「金融スキャンダル」の徹底糾明と官僚腐敗の構造改革を求める

 1月18日、東京地方検察庁は、日本道路公団の財務担当理事で、元大蔵省官僚であった井坂武彦容疑者を、同公団の外債発行にともなう主幹事選定での便宜をはかった見返りに、野村証券から約258万円相当の供与を受けていたとする収賄容疑で逮捕した。なお、同時に、野村証券の元副社長等も贈賄容疑で逮捕されている。

 マスコミ報道によれば、他になお複数の金融機関が同人を接待した疑いがもたれ、他の特殊法人等でも銀行、証券会社の接待攻勢があったことも指摘されている。

 第一勧業銀行や野村証券などが関わった総会屋への利益供与事件に端を発し、大蔵省出身の国会議員に総会屋と同様の手口で利益供与が行われた疑いも明らかになっている。また、大蔵省の金融検査部の幹部職員が、銀行などから多額な接待を受け、検査日時等を漏らしていた疑惑も浮上してきている。大蔵省、そして官僚の天下り先となっている財政投融資機関、さらには国会議員と銀行・証券会社が一体となった汚職腐敗が、個人のモラルの問題として片づけることの出来ない構造的な問題であることを改めて示す事実が、相次いで明らかになっている。このような構造腐敗の表れである今回の「金融スキャンダル」を政府の責任で徹底糾明することを国公労連は強くもとめる。

 これらの腐敗汚職の根底には、「政・財・官」が癒着して、国民の税金や共有財産を私利・私欲、利権の対象とする構造があることは明らかである。

問題となった道路公団には、利子補給金や出資金の形で多額の税金が投入されている。特殊法人の運営にあたっては、「見なし公務員」規定が適用され、高い公共性が求められている。にもかかわらず、もっとも恥ずべき行為である贈収賄が繰り返し行われていたことは、公務員労働者としても心底からの怒りを覚える。同時に、官僚の腐敗が、広く蔓延し、そのことに対する公務部内のチェックが機能していないことについては、国家公務員労働組合の取り組みの不十分さとしても受け止めなければならない。

 このような事件の発生をうけて、政府は、天下り規制の強化と幹部職員の退職年齢引き上げについて今年夏までに見直し案をとりまとめる方針を示したと報道されている。

 昨年12月25日に、人事院規則の改正がおこなわれ、再就職(天下り)規制が一定強化されたが、その際、国公労連は、「営利企業」への再就職が問題とされているのみで、特殊法人や公益法人への天下りが規制対象外とされていることの問題点を指摘した。高額な退職金を受け取って次々に特殊法人等を渡り歩く「渡り鳥」や、再就職規制を尻ぬけにする特殊法人等への「一時就職」は高級官僚の再就職の特典になっている。国公労連は、特殊法人や公益法人が、監督官庁の事実上の「子会社」となっていることの改革も含め、官僚の腐敗汚職を根絶するための抜本的な検討を改めて主張するものである。

 大蔵省に限っても、ここ数年、繰り返し不祥事が発生している。その背景の一つに学閥偏重、特権人事温存など旧態依然とした人事管理があること、あるいは職場の民主化をもとめる労働組合に対する不当労働行為が後を絶たない非民主的な労務管理があることは明らかである。

 「政・財・官」の癒着をはじめとする汚職腐敗をなくすためにも、公務部内の民主化は不可欠である。労働組合による行政運営に対する意見表明の機会や内部告発の仕組み等の創設などの制度検討を国公労連は改めて要求する。

 国民や公務員労働者が求める行政改革は、省庁再編や行政サービス切り捨ての改革ではなく、行政のゆがみそのものである腐敗の温床の撤廃こそが当面の焦点である。その点にはほとんど全く応えていない行政改革会議の最終報告の具体化は中止し、最優先課題として腐敗根絶のための改革を政府がすすめるよう強く求めるものである。

   1998年1月20日

日本国家公務員労働組合連合会

  書記長  西 田 祥 文


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