基本的人権を踏みにじる盗聴法案に反対する
(談話)

 自民、自由、公明の3党は、6月1日衆議院で組織的犯罪対策法(盗聴法)案の採決を強行した。盗聴法案は、憲法第21条が保障する通信の秘密や憲法第35条の令状主義等の基本的人権に反し、プライバシー権をも侵害する「盗聴」という手段を捜査機関に与えようという危険な法案である。
 法案は、国民的な批判の高まりのもとで、自民、自由、公明3党の修正が加えられたものの、「予備的盗聴」「事前盗聴」「別件盗聴」を認める基本的な性格は変わっておらず、「盗聴」は電話やファックス、インターネットにまでおよぶこととなる。対象は、暴力団などの組織に限定されるわけではなく、「数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況がある」だけでことたり、善良な市民の通信まで盗聴される場合も十分に予測される。そもそも、警察による共産党幹部宅盗聴事件で示されたように、裁判所がその事実を認定しても無反省な警察に、法の名による盗聴を許せるものではない。この法案が成立すれば、私たちの担う行政・司法の対象犯罪にかかわる職場の職務の遂行に重大な支障をもたらすことも懸念される。
 通信の秘密や令状主義など憲法の定める自由権は、国家が私人の自由な領域に立ち入ってはならないという「国家の立ち入り禁止区域」を定めたものであり、権力者の恣意から国民の自由と権利を守る点にその存在意義がある。戦前、国民が警察の監視下に置かれ、警察や軍による人権蹂躙が横行した。この歴史の反省のうえにたって憲法で確認されたこれらの基本的人権や民主主義に反する盗聴法案は、廃案とされるべきである。
 この法案の危険な内容が明らかになるにつれ、国民の反対の声は世論調査で「反対が84%」(時事通信)にのぼるなど日毎に大きくなっている。マスコミ関連の団体や労組、NTT労組などからいっせいに反対の声が上がり、地方議会の決議や意見書も各地で採択されている。この24日には、東京日比谷野外音楽堂で多彩かつ著名な文化人23氏が呼びかけた「許すな盗聴法!6・24大集会」が開かれ、労働団体の違いをこえた幅広い労働者の結集のもとで、民主党、共産党、社民党の党首がそろって出席するなど、法案反対の戦線は急速に発展しつつある。
 私たちは、憲法を尊重し擁護する義務を負う国公労働者として、国民の基本的人権を守り発展させるため、盗聴法案の慎重審議・反対の世論をさらに広げ、廃案をめざして奮闘するものである。
1999年6月18日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  福 田 昭 生

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