行革闘争の現局面と取り組みの強化にむけて
「許すな!行革基本法案 国公労連3・9総決起集会」への行動提起

1998.3.9 国公労連行革闘争本部

1 特徴的な情勢 @ 政府は2月17日、「中央省庁等改革基本法案」を閣議決定し国会に提出した。法案の審議日程は、未定の状況であり、3月6日には橋本首相が自民党首脳に対して「今国会での法案成立」を指示したと報道されている。なお、3月7日の新聞各紙には、この法案にそった行政改革への国民の理解を訴える政府広報が一斉に掲載されている。  98年度予算案の衆議院通過が3月20日頃となることが予想され、暫定予算の編成が不可避となっている。同時に、予算関連法案でも「国鉄債務処理法案」などの重要法案が目白押しであり、加えて4月段階での補正予算編成が不可避になっていること、「自・社・さ」与党体制の見直しにつながりかねない「米軍後方地域支援法(仮称)」の国会提出が俎上にのぼっていることなど、7月の参議院選挙が確定しているもとで、国会状況は極めて複雑な状況となっている。  今国会には、100本を越える法案が提出されているが、予算法案や中央省庁等改革基本法案など全閣僚出席が求められる法案もあり、98年度予算案の衆議院通過と前後して、法案の審議日程を巡る駆け引きが強まることは確実な状況にある。 A 金融機関をめぐる大蔵官僚の汚職・腐敗に対して、国民の不信が広がっている。朝日新聞社が3月1,2日におこなった世論調査では、「官僚を信頼していない」が71%(前回96年12月調査では65%)に達している。同じ世論調査で、橋本内閣の支持率は36%(前回98年1月調査では31%)であり、「不支持」・47%が上回っている。  97年度での9兆円もの国民負担増の押しつけや、社会保障の連続改悪、労働基準法等の改悪などに顕著に表れている「いきすぎた規制緩和」が国民生活を極めて不安定にしはじめていること等、規制緩和による公的責任の否定を前提にした偏った財政運営や行政サービス切り捨ての政策の転換をもとめる国民世論が大きく広がっている。同時に、大蔵省に見られる官僚の権限の肥大化とそのことと連動する腐敗した官僚機構の改革をもとめる国民世論も高まっている。国民の行政改革を見る時には、両側面を同時に問題にしていることを率直に受け止めることが必要である。 B 国公労連が、2月13日におこなった政党、議員要請(野党を対象)の結果では、新党友愛(旧民社党)が「大規模署名」への賛同を明確に拒否し、平和・改革(旧公明党)が消極的な対応をおこなった。また、民主党は独自の「行革法案」検討を示唆している。  政府提出の中央省庁等改革基本法案には、自民党内部にも「不協和音」があることを一部マスコミが報道するなど、法案の内容をめぐる各政党、議員の対応は必ずしも定まっていない。同時に、自民党内部でも依然として「郵政民営化論」がくすぶり、各政党が明らかにしている政策では、自由党が小沢党首の「日本改造計画」を下敷きにした改革論を提起し、民主党が「分権国家論」の検討を明らかにするなど、国の役割(機能と機構もあわせて)を縮小する行政改革の流れは依然としてとどまってはいないことも注視しなければならない。。
2 中央省庁等改革基本法の中心的な内容とその問題点 @ 中央省庁等改革基本法がめざす行政改革の内容は、1)内閣機能の強化、2)行政組織の再編、3)行政組織の減量(スリム)化の3点であり、この改革をつうじて「自律した個人を基礎」とした21世紀の「この国のかたち」をつくりだすとしている。  法案は、そのような内容の行政改革を「国の責任」(国会や国民も含む)で進めるとする「宣言法案」である。そして、この法案を基本に、行政組織法、各省設置法、国家公務員法などの関連法案整備をすすめ、「2001年1月1日」から「新体制への移行」をめざすとしている。  確認しなければならないことは、この法案が「財政構造改革法」や社会保障制度の抜本的な改悪、社会的規制を含む規制の原則廃止、日米ガイドラインにもとづく「有事法制」など個別の分野での「構造改革」の実施を織り込んでいることである。それは、一方での軍事大国化と経済成長優先の経済大国化をめざすと同時に、国民生活の基盤を支える国の責任放棄を意味することになる。国民世論が強く批判する橋本「6大改革」の悪政を推進するための組織作りをねらった行政改革の「集大成」の法案である点を国民的世論に訴えることが、なによりも重要である。 A 法案の中心は、首相とその周辺に権限を集中し、「自民党型」政治を首相の「リーダーシップ」のもとに強権的にすすめるための仕組み(組織)作りがまずめざされている。この点では、各省の内部部局を政策の企画・立案機能に「純化」して、いままで以上に時の政権の「政治スタッフ」として官僚組織を活用する意図も含まれている。  このことは、国民が厳しく批判する「政・財・官」の癒着がさらに深刻になることを意味している。行政の目的である主権者国民の基本的人権の確保・実現を脇に置き、時の政権維持のための利権あさりに官僚機構が動員されることは確実であり、「国民全体の奉仕者」としての公務員の本質を事実上変えることになりかねない。  それだけに、「政・財・官」が癒着して、国民の税金をムダ遣いし、行政を大企業本位にゆがめている実態を明らかにしながら、癒着構造をあらためるためにも「天下り」や「団体・企業からの政治献金」の禁止が、組織いじり以前におこなうよう求める世論の高まりを作り出すことは、法案の成立を許さないためにも重要である。 B 特権官僚を頂点とする官僚組織の肥大化を「公務員数の多さ」や、行政サービスを提供する実施部門の存在にすり替え、外局や地方出先機関のリストラ「合理化」、公務員の「一律削減」を強行に進めようとしていることも法案の特徴である。  減量化のあらたな方策として、「行政の子会社化」と言える独立行政法人制度が打ち出され、国立病院や試験研究機関などの「施設等機関」や各省の地方支局部局の整理統合が打ち出されている。行政改革の「成果」として、このような減量化を最優先して政府が進める危険性は少なくない。同時に、政策の企画・立案をおこなう「政治スタッフ」としての生き残りをはかる特権官僚の動きが、一面で公務員労働者のリストラ「合理化」に進む危険性も見ておかなければならない。  法案は、行政改革の「基本的枠組み」を決定づけるものであり、実施部門については、民営化、民間委託、民間経営手法の組み込み、地方への事務配分などによる「減量と効率化」を一律に迫る内容である。個別の機関や事務・事業名が法案に盛り込まれているかどうかの問題ではないことを正確に受け止める必要がある。  この点では、各省庁の出先機関が現実に果たしている役割をあらためて訴え、実施部門こそ行政本来の役割を果たしていることと、その充実が必要とされる地域からの国民世論を作り出していくことが重要である。そのたたかいは国公労働者固有のものであることも確認しなければならない。  単組独自の署名は、この点を中心に意義があることをあらためて確認し、法案の成立を許さず国民本位の行政体制確立の展望を切り開くためにも、産別統一の「行革大規模署名」を基礎に、これと一体で単組独自署名を展開する必要がいまこそ高まっている。
3 これまでの運動の到達点と今後の取り組み強化 @ 昨年11月に「大規模署名」の取り組みを開始して以来、「全国連鎖のハートキャラバン97(47都道府県・7745名参加)」や、「1の日行動」を軸とする宣伝行動(国公労連独自ビラは100万、20万、300万の3回作成)、2月26日「全組合員総行動」(未収約、春闘共闘規模では、3月2日時点で100万人以上の行動参加を確認)、2月13日の中央行動、3月8日の大集会(全体で12万人結集)、3月5日付け「日刊ゲンダイ」での意見広告(170万部)などの取り組みを行ったきた。  また、各県段階、単組段階での「行革シンポ」も繰り返し開催されている。  このような中で、3月9日には、延べ350人の参加で全国会議員要請行動をおこない、約20万人分の署名提出をおこなった。  署名集約目標は、各単組目標積み上げで「300万」であり、現段階の集約状況は1割にも達していない。 A 情勢の特徴でも触れているように、国会の状況は法案の審議順等を巡る駆け引きが活発化してきている。また、予算審議の遅れもあって、4月段階が法案の審議入り等をめぐる駆け引きの場となり、国会最終盤にむけて連休明けの5月中旬以降6月初旬までが法案の国会審議の山場を迎えるものと予想される。なお、参議院選挙が確定していることから、参議院段階での「法案継続」はあり得ず、また衆議院解散の可能性も否定出来ないことから、法案審議は流動的な要素を含んでいる。  また、仮に中央省庁等改革基本法が成立したとしても、その後に各省設置法との検討がおこなわれることとなっており、参議院選挙とも絡んで、中期的なたたかいの構えも必要となっている。  これらの点をふまえつつ、現段階では中央省庁等改革基本法の成立を許さないことでのたたかいに全力を集中する。 B そのことから、春闘方針で提起している「4月段階からの全県網の目キャラバン」を運動の主軸とする宣伝、要請、署名行動の成功に総力をあげる。  特に、法案が極めて「政治的」な色彩の強いものであることをふまえ、国会議員および地方議員などへの中央・地方での働きかけを強め、4月17日と5月22日に予定している中央行動にむけて、署名と要請の成果を集中することを改めて確認する。  なお、法案の審議状況を見つつ、職場段階からの文書戦などを具体化する。  行革闘争の中心は、国民世論の流れを変えることをめざした繰り返しの宣伝と署名を軸とした国民との総対話である。そして、そのような運動に全組合員が参加する主体的な条件を高めていくことが必要であり、その一つの到達点が「行革大規模署名」に表れることをあらためて確認する。
4 おわりに  客観的な情勢は、中央省庁等改革基本法案をはじめとして、橋本「6大改革」推進のための法案の成立を困難とする条件が生じている。  この条件を具体的な成果に結びつける行革闘争を飛躍的に発展させることが必要となっている。その点では、今の運動のテンポと構えでは不十分であり、これまで以上に全組合員の力を集中した運動展開が必要であることを全体で確認し、98春闘の諸要求実現の取り組みとも一体で、この時期の運動の前進をめざす。  国民いじめ、行政切り捨ての橋本「6大改革」粉砕の国民世論を全国津々浦々で大きくわき起こす取り組みの先頭に国公労連がたつ決意をこの集会で改めて確認する。 以  上



















































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