独立行政法人と減量化問題を中心に
--法案、計画決定を前に推進本部へ申し入れ--

(国公労連「行革闘争ニュース」1999年4月6日付)


 国公労連は、行革関連法案、減量化計画が4月中に決定されようとしている情勢を受け、本日4月6日午後5時から中央省庁等改革推進本部に対して、別掲申し入れ書に基づき、独立行政法人と減量化問題を中心に申し入れを行いました。
 この申し入れには、藤田委員長ほかの役員が参加、推進本部側は、杉田事務局次長(独立行政法人・減量化担当)、井手参事官(独立行政法人担当)、岡本参事官(減量化担当)ほかが対応しました。申し入れの内容は、以下の通りです。

藤田委員長:
1)国公労連は、行政サービス提供の実施部門をスリム化減量化するとか、労働福祉省にもみられる国民生活関連部門を軽視する行政組織改革には反対の立場をとっている。
2)公務員を25%削減するだとか独立行政法人の対象84機関プラスアルファーの数などの経緯を考えると、行革基本法のときよりも大綱はさらに踏み込んでいると危惧を強めている。
3)国の役割の重点化にしても、その中心にある首相権限の強化だ。現在国会で論議されている新ガイドライン法との繋がりで懸念せざるを得ない。
4)事務局の検討が最終盤にきて、かなり時間的にも迫っていることは承知しているが、その立場から改めて申し入れる。

福田書記長:
1)9次に渡る定員削減で現在の定員は総定員法の定数以下である。それに加えて新たに25%の定削は可能なのか。頭ごなしに25%削れでは問題が多すぎる。9次定削で職場には様々な問題が出ている。考え直すべきだ。
2)独立行政法人制度は、その制度内容が十分説明されておらず、いまの行政の何を改善するのかさえ明確ではない。また、対象事務・機関の選定の基準も理解できない。行政の範囲内であるとすれば、行政組織法に位置づけ、職員を公務員とすべきだ。また、効率が悪いなら公務の枠内でもっと違ったやり方もあるのではないか。仮に別法人とするにしても公務員型で移行に当たっての雇用保障を行うことは当然だ。
3)減量化計画の内容が事務実施部門に集中している。行政ニーズをつぶさに分析した上で強化すべき分野などなぜ検討しないのか。
4)政治的な任用については、公務員の中立性・公平性において問題があり、公務員制度関連は再検討が必要ではないのか。
5)行政改革に関する国民の声は、いわゆる業界とのゆ着の問題をどう解決するのかではなかったか。単に行政組織を再編成するとかではなかったはすだ。今回は検討対象となっていないその点での改革論議こそ優先すべきだ。

杉田事務局次長:
去年6月に、中央省庁改革等基本法が、自社さの賛成多数で成立したが、これがわれわれのバイブルで、手垢が付くくらいに見て、忠実に法案化、計画策定を進めている。今年に加え、それに加え、連立政権発足で一部の内容が加わり、1月に「中央省庁等改革に係る大綱」が決定され、これに基づいて鋭意作業をすすめている。2001年1月の新省庁発足を目標にしており、どうしてもこの通常国会に計画と法案を提出しなければならない。4月と言ってきたが、中旬はともかく、下旬には推進本部決定が出来ることをめざしている。そのため、一部関係方面との調整に入らせてもらっている。

岡本参事官:
定員削減については、1月26日に決定された大綱で、25%の定員削減が、記述されている。連立与党で決められ、指示されていることであり、大綱に書かれており、その方向で作業せざるを得ない。
井手参事官:独立行政法人について、まずニュースをお伝えしたい。いま、国家公務員の身分を与える独立行政法人職員の身分は、一般職国家公務員とする方向で詰めているということを伝えする。
 もともと何のための独立行政法人化というお話だったが、行政組織内でいる限り、定員についても、出張所、支署などの内部組織についても、事前管理、統制をはずすわけにはいかない。予算についても同様で、単年度予算で、夏から暮れにかけて作業し、手続きしたものは、もう変えられない。こういう両方のことから、事前規制でなく、自主性を活かすために独立行政法人制度を構想した。

 制度論として、100年後の将来、行政組織そのものが変わるかも知れないが、われわれの生きている間では、そういうことは予想できないので、申し訳ないが、自主性を発揮するための行政運営の方法論として理解してもらいたい。

岡本参事官:
減量化について、充実すべき分野もあるではないかというお話があったが、確かに環境分野や公正取引委員会など、充実すべき分野はある。スリム化が実施部門に集中しているのではというお話だったが、特定部門をねらい打ちにしているわけではない。われわれのバイブルである基本法が章をたてて、減量化に言及していることにそって作業している、基本ラインは1月26日決定の大綱であり、それにそってさらに内容を詰めている。

井手参事官:
その他の要望事項については、うまく答えられるものがいまこの場にいないので、要望事項として承りたい。 福田書記長:定削の数だけ決めて、各省庁に自分たちで削りなさいといわれると、定年前の者までも出ていかないといけなくなる。そうなると天下りなどまた国民から批判されることになる。現にそのような仕組みが作られている問題があるではないか。

安部副委員長:
私どもは昨年の基本法の審議の際も行政の現場で働く者の立場からより慎重に議論してほしいと主張していたが、国会での審議は先送りされた。慎重さがかけている。

 最後に、藤田委員長が「行革の中身を聞けば聞くほど理解し難い。賛成し難い。国民の福祉向上を目的とする行政の役割をどう実現するのかという点や、多くの公務員労働者の期待に応える立場から、引き続き交渉を求めておきたい」と述べ、申し入れを終わりました。

<別掲・推進本部への申し入れ>

1999年4月6日

中央省庁等改革推進本部
  本部長 小渕 恵三 殿
日本国家公務員労働組合連合会
中央執行委員長 藤田 忠弘
中央省庁等改革に関する申し入れ
 1月26日、中央省庁等改革基本法(行革基本法)に基づく、「中央省庁等改革に係る大綱」が決定され、4月中の法案・計画の閣議決定をめざして、貴本部で具体化の作業がすすめられています。
 私たちは、進められている行政改革が、行政本来の責任である国民への公的サービスの提供を軽視し、「夜警国家」への後退を意味する改革であると受けとめて、その具体化には反対の立場を表明してきました。「大綱決定」によって、私たちはそうした問題意識をさらに強くしています。
 私たちが、中央省庁等の再編で、特に問題だと考えるのは、国の責任で提供すべき医療、福祉、教育などの公共サービスや研究活動などを、国が実施の責任を負わない独立行政法人化しようとしていること、雇用確保、労働者保護、農業・漁業、中小企業の保護育成、国民の権利擁護など、不可欠の事務・事業として国が積極的な役割を負うべき実施事務を最優先で減量化しようとしていることです。高齢化社会の到来によって、国民が年金だけでなく介護や医療についての将来不安を増大させていることを見ても、不況の深刻化が暮らしに対する国民の不安を増大させ、ひいては社会的な不安をも増大させていることを見ても、国民生活に対する国の役割は、再確認が必要です。
 また、「大綱」では、国家公務員の25%削減を打ち出しているのも問題です。改めて指摘するまでもなく、諸外国に比して、わが国の公務員数は極端に少なく、行政部門、特に事務実施部門の態勢は極めて不十分です。国家財政に占める「総人件費」の額からしても、国家公務員定員の削減が有効な財政再建策となり得ないことは、政府の審議会でも触れられているところです。一方で、「政・官・財」癒着構造など、国民的な批判が集中している歪みの改革には、何ら手がつけられていないと言わざるをえません。次官級の分掌職の新設などは、その端的な例です。「政・官・財」癒着構造への批判を国家公務員一般への批判にすり替えて、国が責任を負うべき事務・事業からの撤退を合理化することは、到底受け入れられないものです。
 以上のような内容に関わる点と同時に、今回の中央省庁等再編は、当事者である職員と労働組合の意見が十分反映されていないという点でも問題があると考えます。以上の点から改めて下記事項を申し入れ、貴本部での検討に反映されるよう求めます。

1.国家公務員の定員削減について
 行政実態や国民のニーズを踏まえることなく、一律の定員削減を迫る国家公務員の25%削減などの「数値目標」決定は行わないこと。

2.独立行政法人について
 独立行政法人は、行政減量化の目的で制度化され、対象機関の検討もそうした観点で行われていると受け止めている。したがって、独立行政法人に反対する立場から、次の点を申し入れる。
(1)独立行政法人化の対象となる事務・事業は、「国が自ら主体となって実施する必要のないもの」という前提で制度化が検討されているが、対象とされている機関が「国が自ら主体となって実施する必要のないもの」とする明確な理由も明らかにされていない。対象機関については、性急な結論づけは行わず、労働組合を含む関係者との協議をつくすこと。 (2)独立行政法人については、行政の一機関であることを明確にするためにも、行政組織法及び各省設置法に位置づけること。 (3)独立行政法人の職員は、一般職国家公務員とすることとし、中立第三者機関による試験合格者の中から採用することを基本とすること。 (4)中期計画に対する独立行政法人の長の抗弁、評価委員会への独立行政法人の長の意見反映の仕組みを規定すること。 (5)中期計画、年度計画、評価基準策定への労働者代表の意見反映の仕組みを制度化すること。 (6)独立行政法人の民営化、主要業務の改廃に関わる総務省評価委員会の勧告権は規定しないこと。 (7)独立行政法人への移行に当たっての「職員の継承」を義務づけること。 (8)独立行政法人の役員は公募を原則とすること。

3.いわゆる「減量化計画」に関わって
 行政の本来的な役割は法に基づく事務・事業の実施であり、国民の基本的人権の実現に責任を負う政府の役割からして、わが国では実施部門の強化・拡充こそ求められている。
(1)実施部門を対象にした減量化・効率化の計画は行わないこと。
(2)現業的業務の民営化等は行わないこと。
(3)必要な規制・監督体制は、強化する方向で検討すること。
(4)行政需要を踏まえない一律的な地方支分部局の整理統合は行わないこと。
(5)政策部門との一体性確保が必要な統計部門の、省庁横断的な統合一元化は行わないこと。

4.内閣総理大臣の権限強化に関わって
 内閣総理大臣の機能・権限強化を目的に検討されている内閣法等の「見直し」については、その「独走」に対する規制が不十分である。
(1)内閣総理大臣の内閣の長としての「発議権」の法制化は行わないこと。
(2)内閣府の設置は、その根拠を行政組織法に置くこと。

5.公務員制度に関わって
 内閣機能強化とのかかわりで検討されている内閣官房、内閣府への「人材登用」などについては、公務員の政治的中立性を阻害する恐れが少なくない。
(1)内閣官房の内部組織、内閣総理大臣補佐官、内閣総理大臣秘書官の数は、法定すること。
(2)内閣官房、内閣府への人材任用にあたっては、公募手続きも含め「猟官的な運用」とならないための規制を検討すること。また、任期付き任用の検討は、対象職種等を限定して行うこと。
(3)行政機関幹部職員の内閣承認の法制化は行わないこと。
(4)特別職の範囲を見直し、「政治的任用」職と一般職との区分を明確化すること。

6.その他
(1)「国民の知る権利」を明確にした情報公開法の改正や公務員倫理法の早期成立と実施を働きかけるなど、行政の透明性確保のための制度検討を行うこと。
(2)行革基本法などでは検討対象となっていない官僚の「天下り」禁止など、いわゆる「政・官・財」の癒着の構造を是正するための検討を行うこと。

以上

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