行政の中立・公平性を阻害する制度改悪反対
−公務員制度調査会に緊急の申し入れ−                 


 国公労連は10月21日午後、行革会議中間報告をうけて、3課題(@人事行政機関の機能分担、A幹部の一括管理、B内閣の人材確保)の検討を急ピッチで進めている公務員制度調査会に対し、緊急の申し入れをおこないました。
 申し入れには国公労連から森崎副委員長以下3名が参加。相手方は公務員制度調査会の事務局として総務庁人事局の戸谷企画調整課長らが対応しました。
 森崎副委員長は、「現在検討されている内容は国公労連として重大な関心をもたざるをえず、会長宛に緊急に申し入れを出したい」と述べ、趣旨を以下のように説明しました。
 ○調査会で検討中の3課題は、いずれも日本の公務員制度の根幹や行政のあり方にも重大な影響を及ぼすもの。行革会議が調査会に検討をゆだねたのも、それが行政全般にかかわり、国民の利害にもかかわる重大問題だからだ。
 ○検討にあたっては、公務員が全体の奉仕者としての役割を十分発揮できる制度のしくみや、適切な労働条件決定システムへの配慮も大事だ。
 ○非現業公務員の最大組織の国公労連の意見を尊重すること。労働基本権にかかわる論議抜きにこれらの問題を扱えないことも強調したい。
 −−以上の趣旨を述べた上で、申入書の説明をし、各委員への配布を含め、意見反映のための努力を重ねて求めました。
 最後に、国公労連は、「発足時にも申し入れたとおり、いまだに公務員制度調査会に意見反映の方法がなく、不満。会議内容の一方的な提供だけでなく、意見反映のしかるべき方策を検討すべき」と公務員制度調査会の現在の運営を強く批判しました。これに対して、課長は「承っておく」としか回答しませんでした。

【別記】
1997年10月21日
 公務員制度調査会会長  辻村 江太郎 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 藤田忠弘
公務員制度改革の検討にかかわる申し入れ

 貴調査会は、現在、行政改革会議の要請をうけて、「省庁の再編、内閣機能の強化に密接に関連する公務員制度改革」についての集中的な調査審議を重ね、11月末の行政改革会議「最終報告」に間にあうように、「中央人事行政機関の機能分担」などの3つの課題での検討作業を進めていると伝えられています。
 検討中の3課題は、いずれも我が国の公務員制度や行政のあり方に重要な影響を及ぼすものです。公務員制度は、「公務の民主的かつ能率的運営」を保障するために運営・実施される必要があります。そして、公務の運営に携わる公務員の「待遇その他の条件」も、そのことを実現する観点から、同時に論じられることが求められています。したがって、公務員制度の検討にあたっては、国民本位の行政のあり方を人事行政面から保障する側面と、国民の納得も前提に公務員の労働条件を安定的に確保することの2つの側面からおこなわれる必要があると考えます。
 行政改革会議が、公務員制度については、関連制度をふまえた専門機関での幅広い検討を求めたのも、それが行政全般にもかかわる優れて専門的な分野であり、国民の利害に直接かかわる重要な課題だからだと考えます。
 貴調査会での当面の検討でも、「全体の奉仕者」である公務員が国民に期待される役割を十分に発揮できるよう、透明で公平な任用のあり方や、労働条件決定システムにも配慮して公務員労働者の労働条件を適正に確保することなどが論議される必要があると考えます。そのことからしても、当該労働者で組織する労働組合の意見の反映が不可欠であることは言うまでもありません。いわんや、労働基本権にかかわる問題が論議の外におかれ、公務員制度の本格的議論をさける形で結論を得るような検討は、決して許されるものではありません。
 以上のことから、国家公務員労働者の最大多数を結集する労働組合として、貴調査会小委員会において検討が進められている3点について下記の意見を表明し、その審議に反映いただくよう申し入れます。


1 中央人事行政機関の機能分担について
 @主要諸国の例からしても、中央人事行政機関のあり方は、その国の政治的伝統を反映した特徴を持っている。我が国の場合、公務員については労働基本権が制約されたという歴史的事情を反映した特異な位置づけと、機能分担がなされてきた。
 すなわち、中立的人事行政機関としての人事院は、日本国憲法の理念を行政に具体化していくために、第3者機関として、民主的人事行政を確立し推進する役割と、労働基本権の代償機能の二つの機能をあわせもっている。一方、内閣の機関であり、公務員の使用者の立場にある総理大臣の中央人事行政機関としての役割は、正常で安定的な労使関係の確立にかかわる事項や、各行政機関がおこなう人事管理に関して、統一保持上必要な総合調整にあるとされている。
 このことをみても、我が国の中央人事行政機関のあり方についての検討は、内閣機能の強化や行政組織再編との関係のみで論じられるべきものではなく、公務における労使関係や労働条件決定の仕組みの検討が不可欠である。当然のこととして、労働組合の役割や位置づけをぬきにした議論は適当ではないと考える。
 A行政改革会議における中央人事行政機関の機能分担の議論は、人事院の機能を『労働基本権の代償措置としての「人事行政の公正の確保及び職員の利益保護」のためにふさわしい機能に集中』する方向であることは明らかである。このことを前提として貴調査会での論議が進められるとすれば、最低でも労働基本権が制約されている現実をふまえた「代償措置」の内容が慎重に検討されなければならない。
 Bそこでまず、現行の公務員制度が定める人事院の機能(試験、任免、給与、研修、分限、懲戒等についての基準の設定など)のうち、「労働基本権の代償措置」にかかわるものは何かということについて、公務員の「労働条件」の範囲との関係で慎重に検討される必要がある。その際、民間の労使関係においては、労働条件の範囲それ自体が交渉事項であること、公務では当局の「管理運営事項」とされるものについても広く労働条件として規定していること、さらに現業公務員については交渉範囲を広範に規定していることなども考慮して、「代償措置」の範囲を広く検討することが必要だと考える。
 また、仮に人事院の機能から内閣総理大臣に移すことが適当とされる事務が認められる場合でも、そのことによって使用者の権限が一方的に強化され、公務員の処遇や権利、労働組合の位置づけとの関係で、職員に不利益をもたらすことのないよう、新たな制度もふくめた検討が必要である。
 C公務員の労働基本権が制約されている現状で、任用、給与、服務等についての基準の策定と運用が、労使関係の当事者である使用者側の意向によって一方的に決定されることには、労働者の権利や安定的な処遇とのかかわりで重大な問題をはらんでいると考える。使用者の人事管理強化の側面からの要請が、一方で公務員の権利を抑圧することが容易に想定されるからである。
 近年、行政の多様化が進む中で基準の弾力化が進められているが、例えば、勤務時間の割り振りにかかわる基準の弾力化と使用者の裁量の拡大が、深夜交替制勤務職場での労働条件に重大な問題を生じている。これは、労働基本権が著しく制限されていることととの関係で、使用者の権限強化がいかなる結果をもたらすかを考える好例であり、中央人事行政機関相互の機能見直しにかかわっても、こうした現に生じている問題点にも留意した検討を要請したい。
 Dなお、中立・公正であるべき公務員制度の基準の決定権が、使用者としての内閣総理大臣(その補助機関)に移ることによって、その改変をめぐって公務員に対する政治的コントロールが過剰に強められ、公務員の政治的中立性を犯す危険性についても慎重な検討を要請する。
 E国公労連としては、以上のような観点から、内閣機能を強化する観点から中央人事行政機関としての総理大臣の権限強化のみを目的としたり、中央人事行政機関の権限配分にのみ着目した機能分担の検討には、反対の意思を表明しておく。

2.新たな人材の一括管理システム
@上級公務員の一体感養成などは、一括管理を検討する以前の課題として、研修や人事交流のもつ機能に着目することが大切だと考える。行政改革会議の論議では、課長など一定の職以上の職員について一括管理を行うべきとしているが、それが「省庁間セクト主義」を排除することを目的とするならば、内閣全体としての政策調整機能を強めることとなどが、まず重要だと考える。
 A行政の対国民サービスの観点からすれば、1年程度で交代する本省庁幹部、管区機関の長などの在任期間を延長し、専門的、安定的な行政環境を整えるような検討こそが求められていると考える。
 B集団的な業務態勢が基本の公務の現状では、幹部公務員の政治的中立性の強弱が、その他の公務員の業務執行や働き方、働きがいに一定影響することはさけられない。現状でも、「政・官・財」の癒着が行政の中立性を阻害しているとする批判が、公務の内外から強く寄せられている。このような問題指摘に対する改善策をとることなしに、人事管理を通じた行政に対する政治的コントロールをこれまで以上に強める施策をとることになれば、公務員を特定政党の奉仕者に変質させる結果を招きかねないと考える。

3.内閣官房、内閣府の人材確保システム
 行政改革会議の論議にあるように、内閣官房等への政治的任用によるスタッフを拡大する場合には、国家公務員法が特別職公務員を限定している趣旨をふまえて、その範囲を極力制限すべきである。同時に、政治的任用の公務員と職業公務員との厳格な区分が必要だと考える。仮に、各省庁での補佐官制度や、指定職以上の政治任用も検討の対象になるとすれば、それは情実任用の弊害を招きかねないと考える。

4.3課題の検討にあたって、関連して検討が必要と考える課題
 現行の公務員制度については、近代的公務員制度としては未解決で不十分な点を多く残している。当面、貴調査会が集中審議をおこなっている3課題と関連するものとして、国公労連としては次の点の検討を要請する。
 @憲法第28条に規定された労働基本権を国家公務員にも適用すること
 A中央人事行政機関に職員の意見が反映される制度を検討すること
 B人事行政機関が人事行政の諸制度を実施するに当たって、労働組合との協議の場を設けることを公務員法上に規定すること
 D公務員制度についての情報公開の制度化をすすめること

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