「国と民間企業との間の人事交流に関する法律案」の国会提出にあたって(談話)

 政府は、4月27日の閣議で、「国と民間企業との間の人事交流に関する法律案」(官民交流法案)を決定し、国会に提出した。この法案は、国家公務員法第103条(私企業からの隔離)の「特別法」として位置づけられ、一般職国家公務員の民間営利企業での勤務を広く認める「交流派遣」と、民間企業従業員を任期をつけて公務に採用する「交流採用」の仕組みを制度化するものとなっている。法案概要で、経済界からの「関心・期待」が高いことをあえて言及しているように、また2月26日の経済戦略会議答申が、「民間との人的交流」の活発化を強く求めているように、大企業がもとめる「行政改革」の一環としての法案であることは明白である。このような法案は、「全体の奉仕者」としての公務員の性格をないがしろにしかねないものである。成立は断じて許してはならず、徹底した審議で問題点を国民的に明らかにするよう強く求めるものである。

 法案は、国家公務員の身分をもったまま、職員を営利企業の仕事に従事させるために、人事院が過剰な「関与」をおこなうことで公務の「公正性」が保てるかのような立場に立っている。人事院が関与しても実際には「天下り」規制が尻抜けになっている現実からして、その実効性には大きな疑問を抱かざるをえない。

 また、民間企業への職員の派遣を通じて、「行政の課題に柔軟かつ的確に対応するために必要な知識、能力」を有する人材の育成を図るとしているが、民間営利企業での仕事の経験だけがそのような人材の育成の方策とはならない。「民主、公正、効率」の行政運営こそが求められる今、効率化のみに主眼をおき、民間企業と行政との癒着を拡大する危険性まで侵して、交流派遣の仕組みを作る必要性はどこにもない。

 民間企業からの「交流採用」についても問題である。「天あがり」と批判される民間企業からの出向や、非常勤職員としての採用の現状、問題点はなんら明らかにしないままに、しかもその実態への制限はなんら行わずに、新たな「採用」の仕組み作りだけに終わっている。民間経営の手法を「体得」している者を「交流採用」し、「行政運営の活性化」を図るとしているが、民間経営手法を無批判に受け入れることが、なぜ活性化につながるのか、理解できる説明はおこなわれていない。

 公務員制度や行政のゆがみの根本には、公務員制度の基本からはずれたキャリア特権の問題や、「天下り」に象徴されるゆ着の構造がある。また、民主的な公務員制度の確立を妨げている問題として、公務員労働者の労働基本権の剥奪や政治的自由の制限がある。これらは、公務員制度の民主化の不十分さの問題であり、その点の改革こそが緊急の課題である。

 国公労連は、行政の中立性を今以上に損ない、「官民癒着」の温床を制度化する危険性さえある「官民交流法」に反対の立場をあらためて表明する。国民生活重視の行財政改革をもとめて展開している行革闘争と一体で、同法案反対の運動を展開するものである。
1999年4月27日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長  福田昭生

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