大企業はこの国の主人公ではない
--「経済戦略会議答申」に対する談話--

(1)2月26日、首相の諮問機関である経済戦略会議は、「日本経済再生への戦略」と題する答申をおこないました。それは、「大事なのは自己責任や市場競争だ、というメッセージが全体を覆っていることが気掛かりだ」(2月27日・朝日新聞社説)とマスコミさえ指摘するように、「競争社会」への「抜本的な構造改革」のための「戦略」課題のみをとりあげています。深刻な不況の下で苦しむ国民生活や、財政危機を招いた原因はお構いなしで、異常なほどに大企業にかたよった答申になっています。答申を受け取った小渕首相は、「可能なものから実現をめざす」としていますが、国の役割をなし崩しに後退させる悪政を、これ以上「政治主導」で続けさせることを到底許せるものではありません。
(2)答申は、1)バブル経済の集中清算期間(1999〜2000年度頃)、2)成長軌道への復帰と経済健全化期間(2001〜2002年度頃)、3)財政再建、構造改革による本格再生のための期間(2003年度頃〜)とする「提言実行のためのステップ」を設定し、財政「正常化」を2008年度に達成するとしています。これは、「(財政危機問題は)経済が回復軌道に乗ってから検討」(小渕首相の国会答弁)とする姿勢を前提にしたものであり、大規模開発中心の公共事業のムダ遣いや、銀行への公的資金投入などのために赤字国債を発行するという借金財政には、手をつけようともしていません。
 その一方で、「景気回復とは直接的関係は強くない」として、1)「小さな政府」の実現(公務員削減、規制緩和)、2)「地方主権」の確立(1000自治体への合併推進)、3)税制の抜本改正(所得税の課税最低限の引き下げなど)、4)各種の構造改革(国立大学の民営化、司法改革、公的年金の抜本改革など)等は、極力早期に推進することを求めています。
(3)答申はまた、「『健全で創造的な競争社会』の構築」を第1にかかげ、その最大の課題として「『小さな政府』へのイニシアチブ」を打ち出しています。その内容は、1)公務員制度の改革、2)国、地方公務員の削減、3)民間への業務委託の積極活用、4)局長級公務員の政治任命などであり、「行政改革」と同様に「小さな政府」=公務員削減の打ち出しと国の業務の「重点化」を強調しています。
 そして、国有財産の売却に言及し、都市部の公務員宿舎、河川敷、国立大学敷地などの「有効利用」を求めています。さらに、「努力した者が報われる税制」として「フラットな直接税の体系」を当面の「改革」課題としつつ、「長期的には直間比率の是正は不可欠」として消費税率の引き上げを求めています。
 加えて、雇用の流動化促進や「失業率の上昇」を前提において、「転職適応能力」を高めることを労働者にもとめ、年金制度について「(報酬比例部分は)30年後に完全民営化」を求めるなどを「新しいセーフティネット」と位置づけて、徹底した自己責任を国民に迫っています。
(4)このような答申が、10人中6人が財界代表でしめられるという首相直属の諮問会議で決定され、その実行こそが首相のリーダーシップであるとする世論形成が同時に進んでいることも重大です。首相の権限強化、内閣の機能強化の名の下に、国民の利益に背を向けた「トップダウン」の政策決定と執行を行政に迫る「行政改革」が一方で進んでいます。今回の答申は、そのような首相権限強化の先取りでもあります。
 国公労連は、取り組んでいる行革闘争を通じて、答申の反国民性を明らかにし、その具体化をくい止める国民的なたたかいに、引き続き結集する決意です。
1999年3月1日
日本国家公務員労働組合連合会
書記長 福田 昭生

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