行政サービスの切り捨て集権・集中化の「省庁再編」に反対する

−行政改革会議の中間報告に対する書記長談話−

        1997年9月4日 国公労連書記長・西田祥文
 1、省庁再編等を論議していた行政改革会議は9月3日、中間報告を公表した。この中間報告をもとに、与党協議や同会議での詰めの論議をおこない、11月末には「最終案」を固めようとしている。
 中間報告が明らかにしている1府12省庁の中央省庁再編などの検討内容は、国民の暮らしをより豊かにするための行政組織「見直し」ではなく、大企業の利潤追求を後押しするための行政効率化と内閣への権限の集中を目的としたものである。
 それは、行政の中心的な役割である執行部門を強引に分離して、「スリム」化の名による民営化前提の独立行政法人化や外庁化をめざしていること、その一方で企画・立案部門の強化を口実に首相とその周辺に多くの権限を集中するとしていること、治安や防衛、経済成長至上の産業政策、大型プロジェクト中心の国土開発などの機能強化がめざされる一方で、労働や福祉、農林漁業や中小企業育成など国民生活関連の行政分野を軽視した「省庁再編」構想となっていることからも明らかである。

 2、橋本内閣が、政権の命運をかけて強行しようとする「6つの改革」は、全体として一体のものである。共通して、「大競争」時代における日本企業の生き残りと、冷戦構造の変化のもとでの「国際貢献」が強調され、「市場主義万能」の立場に立った競争原理と効率化が追求されている。
 このような「改革」では、国民生活の安定や基本的人権の実現といった国が本来的に果たすべき役割は軽視され、国民犠牲のもとに経済大国、軍事大国への抜本的な転換が企図されている。
 今回の中間報告は、「改革」にともなう国民の批判を退け、強権的に「改革」を進めるための中央政府再編をねらったものとも考えられる。内閣への権限集中と政策立案機能の強化は、行政権限をさらに強化し、行政に対する国会のチェック機能を形骸化させかねず、民主主義否定の「国家改造」につながりかねない危険性を持っている。

 3、いま、国民生活に対して果たすべき行政の責任が厳しく問われている。国・地方を通じて500兆円にものぼる借金の累積があるにもかかわらず、引き続き大型プロジェクト中心の公共投資などのムダづかいを続ける一方で、社会保障などの給付削減と負担増を国民に強いることでは、行政の責任は果たせない。
 国民が人間らしい生活を平和のうちに享受できる社会を築くためにも、利権の温床となっている税金のムダづかいを抜本的に改めなければならない。そのために国が果たすべき責任は、「政・官・財」の癒着を排除し、行政の中立性を高め、行政情報を公開し、国民の行政チェックを可能にすることが緊急のものである。
 また、国民福祉の中心的な担い手である地方自治体の自主性を高めることやナショナル・ミニマム確立のための国の役割発揮、労働者・下請けいじめを続ける大企業の横暴の規制、冷戦構造が変化したもとでの自衛隊のあり方などが優先して論議されなければならない課題である。中間報告は、このような課題にはまったくふれておらず、国民生活に対する責任を放棄している。

 4、中間報告では、以上のような反国民的、大企業奉仕の行政に公務員労働者をかりたてるために、政治的任用や「一括人事管理」の検討もおこなうとしている。
 また、独立行政法人化による公務員労働者の身分変更にもふみこむ公務員制度「見直し」にも言及している。
 これらの点も含め、国公労連は、中間報告の全般にわたって反対の意思を表明する。
 国公労連は、国の基本法である憲法の基本的理念を守り、発展させる方向での行政責任の確認と、それをふまえた「民主・公正・効率」の行政改革を求め、国民本位の民主的行政・司法の実現をめざしている。
 そのため、多くの国民と共同し、中間報告が指し示す反動的な行政改革に反対し、行政の民主的転換のために地域と職場から、そのたたかいの先頭に立ち全力をあげて奮闘する決意である。
 あらためて国公労連に結集する仲間の奮起を呼びかけるとともに、すべての公務員労働者が橋本「6つの改革」の強行を許さないたたかいに決起することを訴える。あわせて、国民総犠牲の攻撃に反撃する国民諸階層の共同のたたかいの発展を呼びかけるものである。


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