99年人事院勧告にあたって
(声明)

 本日、人事院は、一般職国家公務員の給与を平均0.28%・1、054円(実質は一部職員のベア見送りで1034円を使用)引き上げることや、一時金の年間支給月数の0.3月引き下げることなどを内容とする99年勧告を政府と国会に対しておこなった。
 史上最低の賃金改定に加えて、一時金も史上最大の引き下げとなった今夏勧告は、年収ベースの賃金水準がはじめて切り下げられるという内容になった。国公労連が、組合員の深刻な生活と労働の実態に即して掲げた「平均13,300円・3.6%の賃金引き上げ」をはじめとする人事院勧告期の要求に応えたものとはなっていない。
 勧告をめぐっては、99年春闘が史上最低の結果になったことに加え、4.9%(99年6月末)もの高水準に達した完全失業率に示される雇用不安の拡大、「産業競争力再生法」の成立にも代表される国・大企業あげてのリストラ「合理化」攻撃の強まり、中央省庁再編法・地方分権一括法の成立による行政改革の一段の進行、企業のリストラ「合理化」を後押しする産業競争力再生法の成立など、スリム化、人件費削減攻撃が官民をとわず強まっていた。そのように、今夏勧告をめぐる状況は極めて厳しいものがあったが、その点を考慮しても、勧告内容は極めて不満の強いものと言わざるを得ない。

 国公労連は、6月18日に勧告期要求を提出して以来、その実現をめざして中央・地方で奮闘してきた。とりわけ、1)人事院が昨年勧告で調整手当「見直し」に言及し99年春闘期でも強行姿勢を崩さなかったこと、2)99年春闘での民間状況、3)昨年来の民間一時金動向から、「賃金のトリプル改悪」の危険性があるとの認識で、それを許さず、切実な要求実現を迫るたたかいを最重視し、公務共闘・公務労組連絡会に結集して全力をあげて奮闘してきた。
 取り組みでは、調整手当「見直し」改悪反対の「大型ハガキ」(5/21提出・2801枚)や「トリプル改悪反対署名」(126,026筆提出)、節目毎の職場決議、要請電の集中、3次(5/21、6/8、7/22)の中央行動と調整手当課題での緊急中央行動(6/22、6/24、6/30、7/9)、勧告直前の人事院前行動(7/29)、さらには勧告最終盤にむけて要求実現を職場段階から迫った「7/23・全国統一行動」などを展開するとともに、ブロック国公段階での集会や人事院包囲行動など地域段階からの取り組みも強化した。また、職場から当局の使用者責任を追及し、調整手当改悪反対の課題で、複数の省庁当局が人事院要請をおこなう状況も作り出してきた。

 以上のような勧告をとりまく情況と国公労連のたたかいも一定反映した勧告は、次のような特徴点を指摘できる。
 その第1は、一時金について、現行の勧告の仕組みが築かれた1960年以来では最大の引き下げとなったことである。その結果、全ての組合員の賃金水準が大きく引き下げられ、とりわけ高齢者・高位号俸者では昨年の年収額さえ確保できないという事態となっている。
 その第2は、勧告前の7月16日の段階で、「今夏勧告での調整手当見直し決着の見送り」を言明させ、8月4日の段階で、全ての組合員の賃金に影響する「ベア勧告の見送り」を決断させなかったことに示されるたたかいの到達点である。
 調整手当については、その「見直し」手法の不当性などを徹底して追及し、中央・地方が一丸となった運動を展開し、人事院が「ベア勧告の見送り」にも言及する状況のもとで、勧告期闘争の最終盤まで「ベア勧告の実施」を迫った。そのようなたたかいを反映して、「トリプル改悪」の内の二つの強行を許さなかった。
 その第3は、10数年来、該当単組を中心に実現を求めてきた「福祉職俸給表」の実現や、1996年以降重点課題としてきた「育児休業期間中の一時金基準日問題」について決着をみたことである。いずれも、制度の大きな変化であり、ねばり強く取り組みを積み重ねてきた運動の成果である。
 その第4は、本俸配分にかかわって、俸給表の一部とはいえ、「ベアゼロ」勧告がおこなわれたことである。管理職層での賃金抑制が先行する民間状況や、極めて僅かな較差のもとでの配分について「一般職員層への配慮」の判断が働いたとはいえ、その問題点は少なくない。一部とはいえ、人事院が賃金改善の見送り(凍結)を判断したことは、俸給表全体の「ベアゼロ勧告」に道を開く禍根となりかねない。
 その他、報告では「俸給表構造の見直し」や「能力・実績評価方法の検討」に言及するなど、年功賃金体系の「見直し」、能力・実績反映の賃金制度のあらたな検討段階に至ったことを表明する内容も含まれている。また、調整手当について、「早期に成案を得る」として改悪強行の姿勢を人事院は変えていない。

 昨年来、自治体では、財政危機を口実に、人事委員会勧告の凍結・抑制にとどまらず賃金切り下げを強行する事態が相次いでいる。労働者の生活を顧みることもなく進められる民間大企業などでの賃下げ攻撃に「準拠」した国家公務員賃金の切り下げが、自治体で広がっている賃下げ攻撃を加速させ、人事院勧告に準拠する民間企業の労働者にも悪影響をおよぼすなど、悪循環の一因となりかねない危険性をもっている。
 それだけに、反失業・雇用確保などの課題で取り組まれる全労連の「全国キャラバン行動」などの官民共同の取り組みとも結んで、「一時金切り下げを許さず、勧告の改善部分の早期確定」を政府に迫る取り組みを強める必要がある。同時に、政権維持や党利党略を最重視し、悪法の推進に狂奔している自自公連立の政治状況のもとで、公務員賃金の決定ルールさえふみにじる勧告の凍結・抑制の動きが政治的に強まる危険性も少なくない。その点でも、悪政反対での国民的な共同闘争と一体で、賃金確定期のたたかいを展開することが求められている。
 夏季闘争でのたたかいの到達点を、政府による総人件費抑制攻撃とのたたかいの正念場である99秋闘に引き継ぐことが重要である。調整手当「見直し」改悪の強行を許さないことや、昇格改善を求めることとも一体で、生活擁護・労働条件の維持・改善のため、そして不当な公務員攻撃の「流れ」を変えるために、要求を高く掲げ、たたかいに全力を あげよう。
1999年8月11日
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員会

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