2・3種等採用職員の登用施策について(談話)

 人事院は3月19日、「2・3種等採用職員の幹部職員への登用の推進に関する指針」を作成し、各省庁に通知した。
 人事院が、2・3種等職員の登用施策に取り組まざるを得なかったのは、大蔵、厚生、通産省などの高級官僚の不祥事が相次いでマスコミをにぎわし、特権的、硬直的な人事のあり方に対する国民や国公労連などからの批判を受けたためである。上級甲(現在のT種)試験採用者が、指定職職員の98%を占めている実態の是正策を講じることは必要なことだが、今回人事院が打ち出した指針にはいくつか問題がある。
 第一に、T種採用職員を別扱いとして、それ以外の採用者を特別に登用するというもので、極めて不十分なものである。偏差値教育の弊害が指摘される中、入口の採用試験で基本的な選別を行うこれまでの仕組みを改め、大卒試験を一本化し、公務遂行の中で幹部を選抜することなど抜本的な見なおしをおこなわずして、特権官僚優遇人事の弊害は是正されない。成績主義をねじまげている最大の要因が、採用試験区分にのみ根拠をもとめる特権人事にあることへの真摯な反省が欠落している。
 第二に、幹部登用に向けて計画的に育成しようとする者を選抜するための方法に問題がある。
 人事院の示す選抜のための評価は、いずれも管理する立場からの視点で行われるものであり、行政の現場に携わる者の視点からの評価が欠如している。各省庁の幹部職員には、憲法の理念を踏まえて、民主・公正な観点で各省行政を推進する姿勢が求められる。そういう点では、行政の現場からの視点、職場の労働組合との協議、国民の期待にどう応えるのか、などの面からの評価方法も検討される必要があり、少なくとも基準の明確化と被評価者の関与の手続きは不可欠である。
 第三は、この指針による登用策がどれだけ効果を上げるか、はなはだ疑問な点である。そもそも、人事院自身、国家公務員法上何の根拠もないT種採用者の特権的な扱いを黙認し、また助長してきた経緯がある。2・3種職員には、級別資格基準表を大幅に上回る年数での運用を押しつけながら、T種採用者は、一律で8割基準での昇格を認める。また、5級か6級のT種採用者で、税務署長に就くべき級に達していない者を任用するのが常態化していたにもかかわらず、これを人事院が承認してきた事実がある。このような特権的な人事運用を、人事院自身がきちんと是正する姿勢を示さなくては、2・3種の登用者をT種職員と一元的に人事運用すべしという方針も、各省にどれだけ真剣に受け止められるか疑問のあるところである。
 1種のみを特権的に扱ってきたことを改革しようという今回の指針は、計画的な育成策や登用促進のための方策について、一定の具体策が盛り込まれている。しかし、試験制度のあり方、幹部候補者の選抜方法などにおいて我々の指摘する問題が克服されなければ、T種グループを補完する2・3種選抜グループを作るにすぎず、国家公務員労働者の差別、分断の強化につながりかねない。それは、国民と、我々の期待に反するものである。
 国公労連は、人事院及び各省庁が、これまでの特権人事を抜本的に改め、誠実に憲法理念の実現のために各省行政を遂行する人材が、幹部として登用される仕組みを求める。同時に、今回のような不十分かつ小手先の施策の実施を口実に、職員間に差別と分断、競争をあおる人事運用を強化するなど、本来の目的を逸脱した施策への転嫁には断じて反対するものである。
 今求められているのは、公務員制度の運用にあたっての労働組合の参加、関与の手続や国民に開かれた形での幹部の選抜、育成策であり、人事院がそのための制度検討を引き続き進めることを求めるものである。
1999年3月24日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 福田昭生

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