国民的討議を抜きにした「日の丸・君が代」法制化に反対する
(談話)

 小渕内閣は6月11日、日本の国歌を君が代、国旗を日の丸とする法案を国会に提出した。政府は、会期延長をにらみつつ、「国旗・国歌法」の今国会での成立をねらっている。われわれは、拙速な法制化に反対し、法案の撤回を求めるものである。
 日本の国旗・国歌を法律で定める以上、国民参加のもとでの十分な議論が前提となるのは当然である。そもそも、「日の丸」は先の侵略戦争のシンボルとして使用されたことにくわえ、「君が代」は、政府みずからが「君」を天皇とする見解を示しているように、国民主権にたつ日本国憲法との矛盾はまぬがれない。こうしたことをふまえれば、果たして「日の丸・君が代」が国旗・国歌たりうるのか、本来、国旗や国歌とはどのようなものなのかなど、国民的な自由な討議を出発点にすることこそ求められている。それを、問答無用とばかり、唐突に法案として国会に提出することは、到底容認できるものではない。
 重大なことは、政府が、広島の高校長の自殺をきっかけにして法制化に動き出したことからも明らかなように、教育現場をはじめとしたさまざまな場で「日の丸・君が代」の使用を強制するために法制化がねらわれているのではないかと思われる点である。たとえ、国旗・国歌を法律で定めるとしても、あくまでも、個人の思想・信条の自由が保障されなければならない。そのことを大原則にした議論がなければ、教育現場にとどまらず、職場や地域などいたるところでの国旗・国歌の掲揚・斉唱が強制されかねない危険性をもっている。
 法案の国会提出以降、新聞各社の社説は、おしなべて性急な法制化に反対する立場を明らかにしている。今月はじめには、著名な学者・文化人63氏による国旗・国歌法案の提出に反対するアピールが発表された。幅広い国民議論をもとめる声も急速に高まりつつある。こうした国民世論に背をむけ、国会の数の力だけで、国旗・国歌法の成立を強行することは、民主主義を破壊する暴挙でしかない。
 新ガイドライン法の強行成立をはじめ、大統領的な首相をめざす内閣機能の強化、盗聴法や国民総背番号制ともいえる住民基本台帳法、さらには憲法調査会の設置、有事法制の制定準備の動きなど、いまほど、恒久平和や国民主権などを基本原則にした憲法への攻撃が強まっているときはない。国旗・国歌の法制化も、こうした動きとは無関係とは言えない。
 われわれは、憲法遵守の義務を負う国公労働者として、日本の平和と国民主権にもかかわる国旗・国歌法案の国会提出に反対し、広範な民主勢力と力をあわせて、法案の廃案にむけてたたかう決意である。
1999年6月16日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  福 田 昭 生

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