなわれまいした。なお、本日の本会議では、法案説明に先立って、橋本首相が財政構造改革法「改正」の説明をおこない、これを受けて4月13日に衆議院予算委員会を開催すること、14日には首相説明にかかわる衆議院本会議を開催することがきまりました。また、行革特別委員会の審議日程は、13日の同委員会理事会で協議されることとなっています。

○小里総務庁長官の趣旨説明の概要

・ 戦後50年たって、行政機能の限界がはっきりしてきたことから、時代にあわなくなったシステムを21世紀型に転換する必要がある。そのことから、行政改革会議最終報告を最大限尊重して法案化した。
 内容は、1)国の任務の重点化、2)行革推進にあたっての国の責務、3)法成立後5年以内、出来れば2001年1月から新たなシステムに移行すること、4)内閣機能の強化(発議権、内閣官房、内閣府等)、5)中央省庁再編(国の機能の重点化と総合性確保の観点からの行政目的別編成、企画立案と実施部門の分離など)、6)行政のアウトソーシング(国が担う事務事業の重点化、郵政公社など現業改革、独立行政法人制度創設、施設機関、補助金の見直しなど)、7)その他の制度改革(国家公務員法、情報公開法、地方分権など、8)行革を集中かつ一体的に推進するための本部を3年間設置である。


○各党の質問要旨と回答

(自民党・牧野議員)

・平成の大改革である「6大改革」について、財政構造改革法に継ぐ法案提出の努力に敬意。しかも行革基本法とりまとめでは、首相がリーダーシップを発揮し、今後の行革の座標軸となった。速やかな成立を要請する。
・行政改革の意義は何か
 *社会システム転換のきっかけとする
・行政改革の基本姿勢はなにか
 *行政改革は国の仕事べらしを前進させ、機動的な政策決定を可能にする行政組織すること。国の権限と、事務量の削減をすすめる。
・法案の中心は、危機管理を目的とする内閣機能の強化か
 *リーダーシップの要として、発議権の明確化や内閣支援体制の強化を法案化している。
・大蔵省の金融と財政の分離、予算編成権の扱いなどが不十分
 *金融と財政の分離は、様々な意見を与党協議で煮詰めたもの。予算の基本方針は、経済財政諮問会議で取り扱うこととしている。
・郵便貯金の自主運用と景気・経済対策との関係は
 *安定的な運用を念頭に、公社債などを中心に運用する考えだ。



(民主党・鳩山議員)

・財政構造改革の転換(政策転換)の責任は重大だ。首相退陣と衆議院解散を要求する。
 *弾力的に経済運営をおこなうと言ってきた。困難な局面だからこそ有効な経済対策を取り組むことが責任だ。
・行革基本法は、旧い利権を温存するものだ。自律する市民を支援するシステムへの転換、過度の保護政策と国民の依存の関係を断ち切ることが必要だ。国は、防衛、外交、治安とナショナルミニマム確立の役割に純化し、分権と規制緩和を進めるべきだ。
・行革基本法案は、「官僚の官僚による官僚のための改革」だ。巨大省庁再編の前に、規制緩和と分権が先だ。
 *地方分権、規制緩和、官民役割分担の再編が、行政改革を前進させる。地方分権推進委員会、行政改革委員会とも連携して行革会議の論議を進めてきた。
・大蔵省の財政と金融の分離が不十分だ。また、国税庁分離はなぜ消えたのか。
 *国税庁の分離は、行政改革会議の論議の経過で法案の結果となった。
・国土交通省という巨大省庁が必要か。一人の大臣で監視できる規模ではない。そもそも、国が担う公共事業とはなにか。
 *地方支分部局のブロック制で、肥大化の緩和を図る。すべての公共事業を対象に国と地方の分担を見直す。
・癒着構造など現在の問題が行革基本法で解消するのか。機構改革先行が最大の問題だ。
 *基本法はプログラムであり、個別分野の改革は痛みを伴うこともあろうが、基本に沿って進める。



(平和改革・富沢議員)

・財政改革法の政策転換の内容は、必要な施策からほど遠い。財政構造改革法の弾力条項や、10兆円減税、インフラ整備などを進めるべきだ。
・行革会議の中間報告から、最終報告の間に行政改革の大骨が抜かれている。なぜ、後退したのか。
 *行革会議の論議、与党間協議の結果だ。
・行政の仕事の中味に手がついていない。特に公務員削減は不十分だ。10年で1割は少ない。
・行革基本法で、行政経費はどれだけ削減できるのか。
 *定量化は困難。
・分権、規制緩和、仕事べらしの手順がとれていない。
 *分権、規制緩和は先行している。地方分権については、4次の勧告をふまえた計画を今国会中に策定する。
・郵政民営化は行革の目玉だ。いまの状態は官業の民業圧迫だ。
 *公社化は、国民の意見反映の結果だ。
・蜻 省の権限削減が出来ていない。財政・金融の分離、国税分離がなぜ出来ないのか。
・国の直轄公共事業は減らすべきだ。国土交通省は、中央集権・肥大化だ。
・行革基本法は不十分。だから反対だ。



(自由党・井崎議員)

・財政改革法の転換は、国民に対するうそをついたもの。政権担当能力の問題であり、責任をとるべきだ。
・なぜ今の時期に行政改革か。改革前提は経済対策で国民生活が元気になることだ。それが痛みを伴う改革の前提だ。
・規制緩和、分権で、国の過剰な介入は断固排除すべきだ。また、行政腐敗の温床となっている裁量行政の見直しこそ必要だ。権限集中こそ問題であり、国土交通省はその例だ。これでは陳情行政が4重になる。
・今回のような経済施策の失敗は、あらたな省編成ではだれがとるのか。
 *総合調整は内閣の役割だ。
・行政改革の数値目標をなぜ掲げないのか。
 *財政構造改革で財政面をしばっており、6大改革全体で効果があがる。



(日本共産党・松本議員)

・9兆円の国民負担への反省もないままに、政策転換する責任をとるべきだ。
・内閣機能強化、トップダウンの政治で何をねらうのか。国会の行政監視機能を阻害しないか。ガイドライン法制にも見られる国会軽視が強まる。
 *国政の総理では緊急対応を求められることがあり、それに対応するために総理大臣のリーダーシップが必要。ガイドライン法制では、閣議後遅滞なく国会報告することで足りる。
・各省編成について、
 1)国土交通省では特会制度も含めた全般の見直しが必要。国債発行残高の累増に見られる国民への付け回しの温床となる。
 *公共事業は、財政構造改革と一体で見直しを進める。国債発行残高は、高齢化と類似の景気対策の結果だ。
 2)少子化の状況で、女性の労働政策充実などが求められている労働省を、行政目的が異なる厚生省と一緒にして記の低下を来さないか。社会保障切り捨ての財政構造改革と一体で、国民生活を圧迫することになる。
 *雇用、福祉などの行政を一体化することで、事務事業を簡素化できる。結果として、国民生活にはメリットを生じるものだ。
 3)中小企業法の目的と行革基本法の経済産業省の編成方針は齟齬しないか。農業保護と、農林省編成方針と齟齬しないか。
 *安易な保護ではなく、自覚的な企業の育成に転換する。また、大規模農業化は、生産性向上、自給率向上のためにも必要。
・独立行政法人について
 1)公共性の見地から必要とする事務を、3〜5年で廃止前提の見直しをおこなうとすることは矛盾しないか
 *不必要な組織の存在や傍聴を防ぐためにも見直しは必要
 2)研究機関の独立行政法人化は、基礎的研究の軽視につながり研究体制を形骸化しないか
 *研究所の独立行政法人化は、その態様により個別に検討する。
 3)国立病院の独立行政法人化は、その役割否定につながる
 *国のおこなう医療としての役割は、独立行政法人でも変わらない。
・郵便貯金の自主運用は、国民にリスク負担を迫るとともに、公的資金供給の体制を不安定化させないか。郵政事業法3条、5条は堅持すると明言できるか。
 *財政投融資の今後の検討。郵政事業の現行の仕組みは維持することを基本に、個別の条文は今後検討。
・財政構造改革の破綻は、6大改革の根底が崩れたものだ。6大改革は、「政・財・官」癒着の撤廃など国民本位の行財政改革に逆行する。法案の撤回と内閣退陣、解散総選挙で国民に信をとうべきだ。



(社民党・中西議員)

・官主導から、主権在民の行背への転換が必要だ。
・分権、情報公開でおのずと国の役割が決まる。しかし今回の法案は、1府12省ありきではないか
。 ・行政組織の編成は、弾力的にすべきだ。
・巨大省の権限は肥大化するのではないか。
・副大臣制など、政治のリーダーシップの確立が必要だ。
・独立行政法人の対象、業務をきめる場合には、職員団体等の意見をふまえるとする3等合意を確認すべきだ。
 *独立行政法人は、行革の重要な要素だ。業務、身分の扱いで労使関係に配慮するのは当然だ。
・特殊法人と独立行政法人の違いが不明確。特に国会のコントロールとの関係はどうか。
 *独立行政法人は国とは別の法人格で、所管大臣の関与の事項を制限的に法定化する。大臣のコントロールのあり方が違う。

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